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第5章-19 The trouble of all」を以下のとおり復元します。
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 背中にいる柔らかい人は、朝比奈さん(大)が言うような重さはなく、むしろ何を食ってるんだっていうくらい軽かった。だが、どうしても足取りは重くなってしまう。</p>
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 ああ、だめだ、だめだ。朝比奈さん(大)から励まされたばかりじゃないか。ネガティブになるな、悪い癖だぞ。</p>
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「う、ううん……」<br />
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<p> おっと、朝比奈さんが起きたようだな。もう少しで駅に着くしちょうど良い。<br />
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<p>「おはようございます」<br />
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<p>「えっ?ひゃあっ!?」<br />
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<p> なんて、愛らしい声を出すのかね、この人は。でも、あんまり暴れないで下さいよ。いろいろ、特に背中が困るんですから。<br />
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<p>「あの……、一体どうなってるんですかぁ?」<br />
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<p>「過去に戻る時に、いろいろあったようです。でも、なんとか元の……、朝比奈さんの世界に戻ることができましたよ」<br />
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<p> 人通りかいつまんで朝比奈さんに説明をしたわけだ。可愛らしい声を上げて驚いていたわけだが、最後の方は無言になっていた。<br />
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<p>「あの朝比奈さん……、どうしました?」<br />
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<p>「あたし……、迷惑をかけたんですね」<br />
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<p>「迷惑なんて、そんなこと……」<br />
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<p>「ごめんなさい……」<br />
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<p> 背負っているため、朝比奈さんの顔は見えない。だけど、俺の背中をつかんでいる手に、わずかに力が入ったのを感じた。</p>
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「あたしってだめですね。未来から来てるのに、何も知らないし、自分で判断もできない。向こうの世界で、あなたに頼ることしかできなかった……」<br />
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<p> 朝比奈さんの、手と声に力が抜けていく。<br />
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「いつもこうなんです……。何かをやろうとしても、うまくいかない。みんなに迷惑をかけて、今もあなたに迷惑をかけてる。前からずっと思ってたんだけど、役立たずなんです。みんなに迷惑ばっかりかけてる……」<br />
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<p> それっきり、朝比奈さんは言葉を発さなかった。でもなんとなくわかる。この言葉の後には、きっとこう続くんだろう。<br />
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<p>(そんな自分が嫌い)<br />
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 こんな風に、みんな悩んでいるのかもしれない。古泉はもちろん、これは勘なんだが長門だって、あの無表情の下には何かしら思うことがあるんじゃないだろうか。生きてるんだ、悩むのは当たり前のことさ。<br />
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<p> でもさ、朝比奈さん、そうじゃないんだ。それは思い違いですよ。これだけは、はっきり言わせて下さい。<br />
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<p>「朝比奈さん、よく聞いて下さい。あなたは役立たずなんかじゃない。俺が向こうの世界でどれだけ朝比奈さんに助けられたか、わかりますか?」<br />
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<p>「あたしは……、何も……」<br />
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「正直情けない話なんですけど、幼なじみのナツキがいないってだけで、だめになりそうになってました。だけど、朝比奈さんが煎れてくれたレモンバーム、あれが俺を立ち直らせてくれたんです。倒れそうだったのを支えてくれたんですよ」<br />
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<p>「それは、あなたの……」<br />
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<p>「朝比奈さんは、俺を信じてくれたんですよね?だから、自分の判断で過去に戻ることを許可してくれた。信じることって、なかなか難しいんですよ」<br />
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 そうなのだ。俺は当たり触らず、適度な距離をとって人と付き合ってきた。友達はいるかもしれないが、親友と呼べる奴はいないに等しい。こんな風に考えたことなかったが、今まで生きてきて、人を信じるってことをあまりしなかったのかもしれない。でも、そんなものを簡単にぶっ壊した人がいた。<br />
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「朝比奈さんは俺のことを無条件で信じてくれました。信じるってことは、お互い助け合うってことでしょ?俺を救ってくれたのは、間違いなく朝比奈さんなんです。本当にありがとうございました」<br />
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<p> そうか、わかった。朝比奈さん(大)が言いたかったのは、こういうことなんだろう。見えない未来のことを考えてもしょうがない。<br />
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<p>(何を信じるべきか?)<br />
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<p> さっきまでの俺ならわからなかっただろうが、今は違う。朝比奈さん(大)の笑顔、その言葉。朝比奈さんみたいに、俺はみんなを……、信じてみるさ。<br />
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<p>「ぐすっ、ありがとう……」<br />
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 うまく、伝えることができたかな?大丈夫ですよ、間違いなくあなたは立派な人になる。大人になっても、俺の事を忘れず、助けてくれる義理堅い人なんですから。<br />
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