【疲れ切った代言者よ、どんな小さな幸せも守ることができる術を与えよう】 ※ 初めまして! マスターさん、今日はログインボーナス代わりに私のお話を聞いてください。 あるところにくすんでパッとしないけれど、輝きたくてたまらない女の子がいるとしますね。 彼女のその欲求は、それまで彼女を取り巻いていた環境によるものよりも、内から溢れ出る憧憬によるものです。 そんな彼女を魔法使いさんは、空の上からじっと見ているのです。魔法使いというものは人の夢を叶えたくてしかたがないものです。 だから、彼女に目をつけて、自分ができるのに精いっぱいの魔法をかけてあげるんです。 12時になったら解けてしまうなんて、ケチなことは言いません。望む限りは持たせ続けてくれます。 他の参加者に見劣りしない馬車、王宮のドレスコードにすっかり調和するドレス、 そして、舞踏会の中で最も映えるようにあつらえられた靴。 女の子は、自分が輝けることがうれしくてたまらないで、いつまでも終わらない舞踏会の中を踊り続けます。 しかし、踊り続けているうちに、女の子は心配になって来るのです。 果たして、この魔法使いさんに演出された自分の輝きは、本当に自分の内側から出ているものなのかって。 魔法使いさんは、彼女の夢を叶えるのに必死で気が付きません。夢を守ることが魔法使いの使命です。 舞踏会の次の曲に備えて、次々に魔法で新しい靴を作り出します。 そうしているうちに、狂乱する舞踏会が進む中、突然、彼女は靴を打ち捨てて逃げ出してしまうのです。 参加者たちが褒めたたえる輝きと、自分が灰かぶりだったころ望んだ輝きが、どうしよもなくずれてしまったと思い込んだから。 魔法使いは気が付かなかったことをひどく後悔し──そのまま姿を消してしましましたとさ。 ……でも、本当に参加者たちと女の子、それに魔法使いがみた輝きは異なるものだったのでしょうか? 強引な演出とはいっても、踊ったのは女の子自身によります。輝きの光源は、彼女が大事に磨いてきた宝石なのです。 だから、一番の問題というのは、彼女が魔法使いを信じられなくなったこと。 女の子が、魔法使いの魔法に価値を感じなくなってしまったことが、価値観の錯覚を起こしてしまったのです。 灰かぶり姫は、なぜネズミを従者にカボチャを馬車と思ったのか?──それは、魔法使いを信じたからです。 灰かぶり姫は、なぜ経験もないのに見事なダンスを踊ることができたのか?──それは、魔法使いを信じたからです。 灰かぶり姫は、なぜ12時になる前に帰ろうとしたのか?──それは、魔法使いを信じたからです。 信頼です。それ以外にこの世界に価値をつけるものはありません。女の子は魔法使いの魔法を信じ、 魔法使いは女の子の輝きを信じなければならないのです。行違うことは、互いの価値を毀損します。 だから、私のことも信じてくださいね。マスターさん。 【そんなボロボロの身体で、いったい何を守るっていうんだい?】 ※ ──どうして私は、にちかにWING優勝だなんて条件を付けたのだろう。 終業の時間が来る。広告会社のアルバイトからの帰り道。暗い夜道にポツポツと思考を浮かばせる。 にちかがアイドルに強い憧れを持っていたことは分かっていた。それなりに反対の気持ちを伝えてもいた。 それは、あまり余裕があるとは言えない家庭環境によるものであり、アイドルという職に近くで向き合う経験から、 にちかが──果たして現実とのギャップに耐えられるのだろうかという心配によるものでもあった。 ──父は、幼いにちかがテレビに映るアイドルの真似をして踊っていて、にちかはアイドルになれるなって。 もちろん応援したい気持ちもあった。家族だったから、 みんな大切で差なんて付けられないけれど、かけがえない宝石だから。 しかし、疲れ切って帰った時にいつも自分を癒してくれた我が家のアイドルを、思春期を向かえても自分を気遣ってくれる優しい子を、 家族という信頼と欲目だけで、たどり着けるかもわからない茨道に送り出したくはなかったのだ。 けれど彼女はもう走り出してしまった。私たちの職場に、あの人と一緒に。 走り出したからには、もう彼女の活動の邪魔はしたくはなかった、しかし、この世界の片隅でくすぶり続けて、苦しんでほしくもなかった。 そういう妥協案で出てきたのが、WING優勝。叶わなければそこですっぱりとアイドルの夢は諦める。 ──お父さんは、夢を持っている人を応援したいから。 最近は後悔することが増えた。レッスンが始まってから、にちかは多彩になった。彼女という原石が磨かれだしたのだ。 苦しみながらも夢に向かって一心不乱に走っている。[[プロデューサー]]さんは予定表を見ながら、じっと思い悩んでいる。 彼女がそれを見て、からかうように声をかけていた。そして越えられるかわからない壁が立ちふさがると、 にちかは駄々をこねるように自分を卑下していて、[[プロデューサー]]は優しく彼女を説得していた。 にちかは納得できないで、苦しみと怒りをないまぜに、まるでお父さんにするように[[プロデューサー]]にあたり続けるのだ。 それは、紛れもない甘えで、にちかはひどく自己嫌悪していたけれども、私たちの家族には埋めることができないものだから。 だから、嬉しくてたまらなくて、こんな日常がいつまでも続いてほしくて──破滅の足跡におびえ始めてしまった。 今思えば、283プロという環境は奇跡だ。 天井社長が20数年ぶりにアイドル業界に復帰して、その右腕としては父によく似た[[プロデューサー]]が活躍する。 私は彼らの夢のお手伝いをして、[[プロデューサー]]さんによって磨かれる色取り取りのアイドルと接することができる。 挫折はしても、乗り越えて変わった。[[プロデューサー]]さんと彼女たちには信頼も才能もあったから。皆の居場所は幸福が持続する空間である。 そう無邪気に信じ込めていたのだ。……にちかが入るまでは。 どうしたらいいのだろう? にちかは本当に優勝できるのだろうか。彼女の才能について、断言することはできないが──並び立つ原石はいくらでもある。 無論、彼女にしか出せない輝きもあり、[[プロデューサー]]さんもそれは見抜いているのだろう。ただし、審査員がそれを重視するのかは可能性の問題になるだろう。 もしも、技巧や雰囲気で勝負されたのならば、にちかは……こんなことを考えてしまう自分がひどく醜いもののように思う。 これまでは無垢な信頼を向けられていたのに、よく知っている彼女のことになると、信じられなくなってしまった。 そして、もしも優勝を逃したのならば、にちかはアイドルを失い、[[プロデューサー]]さんも大きな傷を負うだろう。 そうなれば、283プロ全体にそのひずみは波及するかもしれない。今ある奇跡が、あんな一時の約束だけで消え失せてしまうかもしれない。 どうしたらいいんだろう……。遠くから声がかかった。 私はその声を聴くたびに安心する。もはや聞くことができないはずの声であり、保存した音声ファイルにしか残っていない音だった。 人間がいなくなったときに、真っ先に忘れてしまう声だった。だから、どうしようもなく、涙が出そうになるのだった。 「お父さん……」 【道を見失った従者よ、お前がどこにいても帰ることができる場所を与えよう】 ※ 私には家族がいます。お父さん、お母さん、妹たちと、にちか。 にちかは今は家にはいません、WING優勝のために、283プロの寮を借りて毎日励んでいます。私たちは家族総出で……みんな忙しくて私だけで応援に行きました。 283プロは今はありませんが、事務作業をこなしている傍らにちかのことを寒がると元気が湧いてきます。妹たちのために頑張ろうと思います。 私ががんばらなければ、家族の生活も危機に陥ってしまいますから、おとうさんはもういないし、お母さんは入院しているから……。 そう、だからにちかが負けると困ってしまうのです。283プロという環境が崩れることは私自身の生活に直撃してしまいます。 私もにちかも妹たちも、それでも生きていかなければならないのです。夢が破れても、家がなくても、疲れ果てて消えたとしても、 先日も家が吹き飛ばされたばかりなのです。どうしようかと思ってしまいました。私は早く帰らないといけないのです。にちかを見守らなくては。 幸い新しい家はお父さんが建ててくれました。にちかが夢として語ってくれたような、笑いの絶えないにぎやかな家を建ててくれました。 これで目先の心配事はとりあえずは片付いたかな。 本当に大変でした、エメラルドの濁流のようなものに家族が飲み込まれてしまって、妹たちは……お腹に穴が開いていて……。 ……、そう、お父さんが助けてくれたのです。弁護士をしているお父さんはとても口がうまいから、悪者をうまくいなすのは慣れているのです。 だから今の心配事はにちかのことだけ。早く帰らないと、WING決勝は3日後、にちかはもう控室に入っていた。早く帰らないと。 幕が上がってにちかと[[プロデューサー]]さんの結果を今から見守ろうとしていて、だから早く帰らないといけなくて。 帰らないと、私の収入がなくなったらにちか頼みになってしまう、お母さんも私が突然いなくなったらどうなるのか。 結果を見なくては、あの子が[[プロデューサー]]さんと一緒に紡ぎだした日々を、どんな結果が出ようとも受け入れよう覚悟しているから。 にちか、私は大丈夫だから、すぐに帰るからね、だから、お父さんはもういないから、私には283プロとあなたが必要だから。 負けたら……どうしよう?私がいないで彼女が負けたら、皆どうすればいいの?傷ついた彼女を支えてられるのは私しかいない。 帰らなければ、無残に吹き飛んだ家みたいになってしまうから、帰らなければこの世界に私のプロダクションはない。 帰らなければ、にちかが負けたらもうどうしようもない。帰らなければ、勝ったにちかをいっぱい褒めてあげたい。 帰らなければ──! 「はづき……大丈夫か?」 もういないお父さんが私を撫でてくれます。もういないけれど、今はいます。帰ってきて私を安心させてくれます。 ……一緒に歩いていると、家が見えてきました。中から家族の暖かい笑い声が流れてきます。おかしいですね。 この世界の妹たちも、お母さんも死んでしまったはずなのに。この家にはいつもいてくれますが姿が見えません。 あ、お父さんが手招きしています。リビングの扉の奥で、喧噪の中に入っていきました。 私は、帰りたくてたまらなくなりました。でも帰ってどうしたらいいのか、不安でたまりません。 ……そういえば、魔法使いさんが私に願い事を尋ねていたような気がします。何かを聖杯に祈らなくてはならない。 私は、帰りたいけれど……もし、帰れなかったらにちかたちは……。 お願いします。どうか、にちかをWINGで優勝させてください。私が帰れなくてもアイドルの世界で生きていけるように。 きっと、その世界にいれば、[[プロデューサー]]さんとみんながいれば大丈夫だから。 ──リビングの方からTVの音が聞こえる。ティタ・ティタ…妹たちの楽しいそうな声。 音に乗せてステップを踏みました。三回踵の音が鳴ります。けれども家に帰ることはできませんでした。 玄関のカボチャの置物が蠢いた気がしました。 【何処へもいけない下僕が、いったいどこに帰ろうっていうのかい?】 【クラス】 キャスター 【真名】 嘘をつく大人@library of ruina 【ステータス】 筋力E 耐久D 敏捷D 魔力C 幸運C 宝具EX 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 陣地作成(偽):A 詐欺師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 道具作成(偽):A 相手を詐術にかける小道具を作り上げる技術。 キャスターの魔術素養は奪ったものでしかないため、魔術的器具は戯れ程度のものしか作成できない。 【保有スキル】 詐欺師:A++ かつて国一つを乗っ取った詐欺師としての技量がスキルとなったもの。 正体隠匿や気配遮断、話術スキルを兼ね揃えた複合スキルであるが、キャスターの虚偽から生まれた決して真実にはならぬスキルのため、 時間が経過するごとにランクが低下していく。 エメラルドの魔術:C オズマ姫から奪い取った魔術。基本的な魔術及びエメラルドを操る魔術を使用することができるが、 所詮奪い取ったものであるため、高威力の魔術の使用はそれ見合わぬほどの大量の魔力を消費する。 【宝具】 『偽りの玉座(The Wizard of Oz)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:- 「いつしかオズは人々に魔法使いと呼ばれるようになりました」 オズの国の王、魔法使いのオズの由来。彼は人々の欲について知り尽くし、その願いを叶えることができると皆に思い込ませていた。 それは転じて人々の願いを見抜き、叶えることができる宝具となった。キャスターは相手の願いを自身の魔力が許す範囲で叶えることが可能であり、 相手が願いを受け入れた場合、その維持のための魔力消費を相手に引き渡し、対価として容姿立場魔力記憶、概ね任意のものを奪い取ることができる。 叶える願いには制限がなく、死者蘇生から世界改変まで可能であるが、大規模なものほど魔力消費が大きく、発動時はキャスターの魔力を必要とするため、 その時点の魔力量を上回る願いは叶えられない。また、キャスターの任意で願いを曲解することも可能。[[NPC]]相手にも使用することができる。 現在の使用対象は二名。 七草はづきの父([[NPC]])「家族を助けてくれ」叶えた願い「その場の安全を確保し、※(家族を蘇らせる)」 対価「名前、容姿記憶及び魔力」 ※対象者側の魔力不足により消滅。 七草はづき「帰りたい」 叶えた願い「帰りたい家を用意する」対価「聖杯戦争についての知識」 【人物背景】 library of ruina に登場するオズマ姫から国を乗っ取った魔法使い。 しかし、その実態は元ネタのオズの魔法使いにもあるように詐欺師であり、関わったものから奪い取っては破滅させている。 ドロシーにあたる少女たちは冒険の末にキャスターの下にたどり着き、願いを叶えてもらったが、 案山子は藁の脳のために自分の知能が低いことに恥を覚え、ブリキの木こり歯が自分の心の冷たさに震え上がり、 猫の勇気は他人に依存し続け、少女は家ごとオズの国に来たため家に帰れない。というふうに悪意的に解釈した願いを配った。 自分の所有物に対する執着心は尋常ではない。 【サーヴァントとしての願い】 すべて俺のものだ! 誰にだって譲るものか! 【マスター】 七草はづき@アイドルマスターシャイニーガールズ 【マスターとしての願い】 帰りたい。にちかには優勝していてほしい。 【能力・技能】 各所でのアルバイト経験、所属アイドルに関する知識。 【人物背景】 283プロの事務をこなすアルバイト、生活に余裕がないため各所でアルバイトをしており、いつも眠たそうにしている。 能力は高く、所属するアイドルたちは彼女のことを頼りにしている。ただし社長に対する態度はぞんざい。 参戦時期はにちかのWING決勝の本当に直前、にちかたちのことが気になり、不安になっていたところをキャスターに突かれ、 自作自演の自宅襲撃をくらった。その際に、キャスターの宝具に帰ることを強く願ったが、与えられたのは家であり、 聖杯戦争の知識を対価として奪われた。現在はキャスターの魔術により、キャスターを父と思いこまされたうえで、 半ば洗脳状態にある。 【方針】 帰りたい。