涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki内検索 / 「愛にあるのは真心、恋にあるのは下心」で検索した結果

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  • 愛にあるのは真心、恋にあるのは下心
    この話は『お姉さんなのです』『待たせたな』設定を引き継ぐ、教科書系列SSになります ――――――――――――――――――――― 「……おい、佐々木。お前ちゃんと俺の話聞いてんのか?」 「聞いているに決まっているじゃないか。ええと、涼宮さんがいかに可愛いか……だっけ? 悪いけど、ノロケなら恋人が居るもの同士でやってくれないか。ひとり者には嫌味にしか聞こえないよ。それがいくら無二の親友のそれでもね。」  佐々木、お前、耳鼻科行くか? 俺は、ハルヒの我侭振りには参ったと言っているんだ。約束の時間より早く着いても、自分より1秒でも遅かったら即罰金! だからな。ったく。お前、約束の時間の30分前とかありえんだろう。早く着きすぎるのも迷惑だ。 「それは、一刻も早くキョンに会いたいという気持ちの現われじゃないか。いや、全く持って羨ましいね。そういう気持ちを向けられるということは、男女問わず喜ぶべ...
  • 教科書文通
    ...お待たせしました』「愛にあるのは真心、恋にあるのは下心」 以下、後日談            2月『ヴァレンタイン編』 9~10月の流れが少々入り組んでいますが、大体どこから読んでも大丈夫です。 『』が恋愛がテーマのSS、「」が男女間の友情がテーマのSSになります。
  • ある晴れた休日
    俺は古泉と待ち合わせをしていた。場所はいつもの喫茶店だ。 古泉と二人で話すなんてときは大抵あいつが話を持ちかけてくるんだが、今回は勝手が違う。 俺が古泉を呼び出した。”あること”を相談したくてな。 本来あんな怪しいやつに相談なんてしたくないのだが、今回の相談事はあいつの得意分野だからな。 変態エスパー野郎の得意分野と言えば、涼宮ハルヒについてのことだ。 長門もハルヒのことならいろいろ教えてくれそうなもんだが、相談事には長門に理解できなさそうな概念が含まれるからな。   「おや、待たせてしまいましたか」 そうこうしているうちに古泉がやってきた。ほぼ時間通りだな。ん? 「古泉、お前いつもの集まりはもっと早いんじゃないか」 「ああ、いつもは涼宮さんがいらっしゃいますからね。皆さんにおごるお金まで機関が面倒見てくれるわけでもないですしね」 「ふん、遅かったほうがおごるって約束しておけばよかったぜ」...
  • 恋愛相談 前編
    夏の暑さもいくぶんやわらいで来て、いよいよ秋になろうとする今日この頃、 僕達SOS団はいつもと変わらぬ日常を過ごしていました。 もうすぐ涼宮さん達と出会って一年半となります。 その間ずっと涼宮さん、そして彼の様子を観察していますが、 もはやお二人の関係は円熟していると言っても過言では無く、お互い相思相愛なのは見て明らかで、 団内でそのことに気付いて無いのはお二人だけというところまで来ています。 あとはどちらが先に想いを伝えられるか……という段階です。 そんな中、僕はある人物から相談を受けました。話はそこから始まります。     僕はいつも通り学業を終え、SOS団の部室のドアを開きました。   「おや、長門さんだけですか。こんにちは。」 「……」   あいさつをしましたが特に返事はありません。 まあいつものことなので特に気にすることなく、 彼が来るまで詰め将棋でもしようかと将棋盤を取り出した...
  • 朝比奈みくるの未来・第7章
    第7章・結論の前に    朝比奈さんが喫茶店にユラユラと入っていくのを見届けてから、俺はその場を離れロビーから外に出た。  朝比奈さんを一人にするのは非常に心苦しいが、彼女を目の前にしては考えがまとまりそうにもない、どうしても一人の時間が欲しかった。本当に申し訳ないのだが…。 近くの目についた漫画喫茶に入ると個室を確保して、コーラを注文して籠もる。そろそろ夕食の時間だが腹は減ってない。それ以上にショッキングなことでお腹一杯だ。 よく冷えたコーラを少し口に含むと、シュワシュワとした強い炭酸の刺激が頭の中をクリアにしてくれる。    俺が本当に好きなのは誰だろうか。朝比奈さんの顔、ハルヒの顔、長門の顔、次々と浮かぶ。 無論、朝比奈さんの告白は両手を挙げて喜ぶべきことであり、一般的に一般的で一般的な性格と生活をおくっていたならば返事に困ることもない。即答していることだろう。 ハルヒ...
  • ある日の事故
    ある日の事故  キョンの顔が目の前にあった。  もう少しで口と口がくっつきそうなギリギリのところで、彼はかろうじてかわしきった。 「おしい」 「あとちょっとで、ブチュっといったのにな」  キョンの背後から男子生徒たちの声が聞こえたと同時に、キョンはガバッと起き上がって、彼らのうちの一人の胸倉をつかんだ。 「ふざけんな! これはいったい何のマネだ!」  怒りに満ちたその声は、今まで一度も聞いたことがないほどの声量だった。  私は起き上がり、状況を把握した。  どうやら、キョンが彼らによって後ろから押し倒され、その結果として私と衝突して、さっきのような状態になったらしい。  確かにタチの悪い悪戯だ。 「佐々木に土下座して謝れ! こんなくだらん悪戯で俺なんかとキスなんかするハメになったら、佐々木がかわいそうだろうが!」  このままでは、彼ら全員を殴り倒しかねない。  そうなれば、暴...
  • 朝比奈みくるの挑戦 その4
     水先案内人が必要である。  過去へ、過去のわたし宛てに指示を送る。  時間の操作を行うことに罪悪感を感じていた時期もあった。必要悪だと割り切っていた頃もあった。  今は、何も感じない。ただ、やるべきことをやるだけ。笑うことも泣くことも忘れた。   「あ、気が付いた。おかえりなさい」  あいたた、ここはどこだ?なぜ朝比奈さんがここにいる?   「キョンくん、まずはかるく息を吸って。深呼吸して。」  落ち着いて周りをみると、ここは屋上前の物置。目の前にいるのは朝比奈(大)さんだ。  あなたがここにいるということは、やはりあの別世界の出来事は未来の既定事項ってやつですか。 「今は**月**日。お昼休みよ。」  確かに時計にもそう表示されている。あのハルヒは俺の希望通り時間移動させてくれたようだ。 「おちついたようね。まだ少し時間あるから簡単に事情を説明させてね。今回もキョンくんにお願いしたい...
  • Please wait for some day in the rain.
    教科書文通の後日談になります。 ----------------------------------- 「長門さん。 その件で、お話があります。 聞いて、くださいますか。」  あの日の、あの雨の日の古泉一樹の台詞が頭から離れない。 他のことを考えていても、気がつくとあの台詞が耳に響く。 彼が隣にいない今でも、その声はわたしの鼓膜を打っている、様に感じる。 これは何? 幻聴? エラー? 「長門さん、 僕はずっとあなたが僕の教科書にお書きになった「良好な関係」について、ずっと考えていました。」  真っ直ぐな瞳だった。 元々古泉一樹は人の目を見て話すタイプの人間ではあったが、 最近は誤解を防ぐためか、はたまた他の理由からか、あまり目をあわそうとはしていなかった。    が、あの日は違った。 あの雨の日。 古泉一樹とより「良好な関係」を築きたいとあのまじないを決行した日。 まっすぐ、まっすぐ...
  • こころここにあらず
    情報の渦。 【わたし】は【わたしたち】と共にここにいる。   ――全ては終ったこと。涼宮ハルヒはただの人間になった。   そう、涼宮ハルヒが持っていた能力は全て消えた。   ――彼女はもう、観測対象ではない。   そう、価値は無い。観測する意味を見出せない。   でも、わたしのわたしが感じられないわたしの奥の部分に、残るわずかな感じ。   ――【わたしたち】は情報であり、『奥』などといった概念は無い。   情報と名のつくあらゆるものを知るのがわたしたち。   でも。   ――帰りたい?   その疑問を持つことが無意味。【わたし】は【わたしたち】でもあるのだから。   もう全ては終っている。   ――でも、帰りたい?   帰るというのは不適切。【わたし】の存在すべき場所はここ。   ――全ては終った。情報は書き換えられた。彼らの記憶から、【わたし】は最初から存在しない。   …。   ――帰...
  • ねこごはん
    我輩は猫である。 名前はシャミセンという。 とある家に住む、人間のいう所の『飼い猫』にあたる。 性別は……、ふむ、人間の分類学上で言うと両性具有に近い物となるらしい。 まあ我輩の説明は良いとしよう。 我輩は今、朝比奈みくるという人物の持った猫運搬用のバスケットなる物の中にいる。 「わーいわーい、みくるちゃんとおっでかけえっ」 バスケットを持った朝比奈みくるの隣、頭一つ分ほど背の低い少女が楽しそうにはしゃい でいる。この少女は我輩の本来の同居人の一人である。 「妹ちゃん、気をつけてね」 少女の兄と朝比奈みくるが同じ学内団体に所属しているという関係にあるため、朝比奈み くるは少女のことを妹ちゃん、という呼び方で呼んでいる。 別に名前を知らないわけではないと思うが、妹ちゃんという呼び方は如何な物か。 それは個人を個として見るのではなく誰かの付属物的存在と見ていることを表すようなも のであって、結...
  • 【朝比奈みくるの妊娠】
    朝比奈みくるの妊娠 私、朝比奈みくるといいます。西暦2XXX年、涼宮新暦XXX年の地球連邦政府内務省直属機関、 惑星公安委員会時空管理事務局の諜報員です。 涼宮新暦っていうのは今から…あっ今って言うのは私と涼宮さん達がいる時間平面のことで、そこから3年前、 つまり涼宮さんがこの宇宙を創造したとされる年を0年にした暦のことです。 ここで私は涼宮さんについて色々調べるように言われたんですが、私ったらドジばっかり。 そういう訳だからこの時間平面上の権限が小さくて禁則事項も多いんです。 この時間平面上の人達との接触は最大限控えないといけないの。私も頑張って早く権限を拡大しなくちゃ。 同時間平面上に派遣された他の先輩諜報員さん達みたいになるんだぁ!辛くても頑張れます! だってこの時間平面上には… 「キョン君…」 キョン君の写真にキスをしておやすみをすると明日も頑張れるんです。でも… ―――私が彼...
  • 朝比奈みくるの未来・第8章
    第8章・時のパズルの完成  朝と同じ待ち合わせ場所、今度は朝比奈さんの方が先に待っていた。 憂いを帯びた潤んだ瞳で、どこを見るでもなくぼんやりと広場の壁にもたれかかっている。 周囲の男共がちらちらと盗み見てやがる。心配しなくていいぞ、彼女が待っているのは俺だからな。 俺は朝比奈さんに正対して近づいていったが、一向に気づく気配がない。 いろいろと考えていることがあるのだろうか、本当にどこも見ていない胡乱な目をして。ただ瞼が開いているだけ。ボウっとした鈍い光を放つ魚眼石のような目で。 5mくらいの距離まで近づいて、やっと気がついてくれた。 「あっ、キョンくん…」 吐息に消されてしまいそうなか細い声だった。 古泉の指摘通り、やはり一人にしたのは良くなかった。一緒でなくともいい、同じ空間にいるようにすべきだった。 その間の彼女の気持ちを考えると申し訳ない気持ちが俺の心の枡から溢れ出る。枡の大きさ...
  • 寝苦しさ
     綺麗な場所を見つけたから、今日は気持ちがいい。  場所は言わない。秘密だから。 都会の雨は気まぐれで、なにか洗い流すように降ったり、なにかを閉ざすように降ったり、などなど。 、、昼に。小雨なんかを通して見る街は異国のようで、まさに今そうなのだが、スキップしたくなるようなあれだ。 傘の柄が冷たいままで、たまに襟足なんかに当たって、いやだ。 その上。どこに引っかかるのか。髪の毛が一本抜け、また抜け。この傘は不良品ですか?この骨には粘着剤でも着いているのか? 折り畳み傘は小さいから仕方が無い。畳んで丸めて叩いて縛って手に持ってみたら、何も隠すことはないらしかった空が、きらきらと輝いていた。 春だから、雨が当たっても風邪はひかないのだ。 ビルと雲の間に太陽が燃えている。  そう。気持ちがいい日は散歩したくなるものだ。  さっきは諸事情で市役所...
  • 朝比奈みくるの挑戦 その3
       時空管理局の管理者達は、特殊な能力を持っている。  わたし達はTPDDを用いることで特定の時間座標に移動することが出来る。時間を一冊の本のようにみることができる。  時間平面上で座標を正確に把握できる。これは生まれつきの才能であるし、訓練で磨かれる能力。    わたしはある時から思うことがあった。  なぜわたしは自身の過去に干渉しないといけなかったのか。  涼宮さんの「未来人に会いたい」という願望によって、わたしはあの時代で彼女と出会った。  彼女の能力によって書き換えられる規定事項、それを守れるのは「わたし」しかいない。  そのために彼女のそばにいる当時の「わたし」とは別のそれより未来の「わたし」が重要な場面で干渉することになった。  でも、重要な局面でそれらを決定し実行したのはキョンくんでわたしではない。わたしは彼を導いただけ。  わたし自身がキョンくんに言った言葉。 「彼女の一...
  • みくるの湯
    姉妹編『長門の湯』『鶴屋の湯』『一樹の湯』もあります。     ====== 『みくるの湯』 台風の季節が過ぎ、本格的な秋を迎えると、さすがに朝夕の寒さが身にしみるようになってきた。怒涛の文化祭やらコンピ研とのインチキ宇宙艦隊対戦でドタバタした去年に比べて、今年の秋は至って平和だ。 放課後の部室も、すっかりやわらかくなった秋の日差しが差し込んでいるが、あと一ヶ月もすると、ハルヒが大森電器店からせしめてきたストーブが活躍することになるだろう。 そんな部室にいるのは、朝比奈さんと長門、そして俺の三人、ハルヒは掃除当番であり、古泉はホームルームでも長引いているのかも知れない。また今日もまったりとした午後のひと時の始まりである。 「お茶です、どうぞ」 「ありがとうございます」 熱いお茶が美味しい季節を迎えたわけだが、朝比奈さんのお茶は季節に関わらず美味しいわけで、俺は、そんな至福の時を...
  • 朝比奈みくるの挑戦 その2
      さっと報告書に目を通した後、まずお茶を一口含んでからわたしは質問に答えた。 「最初の週は予想の範囲内です。ただ、涼宮さんと古泉くんサイドはちょっとずれすぎているかもしれません」 「機関より最初に提示された計画と、実際の計画の差異は内部にスパイが居たためと考えられる」 「情報統合思念体は、それを誤差の範囲と判断しこのまま計画を続行する」 「わかりました。わたし達もそれでかまいません」  報告書は計画の最初の週の観察結果。    公舎に戻ってから、報告書を詳しく読むことにしました。  まるで三流作家の恋愛小説に登場する主人公二人の交際を見ていると、口元が緩んできます。  当時のわたしの立場であれば、キョンくんと交際するということは禁則事項でした。しかも涼宮さんとキョンくんの絆は、彼女にとっては羨ましくもあり理想でもあります。  わたし自身がヒロインになれる話、うまくその役割を演じて王子様...
  • 朝比奈みくるの結婚生活
     いや~、穏やかで結構だ。  愛すべき家族と来るピクニックがこんなにいいもんとは思わなかったね。  全く、日々の疲れも吹っ飛ぶってもんだな。 「キョンくん、お茶でもどう?」 「ああ、貰おうかな」  …にしても、我が妻みくるよ、お前は何故そんなにも美しいのだ。  歳を重ねるごとにキレイになってくな。  昔の庇護欲をかきたてまくっていた雰囲気も勿論良かったんだが。  今の大人の色気を醸し出しまくってるのは尚良しだ。 「おとおしゃん、あしょぼ~」  なあ、お前さんはみくるに似てホント可愛いな。  純真無垢って言葉はお前の為にあると言っても過言ではないだろう。  …悲しいが俺に似なくて良かった。 「はいはい、じゃあ何して遊ぶか?」 「ええ~っと…、う~んとね…」  ああ、もういじらしいな、可愛い過ぎるな。  今なら若紫を見ているときの源氏の気持ちが分かる気がするよ。  …おい、勘違いするな。  俺...
  • 朝比奈みくるの未来・第3章
    第3章・朝比奈さんのお誘い      どうやら、どこかで何か情報の齟齬が発生しているらしい。さっきの二人の詰問内容から考えられる推論を出してみた。たぶん、大きくは間違ってないと思う。   朝比奈さんの体調を心配した鶴屋さんが電話をかけると朝比奈さんが泣いていた。 聞こえた俺の名前で、泣いているのは俺が原因と考えた。 そう思った鶴屋さんがハルヒになんかあったか聞いてみた。 俺が送って帰ったと聞いた。 どうやら俺が酔った朝比奈さんを手籠めにしたんじゃないかと早とちり。 二人して俺ん家に殴り込み。   …らしい。激怒するのも頷けないわけでもないが、間違ってるぞ。教室で長門を抱き起こす俺を見た谷口を俯瞰で見下ろすぐらい超越してる。早とちりが齟齬の原因なら俺のしなきゃいけないことはそんなにもないだろうし、難しいことでもないだろう。 朝比奈さんと話す>鶴屋さんの誤解を解いてもらう>ハル...
  • とある超能力者の動機
     橘も古泉もらしくないですが、話の中で原作の彼等へ近づく仕様になっています。 ――――――――――  ただ、なんとなく過ぎていく毎日の時間の流れは酷く単調で、あたしはこんな毎日が大嫌いだった。 毎日、毎日歯を磨くことも、お母さんの作った朝ごはんを食べることも、隣の家に住む幼馴染と肩を並べて学校へ向うことも、教室でクラスメイトに挨拶をして、授業が始まれば教科書を広げ黒板を睨むことも、隣の席の子と机を合わせて給食を食べることも、午後の授業が苦痛なほどに眠気を誘うと言うことも、帰りのHRでの先生の無駄話も、週に一回回ってくる掃除の当番も、下校すら同じ道の幼馴染の可哀相なほど背の低さも、帰ってきたあたしを出迎えるお母さんのお帰りなさいのイントネーションも、全てが昨日とも一昨日とも、下手をすれば去年とも変わらないと言う事実に、あたしは正直、飽き飽きしていたのだ。    明日、目が覚めると同時に超...
  • 涼宮ハルヒと佐々木の無題
     とある喫茶店。  女二人が向かい合って座っている。   「悪いけれども、今日は、男性を相手にするときと同じ口調で話させてもらうよ。そうしないと、平静を維持できそうにもない。僕は、涼宮さんとは違って、強い人間ではないのでね」  佐々木の発言に、涼宮ハルヒは黙ってうなずいた。 「では、何から話そうか?」 「キョンのこと、どう思ってる?」  涼宮ハルヒの単刀直入な質問に、佐々木はあっさり答えた。 「好きだった。……うん、そう、過去形だよ。いや、現在進行形の部分が全くないといえば嘘にはなるだろうけど、もう、諦めはついている」 「なんで? フラれたわけでもないのに」 「告白すればフラれるのは明らかだ。キョンに異性間の友情という命題について肯定的な確信を抱かせてしまったのは、僕だからね。自業自得というやつさ。キョンにとって、僕は友人以外ではありえない」 「友情が恋愛感情に変わることだって……」 ...
  • 言いたい事は言えない話
         言いたい事は言えない話      道行く人が着る上着と同じ様に、外吹く風もその色を変えてきた――今は十一月。  週末恒例となっているこの市内散策も、ただ目的も無く歩くだけでは凍えてしまう季節がや ってきていた。  日に日に寒さが強くなるにつれ、どうせ何も見つかりっこない不思議探索などはこの際止め て、長門か俺の部屋でのんびりゲームでもしていればいいんじゃないかと俺はかなり本気で思 っているのだが、 「みんな~いい? 今日こそ宇宙人を見つけてくるのよ! ノルマは一人宇宙人一匹、未来人 でも超能力者でもいいからね!」  乾いた大気を震わせるハルヒの声。  人で溢れる駅前で高らかに妄言を叫んで見せたハルヒには、状況に合わせて行動内容を改め る等といった考えは、そもそも存在していない様だ。  それでもまあ、物は試し、百聞は一見に如かず。 「なあ、ハルヒ」 「え、何」 「今日の活動について...
  • 朝比奈みくるの思惑
    「あの、キョンくん。明日のお休みの日、一日空いてますか?」   この世でエプロンドレスがもっとも似合う女性にそんなことを言われれば、例え未来的 な厄介事を背負い込むことが確定的であっても、オレは首を縦に振るしかない。 とはいえ、出来ることならその意図の裏に何が含まれているのか、事前に教えておいて もらえると心の準備ができてとても有り難いんですが……。   「あ、大丈夫です。今回はホントのホントに何もありません。ただ一緒にお出かけしたい なぁって思って」   そういうことなら、オレが拒否する理由なんぞミジンコ程度もありゃしない。むしろ明 日を国民の休日にして祝いたいくらいだ。それどころか、本当にオレでいいのかと考える のは、これまでの人生で恋愛運がつねに1つ星だったせいだろう。   「でも……なんで急にそんなことを?」 「えっとぉ、急なのは分かってるんだけど……実はこれを鶴屋さんからもらっち...
  • 鶴屋家当主のある一日
     とある高層ビル。  鶴屋家当主は、夫の姿を認めると、手を振って、叫んだ。 「やあやあ、愛しのマイダーリンっ!」  彼女がいうとまるで色気がないが、彼女の笑顔はみんなを幸福な気分にしてくれるものであり、夫ももちろんその例外ではなかった。  彼の口元から自然に笑みがこぼれる。 「海外出張の成果はどうだったかなっ?」 「順調だよ」 「そいつは結構だねっ」 「留守中に何かなかったかい?」 「うちは極めて平穏無事さっ。子供たちも元気に走り回ってるしねっ」 「元気すぎるのもどうかと思うけどね」 「子供は元気が一番なのさっ」  鶴屋夫妻は、仲のよい夫婦ぶりを見せつけながら、会議室へと入っていった。  これから、鶴屋ホールディングスの経営会議があるのであった。    会議の議題はいくつかあったが、たいがいの議題はパッパッと片付いていく。 「次は、国際宇宙開発機構からの出資要請についてです。機構の事業内容...
  • 赤ク染マル
    「ねえ、キョン」  ……決めました。 「何だよ」  決めました。 「今度の休みだけどさあ――」  僕は今日、涼宮さんを殺します。僕の手で。  もう、僕は耐えられない。  あの彼女の良く通る声が、花火のような笑顔が僕以外の誰かに向けられることに。  ……ええ。彼女の心は僕に向いていない、当然そんな事は百も承知です。  僕に向いていない、どころではないことも十分過ぎる程わかっています。  分かっているのに、なぜ?  ……自問自答してもそれはわからない。分かったら苦労はしません。  ただ僕が分かるのは、この恋が報われないものであることと、それが歪んでいること。  それなら、歪んでいるなら、どうだと言うのですか?  正常であろうとなかろうと彼女への気持に偽りはない。  たとえば人殺しは時に制裁の名の下に正当化される、  ならば善悪に絶対的な基準など存在はしない。そんな曖昧な世界であるから信を置くべ...
  • Different World's Inhabitants YUKI~モクヨウビ(その一)~
        「3月14日、木曜日、朝のニュースの時間です。おはようございます・・・」   起床後、真っ先につけたテレビから、お決まりのセリフと軽快なBGMが流れてくる。 時刻は現在、午前7時。どうやら天気予報のコーナーをやっているらしい。 テレビの中では、差し棒を持った女性アナウンサーが微笑みを浮かべつ話している。   「今日の天気は、午前中は曇り、昼過ぎから雨で一時的に雷を伴って激しく降るところもあるでしょう。お出かけの際は傘を持っていくと安心です。予想最高気温は・・・」   なるほど。今日は雨か。だったら洗濯物は部屋の中に干しといた方が・・・って、そんな心配はいらなかったっけ。この世界とも、今日でお別れだった。もう1人の私の言葉が正しいのなら、彼女は今日、戻ってくる。そうすれば必然的に私も元の世界に帰らなくてはならない・・・・・・帰らなくてはならないのだ。 洗濯物なんて・・・もうど...
  • 朝比奈みくるの挑戦
       この仕事で最初に貰ったテキストに書いてあったこと 「時空管理者が恋をした場合の選択肢は、記憶を失うか心を殺すことである」    高校卒業の後、元の時間にもどったわたしはがむしゃらに努力してそれ相応の権限を手に入れました。  そしてあの時代に干渉した結果、規定事項はすべて遵守、今の未来も確定してわたしの仕事は終わりました。  わたしに残ったのは、過去の記憶と現在の管理局トップとしての地位。  ここは広大な敷地にある図書館の館長室。 「機関の提案に対して、情報統合思念体は同調することにした。あなた達の結論を聞きたい」 「わたしたちも賛同します。今回の提案は、こちらにも利あるものですから」  話し相手は長門さん。アカシックレコードとすら評されるこの図書館の館長をしている彼女の正体を知るひとは少なく、知る人にとってはこの建物の二つ名は皮肉ですらあります。  配属前の研修生として一度だけお...
  • 長門有希の消失 第四章
    第四章    学校を休もうと思っていた。  あの文章を読んで、わたしが独立した存在ではないと悟ってしまったとき、本当に立ち上がれなかった。茫然自失としていた。どんなことを思い、考えたのかも記憶にない。ただ気がつくと窓の外の空が明るくなっていて、わたしの部屋もかすかながら太陽に照らされていたのだった。パソコンはカーソルを物語の最後の文字で点滅させたまま、何十分も前と同じ状態の画面を表示していた。  涙は止まっていた。枯れてしまったのかもしれない。頬を伝った部分には少しだけ違和感があった。  でも確かに、涙に浄化作用はあったらしい。カタルシス。わたしは黙って泣いているうちに、いったい何が哀しいのか解らなくなってしまったのだ。一人暮らししていることなのか、あの物語が『わたし』のものだったことなのか、わたしは存在的に独立した人間ではなかったということなのか、あるいはその全部か。  悲しさも涙...
  • 涼宮ハルヒの奮闘 ~しっと団の野望~ 第1話
    SOS団結成から一年半が経過し、冬の到来を予感させる11月のある日に、 紆余曲折を経て、ようやく俺はハルヒと付き合いだした。 それからの1ヶ月間は、はっきりいって天国だったね。 二人きりだと甘えてくるハルヒのかわいさったら無いぜ? 最初はどうなることかと思ったが、こんなにも楽しいもんなんだな、恋愛ってヤツは。 そして12月下旬となった今、俺達二人は公園のベンチで肩を寄せ合って座っている。   「ねえねえ、もうすぐアレじゃない?」 「アレってなんだよ。」 「クリスマスに決まってるじゃない!」 「ああ、もうそんな季節か……楽しみだな。」 「でしょ!?あのね、行くところはもう決めてあるの!」   そう言うとハルヒは、一枚のチラシを取り出した。   「なになに?『セントラルタワー、クリスマスの日は恋人達だけの夢の楽園に!』……なんじゃこりゃ。」   セントラルタワー。二つほど隣の駅にある人気スポッ...
  • ある暑い日の部室で
    嫌になるくらい暑いとある夏の日の放課後、 「今日はHRが早めに終わったし、あたし達が一番乗りかしら。」 「かもな。」 あたしとキョンはそんな他愛も無い会話をしながら暑さに耐えつついつもどおり部室へ向かっていた。 「部室前に到着。さて、中に誰かいるかしら?」 そう言いつつあたしはドアノブに手をかけ回してみる。 結果、扉は開かずただガチャガチャと無機質な音を奏でるだけだった。 「鍵が閉まってるってことはあたし達が一番乗りね。」 「みたいだな。」 別に何の特になるわけでもないけど一番乗りって何か気分がいいわよね。 「一番乗りが確定して悦に浸るのは結構だが、何時までもここでぼさっとしてる わけにもいかんだろ。さっさと鍵を開けてくれ。」 「…言われなくても開けるわよ。」 せっかくいい気分だったのにあんたの台詞のせいで台無しじゃない。バカキョン。 そう内心で愚痴りつつ、あたしは鍵を開けた。 キョン...
  • 人生最悪の四日間 第二章 ~神は誰だ~
    窓が割れている。そして、その窓から「俺」が落ちた。 どうすればいい? 殺してしまった。 話が違うじゃないか。 俺は頭を撃ち抜かれるんじゃないのか? パニックになった俺は助けを求めるべく、ポケットから携帯を取り出した。 午後五時三十分。部室にて。 古泉、結局この世界の神は誰なんだ? 「貴方のほうから電話をくれるのは珍しいですね。一昨日お話したとおりですよ」 ……俺か? 俺なんだな? 「ええ、そうです」 じゃあ、俺が金持ちになりたいと望めば、俺は金持ちになれるのか? 「世界の基礎がすでに確立しているので、あまりにも突拍子もないものについてはわかりかねますが、 現実になったとしても不自然でないことなら貴方の望んだとおりになるでしょう」 じゃあ、俺が厄介ごとに巻き込まれたくないと願えばその通りになるんだな? 「ええ、そういうことになりますね」 例外は無いのか? 「例外は二つです。ひとつは先ほど...
  • 朝比奈みくるの未来・第1章
    第1章・近況報告と忘年会      昨夜のことを話す前に、高校卒業あたりから今までの俺たちSOS団のメンバーの近況を少し説明しておこう。  北高での生活はハルヒ率いるSOS団の活動が中心となったのは言うまでもない。天敵とばかりに退屈を嫌うハルヒのパワーなのか宇宙人未来人超能力者の業ゆえか不明だが、数々の小イベントから中クエスト、中には身の危険が生じるほどの大事件を通じ、5人の親密度はさらに深まった。しかし深まっただけだった。 俺は親密度のパラメーター上昇に従い本命朝比奈さんの愛情パラメーターも上昇して校庭の木の下で卒業式の告白エンドなどを密かに期待していたのだが、対抗の長門エンドもなく、また隠れキャラによる隠れエンドや、望みもしない大穴ハルヒエンドすらも迎えないまま、期待虚しく卒業式を迎えてしまった。なんかのフラグが足りなかったのかもしらんが市販の女性攻略本にはそんなもん載ってないのでわ...
  • ある冬のある街で
    さて、困ったことになった。いや、妙なことと言った方が的確かもしれないな。 どこから話せばうまく伝わるだろうか。そうだな、とりあえず俺のことを簡単に説明しておこう。   俺は現在大学に通っている。二年生だ。 高校卒業後、一人暮らしも始めた。アパートの家賃や食費・光熱費等は自力で捻出している。 で、SOS団だが………今はとりあえず置いておこう。今重要なのはそれではないんだ。 一応、現在も嫌というほど元気に活動中であり、俺の財布に強制ダイエットを施している、ということをここに報告しておこう。   では、事の成り行きを順に追っていくことにしよう。     日もすっかり沈んだ頃、大学近くのコンビニでのバイトを終えた俺は12月終盤の冷え切った風を一身に浴びて暖かい我が家へ向かっていた。 「あれ?キョンくんじゃないかっ。今日も元気にやってるかいっ?」 背後からやけに元気な声が聞こえてきた。こんなクソ寒い...
  • 「喧騒」
    文字サイズ小でうまく表示されると思います    その場所は、とても静かな場所だった。  初めて私がその場所に来た時、数ヶ月間誰もその場所には誰も立ち入った事が無かったらしく 床もテーブルも埃に覆われていて空気は濁っていた。  以前、この星の人間はその様な場所で過ごす事をよしとしない考えを持つ者が大多数を占めて いると、バックアップのインターフェースから聞いた事がある。  ならば私がこの場所で長時間過ごす事になるのならば、まずは清掃をしなければならないはず。  幸い、部屋の片隅に置かれていた掃除道具入れの中にはちゃんと箒やちりとり、雑巾といった 基本的な清掃道具は揃っていた。  これならば目的達成は可能。  用具入れの中、一番手前にあった箒を手に取り、私はその場所へと向き直る。  ――数十分後。  誰かが入口の扉を軽い力で叩く音が聞こえてくる。  それにしてもこの部屋は密室だったはず、どう...
  • ある雷の日に
    お天気シリーズ第三段       「…なによ、バカキョン!雑用の癖にあたしに楯突くなんて!」 「そんなことどうでもいいだろ!それよりさっきの言葉を訂正しろ!」   怒ったキョンを見るのは、初めてじゃなかった。 あたしが悪いのはわかってるし、本当は謝りたいのよ。 …でも、あたしに対して怒るキョンを見ていると、何だか言い返したくなる。 「そこまで言う必要ないじゃないっ!」 そう、それは、ある雷の日。         原因は…、なんだったかしら。 忘れちゃったけど、とにかくその日、キョンとあたしは喧嘩をしたの。 怖かった。 嫌われてしまうんじゃないか。 いや、こんなに怒ったってことは、もう嫌いになっちゃったのかも。 なのにあたしは、『ごめん』の一言も言えない。 なによ、あたしのバカ… 「バッカじゃないの!?うるさいわよ!」 いつもはにこやかな古泉くん、いつも本から目を離さない有希までもが、こちら...
  • ある秋の日のこと
    SOS団史を紐解く中で、空白になっている期間がある。 それは俺たちが一年だった頃の9月と10月だ。 後になって知った小さなエピソードだが、どこにも記せそうにないのでこの場に書いておこうと思う。   9月のある日、あの終わらない夏休みをようやく終わらせ、俺は部室で朝比奈茶を優雅に味わっていた。 部室には全員が揃っていて、すなわち現在パソコンに注意の全てを傾けている団長の涼宮ハルヒ。 メイド服を着るためにこの世に生を受けたかのごとき妖精、朝比奈みくるさん。 一瞬見ただけでは等身大の置き物にしか見えない読書ドール、長門有希。 微笑みしか表情を知らないようなハンサム野郎、古泉一樹である。   9月になったとはいえ風は一向に冷たくならず、夏の熱気だけが絶賛継続中だった。 夏は嫌いじゃないが、こういつまでもだらだら続かれるとさすがにバテそうになる。 俺の周りの4人は全員が暑さを気にしていないような顔を...
  • あたたかなもの
     別に俺は古泉がどこの誰と付き合ってようと知ったことじゃないし、それが例え自分の知ってる範囲の人間だったとしても文句をつけようとも思わないんだが、世の中には、時と場合とか、限度とかって物が有るんだってことを、今更ながらに感じていた。 「古泉くん、長さこのくらいでいいかしら?」 「ちょっと短いかも知れませんね」 「んじゃ、もうちょっと編まないとね」  今現在俺の目の前で繰り広げられている光景。  それはもうカップル同士のラブラブ光線バリバリ、周囲の事なんか知ったこっちゃないとでも言わんばかりのラブコメ的光景だった。  お前等ちょっとは場を弁えろ。  ここは部室だ。俺や長門もいるんだ。  ……なんてことを言えたら良いんだろうが、カップルの片割れたる団長様は部室の私物化を何とも思わないような、というよりそもそもこの部室自体が団長の私物化ゆえのものであるという超自己中心的な人物であり、その恋人た...
  • みくるの告白
    目が覚めると、朝日が完全に昇りきってない空からは本日の晴天ぶりが覗える窓の外を見ながら、とても悲しい気持ちになった。 夢の中で何か大切な物を失ってしまう、そんなありきたりだけどめったに見ることの無い妙に現実染みた嫌な夢。 そんな夢を見ただけでとても悲しい気持ちになった。そんな幸先の良くない一日から動いた運命の話である。   悪夢で目が覚めた俺は、朝から憂鬱な気分で過ごした。学校へ行ってもどこか集中しておらず上の空だった。 ただ過ごしているだけの決して充実していない日常。少しだけハルヒの持ってくる非日常が恋しくなった。   「キョンくん、大切なお話があるんです。部活が終わったら少し待っててもらえませんか?」   たまたま廊下で会った朝比奈さんに突然そんなこと言われて焦ったが俺は了解する旨を伝えたのは今日の昼休みの事である。 SOS団の活動中の俺は、また未来絡みか、と戦々恐々とし...
  • 朝比奈みくるのブラックコーヒー
    『朝比奈みくるのブラックコーヒー』 ――こぽこぽこぽ。  あたしはいつも通り、部室のお茶くみ係としてがんばっています。皆さんこんにちわ。朝比奈みくるです。  ところで最近、あたしには気付いたことがあります。  アタシオワッテマス?  あたしだって、未来から来たって以外は花の女子高生です!だから恋の一つや二つ体験したいんです!  でも皆さん、考えてみてください。……みくキョン小説ってありますか?  みくキョンじゃなくてもいいです。古みくでも国みくでも、この際谷みくでもかまいません。……あたしの恋愛小説って読んだことありますか?  ええ、ハルキョンならたくさんあります。長キョンだって次いでおおいですよね?他にも古長、キョンオリ、この世界の創造主(作者)にいたっては佐々キョンまで執筆してるんですよ!?  しかしです。  なんであたしだけ恋愛ヒロインになれないんじゃー!!  だから朝比奈み...
  • 涼宮ハルヒの家族事情
      「みくるちゃ~ん、また大きくなったんじゃないの~?」 「ふ、ふぇ~!やめてくださぁ~い!」   あたしはみくるちゃんの背後にまわって、胸をつかんだ。 う~んいつ触っても最高の触りごこちね!ちょっとうらやましいわ。   「こらやめろハルヒ。嫌がってるじゃないか。」   そんなあたし達のやり取りを見て、キョンは目を背けながらあたしに注意する。 その向かいに座ってる古泉君は苦笑い。有希は目も向けずに読書。 いたっていつも通りの光景。不思議なことなんて何1つ無い。 だけどあたしはそれでもいいと思ってる。今では不思議なことよりも、SOS団のみんなと過ごすことが1番楽しい。 だけど団長がそんなこと言ったらみんなに示しがつかないから、不思議は探しつづけるけどね!   パタン。   有希が本を閉じた。時計を見るともう6時前。もうすぐ学校が閉まっちゃう。 あたし達は荷物をまとめて、帰る支度をする。 何よ...
  • 人生最悪の三日間 第三章 ~三年間の罠~
    午後五時。部室にて。 「そろそろ来ると思ってたぞ」 呆然としている俺の顔が実に面白い。 紛らわしいので、この時間帯の俺は……キョンと呼ぼう。 ……ついに自分で自分のことを「キョン」と呼んでしまった。悲しくなってきた。 キョンは真っ青な顔をして――ここは省略しよう。 物語は二日目へと進む。 二日目 午後四時七分。校舎裏にて。 で、死体はちゃんと処理されたのか? 「それを今から古泉に確認するんだよ」 キョンはポケットから携帯を取り出して、古泉の番号に掛けた。 そろそろ元の時間帯に帰れるはずだな。 ん? 元の時間帯? 元の時間帯って今から一時間後だろ? たった一時間、未来に行く必要があるのか? そんな労力使う必要が無い。たとえ未来の技術を用いたとしても、時間を移動するのはかなりのコストがかかるはずだ。 じゃあ、なんで帰る必要があるんだ? いや、そもそも帰る必要なんてあるのか? このまま帰ら...
  • 夢見ぬ蛙は終末に鳴く2
      土曜日は呆気なく訪れた。 恋人関係を彼女と営み始めてからの変化と呼べる変化は、下校を共にし、少し会話が増えた程度のものだ。それでも涼宮さんや朝比奈さん、「彼」には大層驚かれたし、自分でもその微小な移り変わりへの戸惑いは払拭できていない。それまでの僕らは私的な交流というものがそもそも皆無であった。   僕と長門さんが彼氏彼女の付き合いになったのだという報告は、長門さんに暫くは公にしないよう頼んで伏せさせて貰っている。機関に子細を伝えたところ、時期を見た方がいいという推断が下されたからだ。 機関の上層部は、想定通り、概ね今回のことをいい風向きと捉えているようだった。 かつて最大規模の閉鎖空間が、涼宮ハルヒの焼餅で発生したことを思えば。長門有希が恋愛的アプローチを「彼」に取らないということが手堅い事実としてあるだけでも、彼らにとって随分と助かる展開であるのは間違いない。 『出来得る...
  • 朝比奈みくるのクーデター その5
     0歳。あたしが生まれた。憶えているわけもない。  3歳になったとき。まだ子供だったというのにその日のははっきりと覚えている。突然家を訪ねてきた男によって 両親が射殺された。どうやら反体制派との活動に関与していたためと思われる。ただ親によって身を隠されていたあたしは 難を逃れることができた。  5歳のころ。政府直属の施設に放り込まれたあたしはいじめによる暴力を受け続ける日々だった。  8歳になってから少し後。愚かな国の元首は隣国に攻め込んだ。ところがあっさり撃退されて、逆侵攻を受けた。 その時に施設が空爆され混乱状態に陥いる中、あたしはそこから逃げ出した。  11歳になって。浮浪児としての暮らしに耐え続けていたとき、あたしのいた街が反政府勢力によって制圧された。 戦闘に巻き込まれて多数の仲間が死んでしまった。でも、反政府勢力から与えられた炊き出しのスープはとても美味しかった。 数年ぶりの暖...
  • 人生最悪の三日間 最終章 ~デズデモーナ~
      もっと早く、気づくべきだった。 朝比奈さんは三年以上前に遡れないと言ったし、古泉はもしかしたら昨日世界ができたのかもしれないとも言った。 朝比奈さんの言ったことはわからないし、古泉が言ったこともありえないと思って、別に気にしなかった。 でも、そのときに気づくべきだった。 単独で考えれば、どちらもありえない話だが、併せて考えれば答えは出るのだ。 神が憎い。 こんな奴が神だなんて信じられない。 俺は神に反乱を起こすぞ。     午後六時二十分。部室にて。   銃声は二回だった。 ひとり一発ずつ。 だが、それで十分だった。 笑う女は笑うのを止め、床に崩れ落ちた。 部屋の隅にいた未来人も同じように倒れた。 銃口から出た煙は天井に向かって昇る。 死体が二つ、床に転がっている。頭からは血を流して、床に血溜りを作っている。 「……よく撃てたな」 「団員のピンチよ。撃てないわけ無いでしょ」 「……...
  • 朝比奈みくるの未来・第4章
    第4章・邂逅(ここもあたしです。みくる☆)    わわ、い、言っちゃいましたぁ…。 鶴屋さんの後押しがあったから言えたんです。 明日会ったらなんて言えばいいのかな。恥ずかしいから遠回しに言っても大丈夫かな。ううん、それだと気づかれなかったら困るし、やっぱり素直にはっきりと言わないとダメかな…。 どうやって伝えたらいいのかな、頭の中でグルグル回ってます。   グルグル回って、フワフワしてしまいそうですが、もし、あたしの気持ちを伝えたらどうなるんだろうと考えてしまいました。あたしの知る未来を考えれば、伝えてもたぶんうまくいきません。いえ、そうでなくてはならないのです。それが規定事項ですから…。 時間駐在員たる者、規定事項を変えてしまう行為は許されません。未来へと続く時間平面上で、ある一平面上にある落書きのようなものであるあたしが、たとえ未来を変えようとしても、本来の未来に帰結するために...
  • 朝比奈みくるの憂鬱
    ふと、気がつくと、俺はひとりで公園のベンチに座っていた。 光陽園駅前公園、古泉が転校してきた日に長門と待ち合わせをした場所。 そして、三年前に戻ったあの日には、朝比奈さんの膝枕で眠り、朝比奈さん(大)と会った、俺にとっては思い出の多い場所でもある。 だが、どうやらここは現実の光陽園駅前公園ではないようだ。 周囲を見渡しても、人っ子ひとり居らず、空は灰色の雲に覆われ、薄ボンヤリとした光を放っている。 閉鎖空間 いままでの人生で数えるほどしか入り込んだことのない、現実の世界とは少しだけズレた場所にある異世界、ハルヒが無意識のストレスを発散させる空間に、いま俺はいる。 俺は大きくため息をついた。 ハルヒの無意識が俺をこの空間へと導いたことを瞬時に悟ったからだ。 そして、このようなハルヒの我侭に起因する、微妙にズレた日常に慣れてしまっている自分に、ほとほとあきれていた。 さて、今回ハルヒはどのよ...
  • ねこ保守~吾輩はねこである~
      まだ名前のない私。誰の為でもなく、ただ生きている。 それはなんだかとても楽であり、けれど悲しくもある。 しとしと。 雨が落ちる音。 ふやけたダンボールの居心地は、酷く悪い。 けれど此所――いわゆるコンビニエンスストアの側から離れる事で起こり得る、宿や空腹に対する愁いが私を引き止める。 ――――まぁ、どうにかなるだろう。 そんな程度の悩み。 ほとほと。 毛から水が垂れる音。 「……ねこ」 小柄な女の子が、ぽつりと零す。 ……やば、見つかった。 この雨の中を逃げる気力はないのだけれど、どうするべきだろうか。 先日受けた小さな手足からの様々な暴行を思いだしながら、私は相手を観察する。 澄んだ目をした少女だった。 後ろに背の高い少年を従えて、こちらを見据えていて。 なんだかひどく蠱惑的な手で、傘とビニール袋を握っている。 雨の似合う少女だった。 今が冬ならば、降...
  • 人生最悪の三日間 第五章 ~笑う女~
    勘が良い読者は、すでに気づいているだろう。 しかし、それは本当に勘の良い人間だけだ。 それは、この事件の犯人が見せた本性だ。 その本性は、普段の性格とは正反対で、非常に冷酷で残酷だ。 『ヤツ』は少しだけ、本当にわずかだったが本性を見せた。   午後五時五十七分。一年五組の教室にて。     目を覚ますと、教室に居た。 窓の外を見ると、すでに日は暮れていて真っ暗だった。 目の前には長門が居た。長門は俺のほうではなく、黒板のほうを見ていた。 黒板の前にはあいつが立っていた。   朝倉。 ホントにカナダに行っちまえばいいのに。 この光景は見たことがある。俺の心の傷がサバイバルナイフでさらに広げられる。 全身に鳥肌が立つ。やっぱり、朝倉には慣れん。 「情報連結を解除」 長門はそう呟いた。 朝倉は足元から光の粒となって消えていく。 なんだ? いきなり決着がついたのか? 俺が寝ている間に激しい戦いが...
  • 涼宮ハルヒの経営I エピローグ
      エピローグ       あれから二ヶ月が過ぎた。ハカセくんは無事大学に合格し、実験を再開している。進捗状況はあまり目を見張るほどのものではなさそうだが、一歩ずつ時間平面について勉強しているようだ。あれこれ苦労しているハカセくんを長門と朝比奈さんが温かく見守っている。ハルヒの目が温かすぎてプレッシャーにならないようにいろいろと配慮はしているのだが。 「そういえばキョン、メモリカードどこにやったの?」 「あのメモリカード壊れてるぞ。今のパソコンだとちゃんと読めない規格だったらしい」 「むー」 ハルヒは口を尖らせて、どうしてもあの続きを見たい風だった。 「続きはそのうち分かるだろ、少なくともお前自身なんだから」 「そうね。未来のあたしが満足してるなら、それでいいわ」 なんとかあきらめてくれたようだ。ワームホールも無事閉鎖したし、しばらくはおとなしくしてくれると助かる。すくなくとも次の「ひ...
  • クリスマスイブ、独り身の女二人
    クリスマスイブ、独り身の女二人  川沿いの桜並木。  朝比奈みくるは、ベンチに座って、空を眺めていた。  空からは、ふわふわと雪が舞い降りてくる。  この時間平面はいわゆるクリスマスイブ。  そんな日の夜に、こんなところにいる人間は多くない。一般的にいえば、桜は春に愛でるものだ。  彼女がここに来たのは、特に理由があるわけでもなかった。この時代に遡行したときは、許される限りは、ここに来ることが習慣化している。ただ、それだけのこと。  あえて理由をつけるなら、ここがとても思い出深い場所だから、とでもいうべきだろうか。  彼女の今回の任務は既に完了している。部下たちは、原時間平面に帰還させた。  彼女がこの時間平面に無駄に滞在することが許されているのは、組織内での彼女の地位が確固たるものであり、多少のわがままが通るからにほかならない。  ふと見ると、人影が見えた。徐々に近づいてくる。  ...
  • 一夏の恋2
    懐かしむにもこそばゆい記憶が一つ、ある。 三年前、突如芽生えた力に慄き、戦いに明け暮れねばならぬ生涯を嘆き、周囲に対して心を閉ざした中学一年の春。機関に迎え入れられてからもそれは変わらず、無愛想とよく称された、拗ねた物分りの悪い子供であった僕。寄せられる微笑さえ、甘言を弄して手酷く裏切られる前兆のように思い、孤独に身を固くしてさえいれば己だけは護れると――そんな、保身じみた考え方で、自己を哀れんでいた。そんな僕の顔を覗き込んで、彼女、出遭った頃から上司であった森園生は笑った。 「つまらない顔ね」 彼女の笑みは今思い起こしてみても夢ではないかと疑うくらい、慈愛に満ちたものだった。母親のように、薄い唇から紡がれる声は優しかった。 「確かに貴方は可哀相ね。運命を呪うなら好きなだけ呪いなさい。それでも貴方は選ばれ、神人を狩る力を与えられた、その事実はどう足掻こうと変移し得るものではないわ」  ...
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