EV_熊蔵の声~地獄の温泉編~

殺陣祭・オールスターズ_ドラマストーリー

熊蔵の声~地獄の温泉編~



イベント概要


開始条件: ↓仲間
パーティ: 達郎,ポーラ,クリス,クラト,レン,アズラ
開始場所: ベップシティ

ドラマストーリー


 ベップシティのとある自動車がまばらに停まっている広場の隅で,クラトは4人に向かって話していた.これからの目的を共有するためだった.
 「この街に来ていたのは,この5人のようだね.」
 クラトはポーラ,クリス,レン,達郎を順番に見ながら言った.
 「さて,僕達でオーブの調査をしようと思うのだが・・・」
 クラトがそう切り出したとき,
 「皆の衆!」
 偉そうな声が,その場に響いた.傍に立っている高い木の上から聞こえてきたかのようだが,そこには人は居なかった.
 「な,何?!」
 「何なの,この声?」
 ポーラとクリスは驚き,この中の誰かが発したのかと思って周囲を見た.
 「熊蔵だよこれ・・・」
 達郎が静かに,そして呆れたように言った.
 「この声の主が熊蔵・・・」
 初めて声を聞いたレンはしみじみと言った.
 「聞こえておるかの?」
 「ああ,聞こえているよ.」
 熊蔵の声に,クラトはぶっきらぼうに返事をした.
 「オーブが近くにあるようじゃがな,こう,水か何かが湧き上がっとるような・・・」
 熊蔵はそう話を始め,何かを考えるかのように言葉を切った.
 「この近くの,温泉ではなく・・・」
 少し経つと,何かを見ながら話しているかのような声が聞こえてきた.
 「それは,多分あれかな.」
 達郎は熊蔵の言った事に心当たりがあったらしいが,何かを思い出したような顔をした後,急に黙ってしまった.周囲が不思議に思ったとき,
 「そう!それじゃ!」
 熊蔵の大きな声が唐突に聞こえた.レンは腑に落ちない表情だった.
 「それって何の事だ?」
 「もしかして,この辺りにある地獄の事?」
 クリスが言った.達郎は少し青ざめていた.
 「そう言うところがあるのね.」
 ポーラは,初めて知ったようだった.
 「この近くに,幾つか地獄と言う場所があるそうだね.」
 クラトは,既に街の人から聞いていた様子だった.熊蔵は,うむ,と一言言って,
 「それなんじゃ.多分,そのどこかにある.」
 と,曖昧な事を言った.
 「そのどこか,って,無責任だな.」
 「他にはヒントはないの?」
 レンとポーラはそれぞれに,熊蔵に向かって言ったのだが,返事は返って来なかった.
 「・・・いない?」
 クリスは少し驚いて言った.他の皆は呆れていた.
 「ともかく,行き先は決まりそうだ.」
 沈黙を制し,クラトはこの付近の地図を広げた.熊蔵の声がなければ,最初に見せる予定の地図だった.地獄と呼ばれる場所は幾つかあり,手分けして調査する事にした.
 「あ!オレは,こことここにしようかな!」
 達郎は何故か率先して,他のポイントとは大きく離れた2ヶ所を調査する事を申し出た.
 「そうだな・・・2人ずつくらいに別れて,調査してみようか.」
 クラトはそう言って,広場の入口の方を見て,
 「もう1人,仲間が居たようだしね.」
 と言った.
 「え?あ・・・」
 レンが同じ方を見ると,少女がこちらに向かって歩いているのが見えた.既にポーラがそちらに駆け寄っていた.ポーラとその少女──アズラは連れ立って皆の前に来た.
 「この子も協力してくれるって.よろしくね,アズラちゃん.」
 「・・・うん.」
 アズラは小さく頷いた.6人はそれぞれ向かう場所を決め,3手に別れて行動する事にした.全部で6箇所を見る事にしたが,地獄の数はそれより多くあり,残りは皆で行ってみる事にした.

 レンはアズラと組むことになり,白池地獄と呼ばれる場所へ向かった.2人は初対面だったので,レンは時々話し掛けたのだが,アズラは殆ど反応せず,会話は一方通行のまま目的地に辿り着いた.
 「見えてきた.モンスターも居るようだな.」
 レンがそう言うと,アズラは無言で,背負った布袋からライフルを取り出した.
 「それが君の武器か.じゃあ,後ろからサポートを頼む.」
 レンも2本の刀を鞘から抜き,逆手に構えた.レンがモンスターに向かって走って行くと,急に1体のモンスターが後ろに吹っ飛んだ.アズラの銃弾を受けたようだった.レンはその素早く精密な射撃に驚きつつも,自身も素早い剣捌きで,一瞬で2体のモンスターを倒した.その後も,残りのモンスターを倒すのに時間は掛からなかった.
 「もう1箇所,俺達が行くところがあったな.」
 レンは刀を鞘に納めながら言った.アズラもライフルを収納すると,
 「・・・うん.」
 小声で返事をした.

 ポーラはクリスと共に行動し,鬼山地獄と呼ばれる場所に来ていた.
 「この辺りじゃないかしら・・・」
 「そうね.何もないみたいだけど.」
 クリスがそう応えたとき,2本足のモンスターが岩陰から高く飛び出してきた.
 「わっ,居た!」
 ポーラは慌てて飛び退き,距離を取った.クリスも急いで武器を構えたが,不意打ちは避けられたため,後は簡単に倒す事が出来た.
 「ここにオーブは無いみたいね.」
 周囲を見た後,クリスは先の道へと歩いて行った.
 「そうね,残念.」
 ポーラもそう言って,それに続いた.

 「この辺りか.」
 窪んだ岩を見ながらクラトが言った.竜巻地獄と呼ばれる場所だが,特に何もない所だった.しかし,暫く待っていると,その窪みから,勢い良く水が吹き出した.
 「うわっ!」
 共に来ていた達郎は,驚いて後ずさった.
 「なるほど,あれが竜巻地獄・・・」
 クラトがその噴水のような現象を眺めていると,その後ろからモンスターがこちらに向かって来た.2人の背後からも別のモンスターが来ていた.
 「あの噴水に引かれて来たのか?」
 クラトは武器を構えながら言い,モンスターに向かって武器の爪を突き立てるように突進して行った.達郎は襲ってくるモンスターの攻撃をひたすら回避しながら,相手を撹乱する事に集中した.
 「うぅ・・・手強かった.」
 全てのモンスターを倒した後,達郎はうなだれながら言った.
 「大丈夫かい?」
 クラトは何事もなかったような顔をしていた.
 「うん,大丈夫.」
 達郎はそう応え,2人は別の調査地点に向かった.

 レンとアズラは,鬼石坊主地獄と言う所へ来ていた.
 「ここはモンスターが多いな.」
 レンは呟き,刀を抜いた.既に多くのモンスターがこちらに向かってきていた.レンが迎え討とうと身構えているとき,1匹のモンスターが銃弾を受けて飛んだ.アズラによる攻撃だった.
 「おっと.君は行動が早いな.」
 レンはそう言って,モンスターに向かって行った.ここのモンスターもそれほどの敵ではなく,あっと言う間に倒してしまった.
 「ここも何もないかな・・・」
 レンはそう言いながら,もう一度オーブがないか辺りを見回していると,
 「皆の所へ戻りましょう.」
 アズラは既に後ろを向いて歩き出していた.
 「あ,ああ.そうだな.」
 レンも慌てて刀を納め,2人は,皆で集合する予定の海地獄と言う場所へ向かった.

 ポーラとクリスの2人は,かまど地獄と呼ばれる所へ来ていた.綺麗な水色や,赤い色などの様々な池が集まっているところだった.クリスは,粘土のような色の水面を見ていた.
 「不思議なものね.近い場所なのに,色々な温泉がある.」
 「本当ねぇ.どうしてこんなになってるんだろう・・・」
 ポーラがそう言って,少しの間,2人は目の前の温泉を見ていた.暫く経つと,水面に急に大きな泡が幾つも上がり,そこからモンスターが飛び出してきた.
 「やっぱり来たわね.」
 ポーラはライフルを構えながら言った.2人は難なくモンスターを倒し,ポーラはオーブは見当たらない事を確認した.
 「ここにもオーブは無いみたい.」
 「やっぱり,あそこなのかしら・・・」
 クリスが意味有りげに呟くと,
 「・・・え?どう言う事?」
 ポーラは少し驚いて質問した.クリスは,最後の集合場所に決められた海地獄は,以前来た所で,まだ倒していないモンスターが居る事を説明した.
 「そうだったの・・・」
 「ごめんなさい.もうあまり見たくない相手だったから,言わなかったの・・・」
 クリスは素直に謝った.
 「ううん,全然.じゃあ,これから行ってみましょう.」
 ポーラは特に気にしていないと言った様子で,2人は海地獄へ向かって行った.

 「うわ!赤い池だ・・・」
 達郎は水面を見て思わず叫んだ.血の池地獄と呼ばれるこの場所の水は,独特の色をしていた.オーブを探そうとすると,やはりモンスターが水底から出て来た.
 「モンスターも赤い・・・」
 達郎は呟いた.モンスターは全体的に赤く,所々に黒い線が入ったような色をしていた.しかし,それ以外は前に見た物と大きな差はなく,クラトは素早く倒してしまった.
 「ここにも何もない・・・と言う事は,分担に入れなかった集合場所かもな.僕達は運が悪いな.」
 クラトがそう言って集合場所の海地獄へ向かおうとすると,達郎は難色を示した.
 「いや,あそこはちょっと・・・」
 「何か知っているのか?」
 クラトは横目に達郎を見ると,
 「いや,何も知らないし・・・」
 達郎は目を逸らした.クラトは無言で達郎を掴み,少し揺らして圧力をかけると,達郎は知っている事──クリスの話と同様の事を話した.
 「どうやら,そこに居るモンスターの所かも知れないな.」
 話を聞き,クラトは頭を掻きながら言った.達郎はまだ行く事を嫌がっていたが,2人は海地獄へ向かって行った.

 「皆はこの辺りに来ると思うが・・・」
 海地獄に着いたレンは,辺りを見回していた.アズラは青い水をたたえた滝を見ていた.そこへ,ポーラとクリスも辿り着いた.
 「レン,先に来ていたのね.」
 ポーラがレンに気付き,近寄ったとき,水中から何かが飛び出し,静かに素早く,ポーラに近付いて行った.
 「危ない!」
 クリスがそれに気付き,ポーラを突き飛ばすようにして一緒に倒れ込んだ.そこに来ていたモンスターの前足は,空を切った.
 「ありがとう,クリス.」
 ポーラが立ち上がりながらモンスターの方を見ると,レンの刀を相手に凄まじい速さで戦っていた.二刀流のレンに対し,人型だが4足歩行のモンスターは,前足と後足を巧みに使って攻撃していた.その足の全てに鋭い爪が付いていた.レンは時々攻撃を受け,徐々に押されているようだった.
 「ああ・・・やっぱり,あいつだ・・・」
 クリスの後ろから怖がっている口調の声が聞こえた.達郎の声だった.
 「達郎君とクリスさんが,あれを知っているんだな?」
 クラトは達郎の前に立ち,クリスに訊いた.クリスは以前戦ったときの印象と,モンスターの特徴を簡単に話した.
 「なるほど,手強そうではあるが・・・」
 クラトは一瞬だけ考えたが,すぐにモンスターとレンが戦っている場所へ走った.
 「前に出るのは僕達だ.レン!大丈夫か?」
 クラトは多くの切り傷を負っているレンに声を掛けながら,モンスターの爪を自身の武器で弾いた.モンスターは初めて,少し後退した.
 「・・・ふう,助かった.」
 レンは汗をぬぐいながらそう言ったが,すぐに再び武器を構えた.ポーラとアズラも後方でそれぞれの武器を構えた.再びレンの方へ迫るモンスターを,アズラはライフルで撃ち抜くと,クラトとレンはすぐに追撃し,その後にタイミング良くポーラの銃撃も命中した.
 「凄い・・・この前より人数が多いし,勝てるかも・・・」
 達郎は立ち尽くしてその様子を見ていたが,
 「私達は回復に専念しましょう!」
 クリスがそう言ってレンの傷を回復しようと走ると,達郎もハッとして道具袋をチェックし,中に入っている回復アイテムを幾つか取り出し,レンの次にダメージを負っているクラトの元に向かって行った.

 モンスターは素早かった.クラトもスピードを生かした戦い方には自信があったが,モンスターに接近し,僅かに斬り付けただけでも,相手の爪による反撃を食らっていた.その度にどこからともなく達郎が現れ,クラトの傷を回復していた.クラトが攻撃されている間,レンは素早く横斬りを叩き込んでダメージを与えて行った.モンスターは素早く跳び去り,再びレンとクラトに攻撃する機会を伺っていたが,場合によってはポーラとアズラに跳び掛かって行く事もあった.クリスも忙しく走り回り,傷を負った仲間を回復していた.

 暫くはモンスターにダメージを与え続け,こちらが受けたダメージは回復し続ける形になり,いつかは勝てるように見えた.しかしモンスターの動きは中々鈍らず,達郎の持っていた回復薬が最初に尽きてしまった.達郎はやむなくモンスターの隙を見付けつつ少しずつ攻撃した.レンとクラトの疲労がもうすぐピークに達するかと言う頃,やっとモンスターの動きが鈍ってきた.ポーラとアズラも粛々と後方から銃撃を続けていたが,命中率はかなり落ちていた.最終的には,技術も何もなく,レンとクラトがモンスターを滅多打ちにして勝利を収めた.
 「ふぅ,手強かったな.」
 クールに言うクラトだったが,片手は地面についていた.
 「やったー!」
 達郎は意外と元気で,両手を上げて喜んでいた.レンは一呼吸つくと,モンスターの傍に何か落ちていないか探し始めた.
 「オーブはあった?」
 ポーラはレンに声を掛け,一緒に探そうとすると,
 「これだな!」
 レンは小さい光る珠を見付け,それを拾い,まじまじと見つめた.今まで見た事のない素材で作れているようだった.
 「この辺りも安全になって良かった.」
 クリスが霧が立ち込める方を見て呟いた.しばらくは先程のモンスターの影響で人が立ち入るのは危険だったが,一先ずは安全になったと思われた.

[熊蔵の声~地獄の温泉編~・終]

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最終更新:2023年03月10日 23:02