夕暮れ時、人気のない裏路地を一人の女子高生が歩いている。 そして彼女を、物陰から見つめる忍び装束の男がいた。 男はアサシンのサーヴァントであり、女子高生は彼が仕えるのとは別のマスターである。 彼女がマスターであるという情報をつかんだアサシンは、彼女を暗殺すべく尾行しているのだ。 (わざわざ人気のない場所を歩いているということは……。 狙われていることに気づいて、あぶり出すつもりか……? まあいい、その慢心が命取りだ。 俺の神速の動きで、向こうのサーヴァントが介入してくる前に首をかっ切ってやる!) 覚悟を決め、アサシンは物陰から飛び出す。 一気に距離を詰め、手にしたクナイを女子高生の首に向けた、その時。 突如彼の視界は激しく回転し、それが止まったときにはアスファルトの路面が目の前に存在していた。 (なんだ! いったい何が……) 「あ、わかりませんでした? じゃあ、教えてあげますね」 混乱するアサシンの耳に、穏やかな口調の声が届く。 「あなたの首、もう落ちてますよ」 まるで落とし物を指摘するかのような調子で放たれたその台詞の意味を理解する前に、アサシンの意識は途絶えた。 ◆ ◆ ◆ 「すいません、囮役なんてやらせちゃって。 マスターの方は気配がダダ漏れだったんですけど、サーヴァントの方が気配をつかめなくて」 刀を鞘に収めながら、サーヴァント……セイバーは笑顔でマスターに語りかける。 「かまわないさ。あなたの強さに関しては信頼している」 マスター……天生壱(あもう いち)は、無表情で答える。 笑う男と、笑わない女。 一見すれば、正反対の存在。 だが二人とも、根本に抱える問題は同じ。 どちらも、感情が正常に働いていない。 「相手のマスターは、もう逃げちゃったみたいですけど……。 追わなくていいんですよね」 「ああ、そうしてくれ」 ◇ ◇ ◇ 話は、二人が対面を果たした直後に遡る。 「我輩は、人殺しはしたくない」 壱は、セイバーにそう告げた。 「あなたの生きていた時代では、どうだったか知らないが……。 我輩の時代では、人殺しはたいそう重い罪だ。 たとえこの世界がまやかしに過ぎず、法に裁かれることがなかったとしても……。 我輩は一生、その罪の重さに苦しむだろう。 サーヴァントとは死者の複製であるというから、そこは譲歩しよう。 だがマスターに関しては……どうか殺さずに収めてもらいたい。 いかがだろうか」 「あ、いいですよ」 壱の主張に対し、セイバーは即座にそう返す。 「……我輩の長台詞を、こうもあっさり返されるとは思わなかった。 何を甘いことを、とか言われるのも覚悟していたのだが」 「まあ、甘いでしょうねえ。でも、そういうやり方には僕も興味がありますから」 「興味とは?」 壱が無表情のまま、首をかしげる。 「僕ね、召喚が上手くいかなかったのか、生前の記憶が曖昧なんです。 自分の生きる道を見つけるために旅に出たはずなのに、どんな結論に至ったのか思い出せない。 だからここで、やり直します。人を殺さない道を歩いてみて、その先に何か見つけられるか」 静かに笑って、セイバーは言った。 ◇ ◇ ◇ そして、再び現在。 「そういえば……」 霊体化しようとしていたセイバーが、ふとそれを中断して呟く。 「マスターから、方針は聞きましたけど。 叶えたい願いとか、聞いてませんでしたよね」 「ん? そうだったか」 腕時計に視線をやりながら、壱が返す。 「こんな血なまぐさい叶え方でなければ、我輩の精神をなんとかしてもらうのだがな。 多数の犠牲の果てに叶えてもらえる願いなど、権利を得たとしても怖くて使えんよ。 元の世界にさえ戻れれば、なんとかなるかもしれないしな」 壱は、他者に恋愛感情を抱くことができない。 だが、一人の少年に対して好意を抱いている。 彼に褒めてもらえたとき、感情が顔に出ないはずの自分が笑っていたと指摘された。 このまま彼と共に時を過ごせば、いずれは自分なりの「恋」ができるのかもしれない。 それが壱の願い。 そしてそれを叶えるためには、この戦場から生きて帰る必要がある。 「さて、なんにせよ今日はもう帰ろう。 いくら似て非なる存在とはいえ、あまりおばあちゃんを心配させたくない」 「了解です」 恋ができない乙女と、笑うことしかできない剣客。 いびつな心の二人は、いびつなりに悩みながら進んでいく。 【クラス】セイバー 【真名】瀬田宗次郎 【出典】るろうに剣心 【性別】男 【属性】中立・中庸 【パラメーター】筋力:C 耐久:C 敏捷:A+ 魔力:E 幸運:E 宝具:A 【クラススキル】 対魔力:E 魔術に対する抵抗力。一定ランクまでの魔術は無効化し、それ以上のランクのものは効果を削減する。 神秘の薄い近代の英霊であるため、最低ランク。 騎乗:E 乗り物を乗りこなす能力。騎乗の才能。 「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。 たいていの乗り物より速く走れるセイバーには、必要のないスキル。 【保有スキル】 天剣:A 生まれつき持った、剣の才能。 完全な我流でありながら、名だたる剣客と渡り合えるだけの技巧を持つ。 感情欠落:A- 喜怒哀楽のうち、「楽」以外の感情が欠落している。 そのため殺気や闘気を一切放たず、思考が非常に読みづらい。 擬似的に、「気配遮断」や「精神汚染」に近い効果が発揮される。 生前のセイバーは緋村剣心との戦いで感情を取り戻しているが、全盛期の状態を再現するサーヴァントの特性により再び機能している。 しかし上述の逸話から、精神攻撃を受けた際にこのスキルが失われる可能性がある。 【宝具】 『縮地』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1-30 最大捕捉:5人 まるで妖術で地面を縮めたようにすら見える、超高速走行術。 同じ名の技を使う英霊は他にもいるが、宝具の域にまで高められた彼の縮地は別格。 百戦錬磨の英霊であっても、その動きを視認するのは困難である。 なおレンジ及び最大補足は、この宝具使用中に攻撃を放った場合の数値。 【weapon】 「菊一文字則宗」 創作において沖田総司の愛刀とされることが多い名刀。 剣心との戦いで折れているが、サーヴァントとしては万全の状態で所持している。 【人物背景】 志々雄真実配下の特攻部隊「十本刀」最強の剣客であり、志々雄最古参の部下。 とある商人が妾に産ませた子で、家族から虐待されて育つ。 そんな中、政府に追われていた満身創痍の志々雄と遭遇。 彼の影響により家族を皆殺しにし、その配下となる。 後に剣心との戦いに敗れたことで感情が蘇り、同時に志々雄に言われるがままだった価値観が崩壊。 自分にとっての真実とは何かを知るため、旅に出る。 【サーヴァントとしての願い】 改めて、答を探す 【マスター】天生壱 【出典】CLUBゲーム倶楽部 【性別】女 【マスターとしての願い】 元の世界に戻る。 【weapon】 特になし 【能力・技能】 「魔術」 主に肉体強化の魔術を得意とする。 単純な運動能力の強化だけでなく、脳を強化して記憶力を高めたり、目を強化して透視をしたりといった芸当も可能。 【人物背景】 曽新工業高校に通う女子高生。爆乳。 両親は仕事の都合で同居しておらず、祖母と二人暮らし。 一人称に「我輩」を使うなど、古風かつ男っぽい口調を用いる。 生まれつき、恋愛感情を抱けないという特異な精神構造を持ち、「創作物なら国語力で恋を理解できるのでは」と考えた結果乙女ゲーマニアに。 またそれとは別に感情が非常に顔に出づらいという体質も持ち、オーバーアクションで感情を表現する。 「薬局の先生」なる人物から教えを受ける本物の魔女であり、 それを公言しているものの周囲からは冗談や中二病だと思われている。 【方針】 生還優先