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<div>第7.5話『淡い想い』</div>
<div>今日、あたしは掃除当番だから、部室に行くのが遅れる。<br />
それをキョンに伝えると、キョンはいつもの仏頂面で返事をする。<br />
キョンは有希の方ばっかり見てる気がする。<br />
なんで有希ばっかり。<br />
あたしは無意識に、キョンにいつも言っているようなセリフを吐く。<br />
すると、キョンは嫌そうな顔をして、「しねぇよ」と言ってきた。<br />
有希も何か言っている。いつも思うんだけど、聞き取りにくいのよね。</div>
<div>キョンが教室から出て行く。有希も後を追っていく。<br />
あぁもう、早くこの忌々しい掃除を終わらせて部室に行かなきゃ！</div>
<div>あたしはパパッと掃除を済ませた。<br />
さてと、我がSOS団の部室に行かなきゃね！<br />
みんなはあたしがいないとものすごく寂しいみたいだから！</div>
<div>部室の前まで来た。<br />
誰かが叫んでるみたいね。誰？<br />
まぁ、いいわ。とりあえず入ってみれば分かることよ。</div>
<div>「うきゃっ！」<br />
やっほー！遅れちゃったー！って……え？<br />
「大丈夫ですか？！朝比奈さん！」<br />
キョンがあたしの足元に倒れている人に駆けつける。<br />
……もしかしてみくるちゃん……？！</div>
<div>み、みくるちゃん！大丈夫！？<br />
キョンがなんてこった、というような顔をしている。<br />
もう駄目みたいね。完全に気絶してるわ。</div>
<div>「おい、ハルヒ。ちょっと朝比奈さんを保健室まで連れて行ってあげてくれないか？」<br />
なんであたしなのよ。あんたが行けばいいじゃない。<br />
「俺だといろいろ不都合があるんだ。一応男だからな」<br />
どういう意味よ、それ！あんたまさか……このエロキョン！<br />
「……エロキョンでいい、もう」<br />
そりゃあキョンだって健全な男子高校生みたいだし、<br />
体を持て余したりすることもあるでしょうけど、みくるちゃんの妄想はやめなさい。<br />
……そういう妄想はあたしにだけ抱きなさいよ……。<br />
「ん？なんか言ったか？」<br />
な、なんでも無いわ！行ってくる！</div>
<div>あたしはみくるちゃんを抱えて部室を出る。<br />
……あ、危なかったわ！<br />
考えてたことの最後の方、口から漏れてたみたい……。<br />
もう、本当に、キョンはあたしのことだけを見てればいいのにぃ……。<br />
あの変な夢だって……。<br />
あたしはあの夢を思い出しては一人で悶えてしまう。<br />
だって、あんな真剣な顔をしたキョンなんてはじめて見た。<br />
カッコ良すぎ。もう、くらくらしちゃうわ。<br />
恋愛感情なんて一時の気の迷い、精神病の一種なんてのは分かってるけど……。<br />
それでもあたしはキョンのことが……なんちゃってね！<br />
その答えは今はまだ心の中に閉じ込めておくべきよ。<br />
時が来たら、明かすわ。<br />
その時まで内緒よ。</div>
<div>保健室に着いた。<br />
みくるちゃんは気絶しながらも何か唸っていたけど、全然聞き取れない。<br />
何？お酒でも飲んでるのかしら？こんなに顔を熱くして。<br />
「……キョンくんが……長門さん……襲……った」<br />
えぇ？！本当なの？！みくるちゃん！<br />
「………」<br />
保健室の先生！後は頼んだわ！</div>
<div>あたしは返事も聞かないまま、みくるちゃんをベッドに放り投げて、保健室を出た。<br />
キョーンー、覚悟しときなさいよ！</div>
<div>あたしは威勢良くドアを開ける。<br />
ちょっとあんたたち！みくるちゃんから聞いたわよ！<br />
「な、何をだ」<br />
いまさらとぼけたって無駄よ！ぜぇんぶ聞いたんだから！<br />
キョン！あんたいくら有希が可愛いからって一時の気の迷いに身を任せて襲っちゃダメじゃない！<br />
……本当はあたしを襲いたいくせに………最後までいってもいいのに……。<br />
あたしは最後の方はｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ、となってしまった。<br />
キョンは何か言いたそうな顔をしていた。<br />
「それは、違う」<br />
あたしは有希の言い分を無視して、キョンを悪者扱いする。<br />
大丈夫？有希？キョンに何されたの？あたしが倍返しにしてやるわ！</div>
<div>その瞬間、キョンがドキリ、とする。<br />
何？あたしに倍返しされるのがそんなに恐いの？<br />
あたしは有希に続けて言う。</div>
<div>修正してる間に間違ってエンターキー押したなんて格好悪くて誰にも言えません。</div>
<div>あんたはSOS団の大事な無口キャラなんだから、もっと自分を大事にしなさい。<br />
「……あなたは勘違いしている。」<br />
……何を？<br />
有希は何をあたしに言いたいんだろう。<br />
「わたしが襲った」<br />
………え？……まさか………。<br />
そりゃあ驚いたわ。まさか、有希がキョンを襲うなんて。<br />
まさか、有希はキョンのことが好きなのかしら……？<br />
「あぁ、長門よ。その一言でいろいろ大変なことになるんだが」<br />
「間違いを訂正した。それだけ」<br />
ゆ、有希？なんで、キョンなんかを襲ったの？なにかの間違いよね？<br />
「彼を襲いたかったから」<br />
うぅ！なんてうらやましい理由で……！ じゃなくて、<br />
なんて恐ろしい娘！じゃなくて……。<br />
と、とにかく今日の有希は……ど、どうかしてるわ<br />
「なんか俺もそんな気がしてきたぜ……。<br />
ま、まぁ……いい。とにかく今日は帰らせてもらおうか」<br />
あたしはバン、と机を叩いて叫ぶ。</div>
<div>まだ話は終わってないわ！</div>
<div>あたしは有希にキョンのことが好きかどうか、ということを訊こう、と思っていた。<br />
でも、あたしは急にさっきから考えていたことを言うのが恐くなった。<br />
なぜなら、もし有希が好きだと答えてしまったら、<br />
キョンは有希のことだけを見るようになるだろうから。<br />
―――恐い。でも、訊かなきゃ……。<br />
勇気を振り絞って、あたしは弱弱しく口を開いた。</div>
<div>有希、あんたキョンのこと好きだったの？<br />
「……すき」<br />
な……。<br />
あたしは思わず口ごもってしまった。<br />
そう、やっぱり有希はキョンのことが好きだったのね……。<br />
あたしも言わなきゃ。キョンにこの想いを。</div>
<div>……ずるいわ。<br />
あたしは有希のことをずるい、と思ってしまう。<br />
「何がだ」<br />
有希だけ……ずるい。<br />
違う、有希はずるいことなんて何一つしてない。<br />
「おいハルヒ……お前、なんで、泣いているんだ？ 」<br />
いつの間にかあたしは泣いていた。<br />
それをキョンが気遣ってくれる。<br />
その優しさが、あたしは好きなの……。</div>
<div>ぅぅ……あたしはこんなにも……</div>
<br />
<br />
<div>一息ついて、あたしは続けた。<br />
キョンは物凄く困惑しているような表情だった。<br />
キョン、あたしを、あたしだけをずっと見ていて――――</div>
<div>……キョンのことを……好きなのにぃ……。</div>
<div>「……」<br />
キョンは、驚きで言葉が出てこないみたい。<br />
キョン……キョン……うぅぅ……。<br />
もうキョンのことで頭がいっぱいになる。<br />
ほっぺたがくすぐったい。<br />
……涙……？</div>
<br />
<br />
<div>「……長門。ちょっと外してもらえないか？ 」<br />
「……分かった」<br />
有希が部屋を出て行く。<br />
あぁ、またキョンはあたしのことを気遣って……。<br />
キョンはあたしの肩を抱いてくる。<br />
暖かい……。優しい……。好きだよぉ……キョン……。<br />
「ハルヒ……お前の気持ちは分かった……。」<br />
うぅ……キョンぅ……ぅぅう……。</div>
<div>キョンはあたしの肩をもっと抱き寄せて、<br />
……たぶん泣き顔だろうな、そんなあたしに顔を近づけ―――</div>
<br />
<br />
<br />
<div>―――キョンはあたしにキスをした。</div>
<div>あれは……夢だから、これがあたしのファーストキス。<br />
あたしの目からはいつしか涙が止まっていた。<br />
嬉しい……。<br />
キョンは、あたしを選んでくれた。<br />
あまりの嬉しさに、あたしはまた泣きそうになってきている。<br />
嬉しさが顔にほころびてしまう。</div>
<div>あたしは、もっと……と呟いて、キョンの首に両腕を廻した。<br />
しばらくすると、キョンはあたしを突き放した。……なんで？</div>
<br />
<br />
<div>あんたも、あたしが好きだったのね……。<br />
「俺は……それはよく分からん。ただ――― 」<br />
ただ？<br />
キョンはあたしのことが好きじゃないの？<br />
ねぇ、キョン……。</div>
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<div>「俺は長門が好きだ」</div>
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<div>あたしはそれを聞いてしまうと、口から言葉が出なくなった。<br />
今、口を開くと、おもいっきり泣いてしまいそうだから。<br />
「ハルヒ。お前のことは……嫌いじゃない、からな」<br />
うぅううう……分かってるわよぉ……。<br />
そうでしょうね。本当に嫌いならやさしくなんてしてくれないわ。<br />
「だから、泣かないでくれ」<br />
うぅう、キョンのばか……どっか行け！！！</div>
<div>これは、嘘。もっと、あたしのそばにいて。<br />
あたしをもっと暖めてよぉ･･･…。</div>
<div>「……。」<br />
わたしの……ぅう……目の前から消えなさいっ！！！</div>
<div>消えないで！もっとあたしに優しくして！</div>
<div>「……分かった」</div>
<div>……なんであたしは思ったことを口に出せないんだろう。<br />
キョンの前では強がってしまう。<br />
あたしももっと素直だったら良かったのに。</div>
<div>……また、涙がこみあげてくる。<br />
キョン、ありがと。優しくしてくれて……。</div>
<div>あ～ぁ、もっとキョンがキッツイ性格してくれてたら……</div>
<div>こんなに好きにならずに済んだのに……。</div>
<div>キョン………くるしいよぉ……。</div>
<div>あたしは泣きながら、鞄を持って、靴を履き、家に帰った。<br />
家に帰る途中はずっとさっきのことを、キョンの優しさを思い出していた。</div>
<div>その優しさのおかげで、あたしはあまり悩まずに、ぐっすり眠れた。<br />
ありがと、キョン。大好き。</div>
<div>夜、あたしはまた夢を見た……と思う。<br />
その夢は、あんまり覚えてないけど、たぶん……キョンとイイコトをした夢だった。<br />
夢をできる限り思い出しつつ朝から体を持て余してしまった。<br />
でもなぜかスッキリした。</div>
<div>……いつの間にか……遅刻してた。</div>
<div>みんなが駅前で待ってる。<br />
あたしが最後みたい。キョンもいる……。<br />
でも、SOS団長は常に弱音を吐いちゃいけないの！<br />
これは今まで代々受け継がれてきた精神だわ！<br />
あたしが一代目だけど！<br />
気丈に生きる女……それが涼宮ハルヒよ！<br />
あたしが暗かったらみんなも暗くなるわ！</div>
<div>おはよっ！<br />
あたしは元気よくあいさつする。<br />
「なんでお前は朝からこんなにハイテンションなんだ？」<br />
うるさいわね～……キョンのくせに……。<br />
あたしは最後に「好き」と付け足した。聞こえない程度の声量で。<br />
「……ところで、今日はお前のオゴリなんだよな？」<br />
団長は無敵なの！よって無し！<br />
「意味が分からねぇよ。」<br />
じゃあ、あんたのオゴリね。<br />
「……」</div>
<div>キョンがやれやれ、とでも言いそうな困った顔をしている。<br />
その困った顔もいいわね。<br />
……一言いっとくけど、あたしはSじゃないわよ。</div>
<div>「まぁ、いい。俺のオゴリはもう規定事項みたいなもんだからな」<br />
それでこそ、SOS団専属の雑用係よ！</div>
<div>……そんなに無理してくれなくてもいいのに。<br />
でもそんなこんなでキョンにおごらせたわ。<br />
あたしはいつものようにキョンに元気をアピールするみたいな目的で、<br />
たくさんメニューから頼んでたくさん食べた。<br />
ま、いいんじゃない？昨日あたしを振ったお返しみたいなもんだから。</div>
<div>そろそろクジ引きやるわよ！<br />
みんなはこっちを振り向いた</div>
<div>はい、まずはキョンね。<br />
「……印無し、か」<br />
はい、小泉君。<br />
「印は、有り……ですか」<br />
古泉君はとてもガッカリしている。<br />
なんでだろう？まだキョンと古泉君しか分かってないのに。<br />
もしかして、キョンと一緒が良かったの？<br />
……次は、みくるちゃんね。<br />
「印は……有りましたぁ」<br />
と、いうことは古泉君とみくるちゃんのグループと、<br />
あたしとキョンと有希のグループね。</div>
<div>キョンはあたしを襲ってもいいのから、古泉君を注意する。<br />
みくるちゃんたちは北を、あたし達は南を探索することにした。</div>
<div>そして、あたしと有希はキョンを挟むようにして歩き出した。<br />
……やりづらいわ……っ！<br />
まず空気が重過ぎる。<br />
そして、有希がキョンの左腕に抱きついてる。<br />
……うらやましいっ！<br />
あたしも勝手にしちゃおうかな。<br />
キョンが口を開く。<br />
「ふ、二人とも、もうすこし笑顔になってもいいんじゃないかー？」<br />
「……そう」<br />
……そうね。<br />
さっきのキョンの問いかけは最後に声が上ずってしまっていた。<br />
でも、なんか空気も軽くなってきたみたい。</div>
<div>「な、なぁ、ハルヒ。どこに向かって俺達は歩いてるんだ？」<br />
知らないわよ。<br />
「……お前、どっか行きたいところあるか？」<br />
無い。全然無い！<br />
「なんで怒ってるんだ？」<br />
あんた、左腕、見てみなさいよ。<br />
「……あ」<br />
なんで気づいてないの？<br />
もしかしていつもしてるの？</div>
<div>……あたしも、いい？<br />
「は？……好きにしろ。」<br />
……ん、じゃあ好きにさせてもらうわ。</div>
<div>好き、という言葉に思わず反応してしまう。未練たらたらしいわね、あたしも。<br />
でも、やっぱりあたしはキョンの右腕に抱きついた。</div>
<div>予想以上にガッシリしてるわね……。<br />
う、なんか鼻血出そ……。<br />
……胸を当てて困らせちゃおうかしら。</div>
<div>「って、おいおい、二人とも……なんか当たってんだが」<br />
あててんのよ！<br />
「あてている」<br />
なっ！有希もあててたの？！<br />
あんなに小さいのに……。</div>
<div>「ところで、これからどこへ行くか、だが……行きたいところあるか？」<br />
無いわね。<br />
「無い」<br />
「じゃあ……そうだな、えー、……買い物、なんてどうだ？」<br />
ちょっと！不思議探しなのにどうして買い物なのよ！<br />
「じゃあ逆に聞くが、買い物に不思議が無いと言い切れるか？」<br />
……そうね。買い物、行きましょうか。<br />
「そう」<br />
どこ行く？<br />
「……それはお前に任せる。」<br />
あたしはまたキョンを困らせようとして、こんな返答をした。<br />
ん～……じゃあねぇ、ランジェリーショップなんてどうかしら？<br />
「なんだそれ？……まぁ、そこでいいんじゃないか？」<br />
え？！知らないの？……都合がいいわ。<br />
……じゃ、行きましょ。<br />
「……」<br />
そして着いたのは下着屋。<br />
「もしかしてランジェリーショップってのは下着屋のことだったのか？<br />
さて……俺はどこで暇つぶししていようか。」<br />
何言ってんのよ、あんたも来るの！<br />
「は？俺は男だぞ？」<br />
一応同じグループだから離れちゃダメでしょ！<br />
「……」</div>
<div>キョンは店内に入るや否や、顔を真っ赤にして俯いていた。<br />
でも、しばらくすると諦めたのか、<br />
「うぉ、あんなヤラシイのまで売ってるのか……」<br />
とか、<br />
「げっ！これはヤバいんじゃないか？横が丸見え……？」<br />
とか言い出した。</div>
<div>……マヌケ顔。<br />
「うっ……と、とにかく、早く買って戻ろうぜ。」<br />
ふっふん。こんなの、どう？<br />
「ば、バカじゃねぇのか？！」<br />
あたしが見せたのはとってもキワドイ下着。<br />
さぁ、あたしを見て興奮しなさい！今なら許したげる！<br />
キョンはあたしを見て、顔を赤くして見とれていた。<br />
なんだか恥ずかしいわ。そんなに見られると。<br />
「……どう」<br />
有希まで訊いてきた。<br />
有希が体の前に持ってきた服は、いわゆる紐ブラ紐パン……だった。<br />
キョンは固まっている。</div>
<div>って、鼻血が出てるわよ！キョン！<br />
「……うわっ！」<br />
「……」<br />
あ、あんた何考えてんのよ！店出るわよ！</div>
<div>あたしが鼻血を出した時用に持ってきたティッシュが役に立った。<br />
良かった、鼻血でなくて。でも、キョン見てたらなんか鼻血出そう……。</div>
<div>「ありがとうな、ハルヒ」<br />
べ、別にいいわよ……。<br />
キョンが鼻血を拭き終わるのを待ってからあたしは聞こえるように呟いた。<br />
……そろそろ時間だわ。</div>
<div>あたしと有希はキョンそれぞれのキョンの腕をガッシリホールド。<br />
朝言ったファミレスに行く。<br />
またあたし特製爪楊枝クジを皆に引かせる。</div>
<div>……あたしと古泉くんとみくるちゃんが同じグループ。<br />
ということは、キョンと有希が同じ。</div>
<div>あたしはキョンに有希を襲うな、といった内容のことを注意した。<br />
逆も有り得るかも……まぁ、いいわ。</div>
<div>……全然楽しくないわ。<br />
何時の間に古泉くんとみくるちゃんはこんなに仲が良くなったの？<br />
あたしは時々みくるちゃんが振ってくる話題に答えるだけ。<br />
それだけだった。退屈。</div>
<div>いつの間にかもう解散場所に着いていた。<br />
しばらくするとキョンと長門がベタベタして帰って来た。<br />
みくるちゃんが説教喰らわしたわ。<br />
……え？こんなキャラだっけ？<br />
するとキョンがこんなことを言い出した。<br />
「ハルヒも俺の腕に抱きついてましたよ？！」<br />
あたしまで犠牲にするんじゃない！<br />
「涼宮さんもですかぁっ！」<br />
まるでワニが獲物をチェンジしたかのような目つきで、みくるちゃんは言う。<br />
それにしても駅前で正座して説教させられるってのも無茶苦茶恥ずかしいわね。</div>
<div>キョンが古泉君に耳打ちする。<br />
いったい何を喋っているんだろう。</div>
<div>古泉君がみくるちゃんを後ろから羽交い絞めにしつつ、言う。<br />
「朝比奈さん、そのくらいにしてはいかがでしょうか」<br />
「いいえ、まだですっ！」<br />
みくるちゃんはまだ暴れている。<br />
「離してくださいっ！」<br />
「駄目です。……ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ」<br />
古泉君がみくるちゃんの耳元で何かを囁いた。<br />
すると、みくるちゃんが真っ赤になった後、急に静かになった。</div>
<div>キョンが古泉君と何か話している。<br />
キョンはみくるちゃんと同じように真っ赤になった。</div>
<div>あたしはみくるちゃんを下に見すぎていたのか、すごく落ち込んでしまう。<br />
まさかみくるちゃんに説教されるなんて……。<br />
でもキョンと有希はあんまりショックを受けてないみたい。</div>
<div>キョンがあたしに訊いて来る。<br />
「解散だよな、ハルヒ」<br />
そ、そうね……はい、解散！</div>
<div>キョンは有希と一緒に帰って行った。<br />
あぁもう、うらやましいわね。<br />
なんか今日のあたしはうらやましがりすぎね。</div>
<div>あたしは一人で家に帰る。<br />
お風呂入って、ご飯食べて、秘密の日記を書いて、<br />
テキトーに宿題を済ませてあたしはベッドに転がった。</div>
<div>あたしはいつにもなく、考え事をしてしまう。</div>
<div>それはキョン、あんたのことよ。<br />
あんたはなんであんなにあたしに優しくしてくれるの？<br />
昨日までは、あたしにだけ優しくしてくれてるのだと思ってた。<br />
でもそれは違った。<br />
あんたが一番優しくしているのは有希。あたしじゃない。</div>
<div>……何？あたしは今泣いてるの？なんで？<br />
分かんない。ねぇ、キョン、教えて。<br />
なんであたしは泣いてるのかなぁ？<br />
切ないよ……キョン。<br />
キョンがあたしに優しくするから、こんな想いをするなんて……。<br />
キョンが優しいから……。あたしのせいじゃない……。<br />
ごめんね、キョン……あんたのせいにしちゃった……。<br />
あんたなんて優しくしてくれなくていいのよ……！<br />
……この想い、キョンに届かないかな……。</div>
<div>もしも届いたなら――――</div>
<div>もし、授業中にあたしがシャーペンでも突っついたら<br />
キョンは怒ってくるの？</div>
<div>もし、あたしがキョンにバカキョンって言ったら、<br />
お前の方がバカだ、とか言い返してくるの？</div>
<div>もし、あたしがあんたなんて嫌いだからって言ったら……</div>
<div>……俺もお前のことが嫌いだ、とか言ってくるの？</div>
<div>……あんたはやっぱり今のままがいいわ。</div>
<div>キョンの好きな人になりたい。<br />
でもあんたは有希が好きなんでしょ……？</div>
<div>あたしはまた涙ぐんだ。<br />
そして、涙をパジャマの袖で拭って、あたしは天井に向かって小さく呟くように叫んだ。</div>
<div>……いつかあんたを振り向かせてやるんだから！<br />
負けないわよ！有希！</div>
<div>第7.5話『淡い想い』～終～</div>
<br />
<br />
<br />
<div>ﾊﾙﾋ「次回予告！」<br />
ｷｮﾝ「俺の役を取るな」<br />
ﾊﾙﾋ「いいじゃない、今回はあたしが主役だったんだし」<br />
ｷｮﾝ「次からは俺だからな」<br />
ﾊﾙﾋ「分かってるわよ」<br />
ｷｮﾝ「……なんか知らんが、謝っとく、スマン」<br />
ﾊﾙﾋ「(その優しさが……っ！)」ｷﾞｭ<br />
ｷｮﾝ「うわぁ！いきなり抱きつくな！」<br />
長門「次回予告……」<br />
ｷｮﾝ「あぁそうだった……。<br />
次回は俺と長門がとにかくいちゃつく？！」<br />
長門「でも」<br />
ｷｮﾝ「そこにこれまた意外？な人物が！」<br />
長門「第8話『はじめてのゆうえんち』」<br />
ｷｮﾝ「乞うご期待！」</div>
<div>ちなみに今回の話は6、7話と比較させて読むと面白いかもしれん</div>
<ul>
<li><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1222.html"><font color="#666666">第８話</font></a></li>
</ul>
</div>
