<p> ―同日、同時刻―<br /> <br /> どうも、みなさん。古泉一樹です。<br /> 僕は今、自分の家でくつろいでいるところです。<br /> 日曜日の朝、天気もいいですし、今日は楽しい一日になりそうだ。<br /> これからの時間を思うと胸が高鳴ってきます。<br /> ピンポーン!<br /> おや、少し早いようですが、どうやら来たようですね。<br /> <br /> <br /> <br /> 『涼宮ハルヒの交流』<br /> ―エピローグおまけ 古泉一樹の場合―<br /> <br /> <br /> <br /> 「ちょっと早かったね。おはよう、みーちゃん(※朝比奈みくるのこと)」<br /> 「あなたに早く会いたかったの。おはよう、いっちゃん(※古泉一樹のこと)」<br /> 「嬉しいよ。とりあえず上がって」<br /> 「はぁい、お邪魔しまぁす」<br /> とりあえず家に入ったみーちゃんと、テレビの前のソファーに腰掛ける。<br /> 「今日いい天気で良かったね。家にずっといるのはもったいないかも」<br /> 「そうだね。じゃあ朝はのんびりして、昼くらいから出かけよっか?」<br /> 「うん。私もそれでいいよ。とりあえずお茶でも煎れてくるね」<br /> 「ありがとう。みーちゃんのお茶はおいしいからね」<br /> <br /> みーちゃんの煎れてくれたお茶を二人で飲む。<br /> 「いっちゃんはいつもおいしそうに飲んでくれるからとても嬉しいの」<br /> 「みーちゃんのお茶がおいしいのさ。ホントは部室でもそうしたいけど、ばれちゃうからね」<br /> 「うふふ、しょうがないよね」<br /> なんてイチャイチャしながら過ごす日曜の朝は幸せだなぁ。<br /> <br /> プルルルルル……<br /> 「あれ?いっちゃん、電話鳴ってるよ」<br /> 電話?……まったく、誰からでしょう。<br /> ディスプレイを覗いてみると、そこには『涼宮ハルヒの犬(※キョンのこと)』の文字が。<br /> ちっ。……あいつかよ。<br /> プルルルルル……<br /> プルルルルル……<br /> 「キョンくんから?あれ?出ないの?」<br /> 「いや、出るよ」<br /> まったく……仕方ないですね。<br /> <br /> 「……もしもし、どうかしましたか?」<br /> 『都合悪いのか?ならやめとくが』<br /> おっと、声に出てしまいましたか。<br /> 「結構ですよ。それよりご用件は?」<br /> 『ああ、すまんな。今ハルヒがどのあたりにいるかわかるか?』<br /> ええっと、どうだったかな?適当でいいか。<br /> 「先ほど家を出たようですから、……あなたの家まであと3分といったところでしょうか?」<br /> 『今向こうのハルヒが俺のところに来ていて困ってるんだ。なんとか長門の家まで運べないか?<br /> なんか帰りたくないってわがまま言ってて困ってんだ』<br /> まったく、そのくらい自分でなんとかしてほしいですよ。<br /> 「……それは困りましたね。5分もあればそちらにタクシーを寄越せますけど」『くそっ、無理だ。他に何か――』<br /> そう、無理です。自分でなんとかしてください。<br /> 『……どうやらもうハルヒが来ちまったようだ。お前3分って言わなかったか?まぁいい。これからどうす――』<br /> ああ、もうめんどくさいですね。<br /> 「ご武運を」<br /> プツッ。<br /> <br /> 「キョンくんは何て?」<br /> 「向こうの涼宮さんが来て困ってるってさ」<br /> 「うふふ、キョンくんは少しくらい困ってる方がいいよね」<br /> 「やっぱりみーちゃんもそう思う?」<br /> はははっ、と二人で笑い会う。<br /> 「放っておいていいの?」<br /> まぁ確かにこっちの涼宮さんにばれてしまうと良くはないんですけどね。<br /> 「まぁなんとかするんじゃないかな?」<br /> 「そうね。私達二人ともオフなのは久しぶりだし、キョンくんなんかどうでもいいよね」<br /> 「ははっ、そうだよね」<br /> <br /> そうこうしていると、また電話の呼び出し音が鳴る。<br /> ディスプレイにはやはり『涼宮ハルヒの犬』の文字が。<br /> やれやれ、しょうがないですね。……めんどうだから無視しようかな。<br /> ふと、みーちゃんの方に目をやってみる。<br /> 「出てあげてもいいよ」<br /> そう言われちゃしょうがないですね。<br /> 「……もしもし、どうにかなりそうですか?」<br /> 『説明は面倒だ。時間がない。とりあえず家にタクシーを頼む。5分あればなんとかなるんだろ?頼む』<br /> 「わかりました。すぐに新川さんを向かわせます」<br /> 『サンキュー、よろし――』<br /> プツッ。<br /> 「だいじょうぶみたい?」<br /> 「うん、タクシーを向かわせればオッケーってさ」<br /> 「良かったぁ。いっちゃんが呼び出されたらどうしようかと思ってた」<br /> 「もちろんそのときは無視するよ」<br /> 再び二人で、はははっ、と笑い合う。<br /> そんなある晴れた日のこと。<br /> <br /> <br /> <br /> ◇◇◇◇◇<br /> <br /> <br /> <br /> ―同日、同時刻―<br /> <br /> 今日は日曜日。朝からとても天気がいい。<br /> 普通の場合こんな日には外に遊びに出たくなる。私でも。<br /> 一人でぶらぶらと公園などを歩く。その後、図書館に行き、本を借りる。それを再び公園で読む。<br /> そんなふうに過ごす日曜日は幸せ。<br /> しかし、今日は約束がある。遊びに出るのはそれからでも十分。むしろ二人で行くのもいい。<br /> とりあえず来客があるまで私は家で待機する。ちなみに私は長門有希。<br /> <br /> <br /> <br /> 『涼宮ハルヒの交流』<br /> ―エピローグおまけ 長門有希の場合―<br /> <br /> <br /> <br /> とりあえず彼女が来る前に部屋の片付けや、掃除をしておかないといけない。<br /> 力を使えば簡単。でも自分でちゃんとやった方が気持ちいいと彼女に教わった。<br /> 実際にやってみるとそうだった。だから私は時間があるときはきちんと手で行うことにしている。<br /> <br /> あらかた片付けが終わった後、私は座って携帯電話を手に取る。<br /> 電話を掛けるのか?否、私から掛けるのではない。もうすぐ掛かってくる。そう、彼から。<br /> 本当は私の方から掛けたい。彼に掛けたい。ああ、エラーが生じてしまった。修正。<br /> 最近彼は涼宮ハルヒと遊んでばかり。俗に言うイチャイチャ。悔しい。<br /> 涼宮ハルヒがうらやましい。うらやましい。エラーが発生。修正。<br /> その瞬間、電話が鳴った。正確には音は鳴っていない。鳴る前にとった。早く彼の声が聞きたいから。<br /> 「何?」<br /> 彼は驚いているだろう。こんな様子を想像するのは楽しい。こんなことができるのも私の力。<br /> 涼宮ハルヒは私の力のことを知らない。だから私のこんな遊びも知らない。二人の秘密。<br /> ふふっ、楽しい。エラー。修正。<br /> 『あ、いや、今俺のところに異世界のハルヒがいきなり遊びに来たんだが、俺はハルヒと約束があるんだ。<br /> で、この異世界ハルヒがお前と遊びたいみたいなこと言ってるんだが、どうだ?』<br /> 涼宮ハルヒと遊ぶ約束。悔しい、私と遊んで欲しい。でも言えない。またエラー。修正。<br /> 「いい」<br /> 『迷惑ならそう言えばいいんだぞ。お前もせっかくの休日だろ?いいのか?』<br /> 彼が心配してくれている。彼は私にとても優しい。彼の気遣いは嬉しい。<br /> 「問題ない」<br /> 『……わかった。ありがとよ。じゃあもう少ししたらここを出ると思う。よろしくな』<br /> 「だいじょうぶ。……私も楽しみ」<br /> 『そっか、ならいい。じゃあまたな』<br /> 「また」<br /> プツッ。<br /> 彼との電話が終わってしまった。もっと長く話せない自分が悲しい。またエラーが。修正。<br /> そうだ、彼女が来る準備をしなければ。<br /> とりあえずお湯を沸かしてお茶の準備をする。時間的にはちょうどいいはず。<br /> <br /> ピンポーン!<br /> 準備が完了するとほぼ同時にインターホンがなる。「有希ー、あたしよー。来たわー」<br /> もう一人の涼宮ハルヒが到着したようだ。オートロックを解除する。<br /> 彼女が上に来るまでの時間を使って、湯のみを準備してお茶を煎れる。<br /> ピンポーン!<br /> お茶を机に運んでいると玄関のインターホンがなる。<br /> 「おはよう、有希。入るわね」<br /> 彼女は勝手に入ってくる。いつもそう。別に悪い気はしない。<br /> 「おはよう」<br /> 「あら、お茶煎れてくれてたのね。いつもありがとう」<br /> そう言って彼女はお茶に手をつける。<br /> 「うん、おいしいわ。みくるちゃんのもいいけど、有希のもちょっと違っていいわね」<br /> 「そう」<br /> 私もお茶に口をつける。おそらくそれなりにおいしいはず。<br /> <br /> お茶を飲み終わると彼女が話しかけてくる。<br /> 「で、あんな感じで良かった?」<br /> 「良かった。彼の様子を見ているのは楽しかった」<br /> 実は先ほどからの彼の様子を、私の力を使って全て見ていた。<br /> そのため、彼女が突然彼の家におしかけたのも知っていた。<br /> いや、知っていたのは違う理由。<br /> 「有希の言った通りにおしかけてみたけど、あいつホントに焦ってたわ」<br /> 心から愉快そうな顔で彼女は言う。<br /> そう。今日彼が涼宮ハルヒと会う約束があるのを知っていて、あえてこの涼宮ハルヒをけしかけたのは私。<br /> 「計画通り」<br /> そう言って私も少しだけニヤリと笑う。<br /> 涼宮ハルヒにとられた彼に、この涼宮ハルヒと一緒になってこんなふうにときどきイタズラをする。<br /> そうやって彼に接するのも楽しい。<br /> 「じゃ、次はどうする?」<br /> 「次は……もっと激しく」<br /> 「有希も言うようになったわねー。私も楽しみになってきたわ」<br /> 私もとても楽しみ。彼女はいつも面白いアイデアを出してくれる。<br /> 「次は私も行く」<br /> 「お、いいわね。やってやりましょ」<br /> そうして二人で笑い合う。エラー。修正。<br /> そんなある晴れた日のこと。<br /> <br /> <br /> <br /> ◇◇◇◇◇<br /> <br /> <br /> <br /> ―同日、同時刻―<br /> <br /> 今日もよく晴れてるわねー。日曜日でこんないい天気だと気分もいいわ。<br /> こういう日にはやっぱり外でデートが一番よね。<br /> でもあいつ外出るのめんどうだとかいいそうね。まったく、めんどくさがり屋なんだから。<br /> なんてことを考えながら道を歩いて行くと、そろそろあいつの家が見えてきた。<br /> それにしてもあいつちゃんと起きてるかしら?<br /> あ、ちなみに私は涼宮ハルヒよ。<br /> <br /> <br /> <br /> 『涼宮ハルヒの交流』<br /> ―エピローグおまけ 涼宮ハルヒの場合―<br /> <br /> <br /> <br /> ピンポーン!<br /> 玄関のチャイムを鳴らすとドアが開いて中から元気そうな声が聞こえてくる。<br /> 「はーい!あ、またハルにゃんだー」<br /> 「おはよ、妹ちゃん。キョンはもう起きてる?」<br /> ん?今妹ちゃん『また』って言わなかった?<br /> 「さっき起こしたんだよー。呼んでくるねー」<br /> そう言ってどたばたとキョンの部屋へ走って行く。<br /> それにしても、あいつやっぱり寝てたわね。ちゃんと起きてなさいよ。<br /> などと考えると、すぐに妹ちゃんが戻ってきた。<br /> 「キョンくんが『とりあえず待ってて』だって」<br /> 何やってんのよ。部屋に乗り込んでやろうかしら。<br /> <br /> ピンポーン!<br /> 家の中に入ろうと靴を脱ぎかけたときに、どうやらお客さんが来たみたい。<br /> 来たのは……みくるちゃん?<br /> 「あ、どうもおはようございますぅ」<br /> 「おはよ、みくるちゃん。どうしてここに?」<br /> 「えぇっと、あの、ちょっと涼宮さん時間いいですか?10分くらいですけど」<br /> 「ん?別にいいわよ」<br /> 「じゃあ、ちょっと外で歩きながらお話しましょう」<br /> そういうと、みくるちゃんは妹ちゃんに何かを告げて家を出ていく。あたしもそれに付いていく。</p> <p> 歩きながらしていたみくるちゃんとの話はとても重要な話とは思えなかった。<br /> わざわざ呼び出すほどの話じゃないわね。……これは、きっと何かあったのね。<br /> そういえばさっき妹ちゃんが『また』って言ったわね。それに玄関に女ものの靴もあったし。<br /> なるほど、これはもう一人のあたしが来てるのね。で、みくるちゃんは時間稼ぎかしら。キョンも大変ね。<br /> 「ところでみくるちゃん、古泉くんと付き合ってるの?」<br /> 「ふぇ、な、何で知ってるんですか!?」<br /> 「何でって。見てたらばればれよ。気付いてないのキョンくらいね」<br /> 「ひぇぇ、キョンくんには内緒にしといてくださぁい」<br /> 「ん、いいわよ。そのほうがおもしろいし」<br /> <br /> 10分ほどそうやって他愛のない会話をしながら歩いて家に帰ってくると、家の前にキョンが立っていた。<br /> 「あんた、こんなとこで何やってんの?」<br /> 「何って、お前を待ってたに決まってるだろ?」<br /> 「そ、そう。わざわざ出てこなくても中にいればいいのに」<br /> そんなストレートに言われると照れるじゃない。<br /> 「それじゃあ、私は帰りますねぇ」<br /> 「あ、朝比奈さん。わざわざありがとうございます」<br /> みくるちゃんはキョンの耳元で何かを少し話した後、大慌てで走って去って行った。<br /> 「……そんな、古いず、古いず……」<br /> キョンが変な顔で何か呟いている。<br /> 「あんた、何やってんの?みくるちゃんなんだって?」<br /> 「あ、ああ。いや、ちょっと頼まれごとをしただけだ。気にするな」<br /> 頼まれごと?また未来がどうのとか言われたのかしら。<br /> 「……まぁいいわ。中に入りましょ。お茶でも煎れてあげるわ」<br /> 「ああ、そうだな。サンキュ」<br /> <br /> 家に入ってお茶の準備をする。<br /> 「家の人はいないの?」<br /> 「ああ、朝からどっか出掛けたらしい」<br /> 「ふーん。ま、だからどうということはないけど」<br /> 「あ、お茶煎れてくれてる間に部屋片付けとくから、出来たら呼んでくれ」<br /> そう言ってキョンは部屋に向かい、代わりに妹ちゃんがやってきた。<br /> 「私も手伝うー」<br /> 「そう、ありがとね」<br /> 「ねえねえ、ハルにゃん。今日なんで何回も来たの?」<br /> 何回もって、もう一人の方のことかしら。まずいわね。<br /> 「さ、さぁ。ちょっとそういう気分だったのよ」<br /> 「……ふふふっ。私が全部知ってるとも知らずに……」<br /> 「い、妹ちゃん?今何か言った?」<br /> 「えー?何も言ってないよー」<br /> そ、そう。気のせいだったのかしら?気のせいよね。……まぁいいわ。<br /> そうこうしている間に準備が整った。<br /> 「じゃーキョンくん呼んでくるねー」<br /> その間にテーブルにお茶を煎れた湯のみを並べていく。<br /> 「お、ハルヒありがとな」<br /> キョンと妹ちゃんがやってきて三人で座ってお茶を手に取る。<br /> 「ねえねえ、キョンくん。さっきハルにゃん部屋にいたよね?なんでー?」<br /> ブフッ!<br /> キョンがお茶を吹き出して顔面蒼白になっている。<br /> 「な、な、何の話だ?ハルヒは今来たとこだろ?」<br /> 「そ、そうよ。勘違いよ。あたしは今来たのに」<br /> 「……ふふふっ。二人とも誤魔化すの下手なんだから……」<br /> 「い、妹ちゃん?何か言った?よね?」<br /> 「んー?なんのことー?」<br /> あれ、ホントに幻聴かしら。動揺したらだめよ。しっかりしなさい。<br /> あ、そういえば昨日買っておいたあれがあるはず。「キョン、冷蔵庫開けるわよ」<br /> 「ん?ああ、いいぞ」<br /> いちおう聞いては見たけど返事は聞かずに冷蔵庫を開けてあれを取り出……って、ないわ。<br /> 「ちょっとキョン!あたしのプリン食べたでしょ!?」<br /> 「は?い、いや、俺は食べてないぞ。まじで」<br /> 「ごめーん、ハルにゃん。私がつい食べちゃった。てへっ」<br /> 「そうなの?まぁしょうがないわね」<br /> 「……って言っとけば誤魔化せるわよね。ふふふっ……」<br /> 「い、妹ちゃん?今度こそ何か言ったわよね?」<br /> 「うん。プリンおいしかったよーって」<br /> あれ、そうかしら?何か全然違うこと言ってた気がするけど。<br /> 「ま、まぁいいわ。後でキョンに買って来させましょ」<br /> 「って、俺かよ!」<br /> <br /> そうして三人で笑い合う。ある晴れた日のこと。<br /> <br /> <br /> <br /> 『エピローグおまけ』 ―完―<br /> <br /> </p>