「第5章-9 The trouble of all」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
押さえていた胸元に変な感触。なんだ、ポケットに何か入っている。胸ポケットその物を取り出して見ると……、2つに折られたノートの切れ端だった。こんなもん入れた覚えはない。
「なんだこりゃ?」
紙を開いてみると、俺の字で
正しい世界を取り戻すため、過去に戻れ。
と書かれ、その下には2つの年月日、時間が書かれていた。
これは……、過去に戻れって、どうやって?あっそうか、見た目は中学生なんだが、実は未来人でタイムスリップできる人が目の前にいた。その人は、麗しの女神、朝比奈さんだ。
「朝比奈さん、これを見て下さい」
「これは……、過去に戻れって書いてます」
「どうやら俺が書いたみたいなんですが、今の俺にはその記憶がありません。この紙に書かれている時間に行けってことじゃないでしょうか?」
「でも、過去に戻るには許可が必要です。ちょっと待って下さい」
しばらく、朝比奈さんは目をつぶっていたが、やがて首を振り
「だめです、次元が違うせいか通信できません。あれ、そういえば……」
どうしたんだろう、急に朝比奈さんが難しい顔をした。
「最近おかしなメッセージが来ていたんです。緊急事態になった場合、あなたの指示に従うようにと。詳しいことは禁則事項なんですが……」
未来人は、何か知っていてそんなメッセージを送ってきたのではないだろうか。ということは、こういう自体になるのも、わかっていた?朝比奈さんの後光と共に、わずかな希望が光った気がした。
「さっき言ったとおり、俺にはこの紙に書かれているメッセージが、元の世界に戻るヒントとしか思えません。だから、どうしても試してみたいんです」
朝比奈さんは少し考え、決心したように
「わかりました」
力強いまなざしを俺に向けた。
こういう時の朝比奈さんは、見た目は中学生なのに、安心させてくれるお姉さん属性を持っているようだ。俺が今自分を保っていられるのは、朝比奈さんがいるおかげ。本当に感謝している。だから最悪、朝比奈さんだけでも元の世界に戻して見せる。俺に何ができるのかはわからないが……、やれるだけのことをやるさ。