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長門有希の密度 - (2008/06/02 (月) 23:07:40) のソース

<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">『長門有希の密度』</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">やっと衣替えになった。しかしいくら半袖でもこの時期の湿度の高いじめじめ天気では、あまり効果は感じられない。教室にクーラーを設置しろとは言わないが、せめて除湿機能だけでもあれば、快適に勉学に励めるのだが……。睡眠ではないぞ、一応言っておく。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">教室にさえないんだから、この旧校舎・部室棟にはクーラーなどと言う文明の利器は存在するわけがない。いろいろ文芸部室に持ち込んでいるハルヒでさえ、クーラーまでは手が回らないらしい。ただし、いつの日かあの大森電器店の店主がクーラーを設置するために部室を訪れそうな気がしないではないが。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">そんな蒸し暑い放課後の部室にいるのは、今のところ俺と長門の二人だけだ。他の連中は掃除当番かなんかだろう。俺は、いつものようにきりっと背筋を伸ばし、不動の体勢でハードカバーを読みふける小柄でスレンダーな長門の姿をぼんやりと見つめながら、昼飯時の谷口や国木田との会話を思い出していた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「なぁ、キョン、昨日の夜のテレビ、見たか、あの巨乳タレントが出ていたやつ」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「おう、お前が教えてくれたやつだろ、見たぜ」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「やっぱ、男の憧れだよなぁ、あの胸は……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">遠い目をして感慨深げに話をする谷口に対して、国木田は弁当のおかずを箸で転がしながら、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「僕は、おっきいだけじゃなくてバランスも重視するけどね、キョンはどう？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「ん、あんまりそういうことは考えたことは無いが」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「うそつけ、この野郎！」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">谷口が我に帰ったように突っ込んできた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「お前、あの朝比奈さんや涼宮や長門といつも一緒にいて、考えないわけがなかろうが！　健全な男子高校生としての感覚が麻痺したとでも言うのかよ」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「あははは、谷口とは違ってキョンは満たされているから……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">国木田の方をチラッと見た谷口は、ふん、と言ってシューマイを口に放り込んだ。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「確かに、あの三人、それぞれに特徴的な体つきだからね」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">国木田が冷静に観察対象の分析結果について語りだした。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「朝比奈さんは、いかにも谷口の言う男の憧れのような胸をしているし、涼宮さんはすごーくメリハリのあるいいラインをしているし。あのバニー姿はよかったよね」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">谷口が、うんうん、といった感じで肯いている。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「長門さんは、他の二人と比べるとちょっと寂しい感じはするけど、全体的なバランスは結構いいんじゃないかな」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">ふん、今さらお前らに指摘されなくったって、<span lang="en-us" xml:lang="en-us">SOS</span>団の三人の女神たちのスタイルの素晴らしさはよーく知ってるさ。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">確かに、谷口や国木田と比べると俺は恵まれているのかもしれないな。その分苦労も背負い込んでいるわけなんだが、いまさら代わってやる気はさらさらない。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">国木田の言っていた『ちょっと寂しいけどバランスのいい』長門の読書姿を見つめていると、俺の視線に気づいたのか、長門は少し顔を上げて、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「なに？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">と、言ってわずかに首を傾けた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「ん、いや、なんでもない」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「…………」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">長門はハードカバーに目を落として読書を再開した。俺はしばらく窓の外を眺めていたが、ふと思い立って長門に話しかけた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「なぁ、長門、お前まだ成長したりするのか？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">再び顔を上げた長門は、さっきよりわずかに大きく首を傾けた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「成長？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「身長伸びたりする？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">パタンと本を閉じた長門は、俺の目をじっと見つめながら話し始めた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「わたしの体を構成する物質、いわゆる有機情報因子の総量は今後も増減する予定はない。したがって体型的には現状が維持される。」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「ずっとそのまま？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「少なくともわたしが生まれてから、身長、体重などの体型はまったく変化していない」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">俺はショートカットの髪や半袖の制服からスラリと伸びる白い腕を見つめながら、眼鏡以外は初めて出会ったときと変化がないことをあらためて認識した。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「でも、結構食べているように見えるが、あれは？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「摂取する食物は、素粒子のレベルでエネルギーに変換されている。身体の成長に使用されるわけではない」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「んー、よくわからんが、要は物質をすべてエネルギーに変えているということか？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「端的言えばそう」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">詳しく解説してもらってもわかるはずは無いので、端的に言い切ってもらう方がありがたい。それにしても、食べたものをすべてエネルギーに変換するということは……、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「それって、すごいことではないのか？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">長門の口元がわずかに動き、何か話し始めようとしたが、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「いや、いい。聞いてもわからん」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">といってとりあえず遮った。開きかけていた口元をそっと閉じた長門は、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「そう」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">と、少し残念そうにつぶやいた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">しばらく沈黙が流れる中、俺の目をじっと見据えた長門は、二つ三つ瞬きをした後、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「体型を変化させたほうがいい？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">と聞いてきた。谷口と国木田との会話が頭の中を駆け巡り、俺はどう答えるべきか少しばかり逡巡した。まさか、胸を大きくすればどうだ？　なんてことは言えるはずが無い。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「ん、いや、そのなんだ、年相応の変化というか、そういうのだ」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">少ししどろもどろになった俺を、吸い込まれるような漆黒の眼差しが捕らえて離さない。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「成人女性の体型になれということ？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「うーんと、朝比奈さんの大人バージョン、見たことあるだろ。いずれはあんなふうに変化するのもありかな、というか……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">俺はいったい何を言っているのだろう？</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「この体型では、だめ？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">いや、だめじゃないです、長門さん。決してそのようなつもりで言ったのでは……。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">長門の何かを訴えかけるような真摯な瞳に、俺はついに返答できなくなってしまった。再び沈黙がその場を支配した。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「あなたが望むなら……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">たっぷり十秒ほど俺を見つめ続けた長門が話し始めた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「体型を変化させることは不可能ではない」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「えっ？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「本質的には、わたしの体を構成する有機情報因子を追加、増量すれば、発達させたい部分を思うように大きくすることができる」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">チョイ待ち、俺は別に部分的にどこかを大きくしろ、と言った覚えは無い。心の中だけで思い描いたはずなのに、長門は見抜いていたということか！？</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「情報統合思念体に増量を申請した方がいい？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「いや、いや、そんなことでお前の親玉を煩わす必要はない」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「そう？　涼宮ハルヒの鍵であるあなたの要望であれば、統合思念体も無碍には断らないと考えられるが」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「いーよ、別に……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">なんとなく長門にからかわれているような気がするのは気のせいなのか？</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「簡易的には、有機情報因子間の結合を疎にすることで、見た目を大きくすることができる」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「はい？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「密度を下げる」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「だから？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「容器の中へ、圧力をかけて砂粒を押し込むか、空気を含ませるようにそっと注ぐかの違い」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">なるほど、押し固めない方が見た目は多いように感じられるな、実際のところ、砂粒ではそんなに差はでないだろうが。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「試してみる」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">そういうと長門は右腕を上げて肘を九十度に曲げた。制服の袖口から、細い二の腕がすーっと伸びている。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「触って」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「へ？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「まずは現状を確認」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">そういうと長門は右手の二の腕辺りを指差している。そこでさっき言っていた密度の変化の実験をしようというのか。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">とりあえず、俺は言われるままに長門の隣の椅子に腰掛けると、</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「いいのか？」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「いい、どうぞ」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">なんか緊張する。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「じゃ、すまんが失礼して……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">といって、長門の右の二の腕をそっと触ってみた。相変わらずひんやりと冷たい。いわゆる贅肉と呼ばれる類のものは何も無い感じだが、それでも程よい柔らかさと弾力を持っている。俺は、少しばかり、ぷにぷにとつまんで見た。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「痛い、優しくして……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">うぉ、す、すまん、つい力が入ってしまったか。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「では、少し変化を」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">長門は、なにやら例の高速呪文を唱えた。その途端、俺がつまんでいた二の腕の感触が一気に変化し、やわらかさが増すと同時に、ぷにーっと伸びてきた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「お、お、これは……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">確かにカサは増したが、単に伸びきってしまった感じであの弾力感がなくなってしまった。これなら元のままの方がいい。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「さっきの方がいいな」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「うまく調整すれば、もう少し感触が良くなるかも知れない」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">そう言うと、今度は左腕も同じように上げてきた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「左右でいろいろパラメータを変えてみる。試してみて」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">はい？　そっちもですか？　</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">俺は、長門と向かいあって座ると、右手で長門の左の二の腕を、左手で長門の右の二の腕を軽くつまんで、ぷにぷにという感触を確認してみた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">そうやって両手で長門のやわらかい二の腕をつまみながら、微妙に弾力が変化するのを感じつつ、「いやさっきの方が」、とか、「うん、これはいい」とかいうやり取りをしばらく続けていた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">バーーン！</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「やっほー、来たよー！」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">いきなり開いた部室の扉の音と元気いっぱいの声に驚いた俺は、長門の二の腕をつまんだ状態のまま振り返った。そこには、扉を開けた状態で固まっているハルヒの姿が……。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「ふぁあ？　あんた有希になにしてんの！」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">そう叫ぶと同時に室内に飛び込んできたハルヒは、開いた窓から突き落としそうな勢いで俺の胸倉を突き上げてきた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「ど、どういうことよ！　あんたまさか有希に……」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「まて、まて、俺の話を聞けって」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">しかし、どう言い訳したもんか。長門が自分の体を構成する有機情報因子とやらの密度を変える実験をしていたので確認していた、なんて言える訳が無い。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">「問答無用よ！　このエロキョン！！」</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">ハルヒに胸倉をつかまれて問い詰められている間に、視界の端にわずかに見えた長門は、自分で自分の二の腕をぷにぷにしながら、楽しんでいるようだった。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';">ひょっとすると今年の夏には長門の胸が成長しているかもしれないな、ハルヒにネクタイを締め上げられ徐々に薄れ行く意識の中で、俺はそんなことを考えながら期待に胸を膨らませていた。</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us"> </span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;font-family:'ＭＳ Ｐゴシック';" xml:lang="en-us">Fin.</span></p>
<p class="MsoNormal"><span lang="en-us" style="font-size:12pt;" xml:lang="en-us"> </span></p>