EV_熊蔵の声~ハウステンボス編~

殺陣祭・オールスターズ_ドラマストーリー

熊蔵の声~ハウステンボス編~



イベント概要


開始条件: ↓仲間
パーティ: 洋,孝允,ファンタ,シロ
開始場所: サセボシティ

ドラマストーリー


4人の移動ルート

 「なるほど・・・それは心配だ.」
 孝允はファンタの言葉に頷いた.
 「僕達だけでも,様子を見に行ってみるべきかな.」
 ファンタが提案した.2人はサセボシティを訪れていて,街の周囲の様子を調べていた.2人は歩き出した.
 「そうだな・・・もう少し誰か居ると良いかも・・・あ!」
 孝允の目に,シロの姿が映った.孝允はシロに駆け寄って行った.
 「ファンタ君と孝允君?」
 シロは振り返り,孝允と,後ろをついてくるファンタに気が付いた.
 「ちょうど良かった.少し手伝ってくれますか.」
 孝允がそう言って,シロが何か返事をする前に,ファンタが説明を始めた.この街の近くにハウステンボスと言う大きなレジャー施設があるのだが,何故か多くのモンスターが集まってしまい,今は閉鎖されているとの事だった.ファンタと孝允は現地に向かい,何とかモンスターを討伐しようと考えていた.
 「そうだね,それは・・・」
 行った方が良い,とシロが言い掛けたとき,不意に周囲に邪悪な気配がした.3人は驚き,シロは思わず後ろを振り返ったが,そこには誰も居なかった.そして,
 「シロよ・・・あとその仲間達よ・・・」
 テレパシーによる,熊蔵の声が聞こえてきた.
 「うわっ!熊蔵?!」
 シロは思わず叫んでしまった.
 「何だこれは?」
 「もしかして,テレパシーですか?」
 ファンタと孝允も,突然の事に慌てていた.
 「皆に聞こえてるんだね・・・.」
 シロは2人の方を見ながら,熊蔵が次に何を言うのか待ってた.
 「そうじゃ,お主と近くに居る仲間達には聞こえておるはずじゃ.」
 熊蔵の言葉から,こちらの会話も向こうに聞こえているようだった.
 「それで,じゃ.」
 そう言って,熊蔵は一息置いた.目の前に本人が居ないだけに,相手がいつ話し出すか分からず,3人は熊蔵の会話のテンポが良く分からずにいた.
 「お主らの話,恐らくな・・・」
 「え?!熊蔵,聞こえてたの?」
 話,と聞いて,シロは思わず声を上げた.
 「なんか,都合の良い話だけは聞こえるようじゃ.」
 熊蔵は淡々とした調子で答えた.
 「やはり,理解出来ない能力だ・・・」
 孝允は自分の頭を抑えながら言った.
 「そのモンスターが現れた所,オーブがあるかもしれぬぞ.」
 熊蔵は話を続けた.オーブ,の単語に,3人は再び驚かされた.
 「どう言う事?」
 シロは少し上を向いて言った.
 「オーブにはわしの力が宿っておる.だから多分,モンスターも集まり易いのじゃ.」
 「なるほど・・・.多数のモンスターが居ると聞いているから,そうなのかも知れない.」
 ファンタもシロと同じ場所を見ながら応えた.何となく,仮想的に熊蔵が上空に居ると決めると,テレパシーと会話するのに都合が良かった.
 「そう言う事じゃ.ともかく,行ってみい!」
 「まぁ,言われるまでもなく,行こうって話をしてたんだけど・・・」
 熊蔵の言葉に,孝允が答えた.
 「モンスターを倒すだけじゃなくて,オーブも探せばいいんだね.」
 シロがそう言うと,数秒間の沈黙が流れた.
 「・・・あれ?熊蔵?」
 熊蔵からの返事は途絶えてしまった.
 「もう聞こえてないのか・・・?」
 ファンタはそう言って,シロと孝允を交互に見た.テレパシーはもう,誰にも聞こえていないようだった.
 「ともかく,行ってみましょう.・・・おや?」
 孝允が後ろを振り向くと,洋がこちらに向かって歩いてきた.
 「やはり,皆集まっていたか.」
 洋は3人を見ながら言った.孝允は不思議そうに洋を見た.
 「洋君?」
 「今のは熊蔵のテレパシーか?俺にも聞こえてきた.」
 洋がそう言うと,孝允とファンタは少し驚いていた.
 「私と近くの人には聞こえる,って言ってたね.」
 シロが納得したように言った.先程の自分達の会話は洋に聞こえなくても,熊蔵の言葉が伝わっていれば,これから何をするかも伝わっていると思った.
 「なるほどな.まぁいい,俺も手伝おう.」
 「それは助かります.」
 洋が言うと,孝允は軽く頭を下げた.

 ハウステンボスは,街からあまり離れていなかった.外にはあまりモンスターは居なかったので,4人はハウステンボスの周囲を少し歩いてみた.入口は幾つかあり,かなり大きな規模の施設だった.
 「思ってたより,敵は多そうだ・・・」
 ファンタが中の様子を見ながら言った.外と比べて,中には多くのモンスターが居た.
 「一点突破は効率が悪そうだ.手分けしてモンスターを掃討するか.」
 洋はモンスターを見ながら,独り言のように言った.
 「それが良いかも知れませんね.」
 「そうだな・・・僕は洋君と,向こう側から突入しようか.」
 孝允とファンタは続け様に答え,ファンタは北東の方向を指差した.
 「了解した.」
 洋はそれだけ答えると,ファンタと共に走り去って行った.シロはそれを見ながら,
 「皆,行動が早いね・・・昔からの仲間だからかな.」
 と呟いた.僅かに寂しさを感じていた.
 「我々はここから行きましょう.」
 孝允は目の前のメインゲートに向かって歩き出した.シロもそれに続いた.

 ゲートをくぐると,モンスターはすぐにこちらに向かってきた.孝允は剣を取り出して迎え撃った.その間にシロは,次に近付いてくるモンスターを見付け,積極的に攻撃しに向かった.海が近いためか,魚か両生類のような見た目をしたモンスターが多かった.

 2人はそのままモンスターを倒しながら,橋を渡って北上して行った.右手には観覧車が見えた.観覧車自体はモンスターの被害にあった様子はなく,すぐにでも動かせそうだった.付近のモンスターをある程度倒した後,孝允は辺りを見回した.
 「向こう・・・北の方にモンスターが集まってるように見えますね.」
 「ここが渡れたら早そうだったけど・・・」
 シロはそう言って,元々橋があったと思われる川を見た.こちらの陸地と反対側の陸地に繋がる部分だけは残っているが,途中の部分はすっかり壊されてなくなっていた.
 「こちらなら渡れそうです.行ってみましょう.」
 孝允の言葉に,シロは左を向いた.そちらの方向には壊れていない橋があった.2人は,西側にある橋を渡って行った.

 東の方の入口から突入した洋とファンタは,北の方に居るモンスターを倒しながら進んでいた.入ってすぐに高い塔があり,その側に多数のモンスターが居たため,洋は塔に登り,そこからモンスターを銃撃した.ファンタは地上で戦い,大半のモンスターを相手取っていた.ファンタが攻撃されそうになったり,取り逃したモンスターを,洋が器用に撃っていた.ファンタの前に立った少し大型のモンスターを倒したとき,近くのモンスターによる喧騒は止んでいた.
 「・・・ふぅ,ここら辺は大体片付いたかな.」
 ファンタは呟き,剣を収めた.
 「ファンタ,どうやら向こうの方が怪しそうだ.」
 洋の声がして,ファンタは振り向いた.塔から降りてきた洋は,北西の方を指差していた.距離があってはっきりはしないが,巨大なモンスターが居るようだった.近くには船が幾つか停泊していた.
 「あれは,港?ここからでも分かるな.」
 ファンタはそう言って,その方向に少し近付いた.何かを待っているのか,モンスターは移動せず,その場に留まっているようだった.
 「よし,行ってみよう.」
 ファンタは渡れそうな橋を探し,北の方にまだ壊れていない橋を見付けた.2人は橋の方へ向かっていった.

 孝允とシロは北部の港付近に辿り着いた.モンスターの数は多かったが,その中でも一際大きなモンスターが孝允の目に付いた.
 「あのモンスター,あの場所を動きませんね.」
 「オーブを守ってるのかも知れないね.」
 シロも同じ方を見て言った.何となく,あのモンスターを倒せば,オーブが手に入るような気がした.孝允は頷き,2人は小型のモンスターを倒しながら,巨大モンスターに向かっていった.

 「む?孝允達も向かっているようだな.」
 港付近を進む洋は,孝允とシロの姿を見付けた.2人は,巨大なモンスターの目前まで迫っていた.あのモンスターを相手にしようとしている事は一目瞭然だった.
 「僕達も加勢しよう!」
 ファンタが力強く言って,駆け出した.水辺からモンスターが飛び出してファンタに攻撃しようとしたが,剣で切り払って水辺に押し戻し,ファンタはそのまま走り続けた.洋もそれに続いて行った.

 孝允は僅かに湾曲した幅の広い片手剣を持ち,巨大モンスターに向かって攻撃を仕掛けていった.巨大な蛸のような足を幾つも持つが,巨大な鋏も一対生えている,不思議な形状をしていた.モンスターの蛸の足が素早く孝允を払い除けようとしたが,孝允は跳躍してそれを躱した.次の瞬間,今度は鋏が孝允の胴にぶつかり,孝允は叩き落され,地面を転がった.
 「大丈夫?!」
 シロは孝允の傍へ駆け寄った.
 「なんとか.余には構わずに敵に集中して下さい.」
 孝允はモンスターの動きを見ながら起き上がった.シロは頷き,モンスターの足の動きに注意しながら攻撃しようとしたが,なかなか難しく,防戦気味になっていた.そうして戦っていると,不意にモンスターは鋏を大きく振り上げ,シロに向かって振り降ろした.シロはしゃがんで身をかわし,ギリギリのところで避けられると思ったが,それは大きく軌道を逸れて地面を叩き付けた.ファンタが剣で弾いていたからだった.
 「大丈夫か?」
 「うん,何とか大丈夫.」
 シロは立ち上がりながら答えた.
 「4人なら勝てると思います!」
 孝允は3人に向かって言った.
 「よし,俺達でこいつを倒そう.」
 洋は敵の攻撃が届かない程度に後ろに下がった.後方から銃でサポートするつもりだった.シロもファンタと孝允の邪魔にならないよう,少し後ろに下がった.孝允がモンスターの攻撃を誘うように最前線に立つと,予想通り蛸の足が孝允の頭上から降ってきた.孝允は剣でそれを力一杯叩き,振り払った.ファンタはその足を垂直に斬り付け,蛸の足の先は切り取られた.モンスターは更に別の足で攻撃しようとするが,洋の銃撃がそれを阻んだ.シロもヒットアンドアウェイで電撃を加えた短剣を斬り付けていた.

 戦いを続けていくうちに,徐々にモンスターの足は斬られていき,その後は4人は鋏に攻撃を加えていった.モンスターの攻撃手段が失われると同時に,モンスターは海に落下し,沈んで行った.
 「これで・・・倒したか?」
 ファンタは呟き,水面を見た.いつの間にか小型のモンスター達も居なくなり,辺りは静かになっていた.
 「あ,あれは・・・?」
 孝允は先程までモンスターの居た地面を見た.そこには,小さな球形の,鈍く光る物が落ちていた.モンスターはこれを護っていたようだが,4人にとっては,モンスターを倒した褒美が置かれたかのように思えた.それほどに異質な物体だった.
 「これが・・・オーブ・・・」
 シロはゆっくりとそれを拾い上げた.心なしか,少し光を増したように思えた.
 「意外と小さいな.」
 洋が感想を呟いた.シロは両手で丁寧に持っていたが,片手でも収まるくらい小さかった.
 「モンスターがここから動かなかったのも,このオーブを守っていたからかも知れませんね.」
 孝允がそう言うと,シロは無言で頷いた.少しの間,4人は黙ってオーブを眺めていたが,シロは持っていた丈夫な袋にそれを収納し,一同はその場を離れていった.

[熊蔵の声~ハウステンボス編~・終]

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最終更新:2022年07月13日 23:07