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素直キョン - (2007/11/23 (金) 00:03:44) の1つ前との変更点

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<p>「「……また、ダメだった……」」<br> <br> <br> それは、2人の神様が溜め息と共に漏らした言葉が原因となって起きた。<br> <br> <br> 「「――もう少しキョンが素直だったらなあ」」<br> <br> <br> <br> 『素直キョン』<br> <br> <br> <br> 朝、目が覚める。その途端機嫌が悪くなるのが自分でもわかった。<br> 原因はあいつ。あの鈍感馬鹿。ムカつくくらい人の気持ちに気付かない。もはや尊敬してもいいくらいだわ。<br> 昨日せっかくあたしがポニーテールにしてあげたのにこっちを見たと思ったらすぐに違う方見て何にも言わないし。<br> 何よ何よ何よ!ちょっとは褒めてくれたっていいでしょ。例えばこんな感じに。 <br> <br> ホワホワホワン<br> <br> 「――ハルヒ、その髪型可愛いぞ」<br> <br> 「あ、ありがと。…………これ、やってあげるのキョンだけなんだからね……」<br> <br> 「ハルヒ…………お前、可愛いすぎる!もう我慢できねえ!」<br> <br> 「あ、キョン駄目だよ………でもキスくらいなら…………ん――」<br> <br> ホワホワホワホワホワン<br> <br> …………あ、鼻血が………。ティッシュティッシュ。<br> ……まったく、あたしったら何てこと考えてんのかしら。キョンがこんなに素直に答えてくれるわけないのに。泣けてくるわね。<br> はあ、早く学校行こ。 <br> <br> <br> 学校に着いて教室に入ったけどまだ誰一人としてクラスの人は来ていなかった。<br> 自分の席に座りさっきの妄想を思い出す。もちろんいつ鼻血がでてもいいようにティッシュは始めから用意しておく。<br> 一通り妄想をし終わったところで思った。<br> …………今日もポニーテールにしてみようかな………よし、やろう。妄想までとはいかないけど少しは優しい言葉かけてくれるといいなあ。<br> そしてあたしがポニーテールに髪をまとめあげ終わったとき、痛いほどの視線を感じた。<br> 振り向くとそこにはカバンを落としたままボーっと突っ立っているキョンがいた。なんか口を開けたり閉じたりしてる。それにしてもキョンの唇………………ああ、ティッシュティッシュ。<br> ティッシュで鼻を拭いながらあたしはキョンに訊ねた。<br> <br> 「キョン、いつまでボーっとしてるの?」<br> <br> 「あ、ああすまん。ちょっとな」<br> <br> 「ちょっと?」<br> <br> 「………ハルヒの髪型があまりにも可愛いすぎて、見とれちまってたんだ」<br> <br> 「ほえっ?」 <br> <br> キョンの予想GUYの発言にあたしは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。<br> え、何?キョンがあたしを褒めてくれたの?確かに可愛いって言ってくれたわよね。いやー、恥ずかしい。今あたし絶対顔真っ赤だろうなあ。<br> あ、とにかくお礼言わないと。<br> <br> 「あ、ありがと」<br> <br> これだけ言えば充分だったのに、あたしは調子に乗って妄想の中のセリフまで喋ってしまっていた。<br> <br> 「………これ、やってあげるのキョンだけなんだからね………」<br> <br> しまった!<br> 喋り終わったあたしはすぐにそう思った。現実のキョンにこんなことを言ったって勘違いされるような発言するな、って言われちゃうだけなのに。<br> <br> 「ハルヒ………お前照れるようなこと………いや、うん、ありがとうな。そう言ってもらえて嬉しいよ」<br> <br> ………え、これ本当にキョンなの?さすがに妄想までのセリフは言わなかったけどあのキョンが顔を真っ赤にして照れながら話してる。ひょっとして今日のキョンなら…………<br> <br> 「ね、ねえキョン。今度の休みどこかに遊びに行かない?」<br> <br> 「……それは、デートの誘いってことでいいんだよな?」<br> <br> 「う、うん」<br> <br> 「じゃあ行くか。楽しみにしてるぜ」<br> <br> よっしゃああぁ!!遂に、遂にキョンと。鼻血が止まらない。<br> しかも聞いた?キョンの方からデートだなんて言ってきてくれた。これは、今回こそはいける。<br> ふっふっふっ、笑いが止まらないわ。<br> ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっ…………………。 <br> <br> <br> <br> <br> <br> 「はぁ」<br> <br> 帰宅途中の電車内、僕はまた一つ大きな溜め息を吐いた。最近ではこんなことはよくあることだ。<br> 溜め息の原因たる人物は言わずもがな鈍感王キョン。彼は正に王の名を名乗るに相応しい人物だ。<br> だって、だってだよ――――<br> <br> ~佐々木さん回想モード~<br> <br> 「やあキョン。また会ったね。前回再開するまでのスパンを考えるとこれは素晴らしいような偶然の事象とは思わないかい?いや、こういうものを運命と呼ぶのかもしれないね。<br> くっくっ、運命。僕とキョンの出会いは運命」<br> <br> 「佐々木!?悪い、今急いでんだ。またな」<br> <br> 「くっくっくっくっくっくっくっ………くっ、ぐすっ………キョンのバカ」 <br> <br> ~回想終了~<br> <br> はぁ……おや、また溜め息が出てしまったね。<br> くっくっ、恋愛は精神病とはよく言ったものだ。キョンのことを考えるだけで胸が締め付けられる想いになるよ。<br> <br> プシューッ<br> <br> そんなことを考えている間に電車は目的の駅に着いたようだ。いつものように改札を通り駅の外に出てみると、辺り一面はすっかり黒く塗りつぶされていた。<br> こんな景色を見ていると、否が応でも寂しさを感じざるを得ない。中学校の頃はいつもキョンと2人で帰っていたからこんな気持ちにはならなかったのに………。<br> <br> 「寂しいよ、キョン……」<br> <br> 「俺がどうかしたか?」<br> <br> 「きゃっ!!ど、どうして!?どうしてキョンがここに!?」<br> <br> これは奇跡?いや、それでもおかしい、キョンの家は駅方面ではないはずなのに。<br> 何故?WHY?<br> もしかして僕を迎えに来てくれたのか?いや、そんなことあるわけない。でも、もしかしたら……<br> <br> 「どうしてって、ただのお使いだよ」<br> <br> ………そうだよね。そうに決まってる。僕なんかのためにわざわざキョンが迎えに来てくれるはずないじゃないか。<br> くっくっ、くだらないことを考えてしまったものだ。涙が出てくるよ。そうだ、早く帰らないとね。今日はマネーの虎がある日なんだ。無類のとんじき好き、とんじき栄作の回は最高だった。<br> 僕は震える手でカバンからラジオを取り出してイヤホンを耳に装着した。 <br> <br> 『――さあ、リクエスト曲の一発目はこちら』<br> <br> うえをむーいて あーるこおおお なみだがこぼれーないよおおに<br> <br> ………くっくっ、なんと都合がいい曲を流してくれるんだろう。正に今の僕と同じ状況。思わず歌いたくなるじゃないか。<br> <br> うえをむーいて あーるk――<br> <br> 「……おい!おい、佐々木!!」<br> <br> 何かな?それよりいきなり人の腕を掴むなんて礼儀がないね。それにキョン、僕は今歌っているんだよ。邪魔はしないでくれたまえ。<br> <br> 「震えた声で何言ってやがる。ってお前、泣いてんじゃねえか…………」<br> <br> このデリカシーの欠片もない言葉により、僕は今まで溜まっていたものを全て吐き出してしまった。<br> <br> 「うるさい、うるさいうるさい!全部君のせいだ!!この間だって、たまに会っても全然構ってくれなかったじゃないか!僕が今までどんな思いをしてきたかわからないくせに!!」<br> <br> 「え、佐々木?」<br> <br> 「離してくれ!もう君の顔なんか見たくもない!!」 <br> <br> はあはあ、と肩で息をしていると次第に冷静になってきた。そして思う。<br> …………僕は何てことを言ってしまったんだろうか。<br> 前半だけならまだ良かった。多少なり確信めいたことを言ってしまったがTVチャンピオン鈍感王選手権が行われたらまず間違いなく優勝を飾れるような男だ、理解出来るわけがない。<br> でも後半は………キョンの顔を見たくないなんて嘘に決まってるじゃないか。でも、もう手遅れだよね………ぐすっ………また泣きそうだ。………早く、立ち去らなきゃ。<br> そのときようやく気付いた。キョンがまだ僕の腕を掴んだまま離していない。そして次の瞬間、僕はキョンの胸の中にいた。<br> <br> ブホアッ、ヤバい。涙じゃなくて鼻血が出そうだ。<br> <br> が、次に放たれたキョンの言葉により僕の鼻血は止まってしまった。むしろ逆流したかもしれない。<br> <br> 「すまん。お前がそんなに俺のことを想ってくれてるなんて思わなかった。…………好き、ってことなんだよな……」<br> <br> なぜ前半を理解してやがるんだ鈍感やろおおおおっ!!!!!!!<br> うぼあっ、今のままでは口から吐血してしまう。というかしてしまった。 <br> <br> どうしよう、どうしよう、どうし――――<br> ……………くっくっ、閃いてしまったよ。何故かは知らないが折角キョンが僕の気持ちに気付いてくれたんだ。このまま一気に陥落させてあげよう。<br> <br> 「そうだよ、僕……いや私はキョンのことが好き………」<br> <br> くっくっくっくっくっくっくっくっ。<br> 決まった。これは間違いなく決まった。ここで僕は完全なる勝利のために2つも秘策を使ったんだからね。<br> まず1つ、実はね最初から素直に私と言うことは出来たのだよ。しかし敢えて言い直すことによって相乗効果により威力は別次元にまで高まる。この段階でキョンの理性は風前の灯火といったところだろうね。<br> そこに追い討ちをかけるために使った2つ目。君達は分からないだろうが僕はさっきから上目遣いでキョンを見ている。<br> 決して自惚れではないが僕だって自分の顔のレベルがどのくらいかなんて重々理解しているさ。だから客観的に見て僕の上目遣いに堕ちない男はほとんどいない確信している。<br> くっくっくっくっくっくっ、パーフェクト。さあ、あとはキョンのイエスという言葉を聞くだけだ。カモンキョン、キョンカモン。<br> <br> 「………佐々木、ありがとう。素直に嬉しい。俺もお前のこと好きだよ」 <br> <br> いよっしゃあああああ!!!!!!!<br> ここまで長かった、本当に長かった。キャラも多少破城した。でも、でもようやく報われt――――<br> <br> 「……でもな」<br> <br> ………………は?<br> <br> 「ハルヒも同じくらい好きなんだ」<br> <br> んなこと知るかあああああああ!!!!!!!<br> ボケッ、じゃあどうしろってんだよこの野郎が。<br> <br> 「もう少したったら必ず答えを出すから。それまで待っていてほしい」<br> <br> 「……………仕方ないな。いい返事を期待しているよ」<br> <br> 少し予定外だったがなに、問題はないさ。<br> 涼宮さんが気付いていないうちに決定打を打たせてもらうよ。そうだね、次の休日にでも決めてしまおうかな。<br> くっくっ、次の休日が楽しみだ。キャラもきちんと修正させてもらうよ。<br> くっくっくっくっくっくっくっくっくっくっ…………………。 <br> <br> <br> つづく</p>
<p>「「……また、ダメだった……」」<br> <br> <br> それは、2人の神様が溜め息と共に漏らした言葉が原因となって起きた。<br> <br> <br> 「「――もう少しキョンが素直だったらなあ」」<br> <br> <br> <br> 『素直キョン』<br> <br> <br> <br> 朝、目が覚める。その途端機嫌が悪くなるのが自分でもわかった。<br> 原因はあいつ。あの鈍感馬鹿。ムカつくくらい人の気持ちに気付かない。もはや尊敬してもいいくらいだわ。<br> 昨日せっかくあたしがポニーテールにしてあげたのにこっちを見たと思ったらすぐに違う方見て何にも言わないし。<br> 何よ何よ何よ!ちょっとは褒めてくれたっていいでしょ。例えばこんな感じに。 <br> <br> ホワホワホワン<br> <br> 「――ハルヒ、その髪型可愛いぞ」<br> <br> 「あ、ありがと。…………これ、やってあげるのキョンだけなんだからね……」<br> <br> 「ハルヒ…………お前、可愛いすぎる!もう我慢できねえ!」<br> <br> 「あ、キョン駄目だよ………でもキスくらいなら…………ん――」<br> <br> ホワホワホワホワホワン<br> <br> …………あ、鼻血が………。ティッシュティッシュ。<br> ……まったく、あたしったら何てこと考えてんのかしら。キョンがこんなに素直に答えてくれるわけないのに。泣けてくるわね。<br> はあ、早く学校行こ。 <br> <br> <br> 学校に着いて教室に入ったけどまだ誰一人としてクラスの人は来ていなかった。<br> 自分の席に座りさっきの妄想を思い出す。もちろんいつ鼻血がでてもいいようにティッシュは始めから用意しておく。<br> 一通り妄想をし終わったところで思った。<br> …………今日もポニーテールにしてみようかな………よし、やろう。妄想までとはいかないけど少しは優しい言葉かけてくれるといいなあ。<br> そしてあたしがポニーテールに髪をまとめあげ終わったとき、痛いほどの視線を感じた。<br> 振り向くとそこにはカバンを落としたままボーっと突っ立っているキョンがいた。なんか口を開けたり閉じたりしてる。それにしてもキョンの唇………………ああ、ティッシュティッシュ。<br> ティッシュで鼻を拭いながらあたしはキョンに訊ねた。<br> <br> 「キョン、いつまでボーっとしてるの?」<br> <br> 「あ、ああすまん。ちょっとな」<br> <br> 「ちょっと?」<br> <br> 「………ハルヒの髪型があまりにも可愛いすぎて、見とれちまってたんだ」<br> <br> 「ほえっ?」 <br> <br> キョンの予想GUYの発言にあたしは思わず素っ頓狂な声を出してしまった。<br> え、何?キョンがあたしを褒めてくれたの?確かに可愛いって言ってくれたわよね。いやー、恥ずかしい。今あたし絶対顔真っ赤だろうなあ。<br> あ、とにかくお礼言わないと。<br> <br> 「あ、ありがと」<br> <br> これだけ言えば充分だったのに、あたしは調子に乗って妄想の中のセリフまで喋ってしまっていた。<br> <br> 「………これ、やってあげるのキョンだけなんだからね………」<br> <br> しまった!<br> 喋り終わったあたしはすぐにそう思った。現実のキョンにこんなことを言ったって勘違いされるような発言するな、って言われちゃうだけなのに。<br> <br> 「ハルヒ………お前照れるようなこと………いや、うん、ありがとうな。そう言ってもらえて嬉しいよ」<br> <br> ………え、これ本当にキョンなの?さすがに妄想までのセリフは言わなかったけどあのキョンが顔を真っ赤にして照れながら話してる。ひょっとして今日のキョンなら…………<br> <br> 「ね、ねえキョン。今度の休みどこかに遊びに行かない?」<br> <br> 「……それは、デートの誘いってことでいいんだよな?」<br> <br> 「う、うん」<br> <br> 「じゃあ行くか。楽しみにしてるぜ」<br> <br> よっしゃああぁ!!遂に、遂にキョンと。鼻血が止まらない。<br> しかも聞いた?キョンの方からデートだなんて言ってきてくれた。これは、今回こそはいける。<br> ふっふっふっ、笑いが止まらないわ。<br> ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっ…………………。 <br>  <br>  <br>  <br>  <br> 「はぁ」<br>  <br> 帰宅途中の電車内、僕はまた一つ大きな溜め息を吐いた。最近ではこんなことはよくあることだ。<br> 溜め息の原因たる人物は言わずもがな鈍感王キョン。彼は正に王の名を名乗るに相応しい人物だ。<br> だって、だってだよ――――<br>  <br> ~佐々木さん回想モード~<br>  <br> 「やあキョン。また会ったね。前回再開するまでのスパンを考えるとこれは素晴らしいような偶然の事象とは思わないかい?いや、こういうものを運命と呼ぶのかもしれないね。くっくっ、運命。僕とキョンの出会いは運命」<br>  <br> 「佐々木!?悪い、今急いでんだ。またな」<br>  <br> 「くっくっくっくっくっくっくっ………くっ、ぐすっ………キョンのバカ」<br>  <br> ~回想終了~<br>  <br> はぁ……おや、また溜め息が出てしまったね。<br> くっくっ、恋愛は精神病とはよく言ったものだ。キョンのことを考えるだけで胸が締め付けられる想いになるよ。<br>  <br> プシューッ<br>  <br> そんなことを考えている間に電車は目的の駅に着いたようだ。いつものように改札を通り駅の外に出てみると、辺り一面はすっかり黒く塗りつぶされていた。<br> こんな景色を見ていると、否が応でも寂しさを感じざるを得ない。中学校の頃はいつもキョンと2人で帰っていたからこんな気持ちにはならなかったのに………。<br>  <br> 「寂しいよ、キョン……」<br>  <br> 「俺がどうかしたか?」<br>  <br> 「きゃっ!!ど、どうして!?どうしてキョンがここに!?」<br>  <br> これは奇跡?いや、それでもおかしい、キョンの家は駅方面ではないはずなのに。<br> 何故?WHY?<br> もしかして僕を迎えに来てくれたのか?いや、そんなことあるわけない。でも、もしかしたら……<br>  <br> 「どうしてって、ただのお使いだよ」<br>  <br> ………そうだよね。そうに決まってる。僕なんかのためにわざわざキョンが迎えに来てくれるはずないじゃないか。<br> くっくっ、くだらないことを考えてしまったものだ。涙が出てくるよ。そうだ、早く帰らないとね。今日はマネーの虎がある日なんだ。無類のとんじき好き、とんじき栄作の回は最高だった。<br> 僕は震える手でカバンからラジオを取り出してイヤホンを耳に装着した。<br>  <br> 『――さあ、リクエスト曲の一発目はこちら』<br>  <br> うえをむーいて あーるこおおお なみだがこぼれーないよおおに<br>  <br> ………くっくっ、なんと都合がいい曲を流してくれるんだろう。正に今の僕と同じ状況。思わず歌いたくなるじゃないか。<br>  <br> うえをむーいて あーるk――<br>  <br> 「……おい!おい、佐々木!!」<br>  <br> 何かな?それよりいきなり人の腕を掴むなんて礼儀がないね。それにキョン、僕は今歌っているんだよ。邪魔はしないでくれたまえ。<br>  <br> 「震えた声で何言ってやがる。ってお前、泣いてんじゃねえか…………」<br>  <br> このデリカシーの欠片もない言葉により、僕は今まで溜まっていたものを全て吐き出してしまった。<br>  <br> 「うるさい、うるさいうるさい!全部君のせいだ!!この間だって、たまに会っても全然構ってくれなかったじゃないか!僕が今までどんな思いをしてきたかわからないくせに!!」<br>  <br> 「え、佐々木?」<br>  <br> 「離してくれ!もう君の顔なんか見たくもない!!」<br>  <br> はあはあ、と肩で息をしていると次第に冷静になってきた。そして思う。<br> …………僕は何てことを言ってしまったんだろうか。<br> 前半だけならまだ良かった。多少なり確信めいたことを言ってしまったがTVチャンピオン鈍感王選手権が行われたらまず間違いなく優勝を飾れるような男だ、理解出来るわけがない。<br> でも後半は………キョンの顔を見たくないなんて嘘に決まってるじゃないか。でも、もう手遅れだよね………ぐすっ………また泣きそうだ。………早く、立ち去らなきゃ。<br> そのときようやく気付いた。キョンがまだ僕の腕を掴んだまま離していない。そして次の瞬間、僕はキョンの胸の中にいた。<br>  <br> ブホアッ、ヤバい。涙じゃなくて鼻血が出そうだ。<br>  <br> が、次に放たれたキョンの言葉により僕の鼻血は止まってしまった。むしろ逆流したかもしれない。<br>  <br> 「すまん。お前がそんなに俺のことを想ってくれてるなんて思わなかった。…………好き、ってことなんだよな……」<br>  <br> なぜ前半を理解してやがるんだ鈍感やろおおおおっ!!!!!!!<br> うぼあっ、今のままでは口から吐血してしまう。というかしてしまった。<br>  <br> どうしよう、どうしよう、どうし――――<br> ……………くっくっ、閃いてしまったよ。何故かは知らないが折角キョンが僕の気持ちに気付いてくれたんだ。このまま一気に陥落させてあげよう。<br>  <br> 「そうだよ、僕……いや私はキョンのことが好き………」<br>  <br> くっくっくっくっくっくっくっくっ。<br> 決まった。これは間違いなく決まった。ここで僕は完全なる勝利のために2つも秘策を使ったんだからね。<br> まず1つ、実はね最初から素直に私と言うことは出来たのだよ。しかし敢えて言い直すことによって相乗効果により威力は別次元にまで高まる。この段階でキョンの理性は風前の灯火といったところだろうね。<br> そこに追い討ちをかけるために使った2つ目。君達は分からないだろうが僕はさっきから上目遣いでキョンを見ている。<br> 決して自惚れではないが僕だって自分の顔のレベルがどのくらいかなんて重々理解しているさ。だから客観的に見て僕の上目遣いに堕ちない男はほとんどいない確信している。<br> くっくっくっくっくっくっ、パーフェクト。さあ、あとはキョンのイエスという言葉を聞くだけだ。カモンキョン、キョンカモン。<br>  <br> 「………佐々木、ありがとう。素直に嬉しい。俺もお前のこと好きだよ」<br>  <br> いよっしゃあああああ!!!!!!!<br> ここまで長かった、本当に長かった。キャラも多少破城した。でも、でもようやく報われt――――<br>  <br> 「……でもな」<br>  <br> ………………は?<br>  <br> 「ハルヒも同じくらい好きなんだ」<br>  <br> んなこと知るかあああああああ!!!!!!!<br> ボケッ、じゃあどうしろってんだよこの野郎が。<br>  <br> 「もう少したったら必ず答えを出すから。それまで待っていてほしい」<br>  <br> 「……………仕方ないな。いい返事を期待しているよ」<br>  <br> 少し予定外だったがなに、問題はないさ。<br> 涼宮さんが気付いていないうちに決定打を打たせてもらうよ。そうだね、次の休日にでも決めてしまおうかな。<br> くっくっ、次の休日が楽しみだ。キャラもきちんと修正させてもらうよ。<br> くっくっくっくっくっくっくっくっくっくっ…………………。</p> <p><br> <br> つづく</p>

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