『観測日誌』
<p> 4月4日<br> 平成○年度、県立北高入学式の日。<br> 本日より私の観測が始まる。<br> …北高へ無事「進学」という形で潜入できた私に、この3年間<br> の学業生活の間、本分である学業はともかく、として、課せられ<br> た「使命」は大きい。<br> もちろん「観測対象者《達》」への接触・調査・尾行・親交を<br> 始めとして、私自身、そして私の帰属する《団体》への利益も<br> 追及しなければならない。<br> 今日はその初日のことを記そうと思う。<br> 長い、長い坂道を登っていく。最近の高校生のスカートの短さ<br> には目を見張るものがあるが、ちょっと前を女子生徒が歩いて<br> いたりすると目のやり場に困る。あからさまな行動は慎まなければ<br> ならない。できるだけ、普通に、この坂道を登っていくことが課題<br> なのかもしれない。入学式前から、3年間の課題が一つ増えて<br> しまった。自らに課題を与えるのはヒーローの特質だ。<br> 安西先生も草葉の陰で喜ぶだろう。<br> <br> 入学式自体は、特に普通そのものであった。式の後のクラス分け<br> で私の配属されたクラスは1年5組であった。この高校は、市内の4<br> つの中学からの出身者でほとんど、占められている。もちろん、《所<br> 属団体》の後ろ盾があったとは言え、私の出身中学からも、何人<br> かこの高校へ進学し、また、同時に5組にも何人か見知った顔が<br> いる。しかし、見知った相手とは言え油断は禁物だ。どんな出来事<br> が高校で待ち受けているかわからない。中学時代から数年、同じ<br> 学び舎で過ごした者であっても、高校に入りどんな変化が現れるか<br> わからない。過去の情報を抹消するわけではないが、それに頼りす<br> ぎていても、仕方がない。なぜなら、使命を果たさなければならない。<br> しかし、このクラス…、観測対象者、もしくはそう「なりうるもの」が<br> 大勢いる。これは私にとっても《団体》にとっても好都合だ。<br> 自己紹介の折に、観測対象者の確認、また、新規で観測対<br> 象者となりうるものをピックアップしていく。朝倉、阪中、瀬能…、そ<br> して重要観測対象者であろう、涼宮。<br> 私の、3年間の内のまず【1年目】がこうして始まった。<br> 4月某日<br> 5組での重要観測対象を2名、とここに記す。<br> 一人は、涼宮。東中出身。当初からの重要観測対象者である。<br> ここ数日の行動は大人しく、事前から知っていた彼女の様子とは<br> 異なるのが気にはなるが、様子を見ることにする。<br> もう一人は、朝倉。駅前の公園近くのマンションに住んでいるよう<br> だが、出身校不明。更なる調査を続行する。性格は明るく、また、<br> 人当たりもよく、成績優秀な様子である。すでに我々クラスの中心<br> 人物となっている。カリスマ性も高い。涼宮の観測と同時にこの人<br> 物の観測を強化する。<br> 観測対象者のピックアップもひとまず出来たので、観測資材を手<br> に入れるために、電気街へと放課後赴く。デジカメ、DVDハンディカメ<br> ラ、望遠レンズ等を購入。<br> <br> 4月某日(s-p)<br> 涼宮に接触する男子が現れた。彼の名は…キョンと呼ばれている。<br> 彼と同じ出身中学の男子が彼をそう呼んでいる。酔狂な、あだ名<br> だ。まったく相手にされていない様子。観測対象、涼宮には特に変<br> 動なし。自宅での様子を探るため、毎晩、定点観測を行い、同時<br> に、静止画・動画での撮影を今後続けることにする。<br> また、朝倉がクラス委員になったことを付け加えておく。彼女は成<br> 績が優秀なだけではなく、運動神経もなかなかのものであることを体<br> 育の授業で確認。また、周囲への気配りも忘れない、まさに、優等<br> 生である。清楚な雰囲気もあることを付け加えておく。<br> <br> 4月某日(s-o)<br> 涼宮が体育の授業の際、下着姿を男子に見せ付ける。<br> また、部活動の仮入部をあちらこちらで繰り広げているらしい。既<br> 知の情報と変わらないので、接触はせずに、そのまま観察にとどめ<br> る。自宅への監視を続行。<br> <br> 5月某日(s-w)<br> ゴールデンウィークが明けた。5月とは思えないほど暑い。<br> この頃になると、私は「ごく普通に」坂道を登校することが出来る<br> ようになった。無駄に人目を気にすることも、前かがみになることもな<br> い。そうできるようになったのは友人(と、ここでは言っておこう)と、傍<br> 目からは見える存在を得たことである。高校生らしい風景だが、私<br> に課せられた使命をw忘れるわけにはいかない。<br> <br> 5月某日(s-y)<br> 観測対象、涼宮に変化が発生。髪を肩くらいまでに切りそろえ<br> て登校。しかし、彼女の髪は願掛けだった、という未確認の情報も<br> あるが…。慎重に調査を進める。<br> また、全学年への一通りの調査を終了した。<br> <br> 5月某日<br> 《団体への報告書の写し》<br> 重要観測対象者を以下に羅列する。留意されたし。<br> 朝倉:観測レベルAAA(1年5組)自宅マンションを2日おきに<br> 監視中。<br> 阪中:観測レベルABB(同)自宅住宅街付近を含め毎週日曜<br> 日に監視。<br> 瀬脳:観測レベルABC(同)通学途中を中心に監視。<br> 涼宮:観測レベルAAA(同)重要観測対象に付き、深夜2時ま<br> での観測を継続中。<br> 長門:観測レベルAAB(1年6組)朝倉と同じマンションなので2<br> 日おきに同じく監視中。<br> 朝比奈:観測レベルAAA(2年)自宅不明。学校での様子を監<br> 視。<br> 鶴屋:観測レベルAAB(2年)自宅のセキュリティーレベルが高い。よ<br> って学校での様子を監視。<br> 喜緑:観測レベルABB(2年)自宅不明。<br> 中西:観測レベルABC以下の4人は学校でも私生活でもグルー<br> プ行動をすることが多いので、同様に監視する。<br> 財前:観測レベルABC<br> 榎本:観測レベルABB<br> 岡島:観測レベルABB<br> 以上。識別コード「B」「C」対象者については別種郵送する。<br> <br> 5月某日(s-o,n-w)<br> 重要観測対象:涼宮AAAと、キョンと呼ばれる男子が接近。新<br> 密度が上がっている模様。<br> 自宅での涼宮AAAの様子が変わってきている。特に、どう、とは<br> 言えないが、一言で言うならば「楽しそう」である。<br> <br> 5月某日(s-w,n-w)<br> 重要観測対象:涼宮AAAが授業中に、文字通り叫んでいた。<br> 観測対象に変化の兆しが見える。<br> 尾行の監視作業に入るかは、慎重に見極めたい。<br> <br> 5月某日(s-b,n-w)<br> 季節外れの転校生がやってくる。9組に編入されたようだ。男子<br> 生徒、古泉。8月末の報告書には追加しておこうと思う。<br> <br> 5月某日(s-y,n-w,a-b)<br> 重要観測対象:涼宮AAA,謎の団体設立。別途、報告する。<br> また、朝倉AAAと長門AABの自宅マンション監視中、朝倉が長<br> 門の部屋を訪れていることも確認。どうやら交友がある模様。<br> が、監視に気づかれているはずはないが、電気を消されてしまった。<br> どういう意図か、趣味か、嗜好か、注意深く、観測を継続する。<br> <br> 5月某日(s-r,n-w,a-b)<br> 入梅が前倒しになるんじゃないかと言うくらい暑いが、観測はそう<br> も言っていられない。<br> 重要観測対象:涼宮AAAは、暑さにまいっているのか、様子が<br> 大人しい。先週の様子とは違う。同じく重要観測対象の朝倉AA<br> Aが気にしているが、無視している様子。<br> 放課後、5組の教室で異常事態が起こっていた模様。と、いうの<br> も扉が開かなかった。時刻は17時過ぎのこと。この後にあったこと<br> は、別に報告したい。<br> <br> 5月某日(s-g,n-w)<br> 重要観測対象:朝倉AAA転校。<br> 疑念が募る。もう少し事を早く積極的に行っておくべきだったか?<br> と後悔するが、我が使命に振り返ることは許されない。彼女の居<br> 住地だったマンションへと赴くが、途中、重要観測対象:涼宮AA<br> Aとキョン、観測対象:長門AABの姿を見つける。もしや。彼ら、彼<br> 女らも?と不審を覚えるが、今日はこれ以上の調査は出来ない<br> 、危険と判断、帰宅する。<br> また、この夜、重要観測対象:涼宮AAAがベッドでうずくまって、泣<br> いている様子。この頃、感情の起伏が激しいようだ。<br> キョン、と呼ばれる男子の影響か?やがて、電気が消えたので観測<br> 終了。<br> <br> 5月某日(s-w,n-w)<br> 重要観測対象:涼宮AAAの髪型が変わっていた。<br> が、昼過ぎには戻った。<br> <br> 6月某日(s-w,n-w)<br> 重要観測対象:涼宮AAA。観測対象:長門AAB。観測対象<br> 者:朝比奈AAA。観測対象:鶴屋AAB。キョンなど揃い踏みでの<br> 野球大会。観測続行。<br> <br> 7月7日(s-y,n-w)<br> 七夕。この使命が果たされるように、願いをかける。<br> 窓辺で、星たちに願いをかけるため、両手を組んで祈る。<br> 神よ、全知全能の神よ、我が使命、願いを受け入れんことを。<br> <br> 7月某日(s-bl,n-w)<br> 期末テスト終了。この頃、先の野球大会での謎の団体、SOS<br> 団は毎日、文芸部室を根城として活動していることが周知の事<br> 実となっている。<br> 観測対象:喜緑ABB,文芸部室SOS団に接触。<br> <br> 7月某日<br> 夏休み突入。観測を夏休み中までは続けることが出来ない。<br> なぜなら、私には私で、海での、プールでの強化合宿があるためで<br> ある。<br> つらい、合宿だが、楽しみを一つでも見つけ、いい夏休みを送りた<br> い。<br> <br> 8月某日<br> 最近、だるい。何故か、何回も夏休みを送っている気分になる。<br> 夏バテだろうか?<br> しかし、今日も今日とて合宿だ。張り切らなければ。<br> <br> 8月某日<br> 合宿を自主休み。体調管理には気をつけたい。とはいえ、使命<br> を忘れるわけにはいかない。プライベートでも観測機器は一通り持っ<br> て出かける。<br> 気が向いたので、夏祭りに来ると、浴衣姿の観測対象達を発<br> 見した。さっそく、木陰から観測する。<br> <br> 9月1日(s-g,n-w)<br> 2学期のスタート。しばらく、観測を続けていなかった観測対象た<br> ちの夏休み後の変化を探るため、危険だが今学期より、尾行、私<br> 物等のチェックをすることにする。<br> 危険な行動とはわかっているが…、夏合宿で鍛えた私の力を試<br> すチャンスだ。<br> <br> 9月某日(s-y,n-w)<br> 夏合宿の成果なのか、尾行・私物チェックとも気づかれた様子が<br> ない。私のスキルも上がったようなので、観測をもっと《見るだけでな<br> く》、《声をかけたり》、《触れたり》、《もっと記録に残していったり》し<br> ようと思う。<br> よくよく考えれば、短い高校生活の間に、使命を果たさねばなら<br> ない。思い立ったら吉日。さっそく実行する。<br> <br> 9月某日(s-bl,n-w)<br> 重要観測対象:涼宮AAAを尾行。SOS団たる謎活動が終わ<br> ってからの彼女は、ただの美少女女子高生だ。途中、下着を買っ<br> ていった現場を観測。その後一人でカラオケboxへと入っていった。<br> 流行のヒトカラか?隣の部屋で聞き耳を当てると、アニソンを熱唱して<br> いた。中の人も大変だ。キョーダインなんかゆとりには通じないぞ。<br> <br> 9月某日(s-o,n-w)<br> 観測対象:朝比奈AAAと同じく鶴屋AABを放課後、尾行。学<br> 校でもそうだがプライベートでも仲がいいこの二人は、数メートルごと<br> に男から声をかけられている。<br> <br> 9月某日(s-???n-w)<br> 観測対象:長門AABを尾行。しかし、途中で見失う。<br> <br> 9月某日(s-???n-w)<br> 観測対象:喜緑ABBを尾行。しかし、途中で見失う。</p> <p>10月某日(s-w,n-w)<br> 観測対象:中西ABC、財前ABC、榎本ABB、岡島ABBの4<br> 人が文化祭でのステージ発表をするとの情報。観測しなければ。<br> <br> 10月某日(s-bl,n-w)<br> 我がクラスの文化祭出し物がアンケート発表に決定。つまらない、と正直思う。<br> <br> 10月某日(s-y,n-w,am-w)<br> 重要観測対象:涼宮AAAが率いる謎団体SOS団が映画撮<br> 影をしている模様。観測対象が3人もいる団体だ。隠し撮りをしつ<br> つ、観測を続ける。特に朝比奈AAAの衣装が素晴らしい。<br> <br> 11月某日(s-bl更衣室確認n-w)<br> 文化祭。合宿の成果を見せ付ける。周囲の反応、特にキョンの<br> 反応が面白かった。うさぎちゃんカワイス。<br> <br> 11月某日(s-???n-w)<br> 観測対象:長門AABの様子が違うようだ、とキョンからの情報。<br> 聞くところによれば、SOS団はコンピ研とのゲーム対決の練習中な<br> のだが、長門の様子が、楽しそうだ、ということだ。<br> これは、いい観測チャンス、と思い、今日から観測対象:長門AA<br> Bの尾行を続ける。<br> <br> 11月某日(s-???n-w)<br> 観測対象:長門AAB、帰り際にコンビニでお菓子を買う。カール<br> チーズ味とポテロング、きなこもちチロルチョコ、だった。カールはカレー味だ<br> と思う。チロルチョコのチョイスは素晴らしい。<br> <br> 11月某日(s-???n-w)<br> 観測対象:長門AAB、今日も帰り際にお菓子を買う。やっぱり<br> ポテロング、きなこもちチロルだった。<br> <br> 11月某日(s-???n-w)<br> SOS団、ゲーム勝負にて圧勝、との話。キョンから下駄箱で聞い<br> た。観測対象:長門AABの尾行を継続。何故かスキップで帰る<br> 観測対象をデジカメに収める。もちろん動画にも。今日もお菓子を<br> 買っていった。ポテロング5箱、きなこもちチロル箱買い。<br> <br> 11月某日(s-???n-w)<br> 観測対象:長門AABの自宅マンションでの様子がおかしいので、<br> 記す。彼女は自宅に帰っても、読書ばかりしているのだが、最近は<br> ぼーっとしている回数が多くなってきた。先日のゲーム対決以来、ど<br> んどんおかしくなってきている気がする。<br> <br> 11月某日(s-bl,n-w)<br> 私事で恐縮だが…、これも合宿で得た一つの能力とその結晶と<br> して報告する。<br> 坂の下のお嬢様高校「光陽園」の1女子生徒とのアプローチに成<br> 功した。クリスマスは使命、プライベート共に大いに盛り上がりたい。<br> <br> 12月某日(s-g,n-w)<br> カーディガンを朝は着ていたはずの観測対象:長門AABが、カーデ<br> ィガンを着ずに帰宅している。忘れたのだろうか?<br> 重要なアイテムと判断し、入手すべく学校へ侵入するも文芸部室<br> には鍵がかかっていた。<br> <br> 12月17日(s-?,n-?,a-b)<br> 信じられない…としか言いようがない。まさに奇跡だ。一足早い、ク<br> リスマスプレゼントなのだろうか?<br> 重要観測対象:■■■■■が■■の部屋にいた。なぜ?かは、<br> わからないが、こんなにうれしいことはない。早速■■■号室の監視<br> に入る。<br> <br> 12月18日(s-y,n-w)<br> どうにもおかしい。風邪をひいたわけでもないのに、鞄にマスクが入っ<br> ていたり、昨日の報告書にもわけのわからないことを書いている。<br> 使命、プライベート共に安定しているので、浮かれているのだろう<br> か?でも…何か大事なことをwa忘れているような気もする。<br> 505号室はやはり無人だった。どうかしてしまったようだ。<br> キョンが階段から落ちたことを付け加えておく。<br> <br> 12月19日<br> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<br> ・・・・・。(修正コードを確認。修正箇所を暫定的に■へ置<br> 換。)<br> ///////////////////////////////////////////////<br> <br> 「………。」<br> 「なっっっっっっ…!!!!」<br> 「ふ…ぇ…」<br> 今、私の目の前には、3人の観測対象者がいる。そして、彼女た<br> ちが見ているのは、私の数ヶ月間に渡る「観察日誌」だ。<br> 私の状況といえば、ぐるぐる巻きにされて地面に転がっている。し<br> かもチェーンでだ。こんなチェーン、貨物の積み下ろしデッキにしかないよう<br> なものだが、観測対象者の一人である長門有希は、私の首根っ<br> こを左手に、チェーンを右手にここまでやってきた。<br> そして、ここは、なぜか港である。<br> 「ま、まてよ…、ほら♪冗談だって、じょうだ…」<br> ドンっ!!寝転がっている俺の側頭部を涼宮の足が貫いた。<br> 「おう!危ねーじゃねーか!ってパンツ見えるぞ、涼宮」<br> こんなアングルこそ絶好の観測、ではないか!!<br> 「見えたって構わないわよ…。あんた…ここで死ぬんだから」<br> あぁ、そうなんですか…って、おい!!sisisisi死んじゃうの俺!?<br> 長門と朝比奈を見やる。長門は、キョンの言っていた「凍り」の目<br> 線で、いつもは天使のようだと、これもキョンの言っていた朝比奈は、<br> 目に涙を溜めながらも「悪魔」のような様子である。うむ、俺、冷静☆。<br> 「でもねぇ…あっさり死んじゃっても、あたし達、つまんないし。まず<br> は、全部ゲロッてもらいましょうか!?」<br> 涼宮は、靴の底で俺の顔をにじり踏んだ。パ、パンツ…。<br> <br> 「どっからいきましょうね…?まず、日付の横にある記号はなに<br> っ!?」<br> 視界が涼宮の靴によって遮られているので、どっちかはわからない<br> が、腹を思いっきり蹴られた。うーん、この靴のサイズなら、朝比奈<br> か。<br> しかし、痛みは大きい。誰だ?天使から悪魔に豹変させたやつ<br> は!?<br> 「早く言えっ!!!」<br> 蹴られた痛みの上に、顔面を踏みつけている涼宮の全体重が俺<br> の顔に押しかかる。<br> 「う…、う…、し、した…ぎ」<br> 「はぁっ!?!?」<br> 喋りにくいことを察したのか、涼宮の靴底が俺の顔の上からどい<br> た。<br> 「だぁかぁらぁ、下着の色だよ、いぃろ!wが白、yが黄色、Oがオレ<br> ンジ、bは黒、blが青、rが赤。みりゃわかんだろ?ちなみにSっての<br> は涼宮、nってのが長門aってのが朝倉、朝比奈さんはamだ。だ<br> ってみくる、だろ?」<br> 「気安くよぶんじゃねーよ!」<br> 朝比奈が俺の横腹を蹴飛ばした。やっぱりさっきの痛みは朝比<br> 奈のものだったか。痛みが、ほら♪一緒だ♪<br> 「この記号は…なに?」<br> 長門が聞いてきた。俺は得意げになって答える。<br> 「あーそれはな、ランクだよ。朝倉はAAAだから《AAプラス》長門は<br> AABだから《Aマイナー》だな。お前は顔はかわいいんだけどな、胸が、<br> な。あと下着が白ばっかりってのも、うぅうぐぅおぉっっ!」<br> <br> 聞かれたから答えている、のにもかかわらず、話の途中で長門は<br> 俺の脚を蹴り始めた。雪のように白く細い足から繰り出されるキッ<br> クは美しい。蹴られながら、その美脚をうっとり眺める。美しい…。<br> 俺がうっとりしているのがわかったのか、長門は俺の視線に気づく<br> と「ちっ、カスが。」と言って止めてしまった。おしい。非常におしい。<br> 「ってことは、あんた!なに!?あたしたちのことずーと見てたわ<br> け!?」<br> 「見てた、だけじゃないぜっっ!!!」<br> 両腕が塞がってなければGJポーズをしたいところだ。<br> 「見る、だけじゃ、俺の使命は達成できないからな。もちろん撮影も<br> 録画もしたぜっ☆ちゃんとCDRにもDVDRにもwawawa忘れずに焼<br> いたからなっ☆!」<br> 3人は何故か、唖然、とした様子だ。俺は主張を続ける。<br> 「だいたいなぁ涼宮、お前カラオケ行ってもアニソンばっかりじゃ<br> ねーか。いくらよう京○ア○の狙いとはいえ、あれじゃー飽きられるぜ。<br> それに、お前あの枕もとの写真?キョンぅうぐへぇおえっ!!」<br> 涼宮の蹴りが俺の頬を射抜いた。しかし、めげない俺!<br> <br> 「長門もさぁ…お前部屋にカーテンつけたほうがいいぜ。あれじゃ、<br> 風呂上りもたまんねーうびゃぼびょうぅおう!!」<br> 長門の膝が俺の腹に落ちた。ブライアント兄弟並の追い討ち攻撃<br> だ。しかし!逃げちゃだめだ!逃げちゃだめだ!<br> 「でも、なにが残念かって朝比奈さんの自宅がわからなかったこと<br> だぜ!朝比奈さんなら隙だらけだからきっといい画が手に入っただろ<br> うに。俺、残念。でも、朝比奈さん、いっつも角まがったところで消え<br> ちゃってうびょぉぼぅろぇっ!!」<br> 「禁則事項ぉぉぉぉぉっ!」と叫びながら朝比奈が俺の顔を2度3<br> 度踏みつける。……いい♪<br> 「で、あんたの《使命》ってなに?所属団体って!?」<br> 3人が声を揃えて詰め寄る。俺の使命っ!それは!<br> 「俺の使命は、かわいい女子の一部始終を永遠の記録として撮<br> 影することだっ!!そして所属団体の名はSOS団!<br> Sugeeeeeeee<br> Otokoga<br> Satueisuru<br> 団!!」<br> 「…なにそれ」<br> それが、3人の声を聞いた最後だった。<br> <br> 12月24日<br> クラスのみんなの「久しぶり」「大丈夫だった?」との声に迎え入れ<br> られて、俺は久しぶりの5組へ入った。<br> 久しぶり、と言っても、「改変世界」じゃ会ってるし、「大丈夫?」と<br> 言われても、本当に大丈夫なのは世界のほうか?と疑いたくもな<br> る。<br> まったく、やれやれだ。<br> いつものように軽薄に声をかけてくるクラスメート1名の姿が見えない<br> が…「改変世界」で風邪をひいていただけに、こっちでもひいたか?<br> などと考えながら、後ろの席に声をかけた。<br> 「なぁハルヒ?」<br> 「ん?」<br> そっけない返事もいつものこいつだ。安心する。<br> 「谷口、今日休みか?」<br> ハルヒは外を見たまま答えなかったが、しばらくすると呟くようにこう<br> いった。<br> 「今、有希が再構…、しらないわ」<br> ?わけがわからん。<br> 国木田が、近寄ってきたので同じ事を聞いてみる。<br> 「あぁ彼ね。団体のほうにも連絡ないし。どうしたんだろうね」<br> ??ますますわからん。そっか、とだけ答え、ハルヒと同じく外を見<br> てみる。<br> ガラスに反射するハルヒの視線が何故か国木田を追っていた。<br> <br> ----終わり-----<br> <br> あとがき兼いいわけ<br> 7/23の2つ目の投下になります。粘着?<br> 前々作「ワードオブライツ」<br> <a href= "http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2896.html">http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2896.html</a><br> 前作「Hirundo rustica」<br> <a href= "http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2912.html">http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2912.html</a><br> がプリンスレ投下でしたので、内容的に心配でした。のでアナルに<br> 投下したんですが、住人皆様暖かく迎えていただきthxです!<br> また、文の一部に「輪舞の人」様のSSの影響もあります。<br> 勝手ですが、この場を借りてお礼申し上げます。<br> 相変わらず、つたない文とありきたりな表現ですが、読んでいただいた皆様には<br> お礼しかもうしあげることができません。本当にありがとうございます。<br> 最後部で原作とは違う点もありますけど2次創作物なので、ごめんなさいです。<br> まとめサイト管理人様、協力者様お疲れ様です。<br> VIPPERの皆様、お付き合いいただきありがとうございます!<br> 毎日暑い日が続きますが、みなさん健康にはきをつけるのよっ!///<br> 【ヨーロピアンパフェ2007/7/23】</p>