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九曜もバカだった - (2008/02/16 (土) 03:59:29) の編集履歴(バックアップ)


 

~プロローグ~

 


喜緑「か~いちょっ! うふふ、やっとこの日が来ましたね」
会長「どうした喜緑くん。何が楽しみなんだね」
喜緑「やだぁ、も~、トボケちゃって~。今日は男の子が毎年楽しみにしてるあの日じゃないですか~」
会長「いっとくがバレンタインデーは昨日だぞ」
喜緑「ええ、ですから。はい、チョコレートのような物です」
会長「『のような物』ってなんだね。今日はそういう日じゃないだろう」
喜緑「やだなぁ、もう今日は待ちに待ったバレンタインデーアフターじゃないですか」
会長「勝手に変な記念日を作って遊ぶんじゃない。
   そうそう毎日あんなことがあってたまるか」
喜緑「やだなぁ、会長ったら考え方が古いですわ。若者っぽくないです。
   本当は何もない日なんてないんですよ。
   昨日と今日にいったいどれだけの違いがあるというのですか?
   同じ地球上にだってまだ2月14日のところはあったりするんですよ。
   要するに自分の気持ちしだいで毎日が特別な一日になるんです!
   そうすれば毎日とても楽しくやっていけると思いませんか?」
会長「たまにそうやっていいこといって、上手くまとめようとしないでくれたまえ」
喜緑「今年は何人の犠牲者が出るんでしょうか」
会長「頼むから死人だけは出さないでくれよ」
喜緑「今年も会長はわたしからのチョコ1つしかもらえませんでしたね」
会長「どうせ君が他の子の妨害をしてるんだろう」
喜緑「あのー、会長。実はそれなんですけど」
会長「なんだね」
喜緑「たしかにわたし、いつも会長にチョコを渡す不届き者を妨害しようと心待ちにしてるんですが、
   一度として会長にチョコを渡そうという女子に出会ったことがないんですが、なぜでしょう」
会長「………………知らん」
喜緑「おかしいですよね。まさか生徒会長たるものがバレンタインデーに義理チョコすらもらえないなんて」
会長「別にそんな恥ずかしいことではないだろう」
喜緑「え? まさか……え?まさか……会長って……」
会長「まさかってなんだね。私にまさかなどない」
喜緑「そうですよねー。そんなことないですよねえ。会長に限って」
会長「心配するな。きっと今日こそ下駄箱を空けたら女の子からチョコレートが」パカッ
喜緑「入ってますよね(笑)」ププ
会長「………………入ってた」
喜緑「な、なにぃぃぃぃぃぃ!!!?」
会長「……ふっふっふ。ど、どうだ。私だってモテる時はモテるんだよ」
喜緑「何かの間違いですよ。だいたいバレンタインデーの次の日にチョコを渡すバカなんていません」
会長「チョコレートだこれ。ちゃんとハート型の箱にラッピングしてあるし」
喜緑「誰かと間違えたんですよ。隣の下駄箱とか」
会長「ちゃんと宛名も『生徒会長さんへ』ってなってるし!」
喜緑「ということは……」
会長「う……生まれて初めて女の子にチョコをもらった!?」
喜緑「あっれー!? わたしのはノーカウントですかぁ?」
会長「う、うれしい……素直にうれしいぞこれは……ジーン」
喜緑「むぅ~……ムスー」

 

「──────喜んでもらえて───うれしい」

 

会長「だ、誰だ君は。いつからそこに?!」
「──────わたしは、右翼」

 

九曜「……────右翼───左翼」
喜緑「あら、過激的な名前ですわね」
九曜「間違えた──────九曜──周防」
喜緑「さっきのお名前の方が素敵ですよ」
会長「いいから君は黙っててくれないか。このプレゼントは君がくれたのかい?」
九曜「─────────そう」
会長「ふっふっふ。ほら見たまえ。私もチョコをくれる女子の一人や二人くらいいるのだよ。喜緑くん」
喜緑「ありえん(笑)」
会長「君も毎年くれるだろうが」
喜緑「だって(笑)ありえん(笑)」
会長「笑うな、ムカツクからそれ」
喜緑「会長にチョコをプレゼントしてどうするんですか(笑)なんでチョコ(笑)」
会長「……今年は渡されたアレは何だったんだね?」
喜緑「うふふ。もう忘れました」
会長「食べなくてよかった……」
九曜「──生徒───会長───あなたに──────あげる。
   ─────バ───レン──タイ───ン─────チ────」
会長「……なだかよく聞き取りづらい声だな」
喜緑「でもあなたねー。今日が何日だか知ってるの? 2月15日よ? バレンタインデーじゃないわよ?
   そこのところわかってるの? 会長はすごく迷惑そうにしてるんだけど」
会長「まずはそれを自分に言い聞かせてくれ」
九曜「────────開けて」
会長「ああ、さっそく開けてみるよ」ガサガサ
喜緑「なんでそんなに嬉しそうなんですか。らしくないですよ。鼻の下も伸びてるし」
会長「ははは。なんとでもいいたまえ」ガサガサ
九曜「──────どう?」
会長「こ、これは!」
喜緑「これがチョコなの!? う、美しい……。
   なんて精巧かつ緻密な作りなの……。
   ツヤ、黒さ、丸み、太さ、右に曲がっているところ、
   皮のあまり具合、棒の短さ。どれをとっても本物そっくり……。
   まさしくこれこそ……バレンタイン──────」
九曜「───チンコ」
会長「ふ、ふざけるなぁあ!」
喜緑「ねえ、あなた……どうして会長のチンコのことをこんなに詳しく知ってる訳?」
会長「なあ、全く同じ質問を君にしてもいいかな? 喜緑くん」
九曜「──────バレンタインデーはこれを送るのが定番だと───聞いた」
会長「誰にだよ!?」
喜緑「あ、そうだ。はい、会長。わたしからも定番のプレゼントですよー」
会長「お前かぁぁー!」

 

………
……

 

ついに─────────みつけた。

今回の使命は。観測対象の鍵となる存在の捕獲。
ターゲット対象は県立北高校に所属している男子生徒。
年齢は16~17歳。
性格はおとなしめで普通。
成績も至って普通。
顔もハンサムというわけでもなく、普通。
周りのみんなには名前で呼ばれるよりも通称で呼ばれることの方が多いらしい。
ただそれだけだと極めて普通の存在でしかない。
その者だけにある特徴として、情報統合思念体の作り出したアンドロイドがいつも傍らにいること。
そしてそのアンドロイドの特徴は、
女性型であること。
思考回路が極端にバカなこと。
アホなこと。
エロいこと。
使えないグズなこと。
ドジ、マヌケ、トーヘンボク。

 

とりあえず今のところわかるのはこれだけ。
思い出せるのはこれだけ。
あとは説明聞くのめんどくさくて覚えていない。
後半スルーしてたから忘れた。
でもたぶんあいつで間違いない。
もう一人のあの女も完璧バカだったし。
あいつマジでバカ。笑える。
地球での流行のプレゼントまで教えてくれるし。
おかげで第一次接触としてはかなりの好印象だったはず。
もうすぐ結納の準備をしなくては。

髪があそこまでワカメとは聞いてなかったけどあれが長門有希に違いない。
間違いない。絶対。

 

しかし地球人はわからない。
男性器型のチョコレートをもらって喜ぶとは。
きっと一ヵ月後のお返しはこの前海に行った時に岩場に張り付いていたアレかもしれない。
海には髪の毛に似た何かも生えてるし、地球は想像以上に不思議な辺鄙なところだ。

 

以上、報告終わり──────。

 


  ~もし長門がバカだったら
   もちろん九曜もバカだった~

 


続く。

 

 

長門