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やりすぎた嘘 - (2007/11/06 (火) 23:16:29) のソース

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<li><a title="筆談騒動 (1d)" href=
"http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3726.html">筆談騒動</a>の続きです</li>
</ul>
<p><br>
 <br>
ギーコギーコ<br>
俺とハルヒが授業中に痴態を繰り広げたのはもう一ヶ月も前の話になる。そして今日は土曜日、つまりは不思議探索の日なんだが今日は勝手が違う。<br>
シャカシャカ<br>
いわゆるデートというやつだ。非常に楽しみなのは言うまでもない。<br>
シャーーーッ<br>
……言うまでもないんだが、遅刻をしてしまうのは何故だろうね。<br>
キキーーーッ<br>
駅前に着いた俺が見たのはアヒル口の団長様だった。それとさっきまでのは自転車の音なのであしからず。<br>
「キョン、遅刻ー」<br>
「すまん、なんというか……」<br>
「いいから、早く喫茶店行きましょ」スタコラサッサッ<br>
みんなは気付いただろうか、いや気付いたに違いない。あのハルヒが遅刻したにも関わらず怒らないのだ。<br>
そりゃちょっとブーたれることもある、だが俺とハルヒが男女の付き合いを始めてからこいつが怒ることはほとんどなくなったと言ってもいい。<br>
最初は俺も気分が良かったんだが最近では調子が狂ってしょうがない、なーんてこと考えている俺は相当重傷なのだろうね。<br>
さて、ハルヒの背中を見ていた俺が悪戯心を働かせてしまうのは規定事項なのだろうか。<br>
俺はあの筆談騒動のときに散々懲りていたはずなんだが再びハルヒをからかってやろうと思ってしまった。本当に馬鹿だね俺も。<br>
「なあ、ハルヒ」<br>
「なーに?」<br>
「別れたい、って言ったらどうする」<br>
「え………!?」<br>
この前のパターンからすると泣き出すだろうな。ほら、泣きそうな顔してる。<br>
ちょっと名残惜しいが今回は早めにネタバらししとくか。<br>
「嘘d―――」<br>
「キョンが……別れたいって言うなら……わかっ………た…………」<br>
……………………へ!?お、おおoおooおおotitsukeore。aitsuimana………ふぅ、焦りすぎていたようだ。<br>
よし、とにかく落ち着け俺。今の状況を整理するんだ。<br>
 <br>
ハルヒに嘘付く⇒俺とハルヒ別れる<br>
 <br>
Noーーーーーーー!!!!これはマズい、マズすぎる。とにかく嘘と言うことを早く伝えないと。<br>
「いやハルヒ、これは嘘だ。嘘だかr――」<br>
「………ねぇキョン、あたしが何でこんなに変わったか解る?」<br>
いきなり何を言い出してんだこいつは、俺の話聞いてんのか。<br>
「何言ってんだ」<br>
「あんたが最初に嘘付いたときあたしは本当に怖かった、あんたに嫌われたんじゃないかと思って。だからあんたに嫌われたくないから怒るのも止めるようにしてたの。…………あのときの嘘はまだ良かったわ、だってあれのおかげで付き合い始めたんだもの。でもね…………今回の嘘はないでしょう……」<br>
ハルヒの大きな目から涙が次々と零れ落ちてきた。俺はハルヒを抱きしめようとした、が。<br>
「触らないで!!」<br>
バシッ<br>
「そうやって抱きしめてやれば何でも許されるって思わないで!!あんた最低よ!!」<br>
ハルヒは泣きながら去っていった。<br>
周りからの視線が痛い、しかし暫くすると周りが見えなくなってきた。<br>
――――ああ、俺も泣いてんのか。<br>
俺は震える携帯を感じながらその場に立ちすくんでいた。</p>
<p> <br>
逃げるようにその場を立ち去り、俺は行く宛もなくフラフラとしている。未だに携帯は震えているが出る気にはなれなかった。<br>
古泉すまんな、もう世界は終わっちまうかもしれん。悪いのは全部俺だ、ハルヒは決して責めないでくれ。<br>
俺はどうするかな、正直もう逃げ出しちまいたいよ。<br>
気付くと俺は駅前からは遙かに離れた少し大きめの国立公園に入っていた。<br>
土曜の昼前ということもあり親子が多い。そんな中に目の腫れた男がいるなんて周りからすれば非常に異様な光景に見えるだろう。<br>
ズンッ<br>
そのとき、俺は何かが頭にぶつかるのを感じた。周りの喧騒が遠くなっていく……………………。<br>
ムクッ<br>
ん……、俺、眠ってたのか?うおっ、もうすっかり夜じゃねえか。冷えるな……しかしここはどこだ、少なくともこんな場所俺は見たことない。とりあえず家に電話しないと…………………あれ、俺の、家?俺の、家ってどこだ?<br>
 <br>
というか――――――――――俺は誰だ?<br>
やべえ、目眩がしてきた………。と、とにかく家に電話してみよう。携帯に登録はしているはずだ。よし、あった。<br>
プルルルプルルル…以下エンドレス<br>
留守、みたいだな……。何てタイミングの悪い家族なんだろうか。<br>
しかしこれで手掛かりはなくしちまった。登録してあるのは友人かもしれんがこんな状態で無闇に電話は掛けれんからな。<br>
……………くそっ、こんなバカなことがあるわけねえんだ………………じゃあここはどこだ?俺の家はどこだ?俺は誰なんだ?<br>
畜生、誰か答えててくれよ!!<br>
泣きそうになってきた、これからどうしようか………。<br>
「キョン?」<br>
ん、キョン?ああ、あの鹿みたいなやつか。こんな街中にもいるんだな。興味はないけど。<br>
「キョン、無視するのかな?」<br>
うわっあの人動物に話しかけて無視されてんのか。少し残念な人だな、顔立ちはいいのにもったいない。<br>
「……キョン?」<br>
……何で俺をずっと見てるんだあの人、俺の後ろにキョンがいるのか?<br>
バッ<br>
………いないじゃないか。<br>
「どうしたんだ、本当に大丈夫かい?」<br>
え、この人俺に話しかけてんのか?俺にこんな美人の知り合いがいたとは信じられんが……。<br>
「あの、どちら様ですか………?」<br>
「キョン、いくら久し振りに会ったからといっても忘却するのはいかがなものかな。僕は些かショックを隠しきれないよ」<br>
「あ、いやすまん。そうじゃないんだ。<br>
お前は俺の知り合いでいいんだよな?」<br>
「キョン?」<br>
 <br>
その後、俺はこの女に今の状況を話した。ちなみにこの女は佐々木というらしい。<br>
「――なるほど、それは少々厄介なことになっているね」<br>
「ああ、そうなんだ。佐々木は俺の家知ってるか?」<br>
「それは当然知っているが…………ふむ」<br>
何やら佐々木は考えこんじまった。というか当然知ってるってどういうこった、佐々木さんよ?<br>
「なあ、佐々k――」<br>
「キョン、今日は僕の家に止まりたまえ」<br>
「………は?」<br>
世界が停止する。あくまでも主観的にだけど。<br>
「君の家からここまで遠い。<br>
仮に今から君が僕から家の場所を聞いて帰ろうとするとしよう。この場合、君はその道中で道に迷ってしまう可能性がないとは言い切れない。<br>
もう一つ、僕が一緒に帰ってあげるという選択肢もあるが、君を家まで送っていたら僕が自宅に帰るときには日を跨いでしまうだろう。これは僕としては何としても避けたいからね」<br>
「あー、理由は解ったがいいのか?」<br>
「何を今更、君と僕の仲じゃないか」<br>
………それはどういう意味なんですかね。本当に俺と佐々木の関係が疑われる。もしかして"禁則事項"な関係なのか。<br>
「さ、キョン早く行こう。僕の両親にも挨拶をしないといけないからね」<br>
グイグイッ<br>
そんなに引っ張るなよ。両親に挨拶…………娘を下さいってやつじゃねえだろうな。しかしなんだろうか、こいつといると楽しくなる、さっきまでの憂鬱な気分が一気に吹き飛んじまった。<br>
だが俺にはまだ聞きたいことが残っている。<br>
「キョンって俺のこと?」<br>
「何を言っている、当たり前じゃないか」<br>
はい、また憂鬱になった。<br>
 <br>
現在佐々木にぐいぐい引っ張られ、俺は佐々木宅に向かっている。<br>
…………何だ、この既視感は?前にもこうやって引っ張られたことがあるような………。そう、黄色いカチューシャの――――。<br>
「なあ、佐々木」<br>
「何かな?」<br>
「お前、黄色いカチューシャとか付けてなかったか?」<br>
ピタッ<br>
佐々木が急に立ち止まり、俺の方を見ないまま喋り始めた。<br>
「………どうかな、もしかすると昔付けていたかもしれないね」<br>
「やっぱりそうか。前にもこんなことあったような気がしてな。今は付けないのか?」<br>
「そうだね、今度またやってみるとしよう……………ねえ、キョン」<br>
そう言って、やっと振り向いた佐々木の顔は酷く哀しいものになっていた。<br>
「……ゴメンね」<br>
「??何を言っt――」<br>
俺はそれ以上喋ることは出来なかった。理由は簡単、俺の口が何か柔らかいもので防がれたからだ。それが佐々木の唇であるのは語らずとも解るであろう。<br>
 <br>
ズンッ<br>
俺の頭に再び圧力が襲いかかる。<br>
「ぐっ…………!!」<br>
もやもやとした頭の中で次々と映像が流れていく。これは……………、俺の記憶なのか?そうだ、これは俺の――。<br>
「あ……………」<br>
「………キョン、思い出した?」<br>
ああ、全て思い出した。<br>
俺のこと、家族のこと、学校のこと、団のこと、そして……………。<br>
どうして俺はこんな大事なことを忘れちまってたんだ、全く自分が恨めしいぜ。<br>
「佐々木、ありがとうな。お前のおかげで思い出せたよ。<br>
しっかし俺も馬鹿だな、恋人の―――――――――――お前まで忘れちまうなんて」<br>
俺の言葉に対して、佐々木は嬉しそうに、そして哀しそうに答えた。<br>
うん、意味が解らないのは理解してる。だが佐々木を見ていたらそう感じずにはいられなかった。<br>
「…………別に構わないさ。今は思い出してくれたんだろう?」<br>
「ああ、もう大丈夫だ。二度と忘れないことを誓うよ」<br>
だから佐々木、そんな顔すんな。せっかくの美人が台無しじゃねえか。まだ何かあんのか?<br>
「え、ああ、ちょっと悩み事があってね」<br>
悩み事?恋人の俺にも言えないことなのか?<br>
こういう時は…………………あれをやってみるか。<br>
「佐々木」<br>
「うん?………あ…………」<br>
チュッ<br>
「キョ、キョン?!君は一体何を!?」<br>
ジタバタ<br>
自分からもしてきたくせに何をのたまってんのかねこいつは。<br>
「さっきのお返しだ。……………それにさ、悩み事があるんなら俺に言えよ。俺はそのためにお前のそばにいるんだ。<br>
ってまた泣きそうな顔しやがって、あの時もお前は――」<br>
あれ、あの時?あの時っていつの話だ?俺は何を言っているんだ?<br>
ほら見ろ、佐々木も心配そうな顔してこっちを見ているじゃねえか。<br>
「キョン……」<br>
「あ、ああ大丈夫だ。それよりお前の家に行こう。泊めてくれるんだろ?」<br>
「………そうだね、早く行こうか」<br>
 <br>
先程から、佐々木は俺の一歩前を歩いている。普通はこういう時は横に並ぶもんだろうに。<br>
もしかして、こいつ恥ずかしがってんのか?<br>
今更そんなこと気にしなくてもいいと思うけどな。……よし、こういう時は男から行動してやらなくちゃな。<br>
 <br>
ギュッ<br>
 <br>
「!!」<br>
おー、驚いてる驚いてる。というか顔赤いな、熱でもあるんじゃねえのか。<br>
俺はそんな佐々木の額に自分の額を持っていく。風邪を引いてたら大変だからな。<br>
……ちょっと言い訳っぽくなったが、行くか。<br>
ピトリ<br>
ふむ、熱は無いようだ……………ってさっきより赤いじゃねえか。本当に大丈夫なのかこいつ。<br>
「君が急に変なことをするからだ!!」<br>
あ、さいですか。<br>
そのとき携帯が震えた。俺はポケットから携帯を取り出し相手を確認する。<br>
 <br>
着信 涼宮ハルヒ<br>
 <br>
はて、涼宮とな。誰だこいつ?うーむ。<br>
「おい、佐々木。お前涼宮って知ってるか?」<br>
「………知ら、ない」<br>
「そうか、一応出た方がいいかな?」<br>
「止めて!!」<br>
なっ!?いきなりどうしたんだ佐々木の奴。<br>
解った出ないよ、出ない。だからそんな顔するな。<br>
暫くすると電話は止まった。しかし、まだ気になることがあるんだよな。<br>
「佐々木、じゃあこの古泉一樹って奴はどうだ?かなり着信が来てるんだが俺はこんな奴見覚えないんだ」<br>
「……………」ブンブン<br>
 <br>
「そっか、まあ今はいいか……。<br>
それより佐々木、明日はどうする。佐々木団の活動はやるつもりなのか?」<br>
「……特に活動する予定はないね」<br>
「そうか、じゃあ明日どこか遊びにでも行くか。最近デートなんて行ってないしな」<br>
俺の提案に佐々木は一度躊躇うような顔をした後、吹っ切れたように笑って返事をしてくれた。<br>
「……うん、行こう。<br>
デートコースはキョンに任せる。もちろん生半可なものでは僕は満足しないからね」<br>
おい、いきなり態度が変わりすぎだぞ。<br>
やれやれ、明日は忙しくなりそうだ。なあ、お姫さm――<br>
ズキッ<br>
痛っ………くそ、何なんだよこの違和感は。</p>