みくる日記<br /> 『今日、部室に入ったらキョンくんと涼宮さんがキスしてました。<br /> 頭が真っ白になって、あたしの顔が真っ赤になっていくのが自分で分かりました。<br /> 二人はあたしが入って来たことにきづかなかったらしいので、軽く咳払いしてみました。<br /> ……無視されました。仕方ないので恋のみくる伝説を歌ってみました。<br /> ……十回ぐらい歌ったとこで嫌気がさしました。<br /> その間一度も唇をはなさなかった二人はある意味驚異です。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『部室に入るとキョンくんと古泉くんが将棋をしていました。<br /> 二人とも真剣だったので、わたしは声をかけずに横からみてました。<br /> しばらくしたらキョンくんが「こんにちは」って挨拶してくれました。<br /> ……でもね、キョンくん。<br /> わたしが二人の対局を見はじめてから少なくとも五回は古泉くんの王様詰んでましたよね?<br /> 一回目で気付いて欲しかったなぁ。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は部室に長門さんしかいませんでした。<br /> 特にやることもないのでお茶をいれてました。<br /> ……なのに、気付いたら部室に一人ぼっちでした。<br /> 長門さん、いつの間に帰ったんだろう?<br /> あたしは鍵を持ってないので、このままじゃ帰れません。<br /> なのでこの日記も部室で書いています。お腹空いたなぁ。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日はちょっと嬉しいことがありました。<br /> 部室で一夜を過ごしたあたしだけど、朝起きたら隣に長門さんがいたんです。<br /> 机に突っ伏して寝てました。<br /> 顔についたブックカバーの跡がとっても可愛かったです。<br /> ……どうせ夢の中の出来事ですけど。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『とりあえず教室に行きました。誰もいません。<br /> まだ早いからかな、って思ってたんですけど……。<br /> 今日が土曜日だったと悟ったのは十二時を回った頃でした。<br /> 都合三食抜きです。ちょっと目も回ってます。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『何とか頑張って部室に戻りました。<br /> ……びっくりする事にそこにはキョンくんも、涼宮さんも、<br /> 古泉くんも、長門さんも、鶴屋さんもいました。<br /> どうやら今日はあたしの誕生日だったみたいです。<br /> ちょっと嬉し涙が出ちゃったのはあたしだけの秘密です☆<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日の団活はお休みでした。でもあたしのお仕事の方はお休みになりません。<br /> 仕方がないのでキョンくんと涼宮さんの尾行をする事にしました。<br /> こう見えてわたし、尾行得意なんです。一度も気付かれたことはありません。<br /> ……存在感ないのかなぁ。あ、えと、それはともかく。二人はというと。<br /> 手を繋いでました。<br /> 腕を絡めてました。<br /> 公衆の面前でキスしてました。<br /> ……ああ、この仕事、辞めたいなぁ。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は鶴屋さんが遊びにきて、お土産に和菓子を持ってきてくれました。<br /> なのに緑茶をきらしてました。<br /> あ、でもコーヒーに和菓子もいいですよ♪ ……嘘つきました、ごめんなさい。<br /> あと、鶴屋さんにこの日記を見られました。<br /> わたしは取り返そうと奮闘しました。ホ、ホントですよ。ほんの二分であきらめてなんかないですよ?<br /> それにしても鶴屋さんは上下逆さまでよく読めたなぁ。やっぱりすごいです。<br /> ……でもあんなに笑わなくても、って思いました。<br /> ちょっと一人旅でもしたいなぁ。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『この間鶴屋さんに見られたのを反省して日記を暗号にすることにしました。<br /> この日のために易しい暗号入門の本を買ったんですよ。<br /> でも、全く易しくなかったです。RSAって何ですか?<br /> 以下、日記です☆<br /> 今さ日さはさ特さにさ何さもさなさいさ日さでさしさた。<br /> 部さ室さでさとさあさるさ二さ人さがさイさチャさイさチャさしさてさたさこさとさ以さ外さは。<br /> ……えさえさ、ホさンさトさ、何さでさもさなさかさっさたさんさでさすさよ。<br /> (うどんの絵)<br /> ――みくる<br /> (後日追記)これ一体、何て読むんでしょう? 困ったなぁ……。』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は久々に街へお買い物に行きました。<br /> なのにお財布を忘れちゃったんです。だから仕方なくお家に帰りました。<br /> ……でもどうやら鍵をどこかに落としたみたいで、お家に入れませんでした。<br /> TPDDの使用許可が下りるまで約五時間かかりました。<br /> ケチだなぁ、と思ったのは内緒です♪<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日部室に入ったらキョンくんと長門さんがいました。<br /> 本を読んでいる長門さんをボーッと眺めてるキョンくんは少しつまらなそうでした。<br /> ためしにキョンくんの後ろでメイド服に着替えてみました。<br /> ……こっちを見るそぶりをチラリとさえみせなかったキョンくんは少しおかしいのかもしれません。<br /> でも、後から涼宮さんが来た時、足音が聞こえた時点で<br /> 目を輝かせて顔を上げるキョンくんを見て何かモヤモヤっとした物を感じました。<br /> 長門さんも心なし震えてました。<br /> 今日のキョンくんのお茶は少し苦かったはずです☆<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日、部室に一番のりしました。だからどうしたと言われても困りますけど……。<br /> 誰も来なくて暇だから、今まで着てみた衣装を見てました。<br /> ふと視線を感じたので振り返ると長門さんがいました。<br /> どうやら興味を持ったみたいなので一着似合いそうなのをおすすめしてみました。<br /> カエルさん、可愛かったなぁ。<br /> ……その日の長門さんは少し冷たかったです。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『部室に入ると一人黄昏てる古泉くんがいました。<br /> 物凄く絵になってて思わず見とれてました。<br /> しばらくすると、キョンくんと涼宮さんがニギヤカに手を繋いで、やって来ました。<br /> なんだかんだでお似合いな二人です。<br /> 最後に長門さんが本を読みながら来ました。危ないと思うのは杞憂でしょうか?<br /> ……でも誰一人として挨拶してくれませんでした。<br /> 今日のお茶はなぜか塩味が効いてました。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『ちょっと存在感を出すためにイメージチェンジしてみました。<br /> 会う人、会う人皆がジロジロと見てました。<br /> 担任の先生に呼び出されました。<br /> 部室に行くと、涼宮さんに「お客さん」と間違えられました。<br /> あたしだと分かると皆さん軽く引いてました。<br /> ……そんなに変でしょうか、「ヤマンバ」って?<br /> この時代の平均的な女子高生の格好って聞いてたんですけど……。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『ヤマンバがずっと前の物だと知ってちょっとショックを受けてるわたしです。<br /> そう言えば誰か「古い」って言ってたような気がします。<br /> 未来に帰ったら教官に抗議しようと思います。<br /> そもそもヤマンバが妖怪だと聞いてかなり落ち込んでます。<br /> あたしはそんなんじゃありませんよぅ。<br /> とりあえず髪を染め直しました。今度は蛍光ピンクです♪<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日はお茶の葉を買いに行きました。<br /> でも、この前大見得きって雁音なんて買っちゃったから、実はお財布が淋しいんです。<br /> いつもの半分くらいしか入ってません。<br /> でもきっと、大丈夫です。今日は特売日のはずですから。……って思ってたらそれは昨日だって言われちゃいました。<br /> どうやら日めくりカレンダーを一日分めくり損ねてたみたいです。<br /> あ、道理で近頃土曜日に登校しちゃうわけですね。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『久しぶりに鶴屋さんのお家に遊びに行きました。<br /> やっぱり和室って良いですよね。あの畳の香りが実は大好きなんです。<br /> 何だか気持が落ち着いてきて、眠くなるんです。<br /> だから鶴屋さんの話もぼんやりとしか聞いてないんですよ。<br /> ごめんなさい、鶴屋さん。今度はわたし、がんばります。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『たまに街を歩いてると声をかけられる事があります。<br /> 大半が男の人なんですけど、この間キリストさんがあーだこーだと語る女の人に会いました。<br /> しばらく聞いていたんですけど、その日は市内探索だったから切り上げなきゃいけなかったんです。<br /> だから、鶴屋さんから教わった困った時の言葉を叫んでみました。<br /> 「この人痴漢です」って。<br /> 九分九厘はこれで何とかなるって鶴屋さんは言ってました。<br /> でも見事に残りの一厘に当たりました。<br /> それでも集合はキョンくんが一番最後でした。もう、一種の才能だと思います。<br /> いつもありがとうございます、キョンくん☆<br /> ……ところで、キリストさんって誰でしょう。あたし、芸能界には疎いんです。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『某月某日金曜日<br /> 今日はお茶の代わりにコーヒーを出してみました。<br /> ……実はほんの少しだけだけど、皆さんの反応が見たかったんです。<br /> 涼宮さんはいつもみたいにイッキ飲みでした。<br /> 古泉くんは普通に飲んでました。飲み慣れてる感じさえありました。<br /> キョンくんはちょっと眉をしかめてました。苦手なのかなぁ?<br /> あたしは当然クリームとガムシロップ入りです♪<br /> ……そう言えば長門さん、飲んでなかったなぁ。明日は飲んでもらえるように頑張ります☆<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は市内探索でした。くじ引きで長門さんと同じグループになりました。<br /> 少し話題に困るんですよね。だけど頑張ってみました。偉い、あたし!<br /> ……全部玉砕しましたけど。それはもう見事に。<br /> お天気の話題……そう、の一言でした。<br /> 最近オススメの本……題名が何語かわかりませんでした。中身はもっとチンプンカンプンでした。<br /> 近頃の涼宮さんとキョンくんについて……ちょっと変なオーラが漂いだしたので断念です。<br /> 仕方ないので図書館に行きました。けど、気付けば十四時を回ってました。<br /> 未読メール50件はまとめて削除しました。……多分全部同じ内容だと思います。<br /> 長門さんはまだ本を読んでました。……はぁ。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『たまにはお家でボンヤリ過ごすのも良いと思います。<br /> 今日は起きたら八時でした。<br /> なのに外は真っ暗でした。<br /> ……あれぇ?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『この間、上司の人から連絡が入りました。<br /> 定期報告書と日記を間違えたみたいです。<br /> 真夜中にこってり二時間はしぼられました。<br /> お陰で今日一日寝不足でした。迷惑をかけた人に、この場を借りて謝らせてください。<br /> 長門さん……本にお茶こぼしてごめんなさい。<br /> キョンくん……お茶かけてごめんなさい。歩きながら寝てました☆<br /> 涼宮さん……もう、何だかわからないけどごめんなさい。<br /> 古泉く<br /><br /><br /> ボールペンのインクが切れちゃったので買ってきました。ええと、何を書いてたんだっけ?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『なんだか熱っぽいんです。<br /> でも学校に行ったんです、頑張って。<br /> 通学路で二、三度生命の危機に瀕しましたけど。車にひかれそうになりました。<br /> それで、放課後の部活の時にお気に入りの湯呑みを割ってしまいました。<br /> 大分ショックです……。しばらく立ち直れそうにありません。<br /><br /> 所で体のあちこちに湿疹があるんです。<br /> もしかして普通の風邪じゃないのかなあ……?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『学校を休んでお医者さんの所に行きました。<br /> (余談ですけど、上司から中々許可が下りなかったんです。<br /> 何かあたしに恨みでもあるんでしょうか?)<br /> はしかだと言われました。どうやら伝染するそうです。みなさんは無事でしょうか?<br /> あ、わたしは未来からお薬を送って貰いました。今ではすっかり元気です。<br /> でもどこかで聞いたことがあるんですよね、タミフルって……<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『どうやらこの前のお薬はインフルエンザのものだったようです。<br /> なのにどうして元気になったのか気になって調べてみました。<br /> 長門さんに聞いたら一瞬でした。あ、そうそう。皆さん見事に感染しちゃったみたいです。長門さん以外。<br /> ……うう、どうしよう。<br /> あ、ちなみにプラシーボ効果と言うらしいです。病は気から、の精神です。<br /> ……要するにわたしが単純だって言いたいのでしょうか?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は突然の夕立にあいました。<br /> 丁度夕飯の材料を買いに出掛けた帰り道だったので、ずぶ濡れになってしまいました。<br /> 思わず走って帰りました。三回滑って四回転びました。卵が割れました。<br /> 大人しく雨宿りでもするんだったなぁ……。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『昨日、鶴屋さんに薦められた本を読んでいたんですけど、気付いたら朝になっていました。<br /> 小鳥さんが鳴いていて、徹夜のお陰で意識が朦朧としてました。<br /> いつもの事ですけど、朝に靴の右と左を間違えました。<br /> あと、授業中に思わず居眠りして怒られたり、お茶の分量を間違えたり……。<br /> 今度からは自律します。<br /> ……って思ってたんですけど、今日もまた徹夜でした。<br /> 目の下に隈が出来ています。<br /> ああ、今から十二時間くらい時間塑行してぐっすり眠りたいなぁ。<br /> ダメ元で申請してみます☆<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『部室内イチャツキ禁止法を制定するべきだと思う今日この頃です。<br /> 今日はキョンくんと涼宮さんの熱々振りをカウントしてみました。<br /> キス……五回。計二十五分。<br /> もう、お腹一杯です。<br /> これ以外にも色々とやってましたが、数える気にもなりません。<br /> (あ、さすがに成人指定はつきませんよ)<br /> もし、涼宮さんたちに加えて長門さんと古泉くんが付き合いでもしたら、<br /> あたし虚しくて死んじゃうかもしれません。うさぎみたいに。<br /> ……。<br /> みくる、ふぁいと。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『ふう、と溜め息も吐きたくなる今日この頃です。<br /> そろそろ部室が独り身には辛い桃色空間化してきました。<br /> 主なと言うか、全ての原因はあの二人な訳ですけど。<br /> 古泉くんはバイトがなくなったと喜んでます、でもあたしとしてはみんなで遊んでた頃が懐かしいです。<br /> ……くすん。<br /> またTPDDの使用申請でもしましょうか?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『驚いちゃいました。<br /> 今日、部室の雰囲気が涼宮さんたちが付き合いはじめる前のそれに戻ってたんです。<br /> あまりの唐突さに夢かなぁと思ってほっぺたをつねってみました。<br /><br /><br /> ……目が覚めました。<br /> 今日は学校休もうかな……。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『結局学校はズル休みしちゃいました。<br /> 一日中ボンヤリとしたんですよ。<br /> たまにお茶いれてみたりなんなりしてましたけど。<br /> 放課後の頃に皆がお見舞いに来たんです。<br /> 何と無く顔を合わせづらくて居留守使っちゃいました。<br /> ……駄目だなあ、わたし。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は後ろめたさ全開で部室に入りました。<br /> そしたら今度こそ夢とかじゃなくて懐かしい部室の風景でした。<br /> あと、涼宮さんとキョンくんに謝られました。<br /> どうやら鶴屋さんが喋っちゃったみたいです。<br /> 自分の情け無さに涙が溢れてきました。<br /> もっと強い人になりたいです。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『部室は三日くらいであの桃色空間に戻りました。<br /> でももう大丈夫です。<br /> 例えあの頃が懐かしくてもあたしは今に生きるしかないんです。<br /> ……未来人の台詞じゃないですけど。<br /> それに二人も少しはセーブしてくれてるみたいです。<br /><br /><br /> と言えれば幸せなんですけどねー……。<br /> 今は三日間のブランク埋めようと前の三倍いちゃついてます。<br /> 時間的にも、質的にも。<br /> 掛け合わせて前の約十倍です。<br /> 早くも心がくじけそうです。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は久しぶりに市内探索がありました。<br /> なぜか涼宮さんとペアでした。<br /> 涼宮さんは何をするにも上の空で見てるこっちがハラハラしました。<br /> 人や電柱にぶつかったり、転んだり。<br /> まるで、……ドジッ子?<br /> そんなにキョンくんといたいなら、いっその事メンバー固定にすればいいと思います。<br /><br /><br /> 午後はキョンくんとペアでした。<br /> 涼宮さんが物凄い顔をしてました。<br /> 神様はわたしに恨みでもあるんでしょうか?<br /> わたしは明日の朝日を拝めるんでしょうか?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> みくる日記<br /> 『夏ですねえ……。<br /> あまりの暑さに倒れちゃいそうです。<br /> そんな今日この頃、梅雨は何処へ行ったんでしょうか。<br /> でも、あったらあったで嫌なものですけど。<br /> 洗濯物が乾かないし、油断していると食パンにカビがはえてて泣く泣く捨てたり……。<br /> あ、でもでも、あの独特のもわぁっとした不快さがあるから夏のカラッとした陽気がはえると思うんです。<br /> 年中夏な二人も少しは落ち着いてください、わたしの切実なお願いです。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日はお茶に虫が入っちゃいました。<br /> 取ろう取ろうと四苦八苦していたら、<br /> 涼宮さんが横から持っていってイッキ飲みしちゃいました。<br /> ……ごめんなさい。<br /> でもわたしのせいじゃないと思います。<br /> ……違いますよ、ね?<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『昨日の二の舞いにならないように今日は部室に蚊取り線香を持って行きました。最<br /> 初は調子良かったんです。<br /> でも、空中で死んじゃった蚊がまた涼宮さんの湯呑みに入りました。<br /> ……くすん。<br /> 帰り際に頼みの綱、長門さんに依頼しました。<br /> 明日には解決してますように☆<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今、あたしは少し混乱しています。<br /> 長門さんがわざわざ朝早くに届けてくれた最終兵器。<br /> ……それはハエ叩きです。<br /> 意外にアナログです。<br /> もしかして、あたしに一匹一匹始末しろと言いたいのでしょうか?<br /> が、頑張ります……。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『結果は散々でした。<br /> 蚊を叩こうとして何度みなさんを叩いたことか……。<br /> 涼宮さんは「これぞ萌えキャラよ」って喜んでましたけど、喜ぶ場面じゃないと思います。<br /> 特に長門さんは蚊に好かれてるみたいで多分十回くらい当たっちゃったかな。<br /> ……。<br /> どうしよう。<br /> 今度面白そうな本でも贈りましょうか。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『暑いです。見事に夏です。<br /> あたし、……バテても良いですか?<br /> 駄目と言われてもバテますけど。クーラー万歳。<br /> ……夏風邪かなあ、少し気分がハイです。気を取り直して。<br /> 今日は帰り道にネコさんを見たんです。どこにでもいそうな三毛さん。<br /> その子は近寄ったら逃げるんです。ほんの数メートルだけ。<br /> また近付くと、また少しだけ逃げるんです。<br /> それを延々と繰り返してたら知らないところに着きました。<br /> 三毛さんもいつの間にかいなくなってました。<br /> ……。<br /> 何とか家に辿り着いたときにはもう時計が十二時を指していました。<br /> 律儀にも日記を付けるあたしを誉めてあげたいです。<br /> ……お腹空いたなあ、夕飯何にしよう。今夜は徹夜かもです。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『この頃天気が不安定です。<br /> 傘を持っていくと雨は降らないのに、持っていかないと土砂降りにあいます。<br /> 仕方なく買った折り畳み傘を鞄に入れると、しばらく晴れ続きで、<br /> 「大丈夫かな?」って思って鞄から出した途端に雨降り模様になります。<br /> まるで、お天気の神様があたしに意地悪してるみたいです。<br /><br /> でも。<br /> 今日は雨が降ったんです。あたしが傘を持ってるのに。<br /> そこはかとなく嬉しいんですけど、実際は傘の意味も無い程の大雨で、結果は同じでした。<br /> ……むしろ傘が壊れた分、損かもしれません。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『未来に、あたしの今いる時間平面上における一ヶ月分の天気図を申請しました。<br /> ……一緒に「規定事項」として、わたしのこの先一ヶ月間にわたる傘の持ち運び表が送られてきました。最優先コード付きで。<br /> ……ええ。あたしは一ヶ月間、虚しい奮闘をする予定みたいです。<br /> あたし……風邪、ひきますよ? このままじゃ。<br /> ダメ元で長門さんにお天気を変えてもらいたいです。<br /> ――みくる』<br /><br /><br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『今日は突然涼宮さんに呼び出されました。<br /> 本音を言えば、暑くてあんまり行きたくなかったけど……しょうがないですよね?<br /> 深刻な顔してお出迎えされました。部屋に通されてしばらく黙ってたんです。<br /> それで、聞いてみれば何でも近頃キョンくんが冷たくなったとのこと。<br /> ……その時点で嫌な予感してたんです。<br /> 涼宮さん?<br /> キスの回数が減ったと言われても、二人は元が多いからいいじゃないですか。<br /> おはようとおやすみとそれに加えて一時間に二回やってれば十分です。<br /> それに、《禁則事項》しちゃったから、「捨てられるのかな」、って何時の昼ドラですかっ。<br /> 挙げ句の果てには事細かに語り始めるし……。<br /> 涼宮さん?<br /> あたし独り身なんです。刺激強すぎです。<br /> と言うか、ノロケですよね。<br /> そもそも、「おはようとおやすみのキス」のくだりで気付くべきだったんですね、あたしは。<br /> ……。<br /> 明日は明日の風が吹く。ガンバレあたし、負けるなあたし。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は、久々にSOS団の活動がありました。<br /> 長門さんも古泉くんも元気そうにしていました。<br /> 一部桃色でした。<br /> 喫茶店に入って、今日の予定を確認しながらクジ引きをしました。<br /> あたしは長門さんと古泉くんと同じでした。<br /> 桃色が濃くなりました。<br /> フラフラと本屋に寄ったりお茶を買ったりしてたら、道端で熱々過ぎて見てられないカップルとすれちがいました。<br /> どこかで見たような気がしましたけど多分気のせいだったと思います。<br /> 古泉くんは苦笑いしてました。長門さんは……ノーコメントで。<br /> お昼ご飯を食べてからまた午後もそぞろ歩きしてました。<br /><br /><br /> 何であたしあそこにいたんでしょう?<br /> 何であの二人プラスあたしだったんでしょう?<br /> 未来が恋しいよぅ……。<br /> お盆に里帰り、認められないかなぁ?<br /> ――みくる』<br /><br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『今日は鶴屋さんのお家に遊びに行きました。<br /> 昔、「いつでも大歓迎だよっ」って言われてたからちょっとサプライズ的に。<br /> 近頃お気に入りのケーキ片手に足取り軽く向かいました。<br /><br /> 留守でした。<br /> 紛れもなく留守でした。<br /> 完膚無きなまでにわたしを叩きのめす留守でした。<br /><br /> 一人、お家で食べるチョコレートケーキは塩味がきいてました。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /> みくる日記<br /> 『真夏の海って良いですよね。<br /> 一人旅だと潮風が目に染みて雫が……。<br /> 何であたしこんなとこにいるんでしょう。<br /> ちょっと街でお買い物しようと思っただけなのに……。<br /> うん。最初に電車を間違えて、戻ろうと思ってまた間違えて……。<br /> そうやって繰り返してたらいつの間にかよく分からない場所に着きました。<br /> もう夜です。お月様が綺麗です。<br /> 携帯電話は使い方がわかりません。<br /> 未来からは何の指示も助言もありません。<br /> 「野宿」の二文字が脳裏をよぎります。<br /> 助けて、へるぷみー。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『気付けば夏休みも後少しです。<br /> 今年は去年ほどみんなと遊ばなかった気がします。<br /> やっぱり二人が付き合い始めたのが理由でしょうか。<br /> そんな事を考えながらポーッとしてたら涼宮さんから電話がありました。<br /> ……これから肝試しに行ってきます。<br /> 帰ったらもう一回日記をつけます。<br /><br /><br /> 無事に帰ってこれたら、ですけど。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『はうぅ……。<br /> ペンを持つ手が震えます。<br /> べ、別に怖いわけじゃないんだからねっ、勘違いしないでよねっ!<br /><br /><br /> ……ていうのが萌えポイントだと涼宮さんは言ってました。良く分かりません。<br /> ところで、頬を赤らめながらキョンくんの腕に自分の腕を絡める涼宮さんは、<br /> なんかちょっぴり女の子っぽくて、やっぱり憧れます。<br /> あたしもやってみたいなぁ……。<br /> あと、古泉くんの袖を無表情に掴んで歩く長門さんも可愛かったです。<br /><br /><br /> 夜のお墓の一人歩きは怖いです、でもそれ以上に心がささくれます。<br /> ――みくる』<br /><br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『夏休みもあと一週間を切りました。<br /> とりあえずやることは全部やったはずです。<br /> 宿題、やりました。<br /> 思ひ出、作りました、塩味の。<br /> 受験べんきょ——。<br /><br /><br /> どどどんまい、みくる!<br /> ……はぁ。<br /> ——みくる』<br /><br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『日に日に涼しくなってきました。<br /> それはつまり日を追うごとに秋が深まっていくってことです。<br /> ……まあ一部、夏のままですけど。<br /><br /> ええ、確かに秋が来たという事実イコール冬が近付いたって事です、聖夜が近付いたって事です。<br /> でも三ヶ月前からクリスマスの予定たてるってやり過ぎだと思います!<br /> 一応受験生のあたしへの当て付けですか!<br /><br /> ……今年の冬は寒そうです。<br /> ——みくる』<br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『秋です。<br /> 読書の、食欲の、運動の、と色々の枕詞がかかる秋です。<br /> 食べ過ぎて毎年少し太ります。<br /> 今年は自省します。<br /> ……多分三日ボウズで終わります。<br /> だって秋ですよ?<br /><br /> そして、文化祭がある秋です。<br /> ……コスプレ映画は既定事項ですか、そうですか。<br /> ……くすん。<br /> ——みくる』<br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『日に日に涼しくなってゆきます今日この頃。<br /> 段々と葉も色付き始め、何だか浮き浮きする季節。<br /> 秋の訪れです。<br /><br /> ……。<br /> 食欲の秋って良く言ったものですね。<br /> ……きっと体重計が壊れてたんです。<br /> きっと、きっと……。<br /> ——みくる』<br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『今日は部室でクリスマスパーティーを楽しんで来ました。<br /> 三人だけで。<br /> 冬の寒さもなんのその、ストーブでぬくぬくしながら何をするでもなく過ごしてました。<br /> 三人だけで。<br /> 古泉くんがこっそり持ち込んでくれたシャンパンで乾杯しました。<br /> 三人だけで。<br /> あたしが頑張って作ったホールケーキも食べました。<br /> 三等分ですよ。<br /> ……めりーくりすます。<br /> せめてよい夢を。<br /> ——みくる』<br /><br /><br /> みくる日記<br /> 『今日はセンター試験でした。<br /> 朝方、家を出ると涼宮さんたちがいました。<br /> 「必勝」って書かれた腕章に涙が溢れそうになりました。<br /> ……試験監督の先生に外せ、って言われましたけど。<br /> あと、マークシートって怖いです。<br /> 受験番号はあってたかな、マークする場所、間違えてないかな。<br /> そんな心配ばっかりで、うう、心臓が痛いよぅ……。<br /> ああ、明日もあるんですよね。<br /> 耐える、耐えるのよ、わたし。<br /> ——みくる<br /> 』<br /><hr /><br /><br /> みくる日記<br /> 「今日は寒いなぁと思ってたらいつの間にか外は一面の銀世界にでした。<br /> 暖房をつけてコタツに籠ってお茶をすすると、ほんのり幸せです。<br /> ……たまには幸せな一日を送ってもいいですよね?<br /> ——みくる<br /><br /><br /><br /><br /><br /> そうは問屋が卸してくれませんでした。<br /> でも、たまには卸してください。心の底からお願いします。<br /> ……涼宮さんに呼び出されました。<br /> 今から雪合戦してきます。<br /> さよなら、あたしの温もりの一時……。くすん、寒いよぅ……。<br /> みくる」<br /><hr /><br /><br /> みくる日記<br /> 『えー……。<br /> (解読不能なミミズたち)<br /> は、ちょっと意識がトリップしてました。<br /> でも、初めて知りました。<br /> 受験勉強って太るんですね。<br /> なんかこう、勉強して。<br /> ちょっとお腹すいたなぁ、って思ってお菓子をつまんで。<br /> それからまた、机に向かうんです。<br /> 間にご飯も入ります。<br /> でも、それだけなんです、一日が。<br /> 瞬く間に体重が《禁則事項》です。<br /> まさしく指数関数です。<br /> あうぅ……。<br /> ——みくる』<br /><hr /><br /><br /> みくる日記<br /> 「今日はポカポカとした陽気でした。<br /> こんな日には紅茶を淹れて、公園で飲むのもいいかもしれません。<br /><br /><br /> そう思ったのが運のつきでした。<br /> 公園のベンチで和んでたら、うたた寝して、紅茶をこぼして、お気に入りの洋服にシミが……。<br /> ちょっと火傷もしました。<br /> 帰り道、すれ違う人の視線が突き刺さるようでした。<br /> 今朝のあたしを昏倒させたいです。<br /> 過去に跳んじゃ、ダメですか? ……ダメですよね。<br /> ——みくる」<br /><hr /><br /> みくる日記<br /> 『すっかり季節は梅雨で、洗濯物も中々乾かないですね。<br /> こんな日には何かさっぱりした物でも食べましょうか、そう思ってスーパーまで出掛けました。<br /> そこで、偶然にも「機関」の森さんに会いました。<br /> 一人暮らしにしては買い物カゴが一杯でした。<br /> もしかして、誰か食事を作ってあげる人がいるのかも。<br /> それで、いざ話を聞いてみると、古泉くんはほっとくとまともな物を作らないらしいんです。<br /> それはいけません。<br /> と言うことで、滋養のあるものを作ってあげるそうです。<br /> うーん……。<br /> あたしも二、三お手軽なレシピを古泉くんに教えてみようかな?<br /> やっぱり大事な仲間ですから。<br /> そんな事ばかり考えてたら食材を買わずに家へ帰ってしまいました。<br /> もう一往復行ってきます……。<br /> ——みくる』<br /><hr /><br /><br /> みくる日記<br /> 『今日は涼宮さんの号令の下、公園で花火をする予定でした。<br /> ところが突然の大雨で計画までお流れです。<br /> 涼宮さんは口を尖らせて不満そうな顔でした。<br /> 案の定古泉くんは電話片手に去っていきました。でも、最後に目配せ付きで……。<br /> 続けて長門さんも洗濯物がうんぬんと呟いて帰っていきました。去り際にわたしをじっと見ながら……。<br /> 空気を読めと言うことだったんでしょう。<br /> 折り畳みも何もないんですけど……、そう思いながらわたしも二人を残して雨の中へ出ていきました。<br /><br /> 公園の出口で待ってくれていた古泉くんと長門さん(あの長門さんですよ)の苦笑はしばらく忘れられそうにありません。<br /> だってすぐに満点の星空に……。 <br /> ——みくる』 <hr /> 【以下番外】<br /><br /><br /> みくる日記<br /> また、今年も夏休みがやって来ました。<br /> とくに変わった事がなければこの時間平面上で過ごす高校生活最後の夏休みです。<br /> めげそうになっても、桃色瘴気にあてられそうになっても、何とか耐えたあたしでも、<br /> 一年早く北高から巣立つかと思うとやっぱり寂しいです。<br /> 周りのみんなはまだ一年あるんですよね……。はぁ。<br /> 年上らしいところが見せられないあたしなのに、こんな所だけみんなより先なんですね……。<br /> おめでとう、って卒業式の時に言われてもあんまり嬉しくないんだろうな。<br /> めそめそ泣いちゃいそうです……。ううん、涙が止まらないかも。<br /> でも、しょうがないんですよね。「お別れ」は必ず来るから――。<br /> といったことを鶴屋さんに電話で相談したら、「留年すれば万事解決だねっ」って返されました。<br /> うぅ……それだけは、嫌です。<br /> ――みくる<br /><hr /><br /> ぶっ壊れたみくる日記<br /> 『ああ……。<br /> 清々しいはずなのに気分が晴れません。<br /> もう二度とあんな光景を見ないで済むはずなのに。<br /> どうして……?<br /> もう、二人がイチャイチャベタベタキャッキャッウフフしてるの見なくてすむのに……。<br /> どうして……?<br /><br /> やっぱり殺り方が不味かったのでしょうか。<br /> お茶に睡眠薬混ぜて首落とす、なんてしないで素直に毒にすればよかったかな?<br /> それとも、やっぱりキョンくんのせいかな?<br /><br /> あ、二人にバイバイって言えなかったな。<br /> まあ、いっか。<br /> ――みくる』<br />