<p>「こんばんは、私の名前はエスパーマン」<br> <br> ……。<br> 俺が近道する為に通った暗い裏道で、突然俺の目の前に現れたそいつ。<br> 一瞬で俺の脳が''そいつ''をヤバい人と判断し、来た方向へ全力で走ろうと思ったのだが、月に照らされたそいつの格好を見て俺の動きは止まった。<br> どこかで見た事あるようなアニメチックなお面に、俺と同じ北高の制服。<br> <br> 「……何やってんだよ、古泉」<br> <br> 「こ、古泉? 誰でしょうかそれは……?」<br> 「いやお前だろ」<br> 「違います、僕は通りすがりのエスパーマンです」<br> ……わかったよ。<br> 観念した俺は、エスパーマンとやらに付き合ってあげることにした。<br> 今はそんな気分じゃないんだがな。<br> <br> 「で、そのエスパーマンさんが俺に何の用だよ」<br> 「ふふふ、見たところあなたは困っているように見えましたが?」<br> そんな素振りを見せたつもりは微塵も無かったのだが。<br> 「……まあな」と、俺は一応頷いた。<br> 「あなたは今日、涼宮ハルヒという少女のプリンを誤って食べ、喧嘩をしてしまった、違いますか?」<br> 同意を求めているクセに、俺に喋る暇を与えずエスパーマンは続ける。<br> 「僕はエスパーマンですから、あなたの心を読むくらい何の造作もないんです」<br> だって今日お前部活にいたじゃん、と言いたくなったがやめておいた。<br> <br> 「おかげで今日僕は……僕の友達の古泉さんがアルバイトに追われて大変だったそうですよ」<br> いつの間にやら古泉とは友達という設定になっている。いいから開き直れよ。<br> 「と、思ってこれを持ってきました」<br> 言うなりエスryはポケットから何かを出して高く掲げた。<br> その瞬間俺の脳内で妙な効果音とエフェクトが補完されたのは疲れのせいである。<br> 「それは……DXチョコプリンじゃないか」<br> 近所の人気のケーキ屋で、行列必死数量限定の大人気商品。<br> うちの妹はそのプリンが大好きで、母が苦労して買ってきてあげてるのを何度か見たことがある。<br> 「そうです、明日これを涼宮さんに、これで彼女の機嫌も直るでしょう」<br> 「いいのか?」<br> モチロンです、とエスパーマンは誇らしげに言った。<br> 「困っている人を助けるのが僕の使命ですから」<br> 俺は、国崎最高!と言いかけてやめた。<br> カッコイイぜエスパーマン!<br> 「それでは、頼みましたよ……」<br> エスパーマンは一歩下がって、<br> 「ふんもっふ!」<br> 奇妙な台詞と共に辺りが閃光に包まれ、そいつは姿を消した。<br> <br> ありがとな、こいzゲフンゲフン、エスパーマン。<br> <br> 次の日<br> 「昨日はプリンありがとな、エスパーマン」<br> 「いえ、それくらいお気になさらずに……ハッ」<br> かかったな、小物め</p>