「第５章-１３ The trouble of all」の編集履歴（バックアップ）一覧はこちら
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<p> ふう、少し落ち着こう。どうやら、子どもの俺は、ナツキがいなくなって、必死になって探していたらしい。そういえば、そんなこともあった気がする。</p>
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「じゃあ、君がナツキちゃんを家まで送ってくれ。そして、ついでに頼みがある」<br />
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<p> 小さい俺は、まだ警戒しているようで、挑戦的な目つきのままナツキを背中に隠し、後退った。<br />
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<p>「ふん、悪人の頼みなんて、聞かな……」</p>
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<p>「お兄ちゃん、なに？遠慮なく言ってね」<br />
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<p> だが、あっさりナツキが押しのけて前に出てくる。<br />
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<p>「生意気そうな顔をした君。君は男の子だから、ナツキちゃんが困っている時は、男は女の子を守るって世界の決まり事に従って、守ってあげるんだ」<br />
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<p>「言われなくても、わかってるよ」<br />
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<p> ははっ、ここまで生意気だと笑うしかないな。あー恥ずかしい。<br />
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<p>「ナツキちゃんは、この子が何か迷っている時は、背中を押してあげてくれ。あと、もう少し、この子を労ってあげるといいと思うぞ」<br />
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<p> ナツキは不思議な顔をした後、頷いた。俺は思わず、ナツキの頭を優しく、小さい俺の頭をぐちゃぐちゃにしてなでていた。</p>
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さて、そろそろここから離れよう。２人から背を向けて歩き始めたところ、ナツキが走ってきて俺の腕をつかんだ。<br />
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<p>「あの……、お兄ちゃん、また会えるかな？」<br />
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俺自身という存在には、もう２度と会うことはできない。正直に言おうと思ったが、言葉が出なかった。そんな不安そうな顔しないでくれよ。もう会えないなんて言えるはずないだろ？<br />
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<p>「少し待たせるかもしれないけど、必ず会える。約束するよ」<br />
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<p>「じゃあお兄ちゃん、約束！」<br />
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<p> ナツキは、うれしそうな顔をして、小指を差し出した。仕方ないな。<br />
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<p>「はい、指切った。じゃあ、俺は行くから。２人とも気をつけて帰りなよ」<br />
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ナツキ、もう俺という存在には会えないだろうが、小さい俺が成長すれば姿は同じになる。だから、それで約束を果たしたってことで勘弁してくれ。また、必ず会えるから。</p>
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そうさ、いつだって俺達は会える。ぶっ飛んだ話、たとえナツキが嫁に行ったとしても、一緒に育ってきた絆ってもんは切れないもんさ。良好な関係でいられる自信があるね。少なくとも俺はそう確信してる。だから、もう一度元の世界に、ナツキがいる世界に戻るからな。それで、約束を果たしたってことでいいだろ？</p>
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<p> そんな決意を抱き、朝比奈さんがいる場所まで戻ったわけだが……。<br />
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<p>「あの……、朝比奈さん。どこですか～！」<br />
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おいおい、朝比奈さんはどこに行ったんだ？結構、いや、かなりうっかり者だからな。お菓子をあげるなんて言われたら、着いていきそうなくらい危機感なさそうだし。いや、さすがにそれは言い過ぎか。まさか、道に迷った？公園の裏側は、木が生い茂っている森になっているから、それは充分にありえ……<br />
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<p>「うっ、なんだ……」<br />
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急に体の力が抜けたかと思うと、目に映る世界が反転している。まさか、立ちくらみか？健康優良児ってのが、俺の唯一の自慢だったのに。身体は自由に動かず、木に背中を預けて座り込むのがやっとだ。やべっ、意識が……。</p>
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<p>次へ</p>
