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変身超人大戦・イナクナリナサイ」(2013/03/14 (木) 22:45:55) の最新版変更点

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*変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg ◆  目の前にいるのは、尊敬する人から全ての尊厳を奪い取った憎むべき相手。だから、この手で何としてでも叩き潰さなければならない。  アインハルトはスバルを何とかして元に戻すため、ノーザに拳を振るい続けるが全く当たらない。それどころか魔女は涼しげに笑いながら攻撃をかわして、アインハルトにダメージを与えていた。  数時間前、ズ・ゴオマ・グやスバルに負わされたダメージが完全に癒えてないまま次の戦いを強いられ、消耗した状態とはいえ覇王断空拳を受け止めるような相手と戦わされる。ゴオマの時とは違って仲間がいるが、今度は更に状況が悪くなっているように思えた。  一号とシンケンブルーはアクマロという怪物を相手にしていて、なのはとキュアサンシャインはまどかを助けようとしているがスバルの猛攻がそれを許さない。  誰の助けも期待できない状況だが、それでもアインハルトは諦めずに痛む身体に鞭を打って戦っていた。 「あらあら、弱いわね……そんなんじゃ、覇王の名が泣くわよ?」 「黙りなさい!」  しかし現実はあまりにも残酷で、アインハルトの願いを悉く裏切っている。  疾風の速度で拳を振るうがノーザは涼しい表情でそれを受け止めて、逆に脇腹に蹴りを叩き込んだ。その衝撃によって身体の軋む音が響いて、アインハルトは数メートルほど吹き飛んでしまう。度重なる痛みによって意識が飛びそうになるが、その精神力で何とか立ち上がった。  徐々に呼吸が荒くなりながらも地面を踏みしめ、嘲笑うノーザを睨み付ける。 「あなた、スバルを元に戻したいんだっけ」 「なっ……!?」 「あんな戦う以外に能がない機械を取り戻したいなんて、物好きね」  ノーザが一体何を言っているのか、アインハルトには理解できなかった。 「何を言ってるんですか……?」 「あなたは物好きって言ったのが聞こえなかったの? それに、あれは単なる冷酷な戦闘マシーンでしかないって事も」 「冷酷な戦闘マシーン……!?」  しかし次の瞬間、アインハルトの怒りが一気に燃え上がっていく。  もしかしたら、ノーザがスバルを操っていたのには何か理由があるのかもしれない。アインハルトはほんの少しだけ、そんな望みを持っていた。許せるわけはないが、もしかしたらノーザの凶行を話し合うことで、止めることができるかもしれないと思っていた。  だがノーザにそんな思いなど微塵もない。この魔女にあるのは底知れぬ悪意と、平気で人々を見下せるような冷酷さだけしかなかった。  確かにスバルの肉体は機械で出来ているが、誰よりも温かい心を持っている。だがノーザはそんな彼女を操り人形にし、挙句の果てには腕が大怪我をしたりマッハキャリバーが傷ついても尚、奴隷のように扱っていた。 「ふざけるのも、いい加減にしてください!」  それがアインハルトには我慢できず、感情のままに両足で地面を蹴って疾走する。  身を低くしながら瞬時に距離を詰めて胴体を目掛けてストレートを繰り出すが、ノーザは軽々と身を翻したことで掠りもしなかった。その瞬間、致命的な死角となった右側から衝撃が走って、またしても吹き飛ばされる。  アインハルトは短い悲鳴が喉から漏らしながら地面に衝突して倒れるが、駆けつけたなのはに支えられた。 「なのはさん、ありがとうございます!」 「アインハルトさん、無理をしないでください!」 「大丈夫です、この位……ッ!」  口から微かに流れ出る血を拭いながら、震える足に力を込めてゆっくりと立ち上がってノーザを睨む。しかし肝心のノーザはアインハルトなどまるで歯牙にもかけていないように天を見上げていた。  アインハルトもまたそちらに目を向けると、そこにはソレワターセの触手によって捕らえられたまどかが、腹からの大量出血によって顔面が青白くなっているのが見える。  やがてソレワターセの触手はまどかの首にも絡み、そのまま勢いよく締め付けた。 「うう゛っ……!」 「やめなさい!」  そしてまどかの口から苦しそうな呻き声が低音楽器のように発せられるのを見て、キュアサンシャインは跳躍する。しかしそんな彼女の足にソレワターセの触手は絡みついて、そのまま一気に遠くの地面へと叩き付けた。  キュアサンシャインの悲鳴が聞こえた瞬間、アインハルトはこれから起こる最悪の未来を予感して全身に悪寒が走る。そして同時に思考する暇もなくまどかを助けようと動くが、その前にノーザが立ちはだかった。  その冷たい瞳は愉悦に染まっていて、思わず吐き気を催してしまう。しかしその感情は、一瞬で塗り替えられることを知らなかった。 「これから始まるビッグイベントを、思いっきり楽しみなさい」  ぱちん、とノーザは指を奇術師のように軽く鳴らす。その音自体はまるで大したことはなかったが、死刑宣告という意味を持っていたことに気付いた者はどれだけいたかはわからない。  まどかの首を絞めているソレワターセの触手は急激に肥大化し、そのまま鈍い音を響かせながら頭部と胴体を強制的に分離させて、真っ赤な液体を宙にばらまかせていった。 「あ、あ……?」  一体何が起こったのか理解できず、アインハルトは呆然と口を開けている。彼女の瞳は、まどかの頭部が回転しながら落下していくのを捉えていた。すると、アインハルトの脳裏は加頭順によって見せしめにされた男達の姿が、一気に蘇っていく。  しかしそれに対するリアクションを取る暇もなく、首から上を失ったまどかの肉体は破壊された。  ソレワターセの触手はまどかの両腕を勢いよく引っ張ったことで、溢れ出る血によって汚れた胸部はメキメキと木が折れるような音を鳴らして、制服もろとも真っ二つに裂かれていく。すると、切断面から大量の鮮血が降り注いだ。  今のまどかに……否、鹿目まどかだった肉塊と頭部に、ソレワターセの触手が飲み込むように絡みついた。そして大量の骨が砕かれるような甲高い響きと、肉が磨り潰されるような湿り気のある音が聞こえる。ソレワターセの触手が蠢く度に、生理的な嫌悪感を与えるような音は強くなって、知らず知らずの内にアインハルトは震えていた。  赤く濡れたソレワターセの触手はスバルの背中に戻るも、空から落ちていったはずの頭部や高く掲げられた肉体は一片も残っていない。 「まどか、さん――?」  三秒に届くかどうかわからない全ての出来事を目の当たりにしてしまったアインハルトの脳は、思考をする暇もなく結論を導き出した。  鹿目まどかは跡形もなく、スバル・ナカジマに喰われてしまったと。  あまりの出来事を前にまともな言葉も出せず、ただ呆然と立ちつくすしかアインハルトはできない。全身に伝わる激痛も、この時ばかりは意識の中になかった。  されど、戦いはまだ終わったわけではなく、今のアインハルトは致命的な隙を晒していた。それを全く考えていなかった彼女の全身に、突如として凄まじい悪寒が走る。  まどかを一欠片も残さず飲み込んだスバルが、金色の瞳をアインハルトに向けてきたのだ。その異様な輝きと目があって、次に喰われるのは自分だと反射的に予知する。  まどかのように、五体がバラバラにされる光景が脳裏に映った。 「ひっ……!」  悲鳴を漏らしたアインハルトの表情は恐怖に歪み、ほんの少しだけ後退る。その際に足元を滑らせて尻餅をついてしまった。  迫り来るスバルに凝視され、アインハルトは全身から冷や汗を流してしまう。今のスバルがまるでスバルの皮を被った全く別の怪物のように見えて、震えることしかできない。  そこから後退する暇すら与えないとでも言うかのように、凄まじい速度でスバルは突貫し始める。その最中に握られていく鋼の拳が、今のアインハルトにはまるで罪人を裁く断頭台のように見えた。  スバルの右手が振り下ろされていくのを前にして、アインハルトは反射的に目を閉じる。せめて苦しまないように死ねることを強く願いながら。 「アインハルトさん、危ないっ!」 「にゃー! にゃー!」  目の前が黒く染まったのと同時になのはやアスティオンの叫び声が聞こえるが、恐怖に捕らわれたアインハルトは何もしなかった。  その刹那、肉が潰れるような耳障りな音が鼓膜に響いて、頬に熱を帯びた液体が跳ねるのを感じる。そして生臭い鉄の臭いが嗅覚を刺激したので、血が流れたのだと気づいた。  スバルに殴られて、もう死んだのかと思ったがその割には痛みがまるでない。苦痛を感じる暇もなく死んだのかもしれないが、それも妙だった。 「えっ……?」  恐る恐る目を開けたアインハルトは見つけてしまった。彼女とスバルの間を割って入るように、両手を広げたなのはが立っているのを。その小さな背中から拳が突き出していて、白いバリアジャケットが赤く染まっていた。 「な、なのは……さん?」  周りから数え切れないほどの怒声や悲鳴、それに混じった笑い声が嵐のように響く。だがどれもアインハルトの耳には届いておらず、蚊の鳴くような声でなのはを呼ぶしかできなかった。  アインハルトは震える腕をゆっくりと伸ばすが、届く直前にスバルの拳から毒々しい触手が飛び出て、そのまま一瞬でなのはの身体を飲み込むように絡みつく。  ソレワターセの触手はまどかの時のように蠢くと、なのはの悲鳴と思われる声がくぐもって聞こえてきた。だがそれもほんの数秒で途切れ、空気を切るような音と共にソレワターセは宿主の中に戻っていく。  そこにいたはずの高町なのはとレイジングハートはアインハルトの目の前から、いなくなっていた。何処に消えたかなんて考えるまでもない。  不屈のエース・オブ・エースと呼ばれるはずだった心優しき少女とその相棒である杖は、魔女の悪意によって闇の底に飲み込まれてしまった。  この時、アインハルト・ストラトスは悲鳴をあげることも思考することもできなかった。憧れの人が憧れの人を殺すという現実を突きつけられて、放心状態となってしまったことによって。それ故に、気づけなかった。  スバルの瞳が、ほんの一瞬だけ元に戻っていたことを。 ◆  闇の中に沈んでいたスバル・ナカジマの意識は唐突に覚醒していた。  チャイナ服を着た女の子と戦っていたはずだったのに、気がついたらこの拳はずっと尊敬してきたあの人を貫いていた。  子供の頃からずっと目標にしてきた最強の魔導師、高町なのはの身体を。 「なのは……さん?」  そしてスバルの声に対する答えはない。いつの間にかこの全身に生えた奇妙な触手がなのはを容赦なく潰して、彼女の血肉をスバルの中に取り込んでいた。  彼女の全身を駆け巡る血液が沸騰するように熱くなっていって、身体の奥底から皮膚を突き破るかの如く力が溢れ出てくるのを感じる。しかしそれに苦しむ間もなく、彼女の見る世界は闇に飲み込まれた。  それからすぐに、スバルが犯した罪の証が聞こえてくる。  お前は……お前は一体……!? ア……ア、ア、ア……ア……? とても痛い。とても苦しい。とても辛い。何、これ……? スバルさん、もうやめて! 苦しい……! 痛い。嫌だ。スバルさん、どうして……!? 死にたくない! 助けて! 痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!  やめて……  脳裏に次々と駆け巡る呪詛と絶望の言葉にスバルは耳を防ぎたくなるが、身体が言うことを聞かないし、スバルを責め立てる言葉が止まることもない。  あなたは素敵な戦闘マシーンよ。スバルのような素晴らしい殺戮兵器がいてくれるならば、この世に地獄をもたらしてくれるでしょうな。この人殺しの機械人形め、外道と共に地獄へ堕ちろ! キサマはもはや平和の敵だ、俺達仮面ライダーが打ち砕く! 私達プリキュアは、あなたを絶対に許したりしない!  やめて……お願いだからもうやめて!  スバルは血を吐く思いで懇願するが、それを聞き入れてくれる者は誰もいなかった。  こんなのってないよ……私達、スバルさんを元に戻そうとしたのにあんまりだよ! スバルさんには幻滅しました、あなたはただの血に飢えた殺人鬼だったんですね。近寄るんじゃないわよ……あんたなんかとコンビを組まされたなんて、本当最悪だったわ! お前はもう俺の娘なんかじゃねえ、とっとと廃棄所にでも失せろ。父さんと母さんはあなたを受け入れたみたいだけど、私はあなたみたいな獣を許したりしないわ。私を止める言いながら、本当はとんでもない極悪人だったネ! ボゾグ、ボゾグ、ボゾク!  違う、違う、違う! あたしは、あたしはこんなこと望んでなんか……  そうだね、スバルが望んでるのはまだこんなものじゃないよね  ……えっ?  渦を巻くように世界で暴れる呪いの中から、たった一つだけ優しい声が聞こえてくる。思わずそちらを振り向くと、尊敬している魔導師がいつの間にか立っていた。  なのは……さん?  よく来たねスバル。私はね、ずっとあなたを待っていたんだよ  初めて出会ったあの日から、ずっと忘れられない慈愛に満ちた笑顔を向けてくれる。しかしスバルはそれを見ても違和感しか覚えなかった。  つい先程、彼女の胸をこの手で貫いたはずなのにどうして生きているのか? さっき見た彼女は子どものように小さかったのに、どうして今はいつもの見慣れた姿なのか? 自分の見ている全ては、ただの幻でしかないのか?  でも、まだもうちょっとだけ足りないなぁ  疑問が何一つ払拭されないまま、高町なのははゆっくりと歩み寄ってくる。一歩、また一歩と近づく度に辺りの闇はより濃くなりながら、赤い血が湧き上がっていった。  凍てつく風が肌に触れて、スバルは思わず身震いする。その震えは寒さだけではなく、地獄のような世界を見せられて生まれた恐怖も含まれていた。そして、周りがこんな世界になっているのにも関わらず、未だに光に満ちた笑顔を浮かべているなのはにも違和感を感じてしまう。  あの優しくて強いなのはが、まるで絶望と怨恨しか込められていない地獄のような闇を喜んでいると思わざるを得なかった。  それじゃあ、スバルにいい物をプレゼントしてあげるよ  なのはの白い両手がゆっくりと伸びて、そのままスバルの頬を撫でる。その指先はひんやりとしていて、まるで暗闇のように一切の暖かさが感じられなかった。十本の指から闇が溢れだしてくる。  な、なのはさん……!?  恐がらなくてもいいんだよ。大丈夫……スバルには私のとっておきを教えてあげるから  幼子をあやす母親のように穏やかな声だったが、スバルは全く安堵することができない。この暗闇が全てを奪っていくようにも思えて、むしろ怖くなってきた。後ろに下がろうとしても、鎖で縛られたかのように足が動かない。  泥のように粘り気のある闇はスバルの皮膚に溶け込んでいき、そこから血管や人工骨格を通じて全身を駆け巡っていく。スバルの中を徐々に蹂躙していく漆黒はなのはの身体も飲み込んだ。  何が起こっているのか微塵も理解できずに瞠目するスバルの前で、なのはだった闇はボコボコと溶岩が流れるような濁った音を鳴らしながら、形を変えていく。気が付いた時には、スバルの頬を触れていた闇はスバルそのものとなっていた。まるで、鏡に映ったかのようにその姿には一片の違いもない。  唯一違うと言うならば、目の前に立つもう一人のスバルが笑っていたことだけ。それもなのはとは違って、酷く冷酷な雰囲気を放つ笑みだった。  じゃあね、本物のあたし。言っておくけど、なのはさん達を殺したからって終わらないよ!  えっ!?  全てはノーザ様のために……さっき、あなた自身が言ったじゃない!  その言葉と共に、もう一人のスバルの背後から闇が勢い良く盛り上がっていって、飛沫を上げながら波のように押し寄せてくる。スバルはそれを前に抗うことも悲鳴をあげることもできず、その意識と身体はソレワターセの生み出す暗闇の中へと飲み込まれていった。  これから、あなたの身体でいっぱい……楽しんでくるから!  そして気付く。目の前にいるスバルの姿をしたソレワターセは、この身体で大勢の人を殺そうとしていると。この身体を乗っ取ってもう四人も殺したように。  スバルは抗おうとするが、流れる闇の勢いを前にしてはまるで意味を成さなかった。  やめてええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!  そんな彼女の叫びも溢れ出る闇に呆気なく飲み込まれてしまい、誰にも届かない。同じように、スバルを救ってくれる者は誰もいない。  ソレワターセは高町なのはの存在によってスバル・ナカジマが元に戻る可能性を減らす為、絶望と罪を突き付けた。その結果、誰かを傷つけることを好まない性格であるスバルは呆気なく闇に飲み込まれてしまう。自分の身体が自分の物でなくなり、そして人を殺めることから生まれる絶望は計り知れない。  しかしソレワターセにとってそれはどうでもよかった。スバルが抱く絶望など、ノーザの願いを叶えるために、破壊と絶望の祭りを開くエネルギーに過ぎないのだから。 ◆  ソレワターセによって遠くに弾き飛ばされ、その際に味わった痛みによってキュアサンシャインは動くことができず、その僅かな時間の間に悲劇は起こった。  鹿目まどかはクモジャキー達のように首を飛ばされただけじゃなく、身体を真っ二つにされた挙げ句にソレワターセに吸収された。その次の瞬間には、ショックで動けなくなったアインハルト・ストラトスを庇った高町なのはが胸を貫かれて、まどかと同じように飲み込まれてしまう。  一分にも満たない惨劇を目撃したキュアサンシャインは絶望し、無力感が胸中に広がっていった。プリキュアでありながら、共に戦う仲間達を救うことができずに犠牲にされたショックは大きい。  しかし涙を流して悲しみに沈もうとした直前、ソレワターセに支配されたスバルの手がアインハルトに伸びていくのを見て、キュアサンシャインの意識は一気に覚醒した。 「アインハルトッ!」  彼女は両足を蹴って勢いよく疾走しながら両手に力を込めて、闇を照らす輝きを放つ。一瞬の内に二人との距離は迫ってから、スバルが反応する前にキュアサンシャインは叫んだ。 「サンシャイン・フラアアアアァァァァッシュ!」  掌から解き放った光線はアインハルトに意識を集中させていたスバルを飲み込み、容赦なく吹き飛ばす。確かな手ごたえを感じるが、今はスバルに振り向いている場合ではない。  すぐさま、地面にへたり込んでいるアインハルトの元へ駆け寄り、その身体とアスティオンを抱えて数メートル離れた先に跳ぶ。  両足が地面に付いた頃に覗き込んだアインハルトの瞳はとても空虚になっていて、涙が滂沱と流れていた。 「アインハルト、しっかりして!」 「な、なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……私のせいで、なのはさんとまどかさんが……!」 「アインハルトッ!」  キュアサンシャインはアインハルトの肩を掴んで揺さぶりながら呼びかけるが、返ってくるのは蚊の鳴くような呟きだけ。先程のスバルのように、明らかに混乱していた。  理由なんて考えるまでもない。まどかとなのはが目の前で立て続けに殺されては、誰だってショックを受けてしまう。いくら歴史に名を残す覇王の血を受け継いでいるからといって、実際はまだ十一歳の少女でしかないアインハルトも例外ではなかった。  彼女のような心優しい人間が、自分のせいで誰かが犠牲になったらどうなるか……辛いに決まっている。でも、アインハルトを守るために動いたなのはを責めることはできなかった。 「私のせいで、私のせいで、私のせいで……嫌あああああああああぁぁぁぁぁ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、なのはさん、まどかさん、ヴィヴィオさん、リオさん、コロナさん、フェイトさん、スバルさん、ティアナさん、ユーノさん、ノーヴェさん、私が悪いんです、私が悪いんです、私が、私が、私が、私が……!」 「にゃー! にゃー!」 「アインハルト、私は……!」  アスティオンと共にアインハルトを何とかして慰めたかったが、その為の言葉がキュアサンシャインには見つからない。目の前で大切な人を失った悲しみを癒すなんて、簡単にできるわけがないからだ。  彼女の為に一体何ができるのか? キュアサンシャインにはまるで思いつかなかった。 「アハハハハハッ! 凄い、凄いじゃないスバル! 流石は私のしもべよ! ここまで働いてくれるなんて最高だわ!」  しかしそんな彼女を嘲笑い、この惨劇をまるで祭りのように笑うとてつもなく不愉快な声が響く。  振り向いた先では、人々の不幸を喜ぶあの邪悪な魔女が腹の底から笑っている姿が見えた。しかもこれまで見たどんな笑みよりも、愉悦の色が濃さを増している。 「ねえスバル、あなたの力はこの程度じゃないはずよ! まだもっと凄いことをしてくれるでしょ!? 早くそれを私に見せてちょうだい!」 「……ッ!」  その笑い声を耳にした途端、キュアサンシャインの全身が怒りで震えた。  まどかやなのはを犠牲にしただけじゃなく、アインハルトをここまで追い詰めた。それをノーザは『この程度』と吐き捨てている。  ノーザはただ、自分自身がが満足したいという理由だけでみんなを絶望のどん底に叩き落して、破壊の限りを尽くした。 「許さない……あなただけは絶対に許さない……!」  あまりにも身勝手で邪悪なノーザを前にして、この時ばかりは心の底から憎しみが湧き上がっていく。かつてデューンとの最終決戦において、キュアブロッサムとなった花咲つぼみは憎しみで戦ってはいけないと教えられた。しかし今のノーザは、そんな気持ちを忘れさせてしまいそうなほどに、憎い相手に見える。  ここでノーザを倒さなければもっと多くの不幸が生まれるし、何よりも自分自身を許すことができなかった。キュアサンシャインは拳を思いっきり握りながら走り出そうとするが、その足は止められてしまう。  思わず振り向くと、右足にアスティオンがしがみついていた。 「ティオ……?」 「にゃー! にゃー! にゃー!」 「お願い、その手を離して! 私は……!」 「にゃー! にゃー! にゃー! にゃー! にゃー!」  アスティオンは必死に首を横に振りながら悲しそうな声で鳴いているのを見て、怒りと憎しみに染まっていたキュアサンシャインの思考は一気に晴れる。そして、言葉を言えないアスティオンの意図を察した。  このまま行っては負けてしまうだけで、犠牲者がもう一人増えてしまう。そしてアインハルトを余計に悲しませることになると、悲しみに潤んだ瞳が告げていた。  アスティオンと目を合わせたキュアサンシャインは何も言うことができない。  一号とシンケンブルーがアクマロを相手に苦戦している状況で、もしもここでノーザの元に飛び込んだら一人で戦うことになり、そこからノーザやスバルに負けてしまったら今度こそアインハルトは一人になってしまう。そうなっては、誰もアインハルトを助けることはできない。  アスティオンの懇願を前に、キュアサンシャインは何もできずに止まってしまう。そんな迷いの後、ガシャリと何かが駆動するような音が数回だけ響いた。 『Divine Buster』  そして次に聞こえてきたのが、消えてしまったレイジングハートと似ている無機質な機械音声。それを聞いたキュアサンシャインは思わず振り向いたが、そこにいるのはスバルとノーザだけ。  しかもスバルは、数分前のように腰を深く落としながら構えを取っていた。 「えっ……?」  だがそれらが綺麗な光だと思う暇もなく、一瞬の内に黒く染まった。そして光は何もない場所から次々と生まれながらスバルの頭上に集まっていき、稲妻を発しながら大きな球体へと変わっていく。  それに伴うかのように戦いで砕けた大地が揺れて、粉塵がゆっくりと舞い上がりながら黒い塊は更に大きくなる。ようやく昇り始めた朝日の光を遮り、世界を再び夜にしてしまいそうな闇で満ちていた。  それを生み出しているスバル本人がゆっくりと腰を落とすのを見て、キュアサンシャインの全身が警鐘を鳴らす。そして、これからスバルはとてつもなく恐ろしい一撃を放とうとしていると、本能で確信した。 「アインハルトにティオ、私に掴まって!」  それからキュアサンシャインが取る行動は早かった。彼女は急いでアインハルトとアスティオン、そして二つのデイバッグを手にとって少しでも遠くに離れようと動く。  その際に、一号とシンケンブルーの方に一瞬だけ振り向いて叫んだ。 「一号にシンケンブルー! アインハルト達は私が守りますから、ここから離れてください!」  言い残せたのはそんなぞんざいな言葉だけで、返事を聞く暇もない。二人との間に開いた距離は、残された時間で行くには遠かった。無責任だと知っているが、そうしなければアインハルト達を助けられない。  ノーザとスバルの狙いはここにいる特定の誰かではなく、ここにいる全員。例え防御をしたとしても、これから来る技はそれを軽く吹き飛ばす位にまで凄まじいと、キュアサンシャインは無意識の内に確信していた。  せめて今は、アインハルトを助ける可能性を少しでも上げなければならない。それだけがキュアサンシャインの思考を満たしていた。 ◆  シンケンマルを何度も振りかぶるが、その度にアクマロの持つ削身断頭笏で呆気なく弾かれてしまい、そこから胸を一閃される。蹌踉めいた間に、アクマロはナナシ連中の刀をあろうことか投げつけて、刃先が傷口の開いている脇腹を掠った。  シンケンブルーはそれに苦しむ暇もなく、アクマロが空いた方の手から電撃を放つ。凄まじい音と共に、シンケンブルーに襲いかかった。 「がああああああぁぁぁぁぁぁぁっ……!」  耳にするのも辛い断末魔の叫びが、マスクの下から発せられる。アクマロの雷はスーツの傷口から進入し、中にいる池波流ノ介を苦しめるように暴れ回った。  電撃はすぐに止むが、それを合図とするかのようにシンケンブルーは膝を落として倒れていく。その身体が地面を横たわった頃には、度重なるダメージによって変身が解除されていた。  夥しい量の血が十蔵から傷つけられた脇腹より流れ、地面を赤く染める。何とかして顔を上げると、目の前にT-2サイクロンメモリが落ちているのを見た。思わず流ノ介はそれを右手に取る。  痛みでまともに身体が動かないが、それでもゆっくりと立ち上がっていく流ノ介を一号は支えた。 「流ノ介、大丈夫か!?」 「ああ……すまない、本郷。私なら大丈夫だ……!」  失血によって朦朧とする意識を保ちながら、流ノ介は右手で握ったサイクロンメモリを痛恨するように見つめる。  鹿目まどかと高町なのはを見殺しにしてしまっただけでなく、こうしてアクマロに遊ばれてしまった。情けなさのあまりに泣きたいくらいだったが、そんなことなど許されるわけがない。  せめて今はアクマロだけでも倒したかったが、現実はどこまでも残酷でまともに攻撃を当てられもしなかった。 「……どうやら、ここが潮時のようですな」  そして肝心のアクマロはこちらを見向きもせずにそう呟く。  流ノ介も振り向いてみると、その先ではあのスバル・ナカジマという少女の手中で黒い球がどんどん肥大化しているのが見えた。それはヤバいと、一目見ただけで本能が察している。 「巻き添えを食らうのはごめんですので、ほんの少しだけ失礼させて頂きます」  そうやって捨て台詞だけを残して、アクマロはここから遠ざかっていった。流ノ介はアクマロを追おうとするも、痛みが身体の動きを阻害する。 「ディバイン――!」 「流ノ介、俺にしっかり掴まっていろ!」  スバルの叫びを掻き消すかのように力強い声を発しながら、一号は流ノ介を背負って走り出した。その背中を見て、流ノ介は今の自分がただの足手纏いでしかないことを察する。  恐らく一号はこんな死にかけになった自分を助けるに違いない。その気持ちは実に嬉しいが、その為に彼が犠牲になるのは耐えられなかった。背負ったままでは、スバルの攻撃を避けられるかわからない。それで二人とも死ぬことになっては何の意味もなかった。  そして侍になったからには誰かに守られるのではなく、自らの命を犠牲にしてでも誰かを守らなければならない。だからこそ、流ノ介はサイクロンメモリのスイッチに指を触れた。 「すまない……本郷!」 『Cyclone』  野太い電子音声を耳にしながら、まどかのようにガイアメモリを額に差し込む。あの加頭順が持っていたから信用できない代物だが、今は躊躇っている場合ではない。  首輪から風の記憶が流れるのを感じながら、池波流ノ介はサイクロン・ドーパントに変身していく。彼は全身から突風を発して、振り向いてきた一号を吹き飛ばした。 「流ノ介、何を――!」 「――バスタアアアアァァァァァァァァァァ!」  風に流されて遠ざかっていく一号の疑問はスバルの叫びに遮られ、間髪入れずに地面が砕けるような轟音が背後より響く。そのままサイクロン・ドーパントの肉体に灼熱が走り、視界は漆黒に包まれた。  サイクロン・ドーパントは……否、池波流ノ介は自分の命が燃え尽きていくのを感じるが、不思議と痛みや苦しみはなかった。彼の胸中にあるのは忠義を誓った志葉家の当主と自分と同じ家臣達に、ここで出会った仲間達の顔。 (本郷、すまない……あなたを苦しめることになってしまって。だが、どうかいつきとアインハルトを助けてやってくれ。この不甲斐ない私の変わりに……)  誰かを守るためなら自己犠牲を決して厭わない高潔たる精神を持つ男なら、自分が死ぬことを苦しむかもしれない。だが、それでも全ての人々を守れる本郷猛に託したかった。  家臣でありながら主君の苦悩を見抜けなかった愚かな自分よりも、ずっと強いのだから。 (源太、お前はここで死ぬな! 私が亡き後、殿を支えられるのはお前だ! どうか殿を守り、こんな下らない戦いに巻き込まれた皆を救ってくれ!)  流ノ介は次に、お調子者だが侍としてのこれまで多くの人々を助けてきた寿司屋、梅盛源太の顔を思い浮かべる。何処か間の抜けている彼だが、それでも人を助けたいという思いは本物だ。  だから源太には生きて、自分の分までシンケンジャーを支えて欲しかった。 (殿……私はあなたを信じております。どうか外道になど落ちず、皆を救うために戦ってください! 私も源太もそれを望んでおります! 我々シンケンジャーは、あなたを信じて今まで戦ってきたのですから!)  そして最後に、長きに渡って忠誠を誓ってきた志葉家の当主たる男、志葉丈瑠に遺言を残す。いくら彼が殺し合いに乗る可能性があったとしても、それでも流ノ介は信じていたかった。  これは理屈などではなく、これまで今まで共に戦ってきたことで培われた信頼から生まれる思い。何故なら、丈瑠はこれまでシンケンジャーのみんなを何度だって支えてきたのだから、きっと正しき道を歩いてくれるはずだと、流ノ介は信じている。 (殿……!)  だから、最後の最後まで志葉丈瑠の無事を祈ることを池波流ノ介は一秒たりとも止めなかった。  例えその肉体が闇に飲み尽くされ、命が消え果てたとしても。 ◆ 「流ノ介……ッ!」  自分を救うために突風を起こしたサイクロン・ドーパントの元に振り向くが、そこに倒れているのは黒く焦げた焼死体のみ。そして、その傍らには緑色のガイアメモリが放置されていて、ショドウフォンはもう残っていない。  それが池波流ノ介だった肉塊だと察して仮面ライダー一号が愕然とした直後、スバルの身体から飛び出した触手がその肉体を飲み込む。一号はすぐに食い止めようとしたが、ガイアメモリだけを残して跡形もなく消えてしまった。  鹿目まどかや高町なのはだけでなく、池波流ノ介までも見殺しにしてしまう。助けるどころか逆に助けられてしまうなんて、あってはならなかった。 「くそっ……!」  それを目の当たりにした一号の胸中に、押し潰されそうな程の後悔が満ちてくる。  こうなることがわかっていれば、最初から無理矢理にでもまどか達を逃がすべきだった。スバルを元に戻せるという希望に釣られて、三人に無理を強いたのがそもそもの間違いだと気付かなければならなかったが、もう遅い。  全ては絶望を生み出すために張り巡らされたノーザの罠。無様にその餌食となって始めから負けが決まっていた賭けに乗ってしまい、こんな悲劇を生み出してしまった。  それでも一号に絶望することは許されない。せめて、まだ生きているキュアサンシャインとアインハルト・ストラトスの二人を守り抜くまでは、死ぬわけにはいかなかった。 「ハハハハハハハハハハハハハッ! やっぱりあなたは凄いわ! それでこそ、私のしもべにした甲斐があったものね!」  しかしこの世の終わりとも呼ぶに相応しい景色を前にして、あまりにも耳障りな哄笑が確かに聞こえてくる。ノーザの愉悦はいよいよ抑えられなくなったらしい。 「全ては……ノーザ様のために」 「そうよ! あなたの全ては私のためだけにあるのよ! 私が望む暗黒の世界を作る……それがスバルの存在理由だわ!」  あれだけの技を放った反動で息を切らしながらも淡々に伝えるスバルと、全身を仰け反らせて両腕を広げながら笑い続けるノーザの姿はあまりにも対照的だった。  そして一号はそんなノーザを前に、あまりにも狂っていると思うしかなかった。 「キサマ……これだけの犠牲を出しておきながら、まだ足りないと言うのか!?」 「当たり前じゃない! 全然足りるわけないでしょう!?」  問い質してきた一号に振り向いたノーザの笑顔は、悪魔のようにおぞましい。それだけでも誰かに絶望を齎すには充分だったが、一号は決して怖じ気づくことはせずに視線を向けた。 「ノーザ……一体何が望みだ、答えろ!」 「絶望、悲しみ、悲鳴、嘆き、不幸……それが私の望みよ!」  常軌を逸した哄笑と共にノーザは断言し続ける。 「一切の希望も光も差し込まない暗黒の世界……この戦いはその為の準備よ! だから私は加頭順に感謝すらしているわ! だって私達をこんなにも素敵なお祭りに招待してくれたのだから!」  そしてノーザは一息ついて、遙か彼方の大空を見上げながら叫んだ。 「全ては私達を蘇らせた深海の闇、ボトム様のため! さあ、もっとこのお祭りで踊りましょう! そしてもっともっと多くの悲しみを生み出しましょう! この世界をもっと、絶望に染めてちょうだい!」 ◆ 「素晴らしい……何と、素晴らしいのでしょう!」  そして惨劇を前にした筋殻アクマロもまた、逸る感情を抑えることができずに狂喜乱舞している。もしもその醜悪な表情が動いたならば、その笑い声に伴って大きく歪んでいたはずだった。  ノーザに操られたスバルが人を殺してから腹の底に押さえ込んでいた邪念を解き放ったことで、例えようのない開放感をアクマロは感じる。  そのまま彼は一号を嘲笑っているノーザに目を向けた。 (流石ですノーザさん、やはりあんたさんに付いて正解でしたな! まさかここまでの地獄を生み出してくれるとは!)  この催しの主催者たる加頭順や、数時間前に戦っていたコウモリ男に対して啖呵を切った男の信念や矜持をこうも簡単に踏みにじっただけでなく、辺り一帯を地獄絵図に変えた。猛の精神が潰れなかったのは少しだけ予想外だが、考えてみればむしろそうでなくては面白くない。簡単に折れない輩だからこそ、追い詰める楽しみもある。  ざまあみろという罵りの言葉を使うのは、こういう時こそ相応しいとアクマロは思う。  誰かを守るなどと嘯くような外道衆に背く愚か者には丁度いい罰だ。シンケンブルーが跡形もなく消えていく光景もそうだが、奴らの盲信していた平和などと言う絵空事が呆気なく崩れ落ちる様というのは、実に心地良い。  三日三晩、三途の池に浸っていてもこれほどの愉悦は味わえるかどうか。 「一号……っ!」  しかしその快楽に浸っている暇はもう無い。  視界の端から掠れるような声と共に、あのキュアサンシャインが立ち上がっているのを見つけたため。その傍らで倒れているアインハルトは気を失っているせいか、既に子供の姿となっていた。  あの砲撃の後で生きていたのは予想外だったが、それならば自らの手で叩き潰すまで。このまま逃げられてしまうのもそれはそれで面白くない。  本当ならばここから猛の精神を潰す作業に加わりたかったが、それはノーザとスバルに任せるしかなかった。それにあの小娘はここまでの悲劇を前にしても、その瞳に希望を宿している。それをこの手で絶望に変えてしまうのもまた一興。  削身断頭笏の刃先で左手を軽く叩きながら、更なる絶望を生み出すためにアクマロは足を進めた。 *時系列順で読む Back:[[変身超人大戦・襲来]]Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]] *投下順で読む Back:[[変身超人大戦・襲来]]Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]] |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|本郷猛|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|沖一也|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|明堂院いつき|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|ノーザ|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|高町なのは|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|スバル・ナカジマ|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|アインハルト・ストラトス|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|鹿目まどか|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|ズ・ゴオマ・グ|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|池波流ノ介|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|筋殻アクマロ|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| ----
*変身超人大戦・イナクナリナサイ  ◆LuuKRM2PEg ◆  目の前にいるのは、尊敬する人から全ての尊厳を奪い取った憎むべき相手。だから、この手で何としてでも叩き潰さなければならない。  アインハルトはスバルを何とかして元に戻すため、ノーザに拳を振るい続けるが全く当たらない。それどころか魔女は涼しげに笑いながら攻撃をかわして、アインハルトにダメージを与えていた。  数時間前、ズ・ゴオマ・グやスバルに負わされたダメージが完全に癒えてないまま次の戦いを強いられ、消耗した状態とはいえ覇王断空拳を受け止めるような相手と戦わされる。ゴオマの時とは違って仲間がいるが、今度は更に状況が悪くなっているように思えた。  一号とシンケンブルーはアクマロという怪物を相手にしていて、なのはとキュアサンシャインはまどかを助けようとしているがスバルの猛攻がそれを許さない。  誰の助けも期待できない状況だが、それでもアインハルトは諦めずに痛む身体に鞭を打って戦っていた。 「あらあら、弱いわね……そんなんじゃ、覇王の名が泣くわよ?」 「黙りなさい!」  しかし現実はあまりにも残酷で、アインハルトの願いを悉く裏切っている。  疾風の速度で拳を振るうがノーザは涼しい表情でそれを受け止めて、逆に脇腹に蹴りを叩き込んだ。その衝撃によって身体の軋む音が響いて、アインハルトは数メートルほど吹き飛んでしまう。度重なる痛みによって意識が飛びそうになるが、その精神力で何とか立ち上がった。  徐々に呼吸が荒くなりながらも地面を踏みしめ、嘲笑うノーザを睨み付ける。 「あなた、スバルを元に戻したいんだっけ」 「なっ……!?」 「あんな戦う以外に能がない機械を取り戻したいなんて、物好きね」  ノーザが一体何を言っているのか、アインハルトには理解できなかった。 「何を言ってるんですか……?」 「あなたは物好きって言ったのが聞こえなかったの? それに、あれは単なる冷酷な戦闘マシーンでしかないって事も」 「冷酷な戦闘マシーン……!?」  しかし次の瞬間、アインハルトの怒りが一気に燃え上がっていく。  もしかしたら、ノーザがスバルを操っていたのには何か理由があるのかもしれない。アインハルトはほんの少しだけ、そんな望みを持っていた。許せるわけはないが、もしかしたらノーザの凶行を話し合うことで、止めることができるかもしれないと思っていた。  だがノーザにそんな思いなど微塵もない。この魔女にあるのは底知れぬ悪意と、平気で人々を見下せるような冷酷さだけしかなかった。  確かにスバルの肉体は機械で出来ているが、誰よりも温かい心を持っている。だがノーザはそんな彼女を操り人形にし、挙句の果てには腕が大怪我をしたりマッハキャリバーが傷ついても尚、奴隷のように扱っていた。 「ふざけるのも、いい加減にしてください!」  それがアインハルトには我慢できず、感情のままに両足で地面を蹴って疾走する。  身を低くしながら瞬時に距離を詰めて胴体を目掛けてストレートを繰り出すが、ノーザは軽々と身を翻したことで掠りもしなかった。その瞬間、致命的な死角となった右側から衝撃が走って、またしても吹き飛ばされる。  アインハルトは短い悲鳴が喉から漏らしながら地面に衝突して倒れるが、駆けつけたなのはに支えられた。 「なのはさん、ありがとうございます!」 「アインハルトさん、無理をしないでください!」 「大丈夫です、この位……ッ!」  口から微かに流れ出る血を拭いながら、震える足に力を込めてゆっくりと立ち上がってノーザを睨む。しかし肝心のノーザはアインハルトなどまるで歯牙にもかけていないように天を見上げていた。  アインハルトもまたそちらに目を向けると、そこにはソレワターセの触手によって捕らえられたまどかが、腹からの大量出血によって顔面が青白くなっているのが見える。  やがてソレワターセの触手はまどかの首にも絡み、そのまま勢いよく締め付けた。 「うう゛っ……!」 「やめなさい!」  そしてまどかの口から苦しそうな呻き声が低音楽器のように発せられるのを見て、キュアサンシャインは跳躍する。しかしそんな彼女の足にソレワターセの触手は絡みついて、そのまま一気に遠くの地面へと叩き付けた。  キュアサンシャインの悲鳴が聞こえた瞬間、アインハルトはこれから起こる最悪の未来を予感して全身に悪寒が走る。そして同時に思考する暇もなくまどかを助けようと動くが、その前にノーザが立ちはだかった。  その冷たい瞳は愉悦に染まっていて、思わず吐き気を催してしまう。しかしその感情は、一瞬で塗り替えられることを知らなかった。 「これから始まるビッグイベントを、思いっきり楽しみなさい」  ぱちん、とノーザは指を奇術師のように軽く鳴らす。その音自体はまるで大したことはなかったが、死刑宣告という意味を持っていたことに気付いた者はどれだけいたかはわからない。  まどかの首を絞めているソレワターセの触手は急激に肥大化し、そのまま鈍い音を響かせながら頭部と胴体を強制的に分離させて、真っ赤な液体を宙にばらまかせていった。 「あ、あ……?」  一体何が起こったのか理解できず、アインハルトは呆然と口を開けている。彼女の瞳は、まどかの頭部が回転しながら落下していくのを捉えていた。すると、アインハルトの脳裏は加頭順によって見せしめにされた男達の姿が、一気に蘇っていく。  しかしそれに対するリアクションを取る暇もなく、首から上を失ったまどかの肉体は破壊された。  ソレワターセの触手はまどかの両腕を勢いよく引っ張ったことで、溢れ出る血によって汚れた胸部はメキメキと木が折れるような音を鳴らして、制服もろとも真っ二つに裂かれていく。すると、切断面から大量の鮮血が降り注いだ。  今のまどかに……否、鹿目まどかだった肉塊と頭部に、ソレワターセの触手が飲み込むように絡みついた。そして大量の骨が砕かれるような甲高い響きと、肉が磨り潰されるような湿り気のある音が聞こえる。ソレワターセの触手が蠢く度に、生理的な嫌悪感を与えるような音は強くなって、知らず知らずの内にアインハルトは震えていた。  赤く濡れたソレワターセの触手はスバルの背中に戻るも、空から落ちていったはずの頭部や高く掲げられた肉体は一片も残っていない。 「まどか、さん――?」  三秒に届くかどうかわからない全ての出来事を目の当たりにしてしまったアインハルトの脳は、思考をする暇もなく結論を導き出した。  鹿目まどかは跡形もなく、スバル・ナカジマに喰われてしまったと。  あまりの出来事を前にまともな言葉も出せず、ただ呆然と立ちつくすしかアインハルトはできない。全身に伝わる激痛も、この時ばかりは意識の中になかった。  されど、戦いはまだ終わったわけではなく、今のアインハルトは致命的な隙を晒していた。それを全く考えていなかった彼女の全身に、突如として凄まじい悪寒が走る。  まどかを一欠片も残さず飲み込んだスバルが、金色の瞳をアインハルトに向けてきたのだ。その異様な輝きと目があって、次に喰われるのは自分だと反射的に予知する。  まどかのように、五体がバラバラにされる光景が脳裏に映った。 「ひっ……!」  悲鳴を漏らしたアインハルトの表情は恐怖に歪み、ほんの少しだけ後退る。その際に足元を滑らせて尻餅をついてしまった。  迫り来るスバルに凝視され、アインハルトは全身から冷や汗を流してしまう。今のスバルがまるでスバルの皮を被った全く別の怪物のように見えて、震えることしかできない。  そこから後退する暇すら与えないとでも言うかのように、凄まじい速度でスバルは突貫し始める。その最中に握られていく鋼の拳が、今のアインハルトにはまるで罪人を裁く断頭台のように見えた。  スバルの右手が振り下ろされていくのを前にして、アインハルトは反射的に目を閉じる。せめて苦しまないように死ねることを強く願いながら。 「アインハルトさん、危ないっ!」 「にゃー! にゃー!」  目の前が黒く染まったのと同時になのはやアスティオンの叫び声が聞こえるが、恐怖に捕らわれたアインハルトは何もしなかった。  その刹那、肉が潰れるような耳障りな音が鼓膜に響いて、頬に熱を帯びた液体が跳ねるのを感じる。そして生臭い鉄の臭いが嗅覚を刺激したので、血が流れたのだと気づいた。  スバルに殴られて、もう死んだのかと思ったがその割には痛みがまるでない。苦痛を感じる暇もなく死んだのかもしれないが、それも妙だった。 「えっ……?」  恐る恐る目を開けたアインハルトは見つけてしまった。彼女とスバルの間を割って入るように、両手を広げたなのはが立っているのを。その小さな背中から拳が突き出していて、白いバリアジャケットが赤く染まっていた。 「な、なのは……さん?」  周りから数え切れないほどの怒声や悲鳴、それに混じった笑い声が嵐のように響く。だがどれもアインハルトの耳には届いておらず、蚊の鳴くような声でなのはを呼ぶしかできなかった。  アインハルトは震える腕をゆっくりと伸ばすが、届く直前にスバルの拳から毒々しい触手が飛び出て、そのまま一瞬でなのはの身体を飲み込むように絡みつく。  ソレワターセの触手はまどかの時のように蠢くと、なのはの悲鳴と思われる声がくぐもって聞こえてきた。だがそれもほんの数秒で途切れ、空気を切るような音と共にソレワターセは宿主の中に戻っていく。  そこにいたはずの高町なのはとレイジングハートはアインハルトの目の前から、いなくなっていた。何処に消えたかなんて考えるまでもない。  不屈のエース・オブ・エースと呼ばれるはずだった心優しき少女とその相棒である杖は、魔女の悪意によって闇の底に飲み込まれてしまった。  この時、アインハルト・ストラトスは悲鳴をあげることも思考することもできなかった。憧れの人が憧れの人を殺すという現実を突きつけられて、放心状態となってしまったことによって。それ故に、気づけなかった。  スバルの瞳が、ほんの一瞬だけ元に戻っていたことを。 ◆  闇の中に沈んでいたスバル・ナカジマの意識は唐突に覚醒していた。  チャイナ服を着た女の子と戦っていたはずだったのに、気がついたらこの拳はずっと尊敬してきたあの人を貫いていた。  子供の頃からずっと目標にしてきた最強の魔導師、高町なのはの身体を。 「なのは……さん?」  そしてスバルの声に対する答えはない。いつの間にかこの全身に生えた奇妙な触手がなのはを容赦なく潰して、彼女の血肉をスバルの中に取り込んでいた。  彼女の全身を駆け巡る血液が沸騰するように熱くなっていって、身体の奥底から皮膚を突き破るかの如く力が溢れ出てくるのを感じる。しかしそれに苦しむ間もなく、彼女の見る世界は闇に飲み込まれた。  それからすぐに、スバルが犯した罪の証が聞こえてくる。  お前は……お前は一体……!? ア……ア、ア、ア……ア……? とても痛い。とても苦しい。とても辛い。何、これ……? スバルさん、もうやめて! 苦しい……! 痛い。嫌だ。スバルさん、どうして……!? 死にたくない! 助けて! 痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!  やめて……  脳裏に次々と駆け巡る呪詛と絶望の言葉にスバルは耳を防ぎたくなるが、身体が言うことを聞かないし、スバルを責め立てる言葉が止まることもない。  あなたは素敵な戦闘マシーンよ。スバルのような素晴らしい殺戮兵器がいてくれるならば、この世に地獄をもたらしてくれるでしょうな。この人殺しの機械人形め、外道と共に地獄へ堕ちろ! キサマはもはや平和の敵だ、俺達仮面ライダーが打ち砕く! 私達プリキュアは、あなたを絶対に許したりしない!  やめて……お願いだからもうやめて!  スバルは血を吐く思いで懇願するが、それを聞き入れてくれる者は誰もいなかった。  こんなのってないよ……私達、スバルさんを元に戻そうとしたのにあんまりだよ! スバルさんには幻滅しました、あなたはただの血に飢えた殺人鬼だったんですね。近寄るんじゃないわよ……あんたなんかとコンビを組まされたなんて、本当最悪だったわ! お前はもう俺の娘なんかじゃねえ、とっとと廃棄所にでも失せろ。父さんと母さんはあなたを受け入れたみたいだけど、私はあなたみたいな獣を許したりしないわ。私を止める言いながら、本当はとんでもない極悪人だったネ! ボゾグ、ボゾグ、ボゾク!  違う、違う、違う! あたしは、あたしはこんなこと望んでなんか……  そうだね、スバルが望んでるのはまだこんなものじゃないよね  ……えっ?  渦を巻くように世界で暴れる呪いの中から、たった一つだけ優しい声が聞こえてくる。思わずそちらを振り向くと、尊敬している魔導師がいつの間にか立っていた。  なのは……さん?  よく来たねスバル。私はね、ずっとあなたを待っていたんだよ  初めて出会ったあの日から、ずっと忘れられない慈愛に満ちた笑顔を向けてくれる。しかしスバルはそれを見ても違和感しか覚えなかった。  つい先程、彼女の胸をこの手で貫いたはずなのにどうして生きているのか? さっき見た彼女は子どものように小さかったのに、どうして今はいつもの見慣れた姿なのか? 自分の見ている全ては、ただの幻でしかないのか?  でも、まだもうちょっとだけ足りないなぁ  疑問が何一つ払拭されないまま、高町なのははゆっくりと歩み寄ってくる。一歩、また一歩と近づく度に辺りの闇はより濃くなりながら、赤い血が湧き上がっていった。  凍てつく風が肌に触れて、スバルは思わず身震いする。その震えは寒さだけではなく、地獄のような世界を見せられて生まれた恐怖も含まれていた。そして、周りがこんな世界になっているのにも関わらず、未だに光に満ちた笑顔を浮かべているなのはにも違和感を感じてしまう。  あの優しくて強いなのはが、まるで絶望と怨恨しか込められていない地獄のような闇を喜んでいると思わざるを得なかった。  それじゃあ、スバルにいい物をプレゼントしてあげるよ  なのはの白い両手がゆっくりと伸びて、そのままスバルの頬を撫でる。その指先はひんやりとしていて、まるで暗闇のように一切の暖かさが感じられなかった。十本の指から闇が溢れだしてくる。  な、なのはさん……!?  恐がらなくてもいいんだよ。大丈夫……スバルには私のとっておきを教えてあげるから  幼子をあやす母親のように穏やかな声だったが、スバルは全く安堵することができない。この暗闇が全てを奪っていくようにも思えて、むしろ怖くなってきた。後ろに下がろうとしても、鎖で縛られたかのように足が動かない。  泥のように粘り気のある闇はスバルの皮膚に溶け込んでいき、そこから血管や人工骨格を通じて全身を駆け巡っていく。スバルの中を徐々に蹂躙していく漆黒はなのはの身体も飲み込んだ。  何が起こっているのか微塵も理解できずに瞠目するスバルの前で、なのはだった闇はボコボコと溶岩が流れるような濁った音を鳴らしながら、形を変えていく。気が付いた時には、スバルの頬を触れていた闇はスバルそのものとなっていた。まるで、鏡に映ったかのようにその姿には一片の違いもない。  唯一違うと言うならば、目の前に立つもう一人のスバルが笑っていたことだけ。それもなのはとは違って、酷く冷酷な雰囲気を放つ笑みだった。  じゃあね、本物のあたし。言っておくけど、なのはさん達を殺したからって終わらないよ!  えっ!?  全てはノーザ様のために……さっき、あなた自身が言ったじゃない!  その言葉と共に、もう一人のスバルの背後から闇が勢い良く盛り上がっていって、飛沫を上げながら波のように押し寄せてくる。スバルはそれを前に抗うことも悲鳴をあげることもできず、その意識と身体はソレワターセの生み出す暗闇の中へと飲み込まれていった。  これから、あなたの身体でいっぱい……楽しんでくるから!  そして気付く。目の前にいるスバルの姿をしたソレワターセは、この身体で大勢の人を殺そうとしていると。この身体を乗っ取ってもう四人も殺したように。  スバルは抗おうとするが、流れる闇の勢いを前にしてはまるで意味を成さなかった。  やめてええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!  そんな彼女の叫びも溢れ出る闇に呆気なく飲み込まれてしまい、誰にも届かない。同じように、スバルを救ってくれる者は誰もいない。  ソレワターセは高町なのはの存在によってスバル・ナカジマが元に戻る可能性を減らす為、絶望と罪を突き付けた。その結果、誰かを傷つけることを好まない性格であるスバルは呆気なく闇に飲み込まれてしまう。自分の身体が自分の物でなくなり、そして人を殺めることから生まれる絶望は計り知れない。  しかしソレワターセにとってそれはどうでもよかった。スバルが抱く絶望など、ノーザの願いを叶えるために、破壊と絶望の祭りを開くエネルギーに過ぎないのだから。 ◆  ソレワターセによって遠くに弾き飛ばされ、その際に味わった痛みによってキュアサンシャインは動くことができず、その僅かな時間の間に悲劇は起こった。  鹿目まどかはクモジャキー達のように首を飛ばされただけじゃなく、身体を真っ二つにされた挙げ句にソレワターセに吸収された。その次の瞬間には、ショックで動けなくなったアインハルト・ストラトスを庇った高町なのはが胸を貫かれて、まどかと同じように飲み込まれてしまう。  一分にも満たない惨劇を目撃したキュアサンシャインは絶望し、無力感が胸中に広がっていった。プリキュアでありながら、共に戦う仲間達を救うことができずに犠牲にされたショックは大きい。  しかし涙を流して悲しみに沈もうとした直前、ソレワターセに支配されたスバルの手がアインハルトに伸びていくのを見て、キュアサンシャインの意識は一気に覚醒した。 「アインハルトッ!」  彼女は両足を蹴って勢いよく疾走しながら両手に力を込めて、闇を照らす輝きを放つ。一瞬の内に二人との距離は迫ってから、スバルが反応する前にキュアサンシャインは叫んだ。 「サンシャイン・フラアアアアァァァァッシュ!」  掌から解き放った光線はアインハルトに意識を集中させていたスバルを飲み込み、容赦なく吹き飛ばす。確かな手ごたえを感じるが、今はスバルに振り向いている場合ではない。  すぐさま、地面にへたり込んでいるアインハルトの元へ駆け寄り、その身体とアスティオンを抱えて数メートル離れた先に跳ぶ。  両足が地面に付いた頃に覗き込んだアインハルトの瞳はとても空虚になっていて、涙が滂沱と流れていた。 「アインハルト、しっかりして!」 「な、なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……なのはさんが……まどかさんが……私のせいで、なのはさんとまどかさんが……!」 「アインハルトッ!」  キュアサンシャインはアインハルトの肩を掴んで揺さぶりながら呼びかけるが、返ってくるのは蚊の鳴くような呟きだけ。先程のスバルのように、明らかに混乱していた。  理由なんて考えるまでもない。まどかとなのはが目の前で立て続けに殺されては、誰だってショックを受けてしまう。いくら歴史に名を残す覇王の血を受け継いでいるからといって、実際はまだ十一歳の少女でしかないアインハルトも例外ではなかった。  彼女のような心優しい人間が、自分のせいで誰かが犠牲になったらどうなるか……辛いに決まっている。でも、アインハルトを守るために動いたなのはを責めることはできなかった。 「私のせいで、私のせいで、私のせいで……嫌あああああああああぁぁぁぁぁ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、なのはさん、まどかさん、ヴィヴィオさん、リオさん、コロナさん、フェイトさん、スバルさん、ティアナさん、ユーノさん、ノーヴェさん、私が悪いんです、私が悪いんです、私が、私が、私が、私が……!」 「にゃー! にゃー!」 「アインハルト、私は……!」  アスティオンと共にアインハルトを何とかして慰めたかったが、その為の言葉がキュアサンシャインには見つからない。目の前で大切な人を失った悲しみを癒すなんて、簡単にできるわけがないからだ。  彼女の為に一体何ができるのか? キュアサンシャインにはまるで思いつかなかった。 「アハハハハハッ! 凄い、凄いじゃないスバル! 流石は私のしもべよ! ここまで働いてくれるなんて最高だわ!」  しかしそんな彼女を嘲笑い、この惨劇をまるで祭りのように笑うとてつもなく不愉快な声が響く。  振り向いた先では、人々の不幸を喜ぶあの邪悪な魔女が腹の底から笑っている姿が見えた。しかもこれまで見たどんな笑みよりも、愉悦の色が濃さを増している。 「ねえスバル、あなたの力はこの程度じゃないはずよ! まだもっと凄いことをしてくれるでしょ!? 早くそれを私に見せてちょうだい!」 「……ッ!」  その笑い声を耳にした途端、キュアサンシャインの全身が怒りで震えた。  まどかやなのはを犠牲にしただけじゃなく、アインハルトをここまで追い詰めた。それをノーザは『この程度』と吐き捨てている。  ノーザはただ、自分自身がが満足したいという理由だけでみんなを絶望のどん底に叩き落して、破壊の限りを尽くした。 「許さない……あなただけは絶対に許さない……!」  あまりにも身勝手で邪悪なノーザを前にして、この時ばかりは心の底から憎しみが湧き上がっていく。かつてデューンとの最終決戦において、キュアブロッサムとなった花咲つぼみは憎しみで戦ってはいけないと教えられた。しかし今のノーザは、そんな気持ちを忘れさせてしまいそうなほどに、憎い相手に見える。  ここでノーザを倒さなければもっと多くの不幸が生まれるし、何よりも自分自身を許すことができなかった。キュアサンシャインは拳を思いっきり握りながら走り出そうとするが、その足は止められてしまう。  思わず振り向くと、右足にアスティオンがしがみついていた。 「ティオ……?」 「にゃー! にゃー! にゃー!」 「お願い、その手を離して! 私は……!」 「にゃー! にゃー! にゃー! にゃー! にゃー!」  アスティオンは必死に首を横に振りながら悲しそうな声で鳴いているのを見て、怒りと憎しみに染まっていたキュアサンシャインの思考は一気に晴れる。そして、言葉を言えないアスティオンの意図を察した。  このまま行っては負けてしまうだけで、犠牲者がもう一人増えてしまう。そしてアインハルトを余計に悲しませることになると、悲しみに潤んだ瞳が告げていた。  アスティオンと目を合わせたキュアサンシャインは何も言うことができない。  一号とシンケンブルーがアクマロを相手に苦戦している状況で、もしもここでノーザの元に飛び込んだら一人で戦うことになり、そこからノーザやスバルに負けてしまったら今度こそアインハルトは一人になってしまう。そうなっては、誰もアインハルトを助けることはできない。  アスティオンの懇願を前に、キュアサンシャインは何もできずに止まってしまう。そんな迷いの後、ガシャリと何かが駆動するような音が数回だけ響いた。 『Divine Buster』  そして次に聞こえてきたのが、消えてしまったレイジングハートと似ている無機質な機械音声。それを聞いたキュアサンシャインは思わず振り向いたが、そこにいるのはスバルとノーザだけ。  しかもスバルは、数分前のように腰を深く落としながら構えを取っていた。 「えっ……?」  だがそれらが綺麗な光だと思う暇もなく、一瞬の内に黒く染まった。そして光は何もない場所から次々と生まれながらスバルの頭上に集まっていき、稲妻を発しながら大きな球体へと変わっていく。  それに伴うかのように戦いで砕けた大地が揺れて、粉塵がゆっくりと舞い上がりながら黒い塊は更に大きくなる。ようやく昇り始めた朝日の光を遮り、世界を再び夜にしてしまいそうな闇で満ちていた。  それを生み出しているスバル本人がゆっくりと腰を落とすのを見て、キュアサンシャインの全身が警鐘を鳴らす。そして、これからスバルはとてつもなく恐ろしい一撃を放とうとしていると、本能で確信した。 「アインハルトにティオ、私に掴まって!」  それからキュアサンシャインが取る行動は早かった。彼女は急いでアインハルトとアスティオン、そして二つのデイバッグを手にとって少しでも遠くに離れようと動く。  その際に、一号とシンケンブルーの方に一瞬だけ振り向いて叫んだ。 「一号にシンケンブルー! アインハルト達は私が守りますから、ここから離れてください!」  言い残せたのはそんなぞんざいな言葉だけで、返事を聞く暇もない。二人との間に開いた距離は、残された時間で行くには遠かった。無責任だと知っているが、そうしなければアインハルト達を助けられない。  ノーザとスバルの狙いはここにいる特定の誰かではなく、ここにいる全員。例え防御をしたとしても、これから来る技はそれを軽く吹き飛ばす位にまで凄まじいと、キュアサンシャインは無意識の内に確信していた。  せめて今は、アインハルトを助ける可能性を少しでも上げなければならない。それだけがキュアサンシャインの思考を満たしていた。 ◆  シンケンマルを何度も振りかぶるが、その度にアクマロの持つ削身断頭笏で呆気なく弾かれてしまい、そこから胸を一閃される。蹌踉めいた間に、アクマロはナナシ連中の刀をあろうことか投げつけて、刃先が傷口の開いている脇腹を掠った。  シンケンブルーはそれに苦しむ暇もなく、アクマロが空いた方の手から電撃を放つ。凄まじい音と共に、シンケンブルーに襲いかかった。 「がああああああぁぁぁぁぁぁぁっ……!」  耳にするのも辛い断末魔の叫びが、マスクの下から発せられる。アクマロの雷はスーツの傷口から進入し、中にいる池波流ノ介を苦しめるように暴れ回った。  電撃はすぐに止むが、それを合図とするかのようにシンケンブルーは膝を落として倒れていく。その身体が地面を横たわった頃には、度重なるダメージによって変身が解除されていた。  夥しい量の血が十蔵から傷つけられた脇腹より流れ、地面を赤く染める。何とかして顔を上げると、目の前にT-2サイクロンメモリが落ちているのを見た。思わず流ノ介はそれを右手に取る。  痛みでまともに身体が動かないが、それでもゆっくりと立ち上がっていく流ノ介を一号は支えた。 「流ノ介、大丈夫か!?」 「ああ……すまない、本郷。私なら大丈夫だ……!」  失血によって朦朧とする意識を保ちながら、流ノ介は右手で握ったサイクロンメモリを痛恨するように見つめる。  鹿目まどかと高町なのはを見殺しにしてしまっただけでなく、こうしてアクマロに遊ばれてしまった。情けなさのあまりに泣きたいくらいだったが、そんなことなど許されるわけがない。  せめて今はアクマロだけでも倒したかったが、現実はどこまでも残酷でまともに攻撃を当てられもしなかった。 「……どうやら、ここが潮時のようですな」  そして肝心のアクマロはこちらを見向きもせずにそう呟く。  流ノ介も振り向いてみると、その先ではあのスバル・ナカジマという少女の手中で黒い球がどんどん肥大化しているのが見えた。それはヤバいと、一目見ただけで本能が察している。 「巻き添えを食らうのはごめんですので、ほんの少しだけ失礼させて頂きます」  そうやって捨て台詞だけを残して、アクマロはここから遠ざかっていった。流ノ介はアクマロを追おうとするも、痛みが身体の動きを阻害する。 「ディバイン――!」 「流ノ介、俺にしっかり掴まっていろ!」  スバルの叫びを掻き消すかのように力強い声を発しながら、一号は流ノ介を背負って走り出した。その背中を見て、流ノ介は今の自分がただの足手纏いでしかないことを察する。  恐らく一号はこんな死にかけになった自分を助けるに違いない。その気持ちは実に嬉しいが、その為に彼が犠牲になるのは耐えられなかった。背負ったままでは、スバルの攻撃を避けられるかわからない。それで二人とも死ぬことになっては何の意味もなかった。  そして侍になったからには誰かに守られるのではなく、自らの命を犠牲にしてでも誰かを守らなければならない。だからこそ、流ノ介はサイクロンメモリのスイッチに指を触れた。 「すまない……本郷!」 『Cyclone』  野太い電子音声を耳にしながら、まどかのようにガイアメモリを額に差し込む。あの加頭順が持っていたから信用できない代物だが、今は躊躇っている場合ではない。  首輪から風の記憶が流れるのを感じながら、池波流ノ介はサイクロン・ドーパントに変身していく。彼は全身から突風を発して、振り向いてきた一号を吹き飛ばした。 「流ノ介、何を――!」 「――バスタアアアアァァァァァァァァァァ!」  風に流されて遠ざかっていく一号の疑問はスバルの叫びに遮られ、間髪入れずに地面が砕けるような轟音が背後より響く。そのままサイクロン・ドーパントの肉体に灼熱が走り、視界は漆黒に包まれた。  サイクロン・ドーパントは……否、池波流ノ介は自分の命が燃え尽きていくのを感じるが、不思議と痛みや苦しみはなかった。彼の胸中にあるのは忠義を誓った志葉家の当主と自分と同じ家臣達に、ここで出会った仲間達の顔。 (本郷、すまない……あなたを苦しめることになってしまって。だが、どうかいつきとアインハルトを助けてやってくれ。この不甲斐ない私の変わりに……)  誰かを守るためなら自己犠牲を決して厭わない高潔たる精神を持つ男なら、自分が死ぬことを苦しむかもしれない。だが、それでも全ての人々を守れる本郷猛に託したかった。  家臣でありながら主君の苦悩を見抜けなかった愚かな自分よりも、ずっと強いのだから。 (源太、お前はここで死ぬな! 私が亡き後、殿を支えられるのはお前だ! どうか殿を守り、こんな下らない戦いに巻き込まれた皆を救ってくれ!)  流ノ介は次に、お調子者だが侍としてのこれまで多くの人々を助けてきた寿司屋、梅盛源太の顔を思い浮かべる。何処か間の抜けている彼だが、それでも人を助けたいという思いは本物だ。  だから源太には生きて、自分の分までシンケンジャーを支えて欲しかった。 (殿……私はあなたを信じております。どうか外道になど落ちず、皆を救うために戦ってください! 私も源太もそれを望んでおります! 我々シンケンジャーは、あなたを信じて今まで戦ってきたのですから!)  そして最後に、長きに渡って忠誠を誓ってきた志葉家の当主たる男、志葉丈瑠に遺言を残す。いくら彼が殺し合いに乗る可能性があったとしても、それでも流ノ介は信じていたかった。  これは理屈などではなく、これまで今まで共に戦ってきたことで培われた信頼から生まれる思い。何故なら、丈瑠はこれまでシンケンジャーのみんなを何度だって支えてきたのだから、きっと正しき道を歩いてくれるはずだと、流ノ介は信じている。 (殿……!)  だから、最後の最後まで志葉丈瑠の無事を祈ることを池波流ノ介は一秒たりとも止めなかった。  例えその肉体が闇に飲み尽くされ、命が消え果てたとしても。 ◆ 「流ノ介……ッ!」  自分を救うために突風を起こしたサイクロン・ドーパントの元に振り向くが、そこに倒れているのは黒く焦げた焼死体のみ。そして、その傍らには緑色のガイアメモリが放置されていて、ショドウフォンはもう残っていない。  それが池波流ノ介だった肉塊だと察して仮面ライダー一号が愕然とした直後、スバルの身体から飛び出した触手がその肉体を飲み込む。一号はすぐに食い止めようとしたが、ガイアメモリだけを残して跡形もなく消えてしまった。  鹿目まどかや高町なのはだけでなく、池波流ノ介までも見殺しにしてしまう。助けるどころか逆に助けられてしまうなんて、あってはならなかった。 「くそっ……!」  それを目の当たりにした一号の胸中に、押し潰されそうな程の後悔が満ちてくる。  こうなることがわかっていれば、最初から無理矢理にでもまどか達を逃がすべきだった。スバルを元に戻せるという希望に釣られて、三人に無理を強いたのがそもそもの間違いだと気付かなければならなかったが、もう遅い。  全ては絶望を生み出すために張り巡らされたノーザの罠。無様にその餌食となって始めから負けが決まっていた賭けに乗ってしまい、こんな悲劇を生み出してしまった。  それでも一号に絶望することは許されない。せめて、まだ生きているキュアサンシャインとアインハルト・ストラトスの二人を守り抜くまでは、死ぬわけにはいかなかった。 「ハハハハハハハハハハハハハッ! やっぱりあなたは凄いわ! それでこそ、私のしもべにした甲斐があったものね!」  しかしこの世の終わりとも呼ぶに相応しい景色を前にして、あまりにも耳障りな哄笑が確かに聞こえてくる。ノーザの愉悦はいよいよ抑えられなくなったらしい。 「全ては……ノーザ様のために」 「そうよ! あなたの全ては私のためだけにあるのよ! 私が望む暗黒の世界を作る……それがスバルの存在理由だわ!」  あれだけの技を放った反動で息を切らしながらも淡々に伝えるスバルと、全身を仰け反らせて両腕を広げながら笑い続けるノーザの姿はあまりにも対照的だった。  そして一号はそんなノーザを前に、あまりにも狂っていると思うしかなかった。 「キサマ……これだけの犠牲を出しておきながら、まだ足りないと言うのか!?」 「当たり前じゃない! 全然足りるわけないでしょう!?」  問い質してきた一号に振り向いたノーザの笑顔は、悪魔のようにおぞましい。それだけでも誰かに絶望を齎すには充分だったが、一号は決して怖じ気づくことはせずに視線を向けた。 「ノーザ……一体何が望みだ、答えろ!」 「絶望、悲しみ、悲鳴、嘆き、不幸……それが私の望みよ!」  常軌を逸した哄笑と共にノーザは断言し続ける。 「一切の希望も光も差し込まない暗黒の世界……この戦いはその為の準備よ! だから私は加頭順に感謝すらしているわ! だって私達をこんなにも素敵なお祭りに招待してくれたのだから!」  そしてノーザは一息ついて、遙か彼方の大空を見上げながら叫んだ。 「全ては私達を蘇らせた深海の闇、ボトム様のため! さあ、もっとこのお祭りで踊りましょう! そしてもっともっと多くの悲しみを生み出しましょう! この世界をもっと、絶望に染めてちょうだい!」 ◆ 「素晴らしい……何と、素晴らしいのでしょう!」  そして惨劇を前にした筋殻アクマロもまた、逸る感情を抑えることができずに狂喜乱舞している。もしもその醜悪な表情が動いたならば、その笑い声に伴って大きく歪んでいたはずだった。  ノーザに操られたスバルが人を殺してから腹の底に押さえ込んでいた邪念を解き放ったことで、例えようのない開放感をアクマロは感じる。  そのまま彼は一号を嘲笑っているノーザに目を向けた。 (流石ですノーザさん、やはりあんたさんに付いて正解でしたな! まさかここまでの地獄を生み出してくれるとは!)  この催しの主催者たる加頭順や、数時間前に戦っていたコウモリ男に対して啖呵を切った男の信念や矜持をこうも簡単に踏みにじっただけでなく、辺り一帯を地獄絵図に変えた。猛の精神が潰れなかったのは少しだけ予想外だが、考えてみればむしろそうでなくては面白くない。簡単に折れない輩だからこそ、追い詰める楽しみもある。  ざまあみろという罵りの言葉を使うのは、こういう時こそ相応しいとアクマロは思う。  誰かを守るなどと嘯くような外道衆に背く愚か者には丁度いい罰だ。シンケンブルーが跡形もなく消えていく光景もそうだが、奴らの盲信していた平和などと言う絵空事が呆気なく崩れ落ちる様というのは、実に心地良い。  三日三晩、三途の池に浸っていてもこれほどの愉悦は味わえるかどうか。 「一号……っ!」  しかしその快楽に浸っている暇はもう無い。  視界の端から掠れるような声と共に、あのキュアサンシャインが立ち上がっているのを見つけたため。その傍らで倒れているアインハルトは気を失っているせいか、既に子供の姿となっていた。  あの砲撃の後で生きていたのは予想外だったが、それならば自らの手で叩き潰すまで。このまま逃げられてしまうのもそれはそれで面白くない。  本当ならばここから猛の精神を潰す作業に加わりたかったが、それはノーザとスバルに任せるしかなかった。それにあの小娘はここまでの悲劇を前にしても、その瞳に希望を宿している。それをこの手で絶望に変えてしまうのもまた一興。  削身断頭笏の刃先で左手を軽く叩きながら、更なる絶望を生み出すためにアクマロは足を進めた。 *時系列順で読む Back:[[変身超人大戦・襲来]]Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]] *投下順で読む Back:[[変身超人大戦・襲来]]Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]] |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[本郷猛]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[沖一也]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[明堂院いつき]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[ノーザ]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[高町なのは]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[スバル・ナカジマ]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[アインハルト・ストラトス]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[鹿目まどか]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[ズ・ゴオマ・グ]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[池波流ノ介]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| |Back:[[変身超人大戦・襲来]]|[[筋殻アクマロ]]|Next:[[変身超人大戦・最後の乱入者]]| ----

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