俺はあれからこれ以上はさすがに危険だと判断し、宿へと戻った。ただし、ある土産付きで、だが・・・・・・。 ――視点変更(ルーク視点)―― 「ん・・・・・・」 朝になり、真っ先に起きたのはアルルだった。伸びをして、まだ眠気が残る目をしぱたく。辺りを見回すと、アリウスとルークが眠っていた。 「あ・・・・・・あれから朝まで寝ちゃったんだ。さすがに無理しすぎたかな・・・・・・。でも、アリウスのためだったんだもん。これでよかったんだよね」 そう言いながらアルルはベッドから降りようとする。が、その動きがぴたりと止まるのに時間はかからなかった。何かいる・・・・・・。自分が寝ていた布団の中で、何かがゴソゴソと動いていた。 「な、何・・・・・・これ・・・・・・」 アルルは警戒をしながらも、ゆっくりと布団を持ち上る。 「・・・・・・・!!!!!」 数秒の沈黙が流れる。そして次の瞬間 「・・・・・・っきゃああああああ!!!!」 「な、なんだなんだ!?!?」 「どうしたんだ、アルル!!」 アルルの盛大な悲鳴に、俺とアリウスは叩き起こされ飛び起きた。 「そ、そこ・・・・・・そこぉ!」 アルルが指差しているのはベッドの端のほう。俺とアリウスはその方向へゆっくりと目を向けてみると・・・・・・。 「・・・・・・犬?」 俺はつぶやいた。2つの疑問がすぐに頭に浮かぶ。1つは、こんな小さな犬がどうして宿の中にいるのかということ。そしてもう1つは、なぜ仔犬ごときにアルルがこんな大袈裟に怯えているか、ということだ。 「ああ、忘れてた。この犬、俺が昨日拾ってきたんだよ」 そう言ったのはアリウスだった。話を詳しく聞いたところ、昨日外に出て行った頃にモンスターに襲われたこと、謎の声を聞いたこと、そして、狼を倒した後、その狼たちが出てきた茂みの辺りで、この仔犬を見つけたことを話してくれた。 「・・・・・・とまあ、こういうわけだ」 「なるほどねぇ。ところで・・・・・・」 俺はそう言いながら目配せをする。 「こ、来ないで!来ないでったらぁ・・・・・」 「・・・・・・これはどういうことなんだ?」 これも話を聞いたところ、子供のころに凶暴な犬に追いかけられて、それ以来ずっと犬が怖いのだと言う。ベタとか言うな、そこ。 「なあ、アリウス・・・・・・。こいつ、どうする気だ?」 「ああ、そのことなんだけど。例の狼がいたところにいたってことは、この仔犬も多分狼、しかも魔物だ」 恐ろしいことをさらっと言ってのけましたよ、この人は・・・・・・。 「ま、魔物って・・・・・・!!」 真剣な表情で問いただしてくるアルルだったが・・・・・。 「?・・・・・・ワウッ!」 「!@☆♪○×★!!?」 声にならない声を上げて、とびかかってきた仔犬を避けて、アルルがアリウスの後ろで涙目になって怯える。 「見ての通り、こいつは俺たちに敵意を持ってない。むしろ遊んでほしいって感じだろ?それでちょっと調べたいことがあるんだ。」 「まあ、大体考えがつくけどな。お人よしって言うか何と言うか・・・・・・」 「え?え?」 アルルはどうやら分かっていないようだ。アリウスは立ち上がると俺のほうを向いて言った。 「なら、話が早いな。アルル、ちょっとここで待っててくれ」 「え、なんで?私も一緒に・・・・・・」 「ワフッ」 「ひゃう!?」 「・・・・・・な、分かったろ?すぐ戻ってくるからさ」