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サバは彩 - (2009/05/03 (日) 21:53:46) のソース

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　　<a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5597.html">目次</a></p>
<p><br /><br />
　　　　これもまた<a href="http://www25.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5579.html">第三回君誰大会</a>の続きです。サバイバルナイフは素敵だと思います。<br /><br /><br /><br /><br />
　　　　君誰大会　　「サバイバルナイフは日常に彩を」<br /><br /><br />
「そもそも、あなたがのろのろと決断を渋っているからこんな事態になったんです。」<br />
「ぐ、それを言われると……」<br />
「決断しなさい！　さあ！」<br /><br />
　いつもの喫茶店で、いつもの面子＋いろいろの、総勢二十名ほど。<br />
　そんな大所帯で、店内の客の七、八割は関係者だ。<br />
　そして、さっきの決断を迫られているのが俺ことキョンで、決断を迫っているのが何故だか分からないが喜緑さんだ。<br /><br />
　ああ、俺だって馬鹿じゃあないさ。何故こういう状況になったのか、なんてことはよーく分かってる。<br />
　どうすればよかったのかも合わせて分かってるが、いまさらくよくよ言ったって始まらない。<br />
　と言うか、そんなに深刻なものではない、と思う。<br />
　まあ、これは俺の感覚だから他の七人は知らないが、こいつらの中には「失恋したー死んでやるー」なんて言う輩もいないだろう。<br />
　逆を言えば死んでやると行かないまでも確実に六人は傷つけるし、悪い選択肢を選べば七人全員を傷付けることになるかもしれない。<br />
　しかし、それでも、俺は決めなくちゃならない。そうでなくては、確実に七人全員を傷付けてしまう。それだけは分かっている。<br /><br />
　ああ、なんでこんな事態になってるのかまだ言ってなかったな。<br />
　つまるところ、あれだ。<br /><br />
　俺のことを好きだと言う七人に、誰を選ぶか決められないと返した結果だ。<br /><br />
　………阿呆というな。これは結構深刻な問題なんだよ。<br />
　………これなんてギャルゲ？　知るかそんなもん。<br /><br />
　とりあえず、前置きが長くなったな。だが、俺だって、馬鹿じゃあないんだ。<br />
　きちんと、答えは決めた。ああ、決めてやったさ。<br /><br />
　そんな理由かよ、とか思われるだろう。<br />
　やめておけ、ともいわれるかもしれん。<br />
　というか、理由なんてないが。<br /><br />
　だが、決めてしまったのだ。こう言うと相手に失礼だが、しかしそうでも言わなきゃこの弱い心は逃げ道を探してしまう。<br />
　ああ、決めてやったさ。言うぞ。言っちまえ。<br /><br />
　………なんか、こんなこと思うのは二回目な気がする………まあ、いいか。<br /><br />
「朝倉、好きだ。」<br /><br />
　……なんだろう、すごい「え゛………」みたいな視線を二つ感じるぞ？<br /><br /><br />
　　　　◆　◆　◆<br /><br /><br />
　いやはや、驚いたわ。<br />
　まさか、あんな事した私のことを好きだなんて言ってくれるなんて。<br />
　なんていうか、こう、あー…………。<br /><br />
　言葉に、できない？<br /><br />
　でも、やっぱり、私は彼のことが好きで、彼も私を好きって言ってくれて……<br />
　うん、もう、考えがまとまらないよ。<br /><br />
　きっと、いま私真っ赤だろうな。<br />
　ああもう、どうしよう。感情ってやつは、本当に鬱陶しいわ。無ければ無いで悲しいけど。<br />
　私はインターフェースなんだからもっとしっかりしないと……<br />
　ああでも、江美里も有希ちゃんも、あんなかんじだしいっかあ。<br />
　はっ、流されてはいけないわ。<br />
　インターフェース唯一の良心として存在しないと。</p>
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<p><br /><br />
　　　　◆　◆　◆<br /><br /><br />
「あなたはドＭなの？」<br />
「なんでだよ。なんでいきなりその結論に行き着くんだ。」<br />
「だって、あんな事されてそれでも好きと言えるなんて虐げられるのが好きだとしか思えない。」<br />
「いいじゃねえか。あんな事されたっていってもお前も結構そういう系のことしてるぜ？」<br />
「……私には覚えが無い。」<br />
「一年近く前になるが……魔女ルックでいきなり朝比奈さんに襲い掛かったり、魔女ルックでいきなりギター弾いたり。」<br />
「あなたにとって刺されるのはそれと同程度のことなの？」<br />
「まあ、全部『もう一回起きて欲しくはないこと』に分類されるわな。」<br />
「大丈夫。今度からは巫女でいく。」<br />
「それのどこが大丈夫なんだよ。」<br />
「魔女狩りされない。」<br />
「巫女は魂鎮めに失敗したらアウトだけどな。」<br />
「はっ、神など私の前では涼宮ハルヒに等しい。」<br />
「もう意味わかんねえよ。」<br /><br /><br />
　　　　◆　◆　◆<br /><br /><br />
「………今の場面転換は必要だったのでしょうか。」<br />
「なんの話ですか？」<br />
「いえ、こっちの話です。しかし、あなたも物好きですね。私なら頼まれたってあんなもの引き受けませんよ。」<br />
「ちょっと江美里、『あんなもの』扱いはひどすぎよ。」<br />
「そうですよ。多少アレなのはおいといても、総合的に平均以上でしょう。」<br />
「やだ、キョン君ったら。」<br />
「そこはむしろ怒るところじゃないのでしょうか？　というか、今更ながらにいいますけど、有希ちゃん無視ですか？」<br />
「喜緑さん、いくら俺でも拾えるボケと拾えないボケがあります。」<br />
「つまり私は拾えない子？　駄目な子？　だめだめ？　死ねばいい？　わかった。死んであげる。」<br />
「有希ちゃん、そう落ち込まずに。キョン君、有希ちゃんをいじめちゃだめだよ。」<br />
「ごめんなさい。」<br />
「それでよし。」<br />
「あ、まあ、そろそろ帰るか。このままだといつまでもくっちゃべってそうだ。」<br />
「まあ、ぐだぐだに終わるのは避けられないとしても、努力だけはしないとね。」<br />
「結局、最後は変わらないと思いますけどね。」<br /><br /><br />
　　　　◆　◆　◆<br /><br /><br />
　うん、有希ちゃんや江美里のおかげで多少ましになったわ。<br />
　少なくとも、いつも通りくらいにはなってよかった。<br />
　それに肝心の『好きになった理由』っていうのもはぐらかせたし。<br />
　そういうのは二人っきりのときに聞けばいいと思う。というか二人きりの時に聞くべきだ。<br />
　でもまあ、やっぱり有希ちゃんと江美里には感謝しないとね。<br />
　もつべきものは、よき家族かな。<br /><br /><br />
　　　　◆　◆　◆<br /><br /><br />
　それから、それなりに時が過ぎて。<br />
　冬休み。<br />
　夏は過ぎ去ったのだ！　これからは我が季節と心得よ！　ふはははは！<br />
　みたいな感じで冬将軍が鎮座している季節である。ちなみに冬将軍とはシベリア寒気団とかいうやつだ。ほら、きっと中学校くらいで習ったはずだ。<br /><br />
　ああ、そんな季節だからこたつは必須だ。だから、今もこたつの中である。<br />
　あ、俺の部屋にコタツがあるわけじゃあない。人の家だ。<br />
　というか、涼子のマンション、５０５号室だ。<br /><br />
　何故俺が涼子のマンションにいるのか？　という疑問を持ったやつは、少し過去を振り返って欲しい。<br />
　彼氏が彼女の家にお邪魔するなんて、別段おかしなことじゃあないだろう？<br />
　さて、そんなわけで今俺は涼子の家の居間にいるわけだが。<br /><br />
　　　シャーコ…シャーコシャーコ………シャーコ……シャーコ<br /><br />
　さて、この音はなんだろうか。いや、分かってはいる。分かってはいるんだが、現実を直視したくないと言うだけである。<br />
　じゃあ、なんなのだろうか。<br />
　ヒントその一。<br />
　目の前には我が彼女、朝倉涼子がいる。そして、音源は彼女だ。<br />
　ヒントその二。<br />
　この音は、二つの物を擦り合わせることによって発生している。<br />
　ヒントその三。<br />
　なんというか、現代日本では余りお目にかかれなさそうな光景だ。昔であればどこの家でも時々この音がしていたが。<br /><br />
　まあ、答えを言っちまうと、刃物を研いでいる光景だ。<br />
　しかも、サバイバルナイフ。その昔俺の腹を貫いたものと同じだと思われる。<br />
　まあ、涼子の行動を邪魔したくはないんだが、こちらも精神衛生上よくない光景はやはり見たくない。<br />
　ので、一応提案しておこう。<br /><br />
「なあ、それ、止めてくれないか？」<br />
「うん、それ、無理♪」<br /><br />
　ああ、いい笑顔だなあ……<br /><br />
　って違う。<br /><br />
「それ、お前に刺された時の事を思い出して怖いんだが、それでもか？」<br />
「だって私は本当にナイフが好きなんだもの。」<br />
「俺のことは？」<br />
「大好き♪」<br />
「じゃあ、俺のためだと思って止めてくれないか？」<br />
「それはいや。」<br />
「ぐ、なんでだ？」<br />
「そういうあなたは、私のために妹さんと別れ別れになっても耐えられる？」<br />
「難しいが、そういう話でもないだろう。」<br />
「そういう話なのよ。これは、私にとって無くてはならないもの。これがなかったら、こんなにキョン君の印象には残らなかっただろうし。」<br />
「嫌な残り方だがな。」<br />
「本当はあそこで寸止めして『じゃあ、私と付き合わない？』って言うつもりだったのよ？　涼宮ハルヒを刺激するって目的はそれで達成できるし。とりあえず最初に襲ったのは宇宙人の存在を知らせるため。有希ちゃんが信じられてないのがかわいそうだったしね。」<br />
「俺的にアレは普通に殺されると思ったんだが。」<br />
「ええと、つり橋効果ってやつ？」<br />
「違うと思う。」<br />
「まあそれを有希ちゃんに邪魔されたわけ。きっとライバルは少ない方がいいとでも思ったんでしょ。」<br />
「あのころはそんなに感情とか無かったと思うんだが。あいつは。」<br />
「意外と隠すのが上手だっただけだと思うけど？」<br />
「それは置いておくとして、二回目のアレは普通に殺しにかかってただろう。」<br />
「てへっ☆」<br />
「お前は俺の妹か。」<br />
「妹ちゃん可愛いよねー。」<br />
「はぁ……まあ、いいけどな。ナイフ研いでても。」<br />
「そういうあなたこそ勉強はかどってる？」<br />
「親切な涼子さんのおかげでね。」<br /><br />
　そう、今俺は勉強をしているのだ。珍しいことに。<br />
　何故なら、来年の今頃には（初音ミクの『初めての恋が終わるとき』のリズムで）どんな私がいて…って違う。<br />
　来年の今頃には、受験真っ盛りだからで。<br />
　本来ならばそれでも勉強なぞやっていなかっただろうが、涼子が「へえ、ふうん、私とそんなに離れたいの？」というから、離れないようにがんばっているわけである。<br />
　決して、ナイフに屈したなんてわけじゃあ、ない。ああ、違うともさ。<br /><br />
「はかどってるー？」<br />
「ああ、まあまあだな……っておい、なんで切っ先を人に向けるんだ。ハサミを渡すときは持ち手を相手に向けて渡すって習わなかったのか。」<br />
「私まだ五歳だからわかんなーい。」<br />
「じゃあちゃんと教えてやるさ。」<br />
「調教してくれる？」<br />
「しねえよ！」<br />
「え～、甲斐性なし？」<br />
「ちげえよ！　調教の意味分かってんのか？」<br />
「ある人を調教した人の所有物扱いすることでしょ？」<br />
「畜生、微妙に合ってるから逆に突っ込みづらい！」<br />
「私を、あなたのものにして？」<br />
「あ゛あ゛あ゛あ゛聞こえないー。」<br />
「お願い♪」<br />
「よっしゃやったろうやないかー！」<br /><br />
　ふざけるのは、ふざけられるのは楽しい。やりすぎかもしれんが。<br /><br />
「あ、そうだ。忘れてた。」<br />
「ん、何をだ？」<br />
「聞いちゃっていい？」<br />
「いいぞ。」<br />
「なんであの時私を選んだの？」<br />
「ものすごい今更だな。」<br />
「言っちゃってよ。乙女としては気になるのよ。」<br />
「乙女って……はいはい分かった言いますよ。俺がお前を好きって言ったのには、特に理由は無い。」<br />
「え？　そんなのあり？」<br />
「言い方が悪かったな。泣くな。なんかこう、言葉にしづらいが、とりあえずあの七人といたとき朝倉が一番好きだったんだ。そこに理由はあまり無い。」<br />
「………まあ、いいわ。あなたにそういうことを聞くのが間違いだった気がする。」<br />
「拗ねないでくれよ。お前のことが一番好きなのは本当なんだから。」<br />
「キスしてくれる？」<br />
「何故そうなる……ぐ、分かった分かった。だからその涙目はやめてくれ。上目使いはもっときつい。いいから目を閉じろ。」<br /><br />
　そうして、時は過ぎていく。<br /><br /><br />
　　　　◆　◆　◆<br /><br /><br />
　と、まあそんなわけで、俺はそれなりに愉快な高校生活を送った。<br />
　ちなみに、SOS団にはずっと在籍していたぞ。ハルヒや朝比奈さんは最初こそ不機嫌だったものの、今では前と同じように接している。<br />
　朝倉はもう一回転校して戻ってきたという設定だ。<br />
　おかげで、クラスからは『バカップル』の称号を得たが、それを嫌がる理由も無い。<br />
　唯一の問題は受験だったが、それも朝倉家での勉強によりどうにかなりそうだ。<br /><br />
　だから、もうそんなに悩まなくていいんだぞ？<br />
　そろそろ一年半前になるが、お前はあの世界でのお前の役割を果たしただけなんだから。<br />
　なあに、刺された当初こそ痛かったがすぐに長門が治してくれたし、後遺症も何も全く無い。<br />
　お前が気にすることなんて、何も無いさ。<br />
　迷惑なんかじゃないし、俺はお前を愛してるぜ。言うのは恥ずかしいがな。<br />
　いい加減折れてくれ。そろそろハルヒに使ったあの最終手段を使わなきゃならないのかと戦々恐々としてるんだ。<br />
　………言わなきゃ良かった。<br />
　まったく……今回だけだぞ？<br /><br /><br />
　……………………………………………………。<br /><br /><br />
　これで満足か？<br />
　もっと？　欲張るなよ。<br />
　人生はまだまだ長いんだぜ？<br />
　末永くよろしくってやつだ。<br />
　じゃあ、とりあえず今日はおやすみ。<br />
　また明日だ、涼子。<br /><br /><br /><br />
　そうして、夜は、更けていく。<br />
　また、明日。</p>
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