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涼宮ハルヒのダメ、ゼッタイ 三章 - (2007/08/13 (月) 22:02:48) の最新版との変更点

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<p>三章<br>  <br> 学校に行くのが憂鬱だ。体中がとてつもなくだるい。<br> 昨日、あれから一晩中泣き明かしたからだろうか。ほっぺただけじゃなくて、<br> 目も相当腫れているんだろうな。<br>  <br> ――返せ!俺の時間を返せ――<br>  <br> 昨日は結局、キョンは部室に帰ってくることはなかった。仮に帰って来たら、<br> 今度はあたしが逃げ出していたんだろうけど…<br> キョンの言葉が耳にこだまする。あたしは、あいつを………その………好いていた。<br> あたしがどんな無理なことを言っても、最終的にはそれに賛成し、協力してくれる。<br> そんなあいつに、あたしは心の底から信頼していた。<br>  <br> だけど…今はあいつが……とてつもなく怖い……<br>  <br> 所詮はご機嫌とり。能力のないあたしなんてもう関係ないってこと?<br> 昨日のあれは三年間のあたしへの、鬱憤だったのかも…<br> 楽しいと思ってたのはあたしだけ?<br>  <br> 後ろ向きな考えばかりが浮かぶ。<br> そんな考えを払拭するために、あたしは早朝から、坂を上っている。<br> 昨夜キョンからメールが来た。<br>  <br> 『話したいことがある、明日、朝、<br> 六時半に教室に来てくれ』<br>  <br> もしかしたら、また罵倒されて終わりかもしれない。<br> だけど、あたしはあいつを信じたい。<br>  <br> 「ごめんね、古泉くん。<br> こんな朝早く付き合わせちゃって」<br>  <br> やはりまた殴られるのは怖い。昨日のうちに古泉くんに、<br> 一緒に学校に来てくれるよう頼んでおいた。<br>  <br> 「謝るなんてあなたらしくない。<br> 昨日のあれは完全に彼の過失です。<br> あなたは毅然とした態度でいるべきですよ。<br> 団長を守るのは副団長の務めです。」<br>  <br> 古泉くんはいつも通りの笑顔であたしに優しくそういった。<br>  <br> 「もっとも、本当は彼が、いの一番にあなたを<br> 守らなければならないのに…それなのに………!!」<br>  <br> 古泉くんはボソっと怒りを押し殺した声でそう言った。<br>  <br> 学校についた。教室まで、もう少しだ。段々とあたしの鼓動が速くなっていくのがわかる。<br> それと同時に昨日の、キョンの血走った目。<br> 殴られて倒れたあたしに伸びてくる紫色の拳が脳裏に蘇る。<br> 切れた口の中がまた痛みだした。<br>  <br> 教室の前まで来た。あとはドアを開けるだけ…だけど体がそれを拒む。<br>  <br> ドクン!ドクン!<br>  <br> 取っ手を掴んだまま動かせないでいるあたしの手を、古泉くんはそっと握ってくれた。<br>  <br> ガラガラっと音を立ててドアが開く。キョンは……いた。<br>  <br> 「古泉も来てたのか」<br>  <br> そういうとキョンは自分の机からゆっくり立ち上がり、近付いてくる。<br> 昨日の血走った目のキョンと今のキョンが重なりあう。<br> 逃げたい!今すぐ!ここから逃げ出したい!<br>  <br> あたしが今にも動きだそうとしている体を必死で押さえ付けていると…<br>  <br> がばっという音がした。思わずビクッと目を瞑ってしまったが拳は飛んでこない。<br> 恐る恐る目を開けると、<br> キョンがあたしの目の前で、手と顔を床につけてうずくまっている。<br>  <br> 「ど…げ…ざ…?」<br>  <br> あたしが思わず、呆然と呟くと……<br>  <br> 「昨日は本当にすまなかった!お前の気持ちも考えず…<br> 自分のことしか考えていなかった!!<br> 許してほしいだなんて思っちゃいない!<br> だけど!お前をずっと傷付けたままにすることは出来ない!!」<br>  <br> ああ…いつものキョンだ…優しい目であたしを見てくれる、いつものキョンだ…<br> あたしは思わず彼に抱き付いていた。<br>  <br> 「こ…の!えぐっ…!バカ!!昨日はあれだけヒドいことしておいて…!<br> あたしがどんな気持ちで学校に来たと思ってるのよ!」<br>  <br> 「ああ、昨日は本当にどうかしていた…<br> だけど今の俺はとても清々しい気分なんだ」<br>  <br> 「え?」<br>  <br> そう古泉くんの言葉が聞こえた気がしたけど、今は関係ない。<br>  <br> 「な…何よ!ヒック…!許してもらおうだなんて思ってないですって?<br> バカ言ってんじゃないわよ!ヒック…許すに…決まってるじゃない!」<br>  <br> 「じゃ、じゃあ…また勉強に付き合ってくれるのか?<br> まだ東大を目指していいのか?!」<br>  <br> キョンの目が涙でいっぱいになっている。まったく!泣き虫ね!<br> って思った瞬間、あたしの声に嗚咽が混じっており、<br> キョン以上に目に涙を蓄えていたことに気がついた。<br>  <br> あたしは最後の力で首を振り、肯定の意を表すと、いよいよもって、<br> 大声で泣き出した。魂の慟哭だ。<br>  <br> 「うわあああ!キョン!キョン!」<br>  <br> 10分はたっただろうか?<br> 昨日に引き続き泣いているので、あたしの喉はもうガラガラだ。<br> あたしが落ち着き、ひとまずキョンから離れると、古泉くんが近付いてきた。<br>  <br> 古泉くんはキョンの胸倉を掴み、無理矢理起立させた。<br>  <br> 「もし、この場に涼宮さんがいなければ、<br> 僕はあなたを殴り倒してる所だ!<br> あなたはさっき涼宮さんを傷付けたままには出来ないと言いましたが<br> まさかこれで彼女の傷が癒えただなんて思ってないでしょうね!?<br> これからあなたは、一生を懸けて涼宮さんの傷を、<br> 癒していかなければならないんだ!<br> もしまた彼女を裏切るような真似をしたら、オレはお前を許さない!<br> わかったか!!!!?」<br>  <br> 古泉くんが焦ったように早口で言う。<br> どうしたの?古泉くん?口調までかえて…古泉くんらしくない…<br>  <br> 「分かっている。古泉…俺はもうハルヒを傷つけたりしない。<br> この罪は一生懸けて償っていくつもりだ。<br> それに俺は前からハルヒのことが好きだった。」<br>  <br> え?それって…もしかして…<br>  <br> 「え~と、つまりだな、ハルヒ…俺はお前を好きなわけだ。<br> そうなると当然、お前と付き合いたいと思うわけで…<br> そこに一生懸けて罪を償うという要素を取り入れるとだな…<br> それはつまり…その…『結婚を前提としたお付き合いをお願いします』<br> ということになってしまうわけで……<br> それで、つまり……そういうことだ」<br>  <br> え?これってもしかしてプロポーズ?こんなグダグダなのが?<br> だけどなんだろう…この胸から沸き上がってくる感情は?<br> 随分長い間忘れていた気がするそれは…そうだ…喜びだ!!<br> あたしはまたキョンに抱き付き大声で泣いた。<br>  <br> 「お、おい!まだ俺は返事を聞いちゃいねぇぞ?」<br>  <br> 「やれやれ…どうやら僕の思い違いだったようですね。」<br>  <br> 安心した顔で、そういうと古泉くんは教室を出ていった。<br>  <br>  <br>  <br> その日、六限目は体育館で薬物防止の講習会が行われていた。<br> まったく、こんなのに手を出す奴の気が知れないわ!気持ちいいんだか知らないけど、<br> それで人生を棒にふるなんてバカのすることよ!<br> あたしほどになると風邪にだって薬なんか必要ないんだから!<br>  <br> それから薬物を使うとどんな症状にみまわれるのか、細かい話を延々と聞かされた。<br> あ~あ、早く終わんないかしら?今すぐ部室でキョンと一緒に勉強したい。<br>  <br> 教室に帰るとキョンが話しかけて来た。<br>  <br> 「あ、あのさ…ハルヒ…実は…」<br>  <br> キョンが蒼白した顔で話しかけてくる。<br>  <br> 「何よ?」<br>  <br> わざと不機嫌そうに答えるとキョンは<br>  <br> 「い、いや!何でもない!今日も部室で頼むぜ?!」<br>  <br> と言うと、今度はあたしの二つ隣りにいる春日さんの所に行き、<br> 一緒に教室を出て行ってしまった。<br> ふん!何よ!朝はあたしにプロポーズまでしたくせに!大体何よ!春日って!!<br> 名前があたしと被るのよ!<br> 全く!作者は何を考えてるのかしら!<br>  <br>  <br>  <br> オレは今体育館で薬物防止の講習を受けてる。<br> こういう話を聞いてるとどうしてもあいつを思い出してしまう。とても涼宮さんには言えない話…<br>  <br> オレ達が所属していた機関は、涼宮ハルヒの発生させた閉鎖空間を取り除くことが、<br> 主な仕事だった。しかしそれは多大なストレスを伴う。<br> そういう中で活動しているとたまにいるんだ。ストレスに押しつぶされてしまう人間が。<br> オレの親友だった。ドラッグに溺れたそいつは自殺の間際にオレにこう言った。<br>  <br> ――今の俺はとても清々しい気分なんだ――<br>  <br> それは普通に聞けば何の変哲もない、むしろ喜ばしい言葉だ。<br> だけど、オレにとってはトラウマ以外の何者でもない。<br> なんてったってオレはそいつの変化を少しも気付いてやることが、<br> 出来なかったんだから…悔やんでも悔やみきれない……<br>  <br> 今朝の彼の言葉があいつの言葉を思い起こさせた。言い知れぬ不安に駆られた。<br>  <br> もっとも、それがいらぬ心配だったということは、その後の言葉で確信した。<br>  <br> 「あなたの言葉…僕は信じていますよ」<br>  <br> オレは心の中で、そう呟いた。ふう、やけに疲れたな今日は。<br> たまには部室に寄らず帰ろうか。<br>  <br>  <br>  <br> う~ん、疲れたわね!有希の本を閉じる音と同時にあたしは背伸びをした。<br>  <br> 「あら、キョン?」<br>  <br> キョンがスライムみたいになっていた。溶けた、緑色のブクブクいってる方ね。<br>  <br> 「お、お前…いくらなんでもハイペースすぎやしないか?」<br>  <br> 「ふん!あたしの未来の旦那さんが何弱音吐いてるのよ!<br> このくらいやらなきゃ東大なんて夢のまた夢よ!<br> はい!これ!今日の課題よ!明日までにやっておきなさい!」<br>  <br> キョンはやれやれといいながら背伸びをした。<br>  <br> 「腕のそれ、ケガ?」<br>  <br> 有希が短くそれだけいった。<br> あたしがキョンの腕を取ると、赤い点が一つだけあった。<br> よくこんなの気付いたわね。有希。<br>  <br> 「あ、ああ!これか?いや、昨日近所で献血をやってたんだよ!<br> 昨日の俺は頭に血が上り過ぎてたからな!<br> 抜き取って頭を冷やしたというわけだ。<br> ほんと、単純だな!俺って。」<br>  <br> 献血?そんなのはもっと人込みのある、主要道でやるもんじゃないの?<br> 何で周りに家しかない、人通りの少ない道でやるのかしら?<br> そうは思ったがそれ以上は聞かないことにした。<br> それ以上聞くとまた関係が崩れていってしまう気がしたから。<br>  <br> 有希が黒い瞳でキョンをじっと見ている。<br> そういえば今日は古泉くん来なかったわね。<br>  <br> まあ有希もそうだけど、推薦で進路は決まってるみたいだし、家で休みたいのかもね。。<br>  <br> そしてあたし達は家路についた。<br>  </p>
<p>三章<br />  <br /> 学校に行くのが憂鬱だ。体中がとてつもなくだるい。<br /> 昨日、あれから一晩中泣き明かしたからだろうか。ほっぺただけじゃなくて、<br /> 目も相当腫れているんだろうな。<br />  <br /> ――返せ!俺の時間を返せ――<br />  <br /> 昨日は結局、キョンは部室に帰ってくることはなかった。仮に帰って来たら、<br /> 今度はあたしが逃げ出していたんだろうけど…<br /> キョンの言葉が耳にこだまする。あたしは、あいつを………その………好いていた。<br /> あたしがどんな無理なことを言っても、最終的にはそれに賛成し、協力してくれる。<br /> そんなあいつに、あたしは心の底から信頼していた。<br />  <br /> だけど…今はあいつが……とてつもなく怖い……<br />  <br /> 所詮はご機嫌とり。能力のないあたしなんてもう関係ないってこと?<br /> 昨日のあれは三年間のあたしへの、鬱憤だったのかも…<br /> 楽しいと思ってたのはあたしだけ?<br />  <br /> 後ろ向きな考えばかりが浮かぶ。<br /> そんな考えを払拭するために、あたしは早朝から、坂を上っている。<br /> 昨夜キョンからメールが来た。<br />  <br /> 『話したいことがある、明日、朝、<br /> 六時半に教室に来てくれ』<br />  <br /> もしかしたら、また罵倒されて終わりかもしれない。<br /> だけど、あたしはあいつを信じたい。<br />  <br /> 「ごめんね、古泉くん。<br /> こんな朝早く付き合わせちゃって」<br />  <br /> やはりまた殴られるのは怖い。昨日のうちに古泉くんに、<br /> 一緒に学校に来てくれるよう頼んでおいた。<br />  <br /> 「謝るなんてあなたらしくない。<br /> 昨日のあれは完全に彼の過失です。<br /> あなたは毅然とした態度でいるべきですよ。<br /> 団長を守るのは副団長の務めです。」<br />  <br /> 古泉くんはいつも通りの笑顔であたしに優しくそういった。<br />  <br /> 「もっとも、本当は彼が、いの一番にあなたを<br /> 守らなければならないのに…それなのに………!!」<br />  <br /> 古泉くんはボソっと怒りを押し殺した声でそう言った。<br />  <br /> 学校についた。教室まで、もう少しだ。段々とあたしの鼓動が速くなっていくのがわかる。<br /> それと同時に昨日の、キョンの血走った目。<br /> 殴られて倒れたあたしに伸びてくる紫色の拳が脳裏に蘇る。<br /> 切れた口の中がまた痛みだした。<br />  <br /> 教室の前まで来た。あとはドアを開けるだけ…だけど体がそれを拒む。<br />  <br /> ドクン!ドクン!<br />  <br /> 取っ手を掴んだまま動かせないでいるあたしの手を、古泉くんはそっと握ってくれた。<br />  <br /> ガラガラっと音を立ててドアが開く。キョンは……いた。<br />  <br /> 「古泉も来てたのか」<br />  <br /> そういうとキョンは自分の机からゆっくり立ち上がり、近付いてくる。<br /> 昨日の血走った目のキョンと今のキョンが重なりあう。<br /> 逃げたい!今すぐ!ここから逃げ出したい!<br />  <br /> あたしが今にも動きだそうとしている体を必死で押さえ付けていると…<br />  <br /> がばっという音がした。思わずビクッと目を瞑ってしまったが拳は飛んでこない。<br /> 恐る恐る目を開けると、<br /> キョンがあたしの目の前で、手と顔を床につけてうずくまっている。<br />  <br /> 「ど…げ…ざ…?」<br />  <br /> あたしが思わず、呆然と呟くと……<br />  <br /> 「昨日は本当にすまなかった!お前の気持ちも考えず…<br /> 自分のことしか考えていなかった!!<br /> 許してほしいだなんて思っちゃいない!<br /> だけど!お前をずっと傷付けたままにすることは出来ない!!」<br />  <br /> ああ…いつものキョンだ…優しい目であたしを見てくれる、いつものキョンだ…<br /> あたしは思わず彼に抱き付いていた。<br />  <br /> 「こ…の!えぐっ…!バカ!!昨日はあれだけヒドいことしておいて…!<br /> あたしがどんな気持ちで学校に来たと思ってるのよ!」<br />  <br /> 「ああ、昨日は本当にどうかしていた…<br /> だけど今の俺はとても清々しい気分なんだ」<br />  <br /> 「え?」<br />  <br /> そう古泉くんの言葉が聞こえた気がしたけど、今は関係ない。<br />  <br /> 「な…何よ!ヒック…!許してもらおうだなんて思ってないですって?<br /> バカ言ってんじゃないわよ!ヒック…許すに…決まってるじゃない!」<br />  <br /> 「じゃ、じゃあ…また勉強に付き合ってくれるのか?<br /> まだ東大を目指していいのか?!」<br />  <br /> キョンの目が涙でいっぱいになっている。まったく!泣き虫ね!<br /> って思った瞬間、あたしの声に嗚咽が混じっており、<br /> キョン以上に目に涙を蓄えていたことに気がついた。<br />  <br /> あたしは最後の力で首を振り、肯定の意を表すと、いよいよもって、<br /> 大声で泣き出した。魂の慟哭だ。<br />  <br /> 「うわあああ!キョン!キョン!」<br />  <br /> 10分はたっただろうか?<br /> 昨日に引き続き泣いているので、あたしの喉はもうガラガラだ。<br /> あたしが落ち着き、ひとまずキョンから離れると、古泉くんが近付いてきた。<br />  <br /> 古泉くんはキョンの胸倉を掴み、無理矢理起立させた。<br />  <br /> 「もし、この場に涼宮さんがいなければ、<br /> 僕はあなたを殴り倒してる所だ!<br /> あなたはさっき涼宮さんを傷付けたままには出来ないと言いましたが<br /> まさかこれで彼女の傷が癒えただなんて思ってないでしょうね!?<br /> これからあなたは、一生を懸けて涼宮さんの傷を、<br /> 癒していかなければならないんだ!<br /> もしまた彼女を裏切るような真似をしたら、オレはお前を許さない!<br /> わかったか!!!!?」<br />  <br /> 古泉くんが焦ったように早口で言う。<br /> どうしたの?古泉くん?口調までかえて…古泉くんらしくない…<br />  <br /> 「分かっている。古泉…俺はもうハルヒを傷つけたりしない。<br /> この罪は一生懸けて償っていくつもりだ。<br /> それに俺は前からハルヒのことが好きだった。」<br />  <br /> え?それって…もしかして…<br />  <br /> 「え~と、つまりだな、ハルヒ…俺はお前を好きなわけだ。<br /> そうなると当然、お前と付き合いたいと思うわけで…<br /> そこに一生懸けて罪を償うという要素を取り入れるとだな…<br /> それはつまり…その…『結婚を前提としたお付き合いをお願いします』<br /> ということになってしまうわけで……<br /> それで、つまり……そういうことだ」<br />  <br /> え?これってもしかしてプロポーズ?こんなグダグダなのが?<br /> だけどなんだろう…この胸から沸き上がってくる感情は?<br /> 随分長い間忘れていた気がするそれは…そうだ…喜びだ!!<br /> あたしはまたキョンに抱き付き大声で泣いた。<br />  <br /> 「お、おい!まだ俺は返事を聞いちゃいねぇぞ?」<br />  <br /> 「やれやれ…どうやら僕の思い違いだったようですね。」<br />  <br /> 安心した顔で、そういうと古泉くんは教室を出ていった。<br />  <br />  <br />  <br /> その日、六限目は体育館で薬物防止の講習会が行われていた。<br /> まったく、こんなのに手を出す奴の気が知れないわ!気持ちいいんだか知らないけど、<br /> それで人生を棒にふるなんてバカのすることよ!<br /> あたしほどになると風邪にだって薬なんか必要ないんだから!<br />  <br /> それから薬物を使うとどんな症状にみまわれるのか、細かい話を延々と聞かされた。<br /> あ~あ、早く終わんないかしら?今すぐ部室でキョンと一緒に勉強したい。<br />  <br /> 教室に帰るとキョンが話しかけて来た。<br />  <br /> 「あ、あのさ…ハルヒ…実は…」<br />  <br /> キョンが蒼白した顔で話しかけてくる。<br />  <br /> 「何よ?」<br />  <br /> わざと不機嫌そうに答えるとキョンは<br />  <br /> 「い、いや!何でもない!今日も部室で頼むぜ?!」<br />  <br /> と言うと、今度はあたしの二つ隣りにいる春日さんの所に行き、<br /> 一緒に教室を出て行ってしまった。<br /> ふん!何よ!朝はあたしにプロポーズまでしたくせに!大体何よ!春日って!!<br /> 名前があたしと被るのよ!<br /> 全く!作者は何を考えてるのかしら!<br />  <br />  <br />  <br /> オレは今体育館で薬物防止の講習を受けてる。<br /> こういう話を聞いてるとどうしてもあいつを思い出してしまう。とても涼宮さんには言えない話…<br />  <br /> オレ達が所属していた機関は、涼宮ハルヒの発生させた閉鎖空間を取り除くことが、<br /> 主な仕事だった。しかしそれは多大なストレスを伴う。<br /> そういう中で活動しているとたまにいるんだ。ストレスに押しつぶされてしまう人間が。<br /> オレの親友だった。ドラッグに溺れたそいつは自殺の間際にオレにこう言った。<br />  <br /> ――今の俺はとても清々しい気分なんだ――<br />  <br /> それは普通に聞けば何の変哲もない、むしろ喜ばしい言葉だ。<br /> だけど、オレにとってはトラウマ以外の何者でもない。<br /> なんてったってオレはそいつの変化を少しも気付いてやることが、<br /> 出来なかったんだから…悔やんでも悔やみきれない……<br />  <br /> 今朝の彼の言葉があいつの言葉を思い起こさせた。言い知れぬ不安に駆られた。<br />  <br /> もっとも、それがいらぬ心配だったということは、その後の言葉で確信した。<br />  <br /> 「あなたの言葉…僕は信じていますよ」<br />  <br /> オレは心の中で、そう呟いた。ふう、やけに疲れたな今日は。<br /> たまには部室に寄らず帰ろうか。<br />  <br />  <br />  <br /> う~ん、疲れたわね!有希の本を閉じる音と同時にあたしは背伸びをした。<br />  <br /> 「あら、キョン?」<br />  <br /> キョンがスライムみたいになっていた。溶けた、緑色のブクブクいってる方ね。<br />  <br /> 「お、お前…いくらなんでもハイペースすぎやしないか?」<br />  <br /> 「ふん!あたしの未来の旦那さんが何弱音吐いてるのよ!<br /> このくらいやらなきゃ東大なんて夢のまた夢よ!<br /> はい!これ!今日の課題よ!明日までにやっておきなさい!」<br />  <br /> キョンはやれやれといいながら背伸びをした。<br />  <br /> 「腕のそれ、ケガ?」<br />  <br /> 有希が短くそれだけいった。<br /> あたしがキョンの腕を取ると、赤い点が一つだけあった。<br /> よくこんなの気付いたわね。有希。<br />  <br /> 「あ、ああ!これか?いや、昨日近所で献血をやってたんだよ!<br /> 昨日の俺は頭に血が上り過ぎてたからな!<br /> 抜き取って頭を冷やしたというわけだ。<br /> ほんと、単純だな!俺って。」<br />  <br /> 献血?そんなのはもっと人込みのある、主要道でやるもんじゃないの?<br /> 何で周りに家しかない、人通りの少ない道でやるのかしら?<br /> そうは思ったがそれ以上は聞かないことにした。<br /> それ以上聞くとまた関係が崩れていってしまう気がしたから。<br />  <br /> 有希が黒い瞳でキョンをじっと見ている。<br /> そういえば今日は古泉くん来なかったわね。<br />  <br /> まあ有希もそうだけど、推薦で進路は決まってるみたいだし、家で休みたいのかもね。。<br />  <br /> そしてあたし達は家路についた。</p> <p> </p> <ul> <li><a href="//www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3023.html">四章へ<br /></a> </li> </ul>

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