「外道合戦」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

外道合戦」(2014/07/21 (月) 11:50:24) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*外道合戦 ◆gry038wOvE  深い深い森の奥深く。そこには、人が立ち入れない領域が存在する。  外道のみが立ち入る事のできる真っ赤な池──。この池には、世に惑う人間の嘆きの色が浮き上がっていた。まるで血染めのようでもある。アヤカシたちは、スキマを通してこの場所に現れる事ができる。  そんな『三途の池』にて、外道衆の総大将、血祭ドウコクは体を休めていた。 「……首輪を外した奴がいる、だと?」  血祭ドウコクが放送を聞いて、真っ先に反応したのはその点だった。  参加者を縛っているこの煩わしい首輪を解除し、殺し合いを有利に進める人間がいるらしいという話が放送担当者の口から教えられたのである。  ドウコクの耳は確かにそれを聞いた。 「随分早えじゃねえか」  一日の終了までに首輪の解析を終え、解除している者がいるらしい。ドウコクには複雑な機械の話はさっぱりわからないが、見ず知らずの複雑な機械を僅か一日で解除するのは、生半可な学者でも不可能であろう。そういう人間こそ手駒にして甲斐があるのは言うまでもない。ドウコクとしては、この邪魔な首輪を一刻も早く解除したいので、そんな人間を手元に置きたい気持ちがあった。  ともあれ、首輪の解除というのが現実味を帯びてきた事で、またドウコクの目的は一歩近づいた。  こういう時ばかりは、人間の意地が役に立つ。彼らは外道衆に対抗する為にモヂカラなる者を開発し、シンケンジャーとなって戦おうとする連中だ──あの技術は厄介だったが、もしあんな技術の持ち主が味方になれば心強い事この上ない。西洋的技術の介入がなく、近世で止まってしまった外道衆では到底敵わない文明への知識を彼らは有していたのだ。  ……その参加者がどこにいるのか全くわからないのが唯一の難点だ。相も変わらず志葉屋敷に向かうのが目的だが、今のところ参加者に出会う気配は全くない。  幸いにも禁止エリア制度がなくなったので、既存の禁止エリアを除いて、道中、余計な爆発が起きる事もないが。 「……」  不意に、ドウコクが振り向いた。  ──気配。  そこに、外道の気配を感じたのだ。 「誰だ……?」  アクマロではない。その人物が姿を現す……。ドウコクは括目する。  それが何者なのかわかった瞬間──彼でさえも驚愕してしまうほどだった。 「何? てめぇは……」  そこにあった意外な顔を見て、先ほどのマンプクの説明を思い出した。  第四回放送、即ち一日目終了。  ここで死者の関わる出来事が起こるように設定されているわけだ。お邪魔虫となる存在が姿を現し、残り参加者を減らすようになっている。  かつての死者たちが、生者を地獄の道連れに引き込もうとするのである。 「……だが、一体なぜテメェが……」  外道衆の総大将・血祭ドウコクでさえ開いた口が塞がらなかった。  だが、次の瞬間にはその口はニヤリと笑っていた。 △ 「はて。これはどういう事でしょう」  筋殻アクマロは、周囲を見回していた。見下ろすのは小川。周囲は森。  はて、自分はいつ死んだのだろう。仮面ライダーゼクロスが自分に向かってライダーキックなる技を発動し──そうか、それで死んだのだ。  しかし、それから随分と時間が経ったような気がする。周囲の景色は以前よりも少し暗くなった。闇が深くなったというのだろうか。一日近く放置されていたようだった。  見下ろしても、先ほど激闘があったはずの場所は白けている。  いや、この周囲一帯そのものが随分と白けているようだった。  自分が二の目になっており、目的が果たせない事が明らかになった今現在であっても、彼の心が落ち着いているように見えるのは、この不可解な状況を飲み込めないからである。  本来なら自暴自棄が始まってもおかしくないが、時間が巻き戻ったようなタイミングで二の目となっている事が不思議であった。 「……もう誰もおりませんか?」  アクマロは、誰に言うでもなく、そう呟いた。 「これでは奴らを地獄の道連れにはできない……。全く、何という無念……。殺し合いは終わってしまったのでしょうか」  アクマロは、歩き出す。現状で行くあてはなかったが、確認したい事がいくらでもあった。  殺し合いが終わってから二の目になったというのでは、巨大になる意味もない。それが原因でアクマロの二の目が発動したとしたら──?  一日、二日の単位ではなく、アクマロは数日単位で時間が進んだ事を考えた。ここに現れない事を考えれば、ドウコクが勝利したのだろうか。それはそれで無理もない気がしたが。  まずは、振り向いて、人が集まっていてもおかしくない街エリアに向かうのを考えた。あそこならば、情報を得られるだろう。その刹那── 「アクマロォォォォォォォッ!!!」  覚えのある怒号が、アクマロに、少し遠く、赤い池──三途の池が広がる場所を注視させた。そこに、誰かがいる。  声と照らし合わせ、豆粒のような赤が何者なのかの答えを探り当てた。  血祭ドウコクである。彼も随分と大きな声だ……。  まあいい。この殺し合いの中で全員死んだのかと思っていたくらいだが、そうではないなら話は別だ。 「ふっふっふっ……」  折角だ。殺し合いが終わっていないのなら、残っている参加者は全員殺す。  自分の目的は達成できないが、参加者がいるのならば殺しつくしてしまおうとアクマロは考えた。たとえドウコクであろうとも。  いや、むしろ彼のような存在こそ共に死んでもらうにはぴったりではないだろうか。  アクマロは三途の池に向かって歩を進めた。 △ ──△のあと、おどろきのてんかい!── △  血祭ドウコクのもとに、筋殻アクマロは近寄って来た。  彼が一歩歩くたびに、地面が揺れ、巨大な音が鳴る。それこそ、また随分と目立つ様相であった。近くにいる人間が目撃できないわけがない。  森の木々は、すべてアクマロの膝下にあるように見える。それが二の目であった。 「アクマロォッ! 随分久々じゃねえか」  そうドウコクが叫んだ時には、もうアクマロはドウコクの上を陰で覆っていた。微かな月明かりさえも途絶え、完全な闇が生まれる。アクマロはドウコクを見下ろしていた。  不愉快ではあったが、これから殺すに至るまでの辛抱である。 「これはこれは……。久方ぶりでございまする……」 「二の目になるとは、また随分と強え奴にやられたもんだなぁっ! てめえもよぉ!」  普通は、一の目で戦う。二の目というのは、もう後がない証であった。  最後に敵を道連れにするための姿といってもいい。この命を喪った外道は、天国でも地獄でもないどこかへ行ってしまう。 「ええ。仮面ライダーゼクロスなる者に。……しかし、どういう事でしょう。死んでから、これまた随分と時間が経っているように思えてならな……」  アクマロがドウコクに事情を訊こうとした刹那──。  ドウコクは昇竜抜山刀を凪いだ。それは、おそらくアクマロに回避手段がないほどに早い一撃。鎌鼬となった剣技はアクマロの腹部に激突する。  それはかなり広範囲に渡る一撃であった。巨大なアクマロの銅を半周するほどに膨れ上がった鎌鼬である。アクマロの痛覚を刺激するには充分であった。 「……くっ。いきなり攻撃とはご挨拶ですな!」 「テメェが過去に俺にした事を忘れたわけじゃねえだろうな?」  ……裏切り。ドウコクは忘れていない。  アクマロの方も、いくつか心当たりがあったくらいなので、恍ける気もなかった。  ともかく、彼はアクマロを倒したのが何者なのかという情報が得られれば、それだけで良いらしかった。それでそのまま用済みになる。 「そちらがその気ならば……悪く思わないでもらいましょうか」  仕方なしに、アクマロは攻撃体勢を取る。事情を訊こうと思ったが、それができる相手ではなさそうだ。  豆粒ほどの相手ならば、さほど労力は使わないように思うが、問題なのは相手が他ならぬ血祭ドウコクであるという事だ。彼を相手に巨大化では足りない。それだけのパワーを彼は有している。  しかし、それでも二の目であるという事は優位だ。敵の攻撃は比較的狭い範囲で受ける事になるし、体重が重い分だけ、こちらの攻撃も重くなる。ボクシングに階級差がある理由を考えれば、質量の優位は明らかであった。 「さらば、血祭ドウコク!」  アクマロは、地面にいるドウコクに向かって足を踏み込もうとする。ドウコクを一瞬で潰してやろうと、アクマロは歩んだ。そんな攻撃で死ぬとは思っていないが、弄ぶように攻撃すればいずれすぐに死ぬだろう事は間違いない。 「フンッ。……じゃあな、アクマロ」  一方のドウコクは冷静に呟いた。口調や態度に余裕が含まれている。それを怪訝に思ったが、今更止まる必要はない。  このまま踏み潰してやれ。この余裕はブラフだ。 「…………おい、行け」  しかし、その直後、ドウコクが何者かに指示をすると、アクマロの背後を突如として大砲のような一撃が打ちのめした。何発も、何発も……連射される。アクマロは突然の衝撃に前にふらついた。ドウコクのもとを通り過ぎて、いくつかの木をなぎ倒しながら別の場所に足が踏み込まれた。  砲撃──まだアクマロとしては了承できる程度の攻撃だ。ダメージとしては、さほど大きくはない。  だが──。 「何故、あんたさんがここに……」  アクマロが振り向いて、その姿を確認した時であった。アクマロの動きが止まる。  何故、彼がそうしてそこにいるのか、アクマロの理解も追いつかなかった。  そこにいたのは……  黒い羽織に身を包み、真っ赤なマスクに「火」のモヂカラを宿した戦士。  それは、かつて敵だったはずが、今は意識もない外道そのものになっている。  シンケンレッド、その人ではないか。 「烈火大斬刀」  シンケンレッドは呟いた。  片手にモウギュウバズーカ、片手に烈火大斬刀を持ち、飛び上がってアクマロの頭部にそれを叩き付ける。大剣・烈火大斬刀がアクマロの頭部から、顔の中心に真っ直ぐな線を引いて下っていく。  強力な摩擦熱に、火のモヂカラが相乗、──アクマロの顔の中を焼く。 「うっ……うわあああああああああっっ!!」  突如として現れた刺客の存在が、あまりにも予想外だったために、アクマロは混乱する。  スーパーシンケンレッドが黒い羽織を着て、モウギュウバズーカや烈火大斬刀を片手で操っている。何故、彼がこんな所にいる。  間違いなく、シンケンレッドこと志葉丈瑠はアクマロが殺したはず──。 「ま、まさか……あんたさんが外道に……っ!」  言うなれば、それはシンケンレッドではなく、外道シンケンレッドであった。  ドウコクもアクマロも彼が誕生した事情は一切知らなかったが、彼は確かにそこにいた。 「……その通りだ。コイツも、どういうわけか外道に堕ちたってわけだ。魂さえ失ってな」  元来、人が外道に堕ち、三途の川に向かうには、それに見合った行動が必要となる。  その結果として外道に堕ちた者を、人ははぐれ外道と呼ぶのである。  例を挙げるとすれば、腑破十臓や薄皮太夫。  十臓は、人斬りを行い続けた結果、外道に堕ちた。  太夫は、自分を裏切った情人を殺した結果、外道に堕ちた。  ……だが、志葉丈瑠の場合は、更に特殊であった。  この殺し合いの会場にて、殺し合いに乗り、同行者であるパンスト太郎に躊躇ない刃を向け、裏切りを達成したのである。それは己の怒りに任せた『外道』であった。己の剣技のために殺し合いに乗った時点ではまだ乾いていたが、仲間を殺した時点で満ち足りたのだ。  本来の世界ならば、この時点で彼は外道に堕ちても仕方のない悪行を行ったとされるだろう。  しかしながら、このマップでは外道に堕ちる事はなかった。──志葉丈瑠自身が外道に堕ちる事なく、彼は人を守って力尽きる所まで戻ってしまったのである。  その結果、『外道』に堕ちているはずの彼も外道になる事なく逝った。しかし、一日目の終了とともに、志葉丈瑠とは別個体の『外道』の部分のみが『外道シンケンレッド』へと転じて生まれたのである。『本来』の形を形作ろうとした運命が導き出した結果であった。  この外道シンケンレッドは、丈瑠の情念から再現した、『外道』の部分のみの集合体なのだ。  ただ、ドウコクはそこまで深くは知らないだろう。  アクマロは、思わず一歩退く。 「……そして、コイツは俺の新しい家臣だ。良いだろう?」 「……」  ドウコクの隣に移動し、膝をついて座る外道シンケンレッドの姿は、まさしく『家臣』のそれだった。  彼は外道シンケンレッドを従い、かなりご満悦のようであった。  どうしてそんな事態になっているのか、アクマロは皆目見当もつかない。 「家臣だとぉ……?」 「……俺たちの敵だったシンケンジャーが、俺たちの家臣になっている。面白え事が起こったもんだろ。……そうだな、まずは……テメェを倒すのに使ってやる」  先ほど、『外道』となった事で三途の池に現れた彼を見つけたドウコクは、このシンケンレッドそっくりの意思なき生命体を利用する事を企てた。『縛る力』も有効であり、あろう事か、彼は従順な家臣となったのである。  シンケンジャーを屈服させるという昔年の夢が、少し叶ったようであり、ドウコクの心がほんの少し満たされていた。  そんなドウコクを見て、アクマロでさえも思わず叫ばずにはいられなかった。 「恐れ入りました……ッ! 外道……ッ!! まさに外道……ッ!! あんたさんは、やはり……本当の外道です……ッ!!」 「知ってるぜ」  アクマロに向かって、外道シンケンレッドの烈火大斬刀とドウコクの昇竜抜山刀の一撃が同時に放たれた。そこに情はない。殺戮兵器二体を相手にしているようだった。  シンケンジャーと外道の夢のコラボレーションとともに、アクマロの体が三つに割ける。更に、裂けた体に何度とないモウギュウバズーカが追い打ちをかけていた。不必要なオーバーキルはまさしく外道の所業。 「うがっ……!」  アクマロが、体が三つに裂けていく自分の体を見つめる。裂けている部分にモウギュウバズーカが撃ち込まれ、今までに味わった事のない至上の痛みがアクマロを支配した。  全身でそれらが爆発する。  アクマロは自分の体を見つめ、ふと何かに気づいた。 「あぁ……そうか……この痛み……まさしく地獄の苦しみ……、これがこの世の地獄、至上の喜び……もっと感じたい……っ! もっと斬って、もっと撃ってください! ……」  外道シンケンレッドが、それを言われて、撃つのをやめた。  命令など受ける必要もなかった。  そんな様子を見て、ドウコクがアクマロに言った。 「折角だ。平素外道の俺だが、今回は特別に攻撃をやめてやる。……昔の家臣がカワイソウだからな」  アクマロが、そんな彼の様子に不満そうな顔で、手を伸ばしているのを見ると、外道シンケンレッドと血祭ドウコクは、全てに興味をなくしたように、アクマロを背にしてしまった。  どうせアクマロはいずれ死ぬ。これ以上攻撃しなくても。それで終わりで良いのだ。 「く……ッ! 後生ですから撃ってください……! もっと我を甚振るのですっ! ……こんなに気持ち良い……地獄の苦しみを、死ぬ前にもっと感じたいのに……! それではこのままでは、苦しまずに死んでしまうでは……、……あ、……あぁっ……!」  アクマロの体から電撃が走り、そのまま、二人の外道の背後でアクマロは爆発した。  ……そして、彼はもう、地獄の苦しみを味わう事もなかった。 △  二人の外道は、再び志葉屋敷を目指して歩きだした。  外道シンケンレッドと血祭ドウコク──思わぬコンビが誕生するとともに、筋殻アクマロの二の目は撃破された。 「しかし、アクマロも飛んだ噛ませ犬だったな」  ここに来て、パートナーにするには随分と意外な相手であるが、ドウコクは愛着を込めて話しかけた。返事はない。  まあ、それはそれでいい。  命令だけ聞けばそれで充分である。 「……」  外道シンケンレッドは、それから何かを言う事はなかった。 ──変身ロワイアル……第百八十五幕。まずはこれまで── ──状態表のあと、みんなで一緒に歌を唄おう!── 【2日目 未明】 【F-3 三途の池】 【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、苛立ち、凄まじい殺意、胴体に刺し傷 [装備]:昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー、降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー [道具]:なし [思考] 基本:その時の気分で皆殺し 0:志葉の屋敷に向かう。 1:首輪を解除できる人間を捜す 2:加頭、マンプクを殺す 3:杏子や翔太郎なども後で殺す 4:嘆きの海(忘却の海レーテ)に対する疑問 [備考] ※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。 ※第三回放送後の制限解放によって、アクマロと自身の二の目の解放について聞きました。ただし、死ぬ気はないので特に気にしていません。 【外道シンケンレッド@天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕】 [状態]:健康 [装備]:烈火大斬刀@侍戦隊シンケンジャー、モウギュウバズーカ@侍戦隊シンケンジャー [道具]:なし [思考] 基本:外道衆の総大将である血祭ドウコクに従う。 [備考] ※外見は「ゴセイジャーVSシンケンジャー」に出てくる物とほぼ同じです。 ※これは丈瑠自身というわけではありませんが、はぐれ外道衆なので、二の目はありません。 &color(red){【筋殻アクマロ(二の目)@侍戦隊シンケンジャー 死亡】} *時系列順で読む Back:[[さようなら、ロンリー仮面ライダー(後編)]]Next:[[Tusk of Darkness]] *投下順で読む Back:[[さようなら、ロンリー仮面ライダー(後編)]]Next:[[Tusk of Darkness]] |Back:[[The Gears of Destiny - 全参加者最終状態表 -]]|[[血祭ドウコク]]|Next:[[]]| ||外道シンケンレッド|Next:[[]]| ||[[筋殻アクマロ]](二の目)|COLOR(RED):GAME OVER| ----
*外道合戦 ◆gry038wOvE  深い深い森の奥深く。そこには、人が立ち入れない領域が存在する。  外道のみが立ち入る事のできる真っ赤な池──。この池には、世に惑う人間の嘆きの色が浮き上がっていた。まるで血染めのようでもある。アヤカシたちは、スキマを通してこの場所に現れる事ができる。  そんな『三途の池』にて、外道衆の総大将、血祭ドウコクは体を休めていた。 「……首輪を外した奴がいる、だと?」  血祭ドウコクが放送を聞いて、真っ先に反応したのはその点だった。  参加者を縛っているこの煩わしい首輪を解除し、殺し合いを有利に進める人間がいるらしいという話が放送担当者の口から教えられたのである。  ドウコクの耳は確かにそれを聞いた。 「随分早えじゃねえか」  一日の終了までに首輪の解析を終え、解除している者がいるらしい。ドウコクには複雑な機械の話はさっぱりわからないが、見ず知らずの複雑な機械を僅か一日で解除するのは、生半可な学者でも不可能であろう。そういう人間こそ手駒にして甲斐があるのは言うまでもない。ドウコクとしては、この邪魔な首輪を一刻も早く解除したいので、そんな人間を手元に置きたい気持ちがあった。  ともあれ、首輪の解除というのが現実味を帯びてきた事で、またドウコクの目的は一歩近づいた。  こういう時ばかりは、人間の意地が役に立つ。彼らは外道衆に対抗する為にモヂカラなる者を開発し、シンケンジャーとなって戦おうとする連中だ──あの技術は厄介だったが、もしあんな技術の持ち主が味方になれば心強い事この上ない。西洋的技術の介入がなく、近世で止まってしまった外道衆では到底敵わない文明への知識を彼らは有していたのだ。  ……その参加者がどこにいるのか全くわからないのが唯一の難点だ。相も変わらず志葉屋敷に向かうのが目的だが、今のところ参加者に出会う気配は全くない。  幸いにも禁止エリア制度がなくなったので、既存の禁止エリアを除いて、道中、余計な爆発が起きる事もないが。 「……」  不意に、ドウコクが振り向いた。  ──気配。  そこに、外道の気配を感じたのだ。 「誰だ……?」  アクマロではない。その人物が姿を現す……。ドウコクは括目する。  それが何者なのかわかった瞬間──彼でさえも驚愕してしまうほどだった。 「何? てめぇは……」  そこにあった意外な顔を見て、先ほどのマンプクの説明を思い出した。  第四回放送、即ち一日目終了。  ここで死者の関わる出来事が起こるように設定されているわけだ。お邪魔虫となる存在が姿を現し、残り参加者を減らすようになっている。  かつての死者たちが、生者を地獄の道連れに引き込もうとするのである。 「……だが、一体なぜテメェが……」  外道衆の総大将・血祭ドウコクでさえ開いた口が塞がらなかった。  だが、次の瞬間にはその口はニヤリと笑っていた。 △ 「はて。これはどういう事でしょう」  筋殻アクマロは、周囲を見回していた。見下ろすのは小川。周囲は森。  はて、自分はいつ死んだのだろう。仮面ライダーゼクロスが自分に向かってライダーキックなる技を発動し──そうか、それで死んだのだ。  しかし、それから随分と時間が経ったような気がする。周囲の景色は以前よりも少し暗くなった。闇が深くなったというのだろうか。一日近く放置されていたようだった。  見下ろしても、先ほど激闘があったはずの場所は白けている。  いや、この周囲一帯そのものが随分と白けているようだった。  自分が二の目になっており、目的が果たせない事が明らかになった今現在であっても、彼の心が落ち着いているように見えるのは、この不可解な状況を飲み込めないからである。  本来なら自暴自棄が始まってもおかしくないが、時間が巻き戻ったようなタイミングで二の目となっている事が不思議であった。 「……もう誰もおりませんか?」  アクマロは、誰に言うでもなく、そう呟いた。 「これでは奴らを地獄の道連れにはできない……。全く、何という無念……。殺し合いは終わってしまったのでしょうか」  アクマロは、歩き出す。現状で行くあてはなかったが、確認したい事がいくらでもあった。  殺し合いが終わってから二の目になったというのでは、巨大になる意味もない。それが原因でアクマロの二の目が発動したとしたら──?  一日、二日の単位ではなく、アクマロは数日単位で時間が進んだ事を考えた。ここに現れない事を考えれば、ドウコクが勝利したのだろうか。それはそれで無理もない気がしたが。  まずは、振り向いて、人が集まっていてもおかしくない街エリアに向かうのを考えた。あそこならば、情報を得られるだろう。その刹那── 「アクマロォォォォォォォッ!!!」  覚えのある怒号が、アクマロに、少し遠く、赤い池──三途の池が広がる場所を注視させた。そこに、誰かがいる。  声と照らし合わせ、豆粒のような赤が何者なのかの答えを探り当てた。  血祭ドウコクである。彼も随分と大きな声だ……。  まあいい。この殺し合いの中で全員死んだのかと思っていたくらいだが、そうではないなら話は別だ。 「ふっふっふっ……」  折角だ。殺し合いが終わっていないのなら、残っている参加者は全員殺す。  自分の目的は達成できないが、参加者がいるのならば殺しつくしてしまおうとアクマロは考えた。たとえドウコクであろうとも。  いや、むしろ彼のような存在こそ共に死んでもらうにはぴったりではないだろうか。  アクマロは三途の池に向かって歩を進めた。 △ ──△のあと、おどろきのてんかい!── △  血祭ドウコクのもとに、筋殻アクマロは近寄って来た。  彼が一歩歩くたびに、地面が揺れ、巨大な音が鳴る。それこそ、また随分と目立つ様相であった。近くにいる人間が目撃できないわけがない。  森の木々は、すべてアクマロの膝下にあるように見える。それが二の目であった。 「アクマロォッ! 随分久々じゃねえか」  そうドウコクが叫んだ時には、もうアクマロはドウコクの上を陰で覆っていた。微かな月明かりさえも途絶え、完全な闇が生まれる。アクマロはドウコクを見下ろしていた。  不愉快ではあったが、これから殺すに至るまでの辛抱である。 「これはこれは……。久方ぶりでございまする……」 「二の目になるとは、また随分と強え奴にやられたもんだなぁっ! てめえもよぉ!」  普通は、一の目で戦う。二の目というのは、もう後がない証であった。  最後に敵を道連れにするための姿といってもいい。この命を喪った外道は、天国でも地獄でもないどこかへ行ってしまう。 「ええ。仮面ライダーゼクロスなる者に。……しかし、どういう事でしょう。死んでから、これまた随分と時間が経っているように思えてならな……」  アクマロがドウコクに事情を訊こうとした刹那──。  ドウコクは昇竜抜山刀を凪いだ。それは、おそらくアクマロに回避手段がないほどに早い一撃。鎌鼬となった剣技はアクマロの腹部に激突する。  それはかなり広範囲に渡る一撃であった。巨大なアクマロの銅を半周するほどに膨れ上がった鎌鼬である。アクマロの痛覚を刺激するには充分であった。 「……くっ。いきなり攻撃とはご挨拶ですな!」 「テメェが過去に俺にした事を忘れたわけじゃねえだろうな?」  ……裏切り。ドウコクは忘れていない。  アクマロの方も、いくつか心当たりがあったくらいなので、恍ける気もなかった。  ともかく、彼はアクマロを倒したのが何者なのかという情報が得られれば、それだけで良いらしかった。それでそのまま用済みになる。 「そちらがその気ならば……悪く思わないでもらいましょうか」  仕方なしに、アクマロは攻撃体勢を取る。事情を訊こうと思ったが、それができる相手ではなさそうだ。  豆粒ほどの相手ならば、さほど労力は使わないように思うが、問題なのは相手が他ならぬ血祭ドウコクであるという事だ。彼を相手に巨大化では足りない。それだけのパワーを彼は有している。  しかし、それでも二の目であるという事は優位だ。敵の攻撃は比較的狭い範囲で受ける事になるし、体重が重い分だけ、こちらの攻撃も重くなる。ボクシングに階級差がある理由を考えれば、質量の優位は明らかであった。 「さらば、血祭ドウコク!」  アクマロは、地面にいるドウコクに向かって足を踏み込もうとする。ドウコクを一瞬で潰してやろうと、アクマロは歩んだ。そんな攻撃で死ぬとは思っていないが、弄ぶように攻撃すればいずれすぐに死ぬだろう事は間違いない。 「フンッ。……じゃあな、アクマロ」  一方のドウコクは冷静に呟いた。口調や態度に余裕が含まれている。それを怪訝に思ったが、今更止まる必要はない。  このまま踏み潰してやれ。この余裕はブラフだ。 「…………おい、行け」  しかし、その直後、ドウコクが何者かに指示をすると、アクマロの背後を突如として大砲のような一撃が打ちのめした。何発も、何発も……連射される。アクマロは突然の衝撃に前にふらついた。ドウコクのもとを通り過ぎて、いくつかの木をなぎ倒しながら別の場所に足が踏み込まれた。  砲撃──まだアクマロとしては了承できる程度の攻撃だ。ダメージとしては、さほど大きくはない。  だが──。 「何故、あんたさんがここに……」  アクマロが振り向いて、その姿を確認した時であった。アクマロの動きが止まる。  何故、彼がそうしてそこにいるのか、アクマロの理解も追いつかなかった。  そこにいたのは……  黒い羽織に身を包み、真っ赤なマスクに「火」のモヂカラを宿した戦士。  それは、かつて敵だったはずが、今は意識もない外道そのものになっている。  シンケンレッド、その人ではないか。 「烈火大斬刀」  シンケンレッドは呟いた。  片手にモウギュウバズーカ、片手に烈火大斬刀を持ち、飛び上がってアクマロの頭部にそれを叩き付ける。大剣・烈火大斬刀がアクマロの頭部から、顔の中心に真っ直ぐな線を引いて下っていく。  強力な摩擦熱に、火のモヂカラが相乗、──アクマロの顔の中を焼く。 「うっ……うわあああああああああっっ!!」  突如として現れた刺客の存在が、あまりにも予想外だったために、アクマロは混乱する。  スーパーシンケンレッドが黒い羽織を着て、モウギュウバズーカや烈火大斬刀を片手で操っている。何故、彼がこんな所にいる。  間違いなく、シンケンレッドこと志葉丈瑠はアクマロが殺したはず──。 「ま、まさか……あんたさんが外道に……っ!」  言うなれば、それはシンケンレッドではなく、外道シンケンレッドであった。  ドウコクもアクマロも彼が誕生した事情は一切知らなかったが、彼は確かにそこにいた。 「……その通りだ。コイツも、どういうわけか外道に堕ちたってわけだ。魂さえ失ってな」  元来、人が外道に堕ち、三途の川に向かうには、それに見合った行動が必要となる。  その結果として外道に堕ちた者を、人ははぐれ外道と呼ぶのである。  例を挙げるとすれば、腑破十臓や薄皮太夫。  十臓は、人斬りを行い続けた結果、外道に堕ちた。  太夫は、自分を裏切った情人を殺した結果、外道に堕ちた。  ……だが、志葉丈瑠の場合は、更に特殊であった。  この殺し合いの会場にて、殺し合いに乗り、同行者であるパンスト太郎に躊躇ない刃を向け、裏切りを達成したのである。それは己の怒りに任せた『外道』であった。己の剣技のために殺し合いに乗った時点ではまだ乾いていたが、仲間を殺した時点で満ち足りたのだ。  本来の世界ならば、この時点で彼は外道に堕ちても仕方のない悪行を行ったとされるだろう。  しかしながら、このマップでは外道に堕ちる事はなかった。──志葉丈瑠自身が外道に堕ちる事なく、彼は人を守って力尽きる所まで戻ってしまったのである。  その結果、『外道』に堕ちているはずの彼も外道になる事なく逝った。しかし、一日目の終了とともに、志葉丈瑠とは別個体の『外道』の部分のみが『外道シンケンレッド』へと転じて生まれたのである。『本来』の形を形作ろうとした運命が導き出した結果であった。  この外道シンケンレッドは、丈瑠の情念から再現した、『外道』の部分のみの集合体なのだ。  ただ、ドウコクはそこまで深くは知らないだろう。  アクマロは、思わず一歩退く。 「……そして、コイツは俺の新しい家臣だ。良いだろう?」 「……」  ドウコクの隣に移動し、膝をついて座る外道シンケンレッドの姿は、まさしく『家臣』のそれだった。  彼は外道シンケンレッドを従い、かなりご満悦のようであった。  どうしてそんな事態になっているのか、アクマロは皆目見当もつかない。 「家臣だとぉ……?」 「……俺たちの敵だったシンケンジャーが、俺たちの家臣になっている。面白え事が起こったもんだろ。……そうだな、まずは……テメェを倒すのに使ってやる」  先ほど、『外道』となった事で三途の池に現れた彼を見つけたドウコクは、このシンケンレッドそっくりの意思なき生命体を利用する事を企てた。『縛る力』も有効であり、あろう事か、彼は従順な家臣となったのである。  シンケンジャーを屈服させるという昔年の夢が、少し叶ったようであり、ドウコクの心がほんの少し満たされていた。  そんなドウコクを見て、アクマロでさえも思わず叫ばずにはいられなかった。 「恐れ入りました……ッ! 外道……ッ!! まさに外道……ッ!! あんたさんは、やはり……本当の外道です……ッ!!」 「知ってるぜ」  アクマロに向かって、外道シンケンレッドの烈火大斬刀とドウコクの昇竜抜山刀の一撃が同時に放たれた。そこに情はない。殺戮兵器二体を相手にしているようだった。  シンケンジャーと外道の夢のコラボレーションとともに、アクマロの体が三つに割ける。更に、裂けた体に何度とないモウギュウバズーカが追い打ちをかけていた。不必要なオーバーキルはまさしく外道の所業。 「うがっ……!」  アクマロが、体が三つに裂けていく自分の体を見つめる。裂けている部分にモウギュウバズーカが撃ち込まれ、今までに味わった事のない至上の痛みがアクマロを支配した。  全身でそれらが爆発する。  アクマロは自分の体を見つめ、ふと何かに気づいた。 「あぁ……そうか……この痛み……まさしく地獄の苦しみ……、これがこの世の地獄、至上の喜び……もっと感じたい……っ! もっと斬って、もっと撃ってください! ……」  外道シンケンレッドが、それを言われて、撃つのをやめた。  命令など受ける必要もなかった。  そんな様子を見て、ドウコクがアクマロに言った。 「折角だ。平素外道の俺だが、今回は特別に攻撃をやめてやる。……昔の家臣がカワイソウだからな」  アクマロが、そんな彼の様子に不満そうな顔で、手を伸ばしているのを見ると、外道シンケンレッドと血祭ドウコクは、全てに興味をなくしたように、アクマロを背にしてしまった。  どうせアクマロはいずれ死ぬ。これ以上攻撃しなくても。それで終わりで良いのだ。 「く……ッ! 後生ですから撃ってください……! もっと我を甚振るのですっ! ……こんなに気持ち良い……地獄の苦しみを、死ぬ前にもっと感じたいのに……! それではこのままでは、苦しまずに死んでしまうでは……、……あ、……あぁっ……!」  アクマロの体から電撃が走り、そのまま、二人の外道の背後でアクマロは爆発した。  ……そして、彼はもう、地獄の苦しみを味わう事もなかった。 △  二人の外道は、再び志葉屋敷を目指して歩きだした。  外道シンケンレッドと血祭ドウコク──思わぬコンビが誕生するとともに、筋殻アクマロの二の目は撃破された。 「しかし、アクマロも飛んだ噛ませ犬だったな」  ここに来て、パートナーにするには随分と意外な相手であるが、ドウコクは愛着を込めて話しかけた。返事はない。  まあ、それはそれでいい。  命令だけ聞けばそれで充分である。 「……」  外道シンケンレッドは、それから何かを言う事はなかった。 ──変身ロワイアル……第百八十五幕。まずはこれまで── ──状態表のあと、みんなで一緒に歌を唄おう!── 【2日目 未明】 【F-3 三途の池】 【血祭ドウコク@侍戦隊シンケンジャー】 [状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、苛立ち、凄まじい殺意、胴体に刺し傷 [装備]:昇竜抜山刀@侍戦隊シンケンジャー、降竜蓋世刀@侍戦隊シンケンジャー [道具]:なし [思考] 基本:その時の気分で皆殺し 0:志葉の屋敷に向かう。 1:首輪を解除できる人間を捜す 2:加頭、マンプクを殺す 3:杏子や翔太郎なども後で殺す 4:嘆きの海(忘却の海レーテ)に対する疑問 [備考] ※第四十八幕以降からの参戦です。よって、水切れを起こしません。 ※第三回放送後の制限解放によって、アクマロと自身の二の目の解放について聞きました。ただし、死ぬ気はないので特に気にしていません。 【外道シンケンレッド@天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕】 [状態]:健康 [装備]:烈火大斬刀@侍戦隊シンケンジャー、モウギュウバズーカ@侍戦隊シンケンジャー [道具]:なし [思考] 基本:外道衆の総大将である血祭ドウコクに従う。 [備考] ※外見は「ゴセイジャーVSシンケンジャー」に出てくる物とほぼ同じです。 ※これは丈瑠自身というわけではありませんが、はぐれ外道衆なので、二の目はありません。 &color(red){【筋殻アクマロ(二の目)@侍戦隊シンケンジャー 死亡】} *時系列順で読む Back:[[さようなら、ロンリー仮面ライダー(後編)]]Next:[[Tusk of Darkness]] *投下順で読む Back:[[さようなら、ロンリー仮面ライダー(後編)]]Next:[[Tusk of Darkness]] |Back:[[The Gears of Destiny - 全参加者最終状態表 -]]|[[血祭ドウコク]]|Next:[[HOLDING OUT FOR A HERO!! - I need a hero -]]| ||外道シンケンレッド|Next:[[HOLDING OUT FOR A HERO!! - I need a hero -]]| ||[[筋殻アクマロ]](二の目)|COLOR(RED):GAME OVER| ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: