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ひぐらしの憂鬱 第二章 - (2007/02/25 (日) 23:14:41) のソース

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次の日、<br>
俺は昨日のことが少し気にかかっていた。あの裕さんが言った言葉<br>

『嫌な事件、、、腕が一本、、、』あの言葉が何回も頭にリピートがかかったかのように<br>

鳴り響いていた。いったい何があったのか、この一見穏やかに見えるこの村で・・<br>

教室の窓から身を出し、そんなことを考えていた。<br>
「・・・」<br>
えっ?何か聞こえたような気がしたので後ろを振り返る。そこにはいつもは読書をしているはずの<br>

長門の姿があった。思っても見なかった人物の登場に俺は少したじろぐ。<br>

「おおぅっ」俺もなんて間抜けな声を出したものだ。<br>
「どうした長門?」声色を戻す俺。<br>
「・・何かあった?・・・」<br>
長門がこんなことを聞いてくるなんて、俺はそんなにも変わった様子を見せていたのだろうか。<br>

ここは何事もなかったかのように振る舞っておくか。<br>
「いや、ちょっと今日の晩飯は何かなぁ、なんて考えていたものだからさハハハ」<br>

わざとらしすぎたか?演技っぽいだろうか。<br>
「・・・・・そう」<br>
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納得したのか?俺の演技が通じたのだろうか、長門はそう言うと自分の席に戻りいつものように<br>

読書を始めた。<br>
いやぁおれの演技もたいしたもんだ、こりゃあもしかしたら将来はドラマデビューか?なんて馬鹿な<br>

ことは置いといて、長門にでさえ俺の態度がばれたのだろうから少しは態度に気をつけた方がいいな。<br>

よしもう考えるのはよそう、うん、その方が頭もすっきりする。<br>

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この学校ではどこの学校にもあるようなキーンコーンカーンコーンなんてベルは鳴らない。<br>

校長先生が直々に廊下に出てきて手持ちの鐘を鳴らすのだ。今時そんな学校はないとか思っただろう?<br>

それがあるのだ、ここにはな。<br>
すこし紹介しておこう、この雛見沢分校には学年ごとに1クラスしかないしかもクラス内にもそれほど<br>

生徒はいない。ここの近隣にも普通の高校があるらしくそちらへ通う生徒もいる。<br>

興宮とか言ったかな?やはりこんな高校では就職や進路に不利があるのだろう。ちゃんと考えている<br>

奴らはそっちに行くらしい。しかしここのやつらがバカばかりと言うわけではない。<br>

次に挙げるのはこっちに転校してきてわかったことだ。<br>
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その1、なぜか知らんが周りの奴は俺よりも数倍も頭が良いのだ。古泉や長門は見た目でなんとなく<br>

わかるだろう。授業中に当てられてもすんなり答えやがる。いや勉強しない俺が悪いのは分かる。<br>

しかし、俺の後ろの席にいる涼宮ハルヒを見てみろ!授業中なんか後ろからいびきが聞こえて<br>

きやがる。たいていこいつは寝ている。授業中も、しかもテスト中もだ!そのくせ、テストではいつも<br>

上位らしい。なぜだ!、なぜだ!?なぜだぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!??????<br>

・・・・・失礼少し感情的になりすぎた。<br>
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その2、バカもいるってことだ。その例を挙げよう。こいつ、谷口だ。大抵こいつと点数の争いを<br>

することになる。この前のことである。小テストが返ってきたとき、<br>

「キョーーン何点だった?俺8点だったぜ!!」真性のアホだ。ただでさえ小さな教室にそんなでかい<br>

声で言ってきたらみんなにばれるだろうがっ!しかしそんな屈辱も感じないのかよってくる谷口。<br>

無視しよう。あまり関わらない方がいいな、うん。<br>
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その3、昼飯時がやけに熱いと言うことだ。言っておく、気温ではないぞ。<br>

4時間目の終わりを告げる鐘が鳴ると、後ろから<br>
『おわったー!』という声が聞こえてくると同時に机をガタガタと鳴らし移動し始めるハルヒ、そして<br>

SOS団のメンバー。2年生の教室から朝比奈さんも加わり、全員で食べる、もちろん俺もだ。しかし、<br>

その時間は昼飯とは名ばかりの熱いバトルの時間だった、、、。<br>

「「いただきます」」という言葉とともにそれは始まる。俺、ハルヒ、長門の三人は同時に<br>

一番狙いの朝比奈さんの弁当に箸をのばす。なぜ、小食そうな朝比奈さんがこんなでかい弁当箱を<br>

持ってくるのかというと、こういうわけである。普通のサイズでは俺たちが弁当をガッツリ食べて<br>

しまうせいで朝比奈さんの食べる分が残らないのである。普通なら人の弁当に手を出し怒りだすで<br>

あろう、しかし、朝比奈さんはうふふと笑い<br>
「そんなにおいしそうに食べてくださるなんてうれしいです」なんてことをおっしゃったのだぁ!!<br>

こんなことを言われて箸を止める奴はいるか?そんな奴がいるなら見てみたいね!はり倒してやる!<br>

その笑顔のおかげで俺は遠慮なく箸をのばすことができるのだ。うらやましいだろ。<br>

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しかし、ゆっくりしている暇もない早く次のおかずに手を出さないとなくなってしまうからだ!<br>

次はあの卵焼きだ!目標を定めた俺は右手を出そうとするしかしその手はハルヒによって止めら<br>

れるのだ。<br>
「なにすんだよハルヒ!」<br>
「うるさいわねっ、あの卵焼きは私が狙ってたのよ!あんたに食べる権利なんかないんだからねっ!」<br>

「お前は昨日食っただろうっ!俺は前々から狙ってたんだ!この手を離せ!」<br>

「あんたこそ離しなさいよ!!」<br>
その間を狙って長門が箸でつかんで自分の口に持って行く。<br>

「「!!」」モクモクと食べ長門は言う、<br>
「・・・・漁夫の利」<br>
負けた・・俺はこの争いに負けてしまった・・・なんて落ち込んでいる時間などない、次のおかずに<br>

手を伸ばすからだっ!<br>
卵焼きで争う俺たち、、これがいつもの俺たちの飯時の風景である。古泉はと言うと俺たちの<br>

やりとりを遠くから眺めるかのようににやけながら自分の弁当をたべていた。のんきな奴だ。<br>

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飯の時間も終え眠気を誘う午後の授業にも耐え、放課後になる。<br>

昨日から始まったSOS団の活動に参加すべく俺は放課後になっても教室に残っていた。<br>

5人がそろい、我らが団長は言う。<br>
「今日は今度の休みにある綿流しのお祭りの時の予定を決めることにするわ!」<br>

綿流し?なんだそれ?祭なのか?<br>
「おい、ハルヒなんだよ綿流しって?」<br>
「あんた回覧板に書いてたでしょう!?今度のお休みには綿流しがありますってやつ」<br>

そんなのあったかぁ?俺は記憶をたどる、、そういえば母さんがそんなことを言ってたかな、妹も<br>

はしゃいでたっけか。<br>
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「そういえばそんなのも聞いたことがあるような・・・」<br>

「とにかくそれよ!で我がSOS団はその日そこに探検しに行くってわけよ!」<br>

つまりハルヒは探検という名目で遊びに行きたいと言うことらしかった。祭はたしかに楽しいし、<br>

うまいものも食えるからな、俺は大賛成だ。<br>
「みくるちゃん言っておくけど当日は浴衣だからね!忘れちゃダメよ!」<br>

「はぁ~い」と答える朝比奈さんの浴衣姿を想像し悶々としていた俺はハルヒに目をつけられ、<br>

「エロキョン!」と言われたのだった。<br>
「有希は・・・浴衣は無理よね」<br>
「なんだよハルヒ、長門だけひいきかよ」<br>
「バカねぇ有希は神社の巫女さんなんだから当日は奉納演舞があんのよ」<br>

そう、長門はこの雛見沢にある古手神社の巫女さんなのだ。ミステリアスな感じが似合っている。<br>

長門の巫女さん衣装か、、、これは見てみたい!ちなみに言っておくが俺に巫女さん属性はないぞ。<br>

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そんなこんなで俺たちはスケジュール決めをし、朝のいつもの待ち合わせ場所に5時集合という形<br>

で話し合いは終わった。<br>
「さぁ帰るわよ!キョン!みくるちゃん!」<br>
帰りの方向が同じ俺たち三人は一緒に帰ることになっている。長門と古泉は家が反対方向だからな。<br>

時間は昨日より少し早いくらいか・・そのせいもあり帰り道でハルヒは<br>

「キョン今日もまた行くわよっ!」なんて言い出した。また同じ場所に行くのは気が引けた。<br>

昨日の裕さんの話が思い出されるからだ。しかし、俺は真実を知りたいという好奇心に負け、<br>

「あぁ、別にいいぜ」と返事をした。<br>
「それじゃあたし急いでうちに戻ってしたくしてくるわっ!あんたも急ぎなさいよ!!じゃあね<br>

みくるちゃん!」<br>
うれしそうに手を振りながら言うハルヒ。<br>
「うふふ」<br>
「どうしたんですか朝比奈さん?」<br>
「だってあんなにうれしそうにはしゃぐ涼宮さんあまり見ないから。キョン君のおかげかもしれ<br>

ませんね?」<br>
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なんだか恥ずかしくなって照れ隠しに頭をかきながら、<br>
「そんなことないですよ、あいつはただゴミ山が好きなんですよ」<br>

うふふと笑う朝比奈さんに向かって俺はそう言ってごまかす。<br>

ここで俺は好奇心を押さえることが出来なくなってしまった。後で後悔するかもしれないのに。<br>

そして聞いてしまったのだ。<br>
「そういえばちょっと聞いたんですけどあのゴミ山で何かあったんですか?ダムがどうとかって<br>

聞いたんですけど」<br>
「キョン君はもう雛見沢の住人なんだから知っててもいいかもしれないですね。実は何年か前<br>

あそこでダムが建設される予定だったんです。」<br>
朝比奈さんは先ほどまでのおっとりした口調を切り替え冷静に落ち着いた雰囲気で話し出した。<br>

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「雛見沢ダム建設計画。国がダムを造ってこの村を水の底に埋めてしまうという恐ろしい計画が<br>

ありました。」<br>
「村を?・・丸ごと沈める?」<br>
「そうです。つまり国は私たちの村を沈めて国のための貯水庫を造ろうとしました。もちろん私たちは<br>

村人総出で反対しました。この村を沈められるものかと、、私たちはあの工事現場で戦いました。<br>

座り込みやデモも行いました。役人の人たちは卑怯で私たちにいろんな嫌がらせをしてきました。」<br>

「よく国を相手にして勝てましたね」<br>
「村長や村の偉い人たちが政治家に根回ししたのです。そうしている間に計画は凍結されました。<br>

私たちが勝ちました。」<br>
・・・思っていたよりも重い出来事に驚いた。しかし俺は聞いたのだ、核心に迫るために。<br>

「ぼ暴力沙汰にはならなかったんですか?」朝比奈さんの顔がピクッと動いた。<br>

「傷害事件とか、・・・さ殺人事件とか」<br>
    <br>
      「ありません」<br>
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そう、それは昨日のハルヒと同じ、完璧な拒絶だった。何よりいつも温和な朝比奈さんがこうまで<br>

断言したことで俺はなんだか内緒にされているような気がした。<br>

疎外感を感じたのだ。よそ者に対するような疎外感を、、<br>

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その後「それじゃあまた明日ね、キョン君」とあいさつをされるまで何も話さずに朝比奈さんと<br>

別れた。<br>
なんだか気分がスッキリしないまま俺はハルヒとの約束を守るために家路を急ぎ、制服を着替え<br>

昨日のゴミ捨て場に向かった。<br>
・・・・・<br>
「遅いわよ!罰金!」<br>
またもや俺はこいつに遅れを取り罰金を支払わなければならなくなってしまった。<br>

やれやれ、俺はため息にも似た言葉を言うと、ハルヒの持つ荷物に目が移った。<br>

「おいハルヒ、なんだよそのカバンは」<br>
「これ?あんたはそんなの気にしなくていいの!さっさと持ち場について探しなさい!」<br>

そう言ってハルヒは向こうに行ってしまった。<br>
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これはチャンスだった。ここはゴミ捨て場、粗大ゴミなどに限らず昔の雑誌なんかも捨ててある。<br>

ここならもしかして、ダム工事の事件について何か手がかりを得ることが出来るのではないかと俺は<br>

考えていた。よし、ハルヒはいない、周りにも誰もいない、、、探そう。何か手がかりを。<br>

10分以上は探しただろう。予想通り週刊雑誌などが置いてあった。<br>

この何十冊とある中から見つけ出さなければならないと思うと気が滅入りそうだった。<br>

あるかどうかもわからない、止めるなら今のうちだぞ、俺!もしも本当に事件があったらどうする!?<br>

俺はどんな反応をすればいいんだ!?<br>
そんな自分の中の叫びよりも好奇心の方が勝っていた、、、<br>

・・・・・・<br>
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探し始めて20分は経ったかもしれない。タオルで汗を拭きながら思った。<br>

もう雑誌も残りわずかになってきた。そろそろハルヒが様子を見に来る頃かもしれない。<br>

よしそろそろ止めるか。もともとそんな事件なんかなかった、この村に何もなかったのだ。<br>

ハハと笑ってすましてしまおう。<br>
そう思い始めたちょうどそのときだった。<br>
「ん?」<br>
・・そう俺は見つけてしまった。禁断の扉になりうるかもしれないその真相を・・・<br>

「、、、『雛見沢ダム・・・・リンチバラバラ・・・殺人事件』」<br>

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そう事件はあったのだ。<br>
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『○月○日×県鹿骨市 雛見沢ダム建設現場にてリンチバラバラ殺人事件が発生<br>

犯人グループは工事関係者、被害者は鉈やつるはしで滅多打ちにされ惨殺<br>

 さらに斧で遺体を頭部、右腕、左腕、胴体、右足、左足の6つに分割<br>

犯人グループは主犯格の男を除き事件発生数日後逮捕、未だ主犯格は逃亡を続け、この男が隠した<br>

右腕は見つかっていない、、』<br>
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「・・・・・」<br>
俺はただただ愕然としていた。この事件の内容だけではない、この村で、雛見沢で殺人事件が<br>

あったのだ、、昨日の裕さんの言葉がよみがえる。<br>
『嫌な事件だったね・・・』<br>
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そのとき、<br>
『キョン』<br>
ビクッと体が震え上がりゆっくりと後ろを振り返った。<br>
そこには、、、巨大な鉈を持ったハルヒが立っていた。<br>
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「うぎゃぁぁぁああぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー」<br>

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「きゃあっ!」<br>
ハルヒがそう言いしりもちをつく。<br>
「驚かさないでよね!キョン!」<br>
「なななんだよっっハルヒかよ!」<br>
「何だとは何よ!まったく!!」<br>
「お前なんだよその鉈は!?!?なんでそんなモンもってんだよ!!」<br>

「あぁ、ちょっと昨日探しに来たとき良さそうなものがあったんだけどさ、角材とかの下になってて<br>

ちょっと取れなさそうだからこの鉈でブッた切ってやろうと思ってね、カバンに入れてきたわけよ!」<br>

ゆっくり立ちながら笑ってハルヒはそう言う。<br>
俺には全く笑えなかった。<br>
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その後なんて会話して帰ったかも覚えていない。だから分かれ道のところでハルヒが、<br>

「キョンっ!!ボッーとしてんじゃないわよ!」と言われ別れた時から意識が回復したことだけは<br>

覚えている。そのときの俺には手を振ることも出来なかった。ただ右手のタオルに隠したさっきの<br>

週刊誌を握りしめていた。<br>
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雛見沢には事件があった。それは確かな事実。しかし今日、昨日とハルヒと朝比奈さんが俺に対して<br>

見せたあの拒絶は何だったのだろうか。俺に隠そうとしているのか?俺への気遣いか?<br>

何か知られたくない理由があるのか?<br>
・・・俺は、真実が知りたい。この雛見沢で起こった血塗られた事件の真実を・・・<br>

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近くの雑木林からひぐらしの声が聞こえてきた。<br>
これから起こる惨劇の開演時刻を知らせるブザーだったのかもしれない・・・<br>

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