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遠距離恋愛 第十七章 閉鎖空間 - (2007/10/17 (水) 13:35:06) のソース

<p>第十七章 閉鎖空間<br>
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気がつくと俺は、夜空を見上げていた。<br>
月も星もない、灰色の空。<br>
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がばと跳ね起きて、あたりを見渡す。見覚えの無い灰色のビル街、ホテル。直行する道路。<br>
俺はそのど真ん中に仰向けになっていた。<br>
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……閉鎖空間。<br>
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やれやれ。<br>
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またここに来ちまった。通算3回目……いや、橘のアレも含めると4回目か?いい加減にして貰いたいね。<br>
とりあえず、自分の服装を確認する。<br>
ブレザー、ネクタイ……って、あれ?これ北高の制服じゃねーか。ああ、そっか、ハルヒは今の高校の制服は知らなかったんだっけか。だから俺今、北高ブレザーなのな。<br>
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次に場所の確認だが……ここ、どこ?<br>
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以前住んでいた場所じゃない。もちろん、今住んでいるところでもない。あっちにはこんな高いビルとか、こんな豪華なホテルとかはないからな。<br>
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豪華なホテル……??<br>
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そうか。アレは確か、ハルヒや国木田達が投宿していたホテルだ。<br>
古泉が手配したとか言う、ハルヒが打ち上げパーティを開いたホテル。<br>
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なるほどな。俺が今、どこに行けばいいか分かったぜ。<br>
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ホテルの入り口をくぐり、フロントに向かう。もちろん、対応する人などいないことは分かっている。<br>
目標はフロントの中のPC端末だ。アレには、今日行われたパーティのデータがあるはずだ。<br>
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4階の「鶴の間」か。早速俺はそこに向かった。<br>
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「鶴の間」とやらは、それほど大きな宴会場ではなかった。<br>
クラッカーの中身や倒れた紙コップ、テーブルに置かれた食事……だったものが散乱している。<br>
いかにもパーティ終了直後って感じだ。<br>
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正面に掲げられている大きな垂れ幕に俺は「第一回!SOS団受験終了記念パーティ」とある。<br>
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第一回て。アイツの考えることは、一般人たる俺には未だによく分からん。<br>
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しかも重大発表だって?何を発表したんだ?<br>
ハルヒは古泉とラブラブ?だそうだし、同じ大学へ行くんだろ。多分、長門も同じだろうな。<br>
朝比奈さんは……大学は違うけどあの人のことだ、何だかんだで一緒にいるだろう。<br>
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……で、何故俺がまたこんな所に呼ばれなければならんのだ?<br>
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もうSOS団には俺の居場所は無いってのにさ。<br>
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それはともかく、ハルヒが居ないのは何故だ?多分ここだと思っていたんだが。<br>
色々と会場内を探し回ってみたものの、ハルヒは見つからなかった。参ったな。<br>
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そう思ったとき、胸ポケットの携帯が震えた。聞き慣れたメロディが物音一つしない閉鎖空間に響き渡る。<br>
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……携帯の電源は切っていたはずだが。<br>
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着信:涼宮ハルヒ<br>
「……もしもし」<br>
「……」<br>
「ハルヒか?」<br>
「……やっと出てくれた」<br>
「……ああ」<br>
「どうしちゃったの?どうしてパーティに来てくれなかったの?」<br>
「……メールした通りさ」<br>
「ウソ!だって、発車時刻まで3時間もあったじゃない!」<br>
「……」<br>
「そんなに佐々木さんとデートしたかったの?まあいいわ。今日は大事な発表があったのよ。それなのに」<br>
「ハルヒ。今どこにいる?」<br>
「……一番上の階」<br>
「スイートルームか」<br>
「うん」<br>
スイートルーム。各国のVIPや金持ちの芸能人、もしくは新婚さんが泊まる部屋。<br>
VIPでも新婚さんでもない俺が、足を踏み入れて良い部屋ではないな。<br>
「そうか」<br>
「……来てくれないの?アタシ、キョンのこと待ってるんだよ?」<br>
「ハルヒ」<br>
「……何よ」<br>
「何が不満なのかは、今の俺には分からん。だから、今の俺が言えるのはこれだけだ……少しは古泉のことを信用してやれ」<br>
「な……」<br>
「おめでとう。お幸せに『涼宮』」<br>
「キョ」<br>
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俺は携帯を切った。それと同時に、強烈なめまいが俺を襲い……<br>
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ガタン。<br>
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気付くと、夜行列車の簡易ベッドの中だった。時間を確認すると、もう20分もすれば地元の駅に到着するような時間だ。俺は大きく伸びをして、カーテンを開けた。<br>
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「おはよう、キョン」<br>
向かいのベッドには、既に出発準備を整えた佐々木が腰掛けていた。<br>
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「……酷い顔だ。まずは顔を洗って、その涙の跡を消してくることだな。一緒に歩いていたら、僕が誤解されかねない」<br>
涙のあと?俺は寝ながら泣いていたのか?<br>
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「キミは気付いていないようだが、一晩中うなされていたようだ。おそらくはその名残だと思うけどね。さあ、もうすぐ到着なんだから、早く行った行った!」<br>
佐々木に背を押されて、俺はタオルと歯磨きセットを持ったまま廊下に押し出された。<br>
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確か昨日は閉鎖空間でハルヒの相手をして……その後は覚えていない。多分、何か夢見が悪かったんだろう。<br>
やっとあのことにも整理が付いてきたところだからな。<br>
車両備え付けの洗面台の順番を待ちながら、俺はそんなことを考えていた。<br>
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<li><a title="遠距離恋愛 第十八章 佐々木 (15s)" href=
"http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3582.html">第十八章 佐々木</a>へ</li>
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