<div class="main"> <div>暖かいまどろみの中<br> 聞き慣れない目覚ましの音が鳴り響く<br> キョン「ん・・・う、うるせ・・・」<br> ジリリリリリリ<br> キョン「・・・・ん?クソ・・・この」<br> 毎朝の習慣。右手を軽く伸ばす。しかし、いつもあるはずの場所に目覚まし時計がない<br> キョン<br> 「な、なんだ?・・・」<br> 軽く目を開ける。目覚まし時計は、枕元の見慣れない小棚の上にあった<br> カチッ<br> キョン「んー?・・・・・・ぁ?」<br> 違和感。おかしい。あきらかに。ベッドがデカいし・・・部屋も見慣れない・・・枕も2つある<br> キョン「ここどこだ・・・」<br> 少なくとも俺の部屋ではないことはわかる。いや、俺はいま起きるまでは何をしてたんだっけか<br> いや、いま起きたんだから寝たんだよな・・・どこで?たしかに俺の部屋で寝たよな・・・キャトルミューティレーション?<br> ガチャ<br> キョン「・・・!」<br> ハルヒ「あ、起きた?キョン」<br> キョン「・・・誰ですかあなたは・・・」<br> いや、みりゃわかる。ハルヒだ。どう見てもハルヒ。・・・しかし、ハルヒではない。<br> ハルヒは・・・こんなに胸もないし・・・エプロンなんて・・・<br> キョン「おわわわ・・・近づくな」<br></div> <br> <div>ハルヒ「?」<br> 俺の知ってるハルヒの目だ。ちょっと吊り目がちな目で見つめてくる・・・て、おい、こいつはハルヒだぞ。<br> ちょっとドキドキしてしまう<br> キョン「なにを俺は」<br> ハルヒ「なーにぶつぶつ言ってんのよ。仕事遅れるでしょーが」<br> キョン「ほあ?」<br> ハルヒ「ほあ?じゃないでしょ。さっさと朝ごはん食べて会社行きなさい!」<br> か・・・かいしゃ?・・・学校じゃねーのか・・・てか、・・・これは<br> ハルヒ「・・・・・・」<br> キョン「な・・・んだよ」<br> ハルヒ「・・・・・んー」<br> んんーーーーーーーーーー??これは!これはあああ!見たことあるぞ!漫画で!ドラマで!映画で!そう!キスのおねだりだ!!<br> キョン「お、おい・・・!おまえな・・・悪ふざけも大概に」<br> ハルヒ「あ!パン焦げちゃう!」<br> ドタドタドタ<br> ハルヒ似の人妻は、ハルヒそっくりな騒音を立てながら階段を降りていった<br> いや、わかった。あれは、ハルヒ似でも人妻でもない。いや・・・現実を見ようか・・・あれはたしかに『人妻』のハルヒだ<br> </div> <br> <div> 暑苦しい部室だ・・・もうこれが高校時代最後の夏か・・・<br> キョン「・・・ふー」<br> 古泉「キョンさん。いままで僕たちは防戦一方でした」<br> キョン「なんだいきなり。俺は疲れてるんだ・・・そっとしておいて・・・許可なく隣に座るな」<br> 古泉「ははは、キョンさんの隣は涼宮さん専用でしたね失敬」<br> キョン「もうなにもいわん」<br> 古泉「そうですか、助かります。では、本題に入ります」<br> 思えば三年間。こいつはずっとこうゆう話の展開の仕方だったな<br> 古泉「話は簡単です。キョンさんに涼宮さんの『願望』の中に入ってもらうんです」<br> キョン「・・・大丈夫。驚かない。」<br> 古泉「もう、慣れたものですね。ははは」<br> キョン「まず、言おう。俺をハルヒの願望の中。つまり宇宙人や未来人、超能力者。いや、それだけじゃないだろ。恐竜や怪獣。スーパーヒーローにスーパーロボット<br> はたまた・・・・とにかく、そんな中に俺をぶちこんで」<br> 古泉「ええ・・・・それなんですがね。どうやら、最近の涼宮さんの願望に大きな変化があるようなのです」<br> キョン「変化・・・それ3年前も言ってただろ・・・悪い風に変化してるって」<br> 古泉「違うみたいなんですよ、それが。涼宮さんを変えた決定的なのが」<br> キョン「おまえがなんでそれを知っている」<br> 古泉「やだなぁ。僕はまだなにも言ってませんよ」<br> 俺とハルヒが去年の冬に・・・あの日からハルヒが俺にあまり突っかかってこなくなった<br> 古泉「で、ですね。その変化を見に行ってもらいたいんです。あ、キョンさんは、いつもどおり夜に自室で寝てるだけでいいんです<br> 私たちが飛ばしますから」<br> キョン「超能力も便利になったものだな」<br> 古泉「ははは。ええ、我々も進化してますからね」<br> キョン「進化じゃなくて、進歩といえ。おまえに進化されるとなんか怖い」<br> 古泉「ははは」<br></div> <br> <div>ハルヒ「はい、それじゃ鞄持ったわね」<br> キョン「ん、ああ」<br> ハルヒの作った朝食は、ごく一般的とはいえ、俺には十分満足できるものだった<br> 鞄を持ち、玄関まで行く。ハルヒは・・・マンションより一軒家がいいのか・・・それに結構大きめだな。ハルヒらしといえばハルヒらしいか<br> 俺は心の中で笑ってしまう<br> ハルヒ「はい、お弁当」<br> キョン「おう、あんがとな」<br> 靴を履き終え、玄関のドアに手をかける<br> ハルヒ「・・・・・」<br> 例といえば例のごとくだが・・・<br> キョン「・・・・・・」<br> ハルヒが軽く俺のスーツを掴む<br> キョン「・・・・・・ん」<br> ハルヒ「・・・ん・・あ」<br> 長いキスだ。こんな長いキスを毎朝すんのか<br> ハルヒ「・・・・ん・・・ん」<br> いや、まあ・・・決して悪い気分では・・・<br> キョン「・・・・んあ・・・・ん」<br> 俺はやっぱハルヒが好きなのか<br> ハルヒ「はい!終わりね!いつまでキスしてんの!」<br> キョン「う・・・」<br> いきなり口を離され、なんだか不憫な気持ちになってしまう<br> ハルヒ「本当にキョンはスケベな<br> 結婚したら少しは落ち着くかと思ったんだけどね」<br> キョン「あ・・・あのなぁ」<br></div> <br> <div>俺は玄関のドアを開け、外に足を出す<br> ここどこなんだろうなぁ・・・<br> 玄関の外も見慣れない景色だ<br> キョン「じゃ、行って来る」<br> ハルヒ「さっさと行きなさい!」<br> いってらっしゃいませご主人様とか言え・・・いや、普通はないか<br> キョン「・・・ふー、これがハルヒの『願望』なのか」<br> しばらく歩くと後ろからタタタタと足音が聞こえる<br> キョン「あ・・・弁当」<br> キスして忘れたよ・・・<br> ハルヒが弁当片手に駆けてくる<br> 右手の人差し指を下まぶたにつけて<br> 舌を出して・・・ベーっとしながら<br> ハルヒ「キョン!あんたってほんとーにあたしがいなきゃダメね!アハハハ」<br> それは本当に楽しそうなハルヒの笑顔。無垢な子供のような、それでいて女性の優しさが溢れている<br> この笑顔を俺は・・・叶えたい。いや、叶えられる・・・俺は、そう確信を持ったんだ<br> </div> <br> <div>暑い・・・寝苦しい・・・<br> ジリリリリリリリリリリリジリリリリリリリリリリリ<br> キョン「・・・あ・・つい・・・う、うるせ」<br> カチッ<br> 俺はいつもどおりの部屋で、いつもどおりの位置の目覚ましを止めた<br> キョン「・・・今日から夏休みだ」<br> プルルルルルルルルルル<br> ピッ<br> キョン「んあ」<br> ハルヒ「キョン!おきてるー!?SOS団発進よ!すぐに学校に来るように!以上」<br> </div> <br> <br> <div>おわり<br></div> </div> <!-- ad -->