『榎本さん危機百発』
やっぱり年上が良いよな。そうだよな。しかもバンドのヴォーカル。おしとやかな上におくちが素晴らしいときたら、黙っちゃいられない。
中西さんが抜けてENOZはいまやEOZになってしまっている。
つまりエロズだ。黙れ。Rぐらい入れろ。ついでにチンコも入れさせろ。
そういう訳で俺は全裸で追ってくる古泉と山根と岡部と新川さんと――略――放課後の教室で榎本さんと二人きりになったのである。
「待たせてごめんね……」
放課後の教室に伸びる影法師。夕焼けに半身を茜色に染め、榎本さんは小さな声で呟いた。
待たせて――確かに彼女の言葉どおりに時計を見れば約束した時間を十分ほど過ぎている。
俺は腰掛けていた机からかろやかに足を下ろした。ポケットに手を突っ込んで、一歩二歩と歩く。
「別に構いませんよ。十分くらい」
そう笑った……笑えただろうか? 口元がゆがんだだけじゃないのか?
ふん。別にそんな事はどうだって良い。
榎本さんは俯き加減だった顔を上げると、俺を見て透き通るような声で言った。
「……本当に、これで涼宮さんは軽音に入ってくれるの?」
「えぇ。大丈夫ですよ。ハルヒは何だかんだ言って約束は守るやつですし、」
三歩四歩、五歩。喋りながら歩いて、榎本さんの真正面にやって来た。
「――俺の言うことなら何でも聞いてくれるんですよ」
今度こそ、本当に本心から笑った。にっこりと、そりゃあもう我ながら見事にだ。
その証拠に、榎本さんは体をこわばらせてきゅっと唇を噛締めた。
体の動きにあわせ僅かにさらさらと揺れる、夕陽を受けて燃えたようなセミロングの黒髪。
これくらいの長さと彼女の容姿なら見事なポニーテールが見られるだろうに――髪を縛るほうのゴムを用意しておけばよかったと今更少し後悔する。するが、今回は別にまぁ良いか。今日でお終いじゃないんだから。
おもむろにポケットから手を出し、榎本さんの両肩に乗せた。ひくん、と跳ねる体を手の力を押さえつける。……背はハルヒと同じくらいった。胸も。なんだかなぁ。ま、良いか。
「こんなやつだとは思いませんでした?」
「……」
静かに音も無い小さな首肯。
あー、そりゃそうだろうなぁ。俺だって変な悪魔に取り付かれたからこうしてるわけだし。
普通の俺はそれはもう奇特なお人よし野郎にしか見えないからな。
だがしかし、上っ面がそう見えるだけで本心は――はっ、そんな事今の俺には知る由も無いが。
「それじゃあ、ちゃっちゃとやりましょうか。おしゃべりは苦手なんです」
言いつつ俺は肩に置いていた手を、彼女の体の曲線とおうとつを這うようにゆっくりと下に下ろしていった。
「……う、うぅ」
俺の手のひらが双方の胸の突起の上を通過したとき、榎本さんの口から小さな呻きが漏れた。
もじもじと震える体に、結んだ唇。随分と着やせするタイプなようで、手のひらに伝わる肉感は朝比奈さんに勝るとも劣らないものである。当たりだ。さすが俺。
「……うぅぅ」
わき腹を通って、手を後ろへ回す。スカート五指に柔らかで弾力のあるお尻を何度も撫で回した。
俺の顔よりも頭ひとつ分下には、懸命に耐えながらもうめき声を押さえれない榎本さんの赤い顔。
「んっ……!」
ぐいっと指に力を込める。お尻をわしづかみにすると、今度は鼻から甘い息が漏れる。
衣擦れの音と吐息を感じながら、ゆさゆさと揺らしたりまわしたりと好き放題に弄ると、榎本さんは目と唇をいっそうぎゅっと結ぶ。
「恥じらいの演技ですか? 上手いもんですね」
「ち、ちが……」
「違うんですか? ……じゃあなんだ。榎本さんは好きでもない男に衣服越しにお尻を触られただけで感じてるんですか。
校内どころかいまやインディーズで大人気なバンドのヴォーカルさんが、こんな変態さんだったなんてなぁ」
あーあー、いやだね。不潔だね。とお尻を握ったまま肩をすくめるだなんて器用なことをする。
「ち、違う! わたし、そんなんじゃ……」
気の毒なくらい顔を赤くして、榎本さんは髪を振り乱した。
けれど、俺と視線が合うやいなやその勢いはとたんにしぼんでしまう。……なんなんだ。いや、手間がかからなくて良いし……別にかかっても別に良いんだが。
「はぁ。……分かってますよ。榎本さんはそんな人じゃありませんよ」
さてさてである。俺は溜め息を吐きつつ苦笑した。だがしかし、お上品にエスコートなどしてやる必要は無いので、
「――そんな人かどうかは、今から確かめるんですから」
「あっ、……あ、あぁん……」
右手をそろそろと前部に移動させて、股の間にもぐりこませる。すべすべ、そしてむっちりとした太ももの感触が気持ち良い。そして上方の、スカートに隠れたその一番奥にまで持ってきた。
「何だか湿ってませんか? 俺の気のせいですかね」
「い……やぁ、ちがう、ちがうの」
手のひらでそこをぴったりと覆う。じんわりと暖かく、そして僅かに湿り気があった。
榎本さんは体全体をもじもじと揺らしながら、恥じらいに鳴いた。
「何が違うんですか?」
「う、うぅ……ううう……」
……なるほど納得した。思わず背筋がぶるりと震えるような甘美な歌声だった。さすが大人気ヴォーカリストである。
この女の嬌声を、歌声をもっと聴きたいと思う。