三分レス無ければジュナスメインのSSを書く

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三分レス無ければジュナスメインのSSを書く - (2008/04/19 (土) 21:48:32) のソース

「ジュナス・リアム軍曹と、レイチェル・ランサム軍曹、だな」 
「「はっ!」」 
 何十回としてきた敬礼をしてみせる。 
「おう、この基地の指令官をやってる、ゼノン・ティーゲルだ。よろしく頼む」 
 そういって敬礼を返すのは三十、四十代あたりであろう中年男性。 
 ゼノン・ティーゲル中佐 
 長く戦争から遠ざかっていた連邦内で、紛争での実戦経験もあり、まともな佐官の一人。 
「しかし……な…」 
「……なにか?…」 
「いや、年齢がな」 
「年齢……でありますか?…」 
「お前さんらは、まだ若い。実戦経験もない。それで軍曹なんざ、本来そうなれるもんじゃないんだ」 
「はあ……」 
「まぁ、人類の半分も死んじゃ、人手不足どうこう言っちゃいられないんだろうが……」 
 天井を仰ぎ見るティーゲル中佐。僕とランサム軍曹はそれに返す答えを持っていない。 
「……あぁ、悪い。下がって良いぞ。とりあえず今日は休め。色々と、詳しい説明は明日だ」 
「「はい」」 
  
「ジオンの課題は資源確保、二日前にバイコヌールがとられて………」 
 壁にかけられた世界地図を眺める。 
「次に狙う場所が予想出来んか……ジャブローの馬鹿共が…」 
 地上で得たものを宇宙に上げる方法を得たジオン。当面の目標は資源の確保だろう。 
 バイコヌールから近く、宇宙では取れない地下資源を期待できる土地。 
 オデッサ 
 この基地はオデッサに近い。戦場になることは簡単に予想できる。 
「そこに送る人員が新人か……」 
 別に二人の能力はこれから確認すればいい。問題はその暇があるか、だ。 
 椅子の背もたれがキシと軋む。 
 いけないな、不安ばかりで、まるで老兵だ。 
「ロートルと呼ばれるには、まだ早い……」


「ふぅ……」 
 宿舎に向かいながら空に浮かぶ月を仰ぎ、考える。 
 まだ若い、か─ 
 一月の宣戦布告。毒ガス。コロニー落とし。人類半分の犠牲。レビル将軍の「ジオンに兵なし」演説。 
 連邦軍増強の為の徴兵制の改訂。対象年齢の引き下げ。 
 その影響を受けたのが僕みたいな人間だろうか。 
 たった数週間の訓練で何かが出来るとは思っていない。 
 だけど、たとえ成り行きでも、何かをしなくちゃ、とは思う。 
 どんな小さなことでも─ 
「リアム軍曹?」 
「あ……はい、なんです?ランサム軍曹?」 
 宿舎は同じ場所、部屋番号を聞くとどうやら隣同士らしい。 
 だから並んで歩くのも当然のことだろう。 
 僕と同年代、位だろうか? 
 ベルファストで名乗るだけの挨拶を交しただけでミデアに乗させられ、ここまでろくに話していなかった。 
 褐色の肌や一つにまとめた髪、大きな瞳は快活な印象を僕に与える。 
「若い、ですよね」 
 ランサム軍曹が言う。 
 それは共感の意味なのか、それとも僕に対する確認なのか。 
「ランサム軍曹もね」 
 とりあえずどのようにでも取れる答えを。 
「……フフッ、ですね。まだ若い…」 
 その笑みの意味はなんだろうか。共感を得た安堵?若いと自覚しての自嘲? 
 いや、人の気持ちなんか、分かりはしないか。 
「これからお願いします。リアム軍曹」 
「ジュナスで良い。堅苦しいのは苦手だから」 
「じゃあ私もレイチェルで良いよ。ジュナス」 
「うん。よろしく。レイチェル」 
「よろしくね。ジュナス」 
 改めての砕けた挨拶。軽い握手の後、互いに与えられた部屋に入っていく。 
 まだガラガラの部屋。 
 私物は、まだ必要な処置が終わっていないのだろう。 
 何もない部屋は寂しさを増すだけ。 
 それを誤魔化すように今日のことを思い起こす。 
 中佐は、少し恐いが頼りに出来そうな人だ。 
 レイチェルは……年が近い(同じ?)からだろうか、彼女とは仲良く出来そうな気がする。 
 下心がない。とは言えないんだろうな……そういう意味でも、仲良くなれれば…… 
 何を考えているのだろう…… 
 慣れないことばかりで疲れているのだ。寝よう。 
 唯一部屋にあった毛布を掴み、簡易ベットに横たわる─


 モーニングコールは警報だった。 
 鼓膜をつんざく大音量にはどんな眠気も勝てやしない。一発で飛び起きる。 
 その警報の意味に気付くのに十秒弱。 
 敵襲 
 自分の鈍さにゾッとする。もし敵が近くにいて、この宿舎を撃たれたら─ 
 そのままの服装で外に飛び出す。どうせ制服のまま寝たのだ。気にするとしたら制服のシワ位だ。 
 まだ空は暗い。明け方。 
 隣の部屋からレイチェルが出てくる。 
「ジュナス!何!?」 
 警報が鳴り続けているため大声で話さざるをえない。 
「敵だよ!」 
「敵!?でも、どこに!」 
「わからない!」 
 少なくともこの基地では無さそうだ。火の手は見えない。 
 警報が止まる。 
「どうする?私達まだ配置も分からないよ」 
「……指令室に行こう。状況を把握して、指示をもらう」 
 何か指示されないと何も出来ない。これじゃ…ただのガキだ…… 
  
「セイバーフィッシュ各機!発進急げ!続いてフライマンタ隊!戦車隊も走って行くんだよ!」 
「中佐!イワノフ中尉が戦闘は先頭じゃないと出ないと!」 
「無視しろ!準備が出来たやつからぱっぱと出せ!一秒でも早くだ!」 
 指令室の中央でゼノン・ティーゲルは苛立っていた。 
─今のは俺に回すことじゃないだろうが 
 通信員は逐一俺に回してくる。少しは自分で返す努力をしないか。まるで素人じゃないか 
 ……実戦を経験しなければ、こんなものか… 
「中佐!」 
「なんだっ!」 
 振り返り叫ぶとそこには昨日来た新兵。 
「自分達はどうすれば良いでしょうか?」 
 思わず叫びそうになったが、仕方の無いことだと思い返す。昨日は配置について全く話さなかった。 
 今更失敗したと思い返す。 
「……ここにいろ。戦いを見ておけ」 
「…了解…」 


 事の発端は一機のHLV。 
 オデッサへ降下中の数十を数えるHLV、その中の一つがこの基地から街一つ挟んで近くの森に着陸した。 
 それからは直ぐだ。そのHLVから三つの反応が出てきた。 
 ザク 
 一週間戦争、ルウム戦役と、連邦宇宙艦隊に少なくない打撃を与えた脅威の機動兵器。 
 それが市街地へ侵攻を開始した。 
 多数のHLVを確認した時点で編成を始めたオデッサへの増援部隊を差し向けたが、 
「チャーリーチーム、全滅!」 
「ブラボーチーム、三台やられました!残り一台!」 
「エコーチームを回せ!ブラボーの一台と合流しろ!航空機は何してる!」 
「対空砲火に攻めあぐねています!」 
「対空たって、警戒しているのは一機なんだろう!その一機も落とせんかよ!」 
 たった三機にこの有り様か…… 
 相手はザク三機。バズーカ持ち一機、マシンガン持ち二機。 
 バズーカ持ちとマシンガン持ちで組み、街北部を、残りの一機は南部を単独で進んでいる。 
 街にはオデッサからの駐留部隊がいたが、もう全滅した。 
 今はこちらから出た部隊と交戦状態だが、正直押されている。 
 数だけで言えば、既に三倍以上を殺られているし、残りの部隊は死を恐れ攻撃が散発的になっている。 
 部下に死ねと言うつもりはない。しかし散発的な攻撃では、各個撃破されてしまう。 
 何かのきっかけが…… 
  
 悔しかった。 
 何かを出来るはずの場所にいるのに、そこで何も出来ない。それが悔しかった。 
 目の前にあるのは絶望的な状況。 
 それでも何か出来ると思いたかった。だから 
「中佐」 
「……なんだ?」 
 中佐が振り向く。その顔には焦燥が浮かんでいる。 
「予備機を使わせてください。僕も出ます」 


「え?」 
 隣にいたレイチェルが呆然としている。中佐も似たような感じだ。 
「……何を言ってる?意味を分かってるのか?」 
「はい」 
「っ馬鹿か!今更一機、しかも新兵の使う機体が増えて何になる!?」 
「一機でも多い方が良いでしょう!」 
「なんだ!?英雄願望か!?そんなもん振り回してたら死ぬぞ!?」 
「英雄願望なんて下らないもので死ぬ気はないです!ただ、何かしたいんですよ!」 
「そう思うだけで何かが出来るのなら苦労しない!自己満足で死ぬ気か!」 
「死ぬ気はないと言ってます!死ぬのは恐いですよ!でもっ!」 
「とにかく!一機で出るのは 
「私も出ます」 
 今度は中佐と僕が呆然とした。 
「予備機が二人分もない、というのは流石にないですよね。ですから、私も出ます。これで、二機です」 
「……お前らっ……好きにしろっ!」 
「「……了解っ!」」 
  
 パイロットスーツに着替え予備のセイバーフィッシュに乗り込む。 
 システム起動。システムチェック。エンジンからの振動が微かに伝わってくる。滑走路に移動。 
 離陸に必要なやりとりを管制塔と片付ける。 
 その準備中にも友軍数機が殺られ、ザクはいまだ三機健在らしい。 
 滑走路に到着。後は加速して、充分な速度になったら操縦桿を引くだけ。 
「出来るさ……やってやる………」 
 通信。 
『聞こえるか。二人とも』 
「…はい」 
『はい』 
 中佐だ。 
『いいか。戦況は、良くない。だが、それをひっくり返そうと、無茶だけはするなよ』 
『「はい」』 
『機体なんざ消耗品だ。無理と思ったらすぐ脱出しろ。無駄死にだけはするな』 
『「はい」』 
『無事帰ってきたら俺のオゴリで飯でも食わせてやる。いいか、帰って来いよ』 
『「了解っ!」』 
 ペダルを踏み込む。 
 体がシートに押し付けられていく。 
─これが初陣、か。感動も何もない。ただ、戦うだけ─ 
 セイバーフィッシュが空に飛びたつ。 

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