「朝倉涼子の再誕 エピローグ」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
後で聞いた話になる。・・・前にも使ったな、このフレーズ。
「あの時、涼子は確かに周防九曜とともに情報連結を凍結された」
いつもならばこの手の役割は古泉が喜んで請け負うのだが、今回の解説役は長門だ。
餅は餅屋、というやつである。
「しかし、わたしはあなたと別れた後教室に戻り、涼子を周防九曜とともに情報統合思念体のもとへ転送した」
そういえば、あの時長門は氷像と化した朝倉をどうにもしなかったな。
最低限どこかに運ばなければ翌朝にでも大変な騒ぎになるというのに、あの時はそんなことにも気付かなかった。
「その後、統合思念体は凍結状態のまま涼子たちを引き剥がし、周防九曜のみを情報連結解除した」
そんなこともできるなんて、長門の親玉は相変わらず凄すぎるな。
しかし、どうせナントカ解除をするんだったら、どうしてあの場でそれをしなかったんだ?
「涼子が巻き添えを食らって消滅してしまう。それに、もしあの場で周防九曜の情報連結を解除していれば、『ハルマゲドン』が完全起動する可能性があった。インターフェースの処理能力ではその可能性を払拭しきれない。涼子はあの状況において、最も適切な判断に基づいて行動した」
以前その台詞を言った時とはうって変わって、どこか誇らしげな様子で言う長門。
しかしな、長門よ。
「なに?」
「どうして、あの場でそれを言ってくれなかった?」
そうすれば、俺はこんなに苦しまずに済んだのではないだろうか。
「ごめんなさい。わたしも知らなかった。あなたと別れた後、わたし宛にこの音声データが」
「・・・なんだって?」
『やっほー、有希ちゃん元気かなあ? パパだよぉ~。
それでね、さっきの涼子ちゃんなんだけど、急進派が死ぬほど心配してるからこっちに転送してくれないかな?うん、あとはこっちで凍結解除して、涼子ちゃんだけ送り返すから。一ヶ月くらいかかるかもだけど。
あ、あとキョン君にはこのことは秘密で。その方が面白いでしょ?
んじゃま、そゆことで~♪』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もはや、怒りを通り越して呆れた。言葉も出ない。
なんで俺には秘密なんだ。長門も長門でそんな指令に律儀に従うな。それ以前になんであんたはそんなにキャラ軽いんだ。
色々と言いたいことはあるのだが、とりあえず、
「・・・宇宙生命体にまであだ名で呼ばれるのか、俺・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・ごめんなさい」
§
さて、朝倉が改めて転校してきた日、我がSOS団にも多少なりとも変化が見られた。
長門印の解説によって思念体とやらへのイメージが音を立てて崩れ去った後、SOS団のアジトたる文芸部室に来客があったのである。
その来訪者は、やはり例によって例のごとく涼宮ハルヒ団長閣下に連れられてやってきた。
「みんなー! 今日は新団員を紹介するわよぉっ♪」
いつものように無駄に元気なハルヒにまた誰かとんでもない奴を巻き込んだのか、と文句の一つもくれてやろうと口を開きかけて振り向いた俺は、
「こんにちわ、朝倉涼子です。皆さん、よろしくね」
自分でも面白いくらいその場で固まった。
リアクションが取れずに硬直しきりの俺にウインクを投げかけた後、朝倉はハルヒに対して楽しげに問うた。
「それで、ここは何をする部・・・じゃなかった、団体なの?」
本当は知ってるんでしょ。わかってるくせに。
平行世界のどこぞの動画サイトで明らかになった高速詠唱逆再生まがいのボケを心の中で行い、そのあまりの低レベルさにやはり心の中で悶絶している間にも、ハルヒと朝倉の問答は続いていたらしい。
「面白そうね、それ。わたしも参加させてほしいな」
おいおい。そんなんでいいのか、朝倉よ。
仕方がないので現実逃避をやめ、俺はハルヒに訊いてみることにした。
「・・・で、今度はどんな属性があるから連れてきたんだ?」
本当は考えるまでもない。ぶっちゃけ答えは分かりきっているが、それでも訊いてしまうのは雑用兼団長暴走時用緊急ストッパー故の悲しいSa・Gaなのか。
「決まってるじゃない」
あぁ、予想できる。したくもないのにできてしまう。
「見るからに『私、委員長です』ってキャラしてるからよ!!」
・・・・・・はぁ。
そんなの当たり前だろう。ほんまもんの委員長なんだから。
思わず嘆息した俺に苦笑して、朝倉はまさしく委員長スキルを発動させた。
「話が進まないから戻すけど、私も団員になっていいのね?」
「もちろんよ! よろしくね、涼子!」
おや、珍しい。ハルヒが朝倉を名前で呼んだ。
やっぱり女子団員は名前で呼ぶのか? 長門然り、朝比奈さん然り。
「ほらキョン、何ぼさっとしてるのよ! すぐに涼子の分のパソコン貰いに行くわよ!?」
やめてやれ。あまり植民地で圧政を敷きすぎると、その先に待つのは反乱のみだぜ。
俺は叛旗を翻すコンピ研の連中を想像してそれはないかなとすぐにその像を打ち消して、朝倉に耳打ちをする。
「・・・いいのか?」
それだけで、きっとこいつには通じてくれる。
無駄な言葉で飾り立てなくても、互いの心は相手に伝わる。
「ん。私、もともとこういうの好きだし・・・何より」
「・・・何より?」
その先は、予想できた。予想できたからこそ、俺は問う。
「キョン君がいてくれるから・・・ね?」
互いに以心伝心である、という幸せ。
その幸せを、よりしっかりと、噛みしめるために。
§
おまけ
●<「・・・僕ら、今回は出番がありませんでしたね」
み「ほんとですね~。いい加減にしねぇとケツの穴から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタいわしたるぞゴルァ! って感じですよね」
●<「ちょっ・・・! 朝比奈さん、ストップストップ! 言い回し違うしキャラ変わってる・・・」
み「地ですよ?」
●<「・・・・・・Σ((((°Д°;))))ガクガクブルブル」
み「うふふ、そんなに怯えちゃって・・・これは、すこし『授業』が必要ですかぁ?」
●<「なぁ、あ、朝比奈さん!? ちょ、どこ触って・・・! あ、いやぁ、そこは、アッーーー!」