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第二回放送」(2014/03/18 (火) 21:20:55) の最新版変更点

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*第二回放送 ◆gry038wOvE  一日目、正午。  直前まで戦いを続ける者、放送に備える者、何かの判断を強いられている者……生きている限りは誰も何かの行動を取っている。  長い一日の中で最も暖かい日の光が注いでいるが、屋外にいる者もいれば屋内にいる者もいる。だから、それを誰もが体表で感じているわけではなかったし、それを心地よく浴びる余裕のある者なんていなかった。  ……それにしても。  星も見えるし、空も見える。日の光も浴びれる。  それが、不思議だ。  作った当人たちでさえ、この島が疑似的に様々な施設を再現した模造の島だとは信じがたいと思っているほど、精巧な異世界。  あまりにも、違和感や異常が無さ過ぎて、逆に気が狂ってしまいそうだ。  昨夜、誰か大切な人を喪い、六時間前の放送を聞いた者もそろそろ悲しみを収めただろうか。  しかし、その悲しみを上塗りする悲劇が、また報ぜられる。  そう、第二回放送──。  その時間が今、ちょうど来たのだ。  十二時きっかり、一秒の狂いもなし。  今度は小汚い男のホログラフが映った。逆立った金髪も特徴的だが、眼鏡に白衣という研究者風の風体の方が目立つ。しかし、同じ白服でも加頭が放った、気品のようなものがない。やはり着崩し方、汚し方に問題があるのだろうか。  その代わりと言っては何だが、加頭ほど人間味がないようには見えない。加頭が感情の無い置物ならば、彼はどこか内面に狂気や歪んだ歓喜を抱えているように見えた。それも決して、良い感情とは言えないが。  彼の名はニードル。  かつてバダンの幹部だった、「ヤマアラシロイド」の別名を持つ男だった。 「初めまして、参加者の皆さん。私の名前はニードル。  加頭順、サラマンダー男爵と同じく、このゲームの企画に協力している者です。……彼らに心当たりはなくとも、私に心当たりがある方は何名かいるでしょう。  放送担当者が変わってわかりにくい……という方もいるでしょうが、私の名前など覚える必要はありません。私は企画・主催の協力者の中ではあくまで末端だと考えてください。  我々が持つ兵力は絶大なのです。あなたたちが身を寄せ合ったところで、敵わない存在です。ですから、我々に刃向おうなどと愚かなことは考えないようお願いします」  こうして、毎回のように放送者を変えるのは、主催者側の兵力を示すためだろう。  加頭順……ユートピア・ドーパントの場合なら、左翔太郎やフィリップ。  サラマンダー男爵の場合なら、花咲つぼみや明堂院いつき。  ニードルの場合なら、一文字隼人や村雨良。  誰かしら、彼らの恐ろしさを知る者がここに来ており、その者たちは必ず仲間の参加者に情報を伝える。  結果的に、彼らは主催陣営の強大さに気づいていくわけだ。  少し長い前置きになったが、すぐにニードルの脳内にある死亡者リストが読み上げられた。 「では、サラマンダー男爵の時と同じく、まずは第一回放送からここまでの死亡者を読み上げましょう。  相羽シンヤ、井坂深紅郎、五代雄介、早乙女乱馬、志葉丈瑠、筋殻アクマロ、スバル・ナカジマ、園咲霧彦、月影ゆり、ティアナ・ランスター、パンスト太郎、東せつな、姫矢准、美樹さやか、山吹祈里……以上15名。  ここまで、全参加者のちょうど半分にあたる33名が死亡ということになりますね。素晴らしいペースです。これを維持して頂きましょう」  おそらく、既に全ての参加者が誰かしら知り合いを喪っている頃だろう。  もしかすれば、行き会う参加者がほとんど死亡している人間もいるかもしれない。  参加者の半分というのは、それだけ重みのある数字だった。 「次に禁止エリアを発表します。メモの準備はいいですか? 一度しか言わないのでよく聞いてください。  13時に【H-9エリア】、15時に【F-8エリア】、17時に【G-3エリア】。以上の3つが今回の禁止エリアとなります。そのエリアの近くにいる参加者は、くれぐれも首輪の爆発で死んでしまわないよう注意してください。」  それから、またしばらく間を置いている。  一応、参加者が禁止エリアを塗りつぶすのを待っている……ということになっているのだが、おそらくどの参加者も急いで塗るだろうから、この時間はそもそも無駄である気がしてならなかった。  三つの禁止エリアのうち二つが街エリアなのは、そこに参加者が寄ったからだろう。  この放送が開始した時点で、そのエリアにいる参加者もいるが、一時間で逃げ切るだろうか? 「……それから、前回のボーナスですが、まだ使用した参加者はいないようですね。まだ一時間しか経っていないようですが…まあ、見つけてもらえないのではこちらとしても甲斐がないので、みっつのヒントを差し上げましょう。  ひとつ。ボーナスは「○+×」、または、「青+黄色」の式が示す施設に存在すること。  ふたつ。雄介-孤門-薫+隼人-結城。この数の参加者を手にかけた人間のみが使用できること。  みっつ。現在これが使用できる人間は五人。そのうち二人が、どちらかの施設の近くにおり、その参加者はいずれも“変身後”の姿の敵を倒した実績を持つこと。  心当たりのある参加者は、その施設に立ち寄ってみては如何ですか?」  まるで、なぞなぞのようなニードルの言葉。  主催側がいかに、このバトルロワイアルをゲーム感覚で行っているかがわかるルールだった。  同時に、なぞなぞが解けたならば、自分の近くにイベント施設があることや、自分の身に危険が迫っていることも把握できる。 「そして、今回のボーナスは、特殊アイテムの配置場所の指名です。  こちらはヒントなしで簡単に説明しましょう。……もう見つけた参加者もいるのですが、ある二つの施設に緑と青の強力な武器を用意しておきました。  ただ、こちらで制限をかけて、使用不能となっていますから、見つけても無駄だったでしょう。今回は、17時からその制限解放と、説明書の配置を行います。  尚、説明書の配置時には我々が自ら出向くわけではありませんから、その瞬間を狙っての奇襲などを考えても無駄ですよ?  ……それはいいとして、戦力のない方、より強い力を欲する方はボーナスの利用も考えてはどうでしょうか。今回の武器は、体格が合い、一定の体力があれば誰でも使用可能になっています。  それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう」  ニードルの姿が消え、第二回放送が終了する。  参加者たちは、この放送を聞いてどう行動するのだろうか。  放送により一度、休憩時間のように時が止まった世界が、再び不思議な慌ただしさを取り戻して動き出す。  変身者たちのゲームはまだまだ続く……。 ★ ★ ★ ★ ★  放送の終了とともに、ニードルは主催陣の一人に声をかけられた。  案の定、加頭順だ。 「ご苦労様です、ニードルさん」 「加頭さん。どうでしたか? 私の放送は」 「……サラマンダー男爵以上に楽しげな放送だ、とだけ言っておきましょう」  楽しげ、という言葉を彼の口から聞いて、ニードルは思わず苦笑する。喜怒哀楽の表情とは一切無縁で、彼が楽しいと感じるかさえ怪しいと思える。  しかし、その言葉の裏にある「嫌味」の意味もはっきりと理解していた。  ボーナスについてベラベラと話してしまうのは、あくまで「提供者」である主催側としては、中立性を欠いていて不平等だ。  一応、台本はあるのだが、ボーナスのヒントでなぞなぞを使ってくるなどとは、思っていなかったのだろう。 「ククク……いや、失敬。“立案者”としてはボーナスが使われないのは不服でしたからね。“イラストレーター”の台本にヒントの提示を付け加えてもらったんですよ」  そう、このゲームに存在する「ボーナス」という制度を作ったのはニードルだった。  時空魔法陣も彼の世界の技術で、彼の協力なしには実現しない制度だ。  しかし、それをあの抽象的な放送内容のせいで見つけてもらえないのは、立案者としてはつまらないことこの上ない。  加頭やサラマンダーが機械的に作業を行っているのに対し、ニードルは冷徹ながらも少しはゲームを面白くする工夫を必要としていたのである。 「……あのくらいは許容範囲でしょう?」 「ええ、許容範囲です。しかし、中立性があるとは言えません。特定の参加者に語りかけるのはいけません」 「特定の参加者に語りかける……? 私に心当たりがある方、というくだりでしょうか。それとも、ヒントで示した『警察署』のくだりでしょうか」 「後者です」  後半のボーナスのくだりでは、警察署にいる孤門やヴィヴィオを動かそうというニードルの思惑が見えていた。  主催側があのように、暗に特定の参加者に対して道を示すような行動は本来あってはならない。 「……加頭さんは、あれを私のアドリブだと思ってるんですか? 私のアドリブは、ヒントを、なぞなぞ風味に変えたことだけですよ。ククク……」  そう言い残し、答えも聞かないままにニードルは去っていく。  加頭がニードルの方を見ると、彼は左手をポケットに入れ、こちらに背を向けたままもう片方の手を振っていた。  ニードルが闇に消えていき、加頭はそこに一人取り残された。 ★ ★ ★ ★ ★ 「調子はどうですか、イラストレーター」  加頭順は、その一室で作業を行う「イラストレーター」と呼ばれる少年・吉良沢優にそう話しかけた。  財団Xの同業者を彷彿とさせる白い服と凛々しい顔だったが、決定的な違いはやはり、彼の容姿が極めて幼いことである。彼は、人間の中でもトップクラスの天才「プロメテの子」であり、その有用性は大人以上であると言えるが、どうも加頭は彼の実力を認められなかった。  ここに来たのも、ニードルの含みある言葉を疑い、放送の原稿を書いた彼を訪問したからだった。 「……君たち変身能力者と同じ場所で働け、って言われて、本調子が出ると思う?」 「……」  イラストレーターの嫌味に、加頭は言い返せなかった。  一応、メモリやガイアドライバーを渡してはいるが、彼にそれを使う気持ちはないようだし、精神面でも少し弱いかもしれない。まあ、一般人よりは少しマシという程度だろう。 「更に付け加えるなら、僕は君たちと違って、この殺し合いには否定的な立場だ。ただ単に反抗を企てても勝てないと知っているから絶対に反抗しない……それに、人が死んでも淡々としていられる。それだけの理由でこれをやってるに過ぎない」 「人が死んでも淡々としていられる……そうでしょうか? どうやら、先ほどの放送では、孤門一輝を動かすような内容を書いたようですが」  イラストレーターの表情が固まるのを、加頭は見逃さなかった。  どうやら、図星らしい。  イラストレーターは元々、孤門一輝や西条凪が属していた組織の一員である。  それを、こちらの提示した特殊な条件を飲ませる形で引き入れたに過ぎない。 「……ヒントの提示は、ニードルさんが要求したことです。僕は、それに従ったに過ぎない。口答えができる立場ではないから、ね」  イラストレーターがそう答える。  とにかく、ニードルに責任の一部をなすりつけることで、こちらに牙が剥くのを回避しようとしたのである。  そう、ヒントの提示はニードルがイラストレーターに頼んだ。イラストレーターはその原稿を書き、ニードルに読ませる。そして、ニードルがアドリブでヒントをなぞなぞ形式にしたのだ。  もともとのヒントは、「赤い仮面ライダーの職場と白い魔導師の故郷」という露骨なものが多かったのだ。それらの人物の情報を持つ者にはそのまま答えとなってしまう。  それを、ニードルが誰でも解けるチャンスがありながら、少し頭を使わなければわからないなぞなぞにしたわけである。  そうした経緯があって、責任問題となったら誰が中心になるのかはわかりにくくなっていたのだろう。 「……まあいいでしょう。我々はあなたの条件の一部を既に叶えました。ですから、途中で投げ出したり、我々の意向にそぐわない行動を取ったりするのは契約違反です。……以後、厳重に注意をしておいてください」  加頭は、そう言い残してその場を去って行った。  どうやら、そこまで大きな問題としては見られておらず、加頭個人が気にした程度にすぎないらしい。そのため、引き下がるのも早かった。  部屋で一人になったイラストレーターは、安心した気持ちになる。  この部屋の形はTLTの司令室と全く同じ間取りになっていて、彼の心を落ち着かせていた。来訪者たちもここにいるし、レーテの再現もあるので、実際、ここが異世界であるとは信じがたかいものだった。  更には、イラストレーターが見たい参加者の音声が再生できるようになっており、彼としては最も快適な場所だ。  彼の役割は、“来訪者”との会話と、“コンタクティ”としての能力を利用した大まかな予知、そしてその片手間に放送原稿の作成することである。それも、実際イラストレーターの脳内で起こる予知が全てそのまま、他の主催者たちに知れ渡っているため、実質仕事は台本の作成だけだ。  これを殺し合いの終了──おそらく三日もかからないだろう──までやっているだけで、イラストレーターが提示した条件は全て果たされるのだから、美味しい話だと言える。  しかし、それでも彼の心は僅かに曇っていた。 「……憐」  イラストレーターの手には、タカラガイの貝殻が握られている。  それは、一文字隼人に支給されていたものと全く同じ貝殻だった。本来、まったく同じ形の貝殻が二つも存在していることなどありえない。  しかし、異世界の存在や別の時間軸に干渉する方法を認めた今、それは当然ありえることだった。  イラストレーターが殺し合いの協力のために提示した条件は幾つかあった。  まずは、イラストレーターと同じ「プロメテの子」の仲間である千樹憐の救済である。  遺伝子に障害のある彼は、17歳を境に全身の細胞がアポトーシスを起こし死亡する……という、「プロメテの子」の失敗作であった。  天才となるために生まれてきた特殊な遺伝子の集団の中で、たった一人だけが持つ、悲しい運命である。  否認、怒り、取引、抑うつ、受容。  死への五つの段階のうち、憐は「受容」の段階に入っていた。元々、親も無く生まれ、閉じ込められて生き、常人とは話がかみ合わないであろう彼だったから、その段階を踏んでいくのはなかなか早かったはずだ。  あとは、死ぬだけだと思っていたに違いない。憐はその運命に、どこか達観し始めていた。  しかし、見ている方としては、それを見ているのは苦痛だった。  「プロメテの子」の仲間たちはその特効薬「ラファエル」の完成に急いでいた。  医学、薬学、遺伝子学のあらゆる分野から、あらゆる国籍の人たちが、世界にたった一人しかかかっていない病のために奮闘していたのである。研究することは他に幾つもあるだろうというのに、たった一人の親友のために何人もの天才が時間を費やす。  イラストレーターは、それを見かねて、悪魔と契約を結ぶ第一条件として、彼の救済を要求した。  そして、ラファエルはすぐに完成した。  イラストレーターは、その時、かなり久々に驚愕したのである。  地位、名誉、金……特にそんな願い事もないイラストレーターは、試しとして絶対に不可能だと思う条件を提示したはずだった。  彼が吉良沢優として願っている、おそらくは一番の願い。そして、彼自身も半ば諦観していた願い。  だから、彼はそれを真っ先に口にした。──「ダメでもともと」というようなネガティブな考えのもとに。  更に驚くべきは、彼が要求した細かな条件までやってくれたことである。  仲間たちの努力を無駄にしないためにと……あくまで、「プロメテの子」たちの手で完成させることを要求すると、それを実現させた。どうしてそんなことができたのかと聞くと、彼らの脳内に直接、ラファエル完成のためのヒントを閃かせるような合図を送ったという。  しかし、何にせよ、その結果、憐がデュナミストになった直後に、ラファエルが完成し、憐の病は完治した。  そして、加頭順の口からは、アンノウンハンドの正体なども詳細に教えられた。  加頭順を初めとする“彼ら”の介入はイラストレーターの住む世界線に多大な影響を与え、デュナミストの変動や早期段階でのダークザギの正体発覚につながることになった。  予期されていた出来事は、“彼ら”の介入がなかった場合の世界線でのことであるため、レーテやダークザギの予知能力も実質無意味になった。  更に言うなら、ここに来ているダークザギやダークメフィストに関しては、自分が予知能力を有することさえ忘れているらしい。世界線の影響なのか、主催側で制限を設けたのかはわからないが、それにより彼らの動きは変わってきている。  その後正式に決めたもう一つの契約内容は、イラストレーターの住む世界そのものの救済だった。  イラストレーターの来ていた世界で起こるはずの、あらゆる出来事の可能性を排除することで、自分の住む世界の救済を行うのだ。  たとえば、斎田家や山邑家や西条家の家族の死、溝呂木眞也のダークメフィストとの融合、新宿大災害やビーストによる数多の犠牲。その全てが消えた世界──ビーストのいない世界としての再構築。  それを実現できるか、と問うと“彼ら”は肯定した。後から、鹿目まどかのいた世界では、実際にそれが行われたとも言われた。  流石に、姫矢准に降りかかったセラという少女の死のように、ビーストと直接関係のないところは干渉できないかもしれないが、それはまた個々に頼めば良い話。……こうした細かな条件も付け加えなければ、孤門一輝は幼少期に溺死してしまう運命にある。 「……救われる世界もあれば、救われない世界もある、か……」  ここに来ているダークザギがいた世界線は救済に近づいていることだろう。巨悪ダークザギが世界から消えれば、残るはビーストの残党やダークメフィスト程度。それにより、世界を大きな絶望から遠ざけることができる。  ダグバ、ドウコク、バラゴなどが来たことで救われた世界線や命も確かに存在すると思う。彼らが奪った命、壊した街の数は計り知れない。  ……まあ、一方で、それに仇なす存在が消えた代償も大きいだろうが。 「僕はただ、救われる側の世界に住みたいだけなのかもしれない。たとえ、その下に幾つもの救われない世界が転がっているとしても」  こうして、何人もの異世界の戦士たちや、彼らの住まう世界を犠牲にして、自分の世界を救う。  後ろめたい気持ちも多少はあるが、それはどんな社会でも同じことだった。  人は皆、誰かの不幸のもとに幸福を得ているのだ。 (……それでも、なるべくここでも犠牲者は出したくない。この鳥かごから脱出できない運命なら、その運命を打ち砕いてほしいんだ。──憐のように)  イラストレーターの手に握られたタカラガイ。  憐があの折から脱出した証を、イラストレーターはまた見つめていた。  わざわざ異世界からもう一つの全く同じタカラガイの貝殻を取り寄せてまで、参加者に支給したのは、彼のそんな願いゆえだった。 【全体備考】 ※主催側には、【吉良沢優@ウルトラマンネクサス】がいます。彼のいる部屋には、来訪者がいるほか、レーテなども主催側施設に再現されている模様です。また、戦力を持たない彼にはガイアドライバーとメモリが支給されています。 ※吉良沢の参戦時期は憐がデュナミストになったあたりですが、主催組織の介入によって世界に変動が起きており、ネクサス世界のその後も主催側のデータで知っているため、終盤の出来事も知っています。 ※予知能力は一部健在ですが、多大な情報が与えられたことや、複数世界のものが入り混じった空間であるため、やや弱まっています。 【第一回ボーナスのヒントの答え】 【ひとつめの答え】○+×(組み合わせると警察署の地図記号)、青+黄色(組み合わせると緑=碧屋)。このふたつの施設にボーナスがあることを示しています。 【ふたつめの答え】放送されたそれぞれの名前は、“五”代雄介、孤門“一”輝、“一”条薫、“一文字”隼人、結城丈“二”。そのため、式は5-1-1+1-2=2で、二人殺害することで時空魔法陣が使えることを示しています。 【みっつめの答え】これはなぞなぞでも何でもありません。そのままの意味で、既に二人殺害した参加者が五人(ガドル、溝呂木、モロトフ、克己、ダグバ)おり、モロトフとダグバが警察署の近くにいることを示しています。 【第二回ボーナスについて】 どこかの施設に配置されたソルテッカマン1号機(または改)、警察署に配置されたソルテッカマン2号機の制限が17時以降解除され、説明書が付近に転送されます。 逆を言えば、それまでソルテッカマンの使用は不可能です。 こちらには、一定の殺害数などが必要になることはありませんが、体格が合うことや活動に見合う体力を持っていることは最低条件です(特に、体格に関しては人外のドウコク、小柄なヴィヴィオなどは絶対に不可能と思われます)。 *時系列順で読む Back:[[勝利のテッカマン(後編)]]Next:[[第二回放送(裏)]] *投下順で読む Back:[[勝利のテッカマン(後編)]]Next:[[分身出来ると思った?残念枯れちゃいました!]] |Back:[[第一回放送]]|[[ニードル]]|Next:[[]]| |Back:[[第一回放送]]|[[加頭順]]|Next:[[]]| ||[[吉良沢優]]|Next:[[]]| ----
*第二回放送 ◆gry038wOvE  一日目、正午。  直前まで戦いを続ける者、放送に備える者、何かの判断を強いられている者……生きている限りは誰も何かの行動を取っている。  長い一日の中で最も暖かい日の光が注いでいるが、屋外にいる者もいれば屋内にいる者もいる。だから、それを誰もが体表で感じているわけではなかったし、それを心地よく浴びる余裕のある者なんていなかった。  ……それにしても。  星も見えるし、空も見える。日の光も浴びれる。  それが、不思議だ。  作った当人たちでさえ、この島が疑似的に様々な施設を再現した模造の島だとは信じがたいと思っているほど、精巧な異世界。  あまりにも、違和感や異常が無さ過ぎて、逆に気が狂ってしまいそうだ。  昨夜、誰か大切な人を喪い、六時間前の放送を聞いた者もそろそろ悲しみを収めただろうか。  しかし、その悲しみを上塗りする悲劇が、また報ぜられる。  そう、第二回放送──。  その時間が今、ちょうど来たのだ。  十二時きっかり、一秒の狂いもなし。  今度は小汚い男のホログラフが映った。逆立った金髪も特徴的だが、眼鏡に白衣という研究者風の風体の方が目立つ。しかし、同じ白服でも加頭が放った、気品のようなものがない。やはり着崩し方、汚し方に問題があるのだろうか。  その代わりと言っては何だが、加頭ほど人間味がないようには見えない。加頭が感情の無い置物ならば、彼はどこか内面に狂気や歪んだ歓喜を抱えているように見えた。それも決して、良い感情とは言えないが。  彼の名はニードル。  かつてバダンの幹部だった、「ヤマアラシロイド」の別名を持つ男だった。 「初めまして、参加者の皆さん。私の名前はニードル。  加頭順、サラマンダー男爵と同じく、このゲームの企画に協力している者です。……彼らに心当たりはなくとも、私に心当たりがある方は何名かいるでしょう。  放送担当者が変わってわかりにくい……という方もいるでしょうが、私の名前など覚える必要はありません。私は企画・主催の協力者の中ではあくまで末端だと考えてください。  我々が持つ兵力は絶大なのです。あなたたちが身を寄せ合ったところで、敵わない存在です。ですから、我々に刃向おうなどと愚かなことは考えないようお願いします」  こうして、毎回のように放送者を変えるのは、主催者側の兵力を示すためだろう。  加頭順……ユートピア・ドーパントの場合なら、左翔太郎やフィリップ。  サラマンダー男爵の場合なら、花咲つぼみや明堂院いつき。  ニードルの場合なら、一文字隼人や村雨良。  誰かしら、彼らの恐ろしさを知る者がここに来ており、その者たちは必ず仲間の参加者に情報を伝える。  結果的に、彼らは主催陣営の強大さに気づいていくわけだ。  少し長い前置きになったが、すぐにニードルの脳内にある死亡者リストが読み上げられた。 「では、サラマンダー男爵の時と同じく、まずは第一回放送からここまでの死亡者を読み上げましょう。  相羽シンヤ、井坂深紅郎、五代雄介、早乙女乱馬、志葉丈瑠、筋殻アクマロ、スバル・ナカジマ、園咲霧彦、月影ゆり、ティアナ・ランスター、パンスト太郎、東せつな、姫矢准、美樹さやか、山吹祈里……以上15名。  ここまで、全参加者のちょうど半分にあたる33名が死亡ということになりますね。素晴らしいペースです。これを維持して頂きましょう」  おそらく、既に全ての参加者が誰かしら知り合いを喪っている頃だろう。  もしかすれば、行き会う参加者がほとんど死亡している人間もいるかもしれない。  参加者の半分というのは、それだけ重みのある数字だった。 「次に禁止エリアを発表します。メモの準備はいいですか? 一度しか言わないのでよく聞いてください。  13時に【H-9エリア】、15時に【F-8エリア】、17時に【G-3エリア】。以上の3つが今回の禁止エリアとなります。そのエリアの近くにいる参加者は、くれぐれも首輪の爆発で死んでしまわないよう注意してください。」  それから、またしばらく間を置いている。  一応、参加者が禁止エリアを塗りつぶすのを待っている……ということになっているのだが、おそらくどの参加者も急いで塗るだろうから、この時間はそもそも無駄である気がしてならなかった。  三つの禁止エリアのうち二つが街エリアなのは、そこに参加者が寄ったからだろう。  この放送が開始した時点で、そのエリアにいる参加者もいるが、一時間で逃げ切るだろうか? 「……それから、前回のボーナスですが、まだ使用した参加者はいないようですね。まだ一時間しか経っていないようですが…まあ、見つけてもらえないのではこちらとしても甲斐がないので、みっつのヒントを差し上げましょう。  ひとつ。ボーナスは「○+×」、または、「青+黄色」の式が示す施設に存在すること。  ふたつ。雄介-孤門-薫+隼人-結城。この数の参加者を手にかけた人間のみが使用できること。  みっつ。現在これが使用できる人間は五人。そのうち二人が、どちらかの施設の近くにおり、その参加者はいずれも“変身後”の姿の敵を倒した実績を持つこと。  心当たりのある参加者は、その施設に立ち寄ってみては如何ですか?」  まるで、なぞなぞのようなニードルの言葉。  主催側がいかに、このバトルロワイアルをゲーム感覚で行っているかがわかるルールだった。  同時に、なぞなぞが解けたならば、自分の近くにイベント施設があることや、自分の身に危険が迫っていることも把握できる。 「そして、今回のボーナスは、特殊アイテムの配置場所の指名です。  こちらはヒントなしで簡単に説明しましょう。……もう見つけた参加者もいるのですが、ある二つの施設に緑と青の強力な武器を用意しておきました。  ただ、こちらで制限をかけて、使用不能となっていますから、見つけても無駄だったでしょう。今回は、17時からその制限解放と、説明書の配置を行います。  尚、説明書の配置時には我々が自ら出向くわけではありませんから、その瞬間を狙っての奇襲などを考えても無駄ですよ?  ……それはいいとして、戦力のない方、より強い力を欲する方はボーナスの利用も考えてはどうでしょうか。今回の武器は、体格が合い、一定の体力があれば誰でも使用可能になっています。  それでは、今回の放送は終了です。……みなさん、ごきげんよう」  ニードルの姿が消え、第二回放送が終了する。  参加者たちは、この放送を聞いてどう行動するのだろうか。  放送により一度、休憩時間のように時が止まった世界が、再び不思議な慌ただしさを取り戻して動き出す。  変身者たちのゲームはまだまだ続く……。 ★ ★ ★ ★ ★  放送の終了とともに、ニードルは主催陣の一人に声をかけられた。  案の定、加頭順だ。 「ご苦労様です、ニードルさん」 「加頭さん。どうでしたか? 私の放送は」 「……サラマンダー男爵以上に楽しげな放送だ、とだけ言っておきましょう」  楽しげ、という言葉を彼の口から聞いて、ニードルは思わず苦笑する。喜怒哀楽の表情とは一切無縁で、彼が楽しいと感じるかさえ怪しいと思える。  しかし、その言葉の裏にある「嫌味」の意味もはっきりと理解していた。  ボーナスについてベラベラと話してしまうのは、あくまで「提供者」である主催側としては、中立性を欠いていて不平等だ。  一応、台本はあるのだが、ボーナスのヒントでなぞなぞを使ってくるなどとは、思っていなかったのだろう。 「ククク……いや、失敬。“立案者”としてはボーナスが使われないのは不服でしたからね。“イラストレーター”の台本にヒントの提示を付け加えてもらったんですよ」  そう、このゲームに存在する「ボーナス」という制度を作ったのはニードルだった。  時空魔法陣も彼の世界の技術で、彼の協力なしには実現しない制度だ。  しかし、それをあの抽象的な放送内容のせいで見つけてもらえないのは、立案者としてはつまらないことこの上ない。  加頭やサラマンダーが機械的に作業を行っているのに対し、ニードルは冷徹ながらも少しはゲームを面白くする工夫を必要としていたのである。 「……あのくらいは許容範囲でしょう?」 「ええ、許容範囲です。しかし、中立性があるとは言えません。特定の参加者に語りかけるのはいけません」 「特定の参加者に語りかける……? 私に心当たりがある方、というくだりでしょうか。それとも、ヒントで示した『警察署』のくだりでしょうか」 「後者です」  後半のボーナスのくだりでは、警察署にいる孤門やヴィヴィオを動かそうというニードルの思惑が見えていた。  主催側があのように、暗に特定の参加者に対して道を示すような行動は本来あってはならない。 「……加頭さんは、あれを私のアドリブだと思ってるんですか? 私のアドリブは、ヒントを、なぞなぞ風味に変えたことだけですよ。ククク……」  そう言い残し、答えも聞かないままにニードルは去っていく。  加頭がニードルの方を見ると、彼は左手をポケットに入れ、こちらに背を向けたままもう片方の手を振っていた。  ニードルが闇に消えていき、加頭はそこに一人取り残された。 ★ ★ ★ ★ ★ 「調子はどうですか、イラストレーター」  加頭順は、その一室で作業を行う「イラストレーター」と呼ばれる少年・吉良沢優にそう話しかけた。  財団Xの同業者を彷彿とさせる白い服と凛々しい顔だったが、決定的な違いはやはり、彼の容姿が極めて幼いことである。彼は、人間の中でもトップクラスの天才「プロメテの子」であり、その有用性は大人以上であると言えるが、どうも加頭は彼の実力を認められなかった。  ここに来たのも、ニードルの含みある言葉を疑い、放送の原稿を書いた彼を訪問したからだった。 「……君たち変身能力者と同じ場所で働け、って言われて、本調子が出ると思う?」 「……」  イラストレーターの嫌味に、加頭は言い返せなかった。  一応、メモリやガイアドライバーを渡してはいるが、彼にそれを使う気持ちはないようだし、精神面でも少し弱いかもしれない。まあ、一般人よりは少しマシという程度だろう。 「更に付け加えるなら、僕は君たちと違って、この殺し合いには否定的な立場だ。ただ単に反抗を企てても勝てないと知っているから絶対に反抗しない……それに、人が死んでも淡々としていられる。それだけの理由でこれをやってるに過ぎない」 「人が死んでも淡々としていられる……そうでしょうか? どうやら、先ほどの放送では、孤門一輝を動かすような内容を書いたようですが」  イラストレーターの表情が固まるのを、加頭は見逃さなかった。  どうやら、図星らしい。  イラストレーターは元々、孤門一輝や西条凪が属していた組織の一員である。  それを、こちらの提示した特殊な条件を飲ませる形で引き入れたに過ぎない。 「……ヒントの提示は、ニードルさんが要求したことです。僕は、それに従ったに過ぎない。口答えができる立場ではないから、ね」  イラストレーターがそう答える。  とにかく、ニードルに責任の一部をなすりつけることで、こちらに牙が剥くのを回避しようとしたのである。  そう、ヒントの提示はニードルがイラストレーターに頼んだ。イラストレーターはその原稿を書き、ニードルに読ませる。そして、ニードルがアドリブでヒントをなぞなぞ形式にしたのだ。  もともとのヒントは、「赤い仮面ライダーの職場と白い魔導師の故郷」という露骨なものが多かったのだ。それらの人物の情報を持つ者にはそのまま答えとなってしまう。  それを、ニードルが誰でも解けるチャンスがありながら、少し頭を使わなければわからないなぞなぞにしたわけである。  そうした経緯があって、責任問題となったら誰が中心になるのかはわかりにくくなっていたのだろう。 「……まあいいでしょう。我々はあなたの条件の一部を既に叶えました。ですから、途中で投げ出したり、我々の意向にそぐわない行動を取ったりするのは契約違反です。……以後、厳重に注意をしておいてください」  加頭は、そう言い残してその場を去って行った。  どうやら、そこまで大きな問題としては見られておらず、加頭個人が気にした程度にすぎないらしい。そのため、引き下がるのも早かった。  部屋で一人になったイラストレーターは、安心した気持ちになる。  この部屋の形はTLTの司令室と全く同じ間取りになっていて、彼の心を落ち着かせていた。来訪者たちもここにいるし、レーテの再現もあるので、実際、ここが異世界であるとは信じがたかいものだった。  更には、イラストレーターが見たい参加者の音声が再生できるようになっており、彼としては最も快適な場所だ。  彼の役割は、“来訪者”との会話と、“コンタクティ”としての能力を利用した大まかな予知、そしてその片手間に放送原稿の作成することである。それも、実際イラストレーターの脳内で起こる予知が全てそのまま、他の主催者たちに知れ渡っているため、実質仕事は台本の作成だけだ。  これを殺し合いの終了──おそらく三日もかからないだろう──までやっているだけで、イラストレーターが提示した条件は全て果たされるのだから、美味しい話だと言える。  しかし、それでも彼の心は僅かに曇っていた。 「……憐」  イラストレーターの手には、タカラガイの貝殻が握られている。  それは、一文字隼人に支給されていたものと全く同じ貝殻だった。本来、まったく同じ形の貝殻が二つも存在していることなどありえない。  しかし、異世界の存在や別の時間軸に干渉する方法を認めた今、それは当然ありえることだった。  イラストレーターが殺し合いの協力のために提示した条件は幾つかあった。  まずは、イラストレーターと同じ「プロメテの子」の仲間である千樹憐の救済である。  遺伝子に障害のある彼は、17歳を境に全身の細胞がアポトーシスを起こし死亡する……という、「プロメテの子」の失敗作であった。  天才となるために生まれてきた特殊な遺伝子の集団の中で、たった一人だけが持つ、悲しい運命である。  否認、怒り、取引、抑うつ、受容。  死への五つの段階のうち、憐は「受容」の段階に入っていた。元々、親も無く生まれ、閉じ込められて生き、常人とは話がかみ合わないであろう彼だったから、その段階を踏んでいくのはなかなか早かったはずだ。  あとは、死ぬだけだと思っていたに違いない。憐はその運命に、どこか達観し始めていた。  しかし、見ている方としては、それを見ているのは苦痛だった。  「プロメテの子」の仲間たちはその特効薬「ラファエル」の完成に急いでいた。  医学、薬学、遺伝子学のあらゆる分野から、あらゆる国籍の人たちが、世界にたった一人しかかかっていない病のために奮闘していたのである。研究することは他に幾つもあるだろうというのに、たった一人の親友のために何人もの天才が時間を費やす。  イラストレーターは、それを見かねて、悪魔と契約を結ぶ第一条件として、彼の救済を要求した。  そして、ラファエルはすぐに完成した。  イラストレーターは、その時、かなり久々に驚愕したのである。  地位、名誉、金……特にそんな願い事もないイラストレーターは、試しとして絶対に不可能だと思う条件を提示したはずだった。  彼が吉良沢優として願っている、おそらくは一番の願い。そして、彼自身も半ば諦観していた願い。  だから、彼はそれを真っ先に口にした。──「ダメでもともと」というようなネガティブな考えのもとに。  更に驚くべきは、彼が要求した細かな条件までやってくれたことである。  仲間たちの努力を無駄にしないためにと……あくまで、「プロメテの子」たちの手で完成させることを要求すると、それを実現させた。どうしてそんなことができたのかと聞くと、彼らの脳内に直接、ラファエル完成のためのヒントを閃かせるような合図を送ったという。  しかし、何にせよ、その結果、憐がデュナミストになった直後に、ラファエルが完成し、憐の病は完治した。  そして、加頭順の口からは、アンノウンハンドの正体なども詳細に教えられた。  加頭順を初めとする“彼ら”の介入はイラストレーターの住む世界線に多大な影響を与え、デュナミストの変動や早期段階でのダークザギの正体発覚につながることになった。  予期されていた出来事は、“彼ら”の介入がなかった場合の世界線でのことであるため、レーテやダークザギの予知能力も実質無意味になった。  更に言うなら、ここに来ているダークザギやダークメフィストに関しては、自分が予知能力を有することさえ忘れているらしい。世界線の影響なのか、主催側で制限を設けたのかはわからないが、それにより彼らの動きは変わってきている。  その後正式に決めたもう一つの契約内容は、イラストレーターの住む世界そのものの救済だった。  イラストレーターの来ていた世界で起こるはずの、あらゆる出来事の可能性を排除することで、自分の住む世界の救済を行うのだ。  たとえば、斎田家や山邑家や西条家の家族の死、溝呂木眞也のダークメフィストとの融合、新宿大災害やビーストによる数多の犠牲。その全てが消えた世界──ビーストのいない世界としての再構築。  それを実現できるか、と問うと“彼ら”は肯定した。後から、鹿目まどかのいた世界では、実際にそれが行われたとも言われた。  流石に、姫矢准に降りかかったセラという少女の死のように、ビーストと直接関係のないところは干渉できないかもしれないが、それはまた個々に頼めば良い話。……こうした細かな条件も付け加えなければ、孤門一輝は幼少期に溺死してしまう運命にある。 「……救われる世界もあれば、救われない世界もある、か……」  ここに来ているダークザギがいた世界線は救済に近づいていることだろう。巨悪ダークザギが世界から消えれば、残るはビーストの残党やダークメフィスト程度。それにより、世界を大きな絶望から遠ざけることができる。  ダグバ、ドウコク、バラゴなどが来たことで救われた世界線や命も確かに存在すると思う。彼らが奪った命、壊した街の数は計り知れない。  ……まあ、一方で、それに仇なす存在が消えた代償も大きいだろうが。 「僕はただ、救われる側の世界に住みたいだけなのかもしれない。たとえ、その下に幾つもの救われない世界が転がっているとしても」  こうして、何人もの異世界の戦士たちや、彼らの住まう世界を犠牲にして、自分の世界を救う。  後ろめたい気持ちも多少はあるが、それはどんな社会でも同じことだった。  人は皆、誰かの不幸のもとに幸福を得ているのだ。 (……それでも、なるべくここでも犠牲者は出したくない。この鳥かごから脱出できない運命なら、その運命を打ち砕いてほしいんだ。──憐のように)  イラストレーターの手に握られたタカラガイ。  憐があの折から脱出した証を、イラストレーターはまた見つめていた。  わざわざ異世界からもう一つの全く同じタカラガイの貝殻を取り寄せてまで、参加者に支給したのは、彼のそんな願いゆえだった。 【全体備考】 ※主催側には、【吉良沢優@ウルトラマンネクサス】がいます。彼のいる部屋には、来訪者がいるほか、レーテなども主催側施設に再現されている模様です。また、戦力を持たない彼にはガイアドライバーとメモリが支給されています。 ※吉良沢の参戦時期は憐がデュナミストになったあたりですが、主催組織の介入によって世界に変動が起きており、ネクサス世界のその後も主催側のデータで知っているため、終盤の出来事も知っています。 ※予知能力は一部健在ですが、多大な情報が与えられたことや、複数世界のものが入り混じった空間であるため、やや弱まっています。 【第一回ボーナスのヒントの答え】 【ひとつめの答え】○+×(組み合わせると警察署の地図記号)、青+黄色(組み合わせると緑=碧屋)。このふたつの施設にボーナスがあることを示しています。 【ふたつめの答え】放送されたそれぞれの名前は、“五”代雄介、孤門“一”輝、“一”条薫、“一文字”隼人、結城丈“二”。そのため、式は5-1-1+1-2=2で、二人殺害することで時空魔法陣が使えることを示しています。 【みっつめの答え】これはなぞなぞでも何でもありません。そのままの意味で、既に二人殺害した参加者が五人(ガドル、溝呂木、モロトフ、克己、ダグバ)おり、モロトフとダグバが警察署の近くにいることを示しています。 【第二回ボーナスについて】 どこかの施設に配置されたソルテッカマン1号機(または改)、警察署に配置されたソルテッカマン2号機の制限が17時以降解除され、説明書が付近に転送されます。 逆を言えば、それまでソルテッカマンの使用は不可能です。 こちらには、一定の殺害数などが必要になることはありませんが、体格が合うことや活動に見合う体力を持っていることは最低条件です(特に、体格に関しては人外のドウコク、小柄なヴィヴィオなどは絶対に不可能と思われます)。 *時系列順で読む Back:[[勝利のテッカマン(後編)]]Next:[[第二回放送(裏)]] *投下順で読む Back:[[勝利のテッカマン(後編)]]Next:[[分身出来ると思った?残念枯れちゃいました!]] |Back:[[第一回放送]]|[[ニードル]]|Next:[[第三回放送X]]| |Back:[[第一回放送]]|[[加頭順]]|Next:[[第三回放送X]]| ||[[吉良沢優]]|Next:[[第三回放送X]]| ----

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