(30)906 『ヴァリアントハンター外伝(3)』

リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ まとめサイト Ver.2 @wikiVer.内検索 / 「(30)906 『ヴァリアントハンター外伝(3)』」で検索した結果

検索 :
  • スレ別INDEX
    ...gain(後)』 (30)906 『ヴァリアントハンター外伝(3)』 (30)922 (俺シリーズ9) (30)938 『一弾で倒せ』 (30)951 『08.朝露が輝いた』 (30)962タイトルなし(闇さゆみ) 第31話 2009/08/02(日) 14 39 52.83 0 ~ 2009/08/12(水) 22 32 45.40 O (31)031 『Have a good day!2~カメは主張する~』 (31)112 『光の抗争-7-』 (31)184 『ツキシマ キラリの追憶』 第32話 2009/08/13(木) 00 50 07.92 0 ~ 2009/09/03(木) 21 58 06.86 O (32)039 タイトルなし(釣り画像ネタ) (32)242 『Have a good day!3~in my heart~』 (32)3...
  • シリーズ作品INDEX
    ...ター外伝(2)』 (30)906 『ヴァリアントハンター外伝(3)』 (33)836 『ヴァリアントハンター外伝(4)』 (34)029 『ヴァリアントハンター外伝(5)』 (34)127 『ヴァリアントハンター外伝(6)』 (35)225 『ヴァリアントハンター外伝(7)』 (36)398 『ヴァリアントハンター外伝(8)』 (36)817 『ヴァリアントハンター外伝(9)』 (39)792 『ヴァリアントハンター外伝(10)』 (40)118 『ヴァリアントハンター外伝(11)』 (40)175 『ヴァリアントハンター外伝(12)』 (40)215 『ヴァリアントハンター外伝(13)』 (40)271 『ヴァリアントハンター外伝(14)』 Have a good day!  遊園地でも行かん?  定額給付金の使い道は、リーダーの鶴の一声で...
  • (30)906 『ヴァリアントハンター外伝(3)』
    ガラス越しに人間の声が聞こえ、ソレはわずかに目を開けた。 ソレは粘性を持った液体の中、複数のチューブに繋がれて眠っていた。 一体いつからここにいたのか、ソレ自身には判らない。 目が覚めた時にはすでにこの場所にいた。 それ以前の記憶はない。 ただ、今はまだその時ではないと誰かに言い聞かせられるように、ソレは眠っていた。 静かに。 無音という静寂の中を。 静謐な闇の中をたゆたうように。 ソレはさながら胎児のようなものだった。 ソレは胎児のような存在であるがゆえに、この世に再び生まれ落ちるその時を待っている。 胎動は静かに、しかし力強く、ソレが生きた存在であることを証明している。 人間の声が遠ざかり、ソレは再びまぶたを閉ざす。   *  *  * 東京都千代田区霞ヶ関、警視庁。 廊下の窓から外を窺うと、あたりはすっかり...
  • (34)029 『ヴァリアントハンター外伝(5)』
    ソレはすでに"ソレ"ではなくなっていた。 記憶を持ち、感情を持ち、人格もある。 なにより、彼女には明確な目的が、野望があった。 まだ慣れないこの肉体と精神との調整にはまだ少し時間が要る。 生来待つことに不慣れな彼女には苦痛でしかないが、 これもまた野望のためだ。 野望にぎらつく双眸で周囲を睨み、彼女はガラスの中で沈黙を貫く。   *  *  * ヴァリアント関連事案対策本部が抱えるヴァリアント出現予知班には、 レベル5以上の予知能力者が合計20名近く在籍している。 大手民間企業やユニオン、経済産業省、気象庁、防衛省に並び、警察組織における予知能力者の採用率は高い。 とは言え未来の事象を間違いなく正確に予知できるレベルにある者など稀少だし、 それが先の事象であればあるほど予知の精度は落ちていく。 学会の定...
  • (30)563 『ヴァリアントハンター外伝(2)』
    デザインや製造を国が民間に委託しているものとは比較にならない、 遥かに高度な制御能力と強度を持つ手錠型のリミッターを両手首に嵌められ、 男は制服警官の随伴で連行されていった。 パトカーに乗せられる(と言うより詰め込まれる)際、 れいなに砕かれた四肢の痛みに絶叫を上げていたのは余談である。 ヘロイン中毒と診断された女の方はそのまま麻薬更正施設に直行だ。 経歴を見る限り明らかに男に無理矢理従わされていた形なので、 よほどヘボな弁護士に当たらない限り有罪は免れるだろう。 パトカーに乗り込む警官に敬礼を返し、ひと息ついたところで携帯が着信を告げた。 「もしもし? 出動ですか?」 公用の携帯、しかも番号を知る者がごく限られているとなれば発信者とその用件は液晶の表示を見るまでもなく瞭然だ。 案の定、発信者は予想通りの人物だった。 『うん...
  • (30)457 『ヴァリアントハンター外伝』
    地球人口に対する超能力者の割合はすでに一割を超えている。 超能力者の存在が公式に認知されたのは異形種―ヴァリアント―出現の数十年前。 観測初期は地球総人口の数パーセントに満たなかった超能力者の比率だが、 ここ半世紀の統計記録を見てもその増加傾向は顕著だった。 超能力者は―少なくとも国籍を保持する者に関しては―各々の国家によって管理されている。 彼らは検査によってその能力の種別、強度を分類され、 日常生活においては数値に応じて安全装置、つまりはリミッターの着用を義務づけられた。 状況に応じてリミッターの解除が許可されているのは、 一部の者――例えばヴァリアントハンター達―のみである。 種別は複合能力、合成能力を含めると膨大な数に上るが、 強度についてはレベル0(無能力者、つまり一般人)からレベル12までが国際基準で定められている。 レベルにつ...
  • (40)215 『ヴァリアントハンター外伝(13)』
    田中れいなの作戦は巧く運んだらしい。 目の前のヴァリアントは突然頭を抱え、人間のものとは思えない咆哮を上げた。 そして本能のまま超能力を周囲に放ち始める。 彼女が吼えるだけで、地面のアスファルトに亀裂が走る。 ――やっぱ、元通りなんて都合が良すぎるか。 心のどこかで「藤本美貴を引き剥がせば後藤真希が戻ってくるのではないか」などと 淡い期待を抱いていた自分に苛立ち、愛は舌を打って建物の陰から身を乗り出した。 死んだ人間は二度と戻って来ない。 そんな現実は、とっくの昔に理解している。 なら目の前のアレは"後藤真希"などではない、排除すべき"ヴァリアント"だ。 愛銃・ツヴァイハンダーを両手に携え、駆け抜けながら敵の身体を穿つ。 だが頭部を狙ったはずの銃弾は一発は外れ、もう一発も敵の胸部にめり込むに留ま...
  • (33)836 『ヴァリアントハンター外伝(4)』
    本来、ソレには人格があった。 生い立ち、名前、生涯。 だが今は記憶がない。 ただ、キオクというものがあったような感覚だけが脳のどこかに澱のように沈殿している。 しかし、その感覚もすでに薄れ始めていた。 誰かがいる。 自身の中に、別の誰かが。 その誰かはソレの人格を塗り潰し、徐々に、ゆっくりとソレを別の"誰か"へと変えていく。 抗う術はなかった。 ソレはただ、抗う意思すら奪われて、静かにガラスの中で眠る。 そうしてやがて、ソレの持つソレ"自身"は、周囲の液体に溶けるように霧散した。   *  *  * 『脊髄リンクオンライン』 アルエの音声と同時。 脊髄に挿入された針を通し、人工的な電気信号がじかに全神経を疾駆し、侵し、支配していく。 動脈から毛細血管に至るまで冷水に満た...
  • (39)792 『ヴァリアントハンター外伝(10)』
    「うん、うん。大丈夫、怪我の方はたいしたことないから。  それで……あのさ、もしもの話だけど――、いや、なんでもない。  や、ほんとになんでもないから。忘れて。  じゃあ、母さんも父さんも身体に気をつけて」 告げて、携帯の通話を切った。 場所は病院内に設けられた通話可能スペース件、休憩所だ。 時刻は深夜。 本来なら患者が出歩いて良い時間帯ではないが、 両親がほぼ半日の時差がある地域にいることを理由に許可を貰った。 据え置かれた自販機でコーヒーを買い、備えつけのソファに身を沈める。 れいなは紙コップのふちに口をつけて苦い液体を喉に流し込み、息を吐いた。 両親は健在だった。 アレの正体が自分たちの娘であることも、どうやら本人の口から告げられたらしい。 やはり、問えるわけがない。 もしもの話――自分が姉を殺したとしたら悲しいか、...
  • (34)127 『ヴァリアントハンター外伝(6)』
    調整が終わった。 彼女は歓喜に打ち震え、哄笑だけで周囲のガラスを粉微塵に変じさせた。 白衣の"ニンゲン"たちの、恐怖に満ちた悲鳴が心地良い。 研究所を警報機の大音響と赤色灯の明滅が蹂躙している。 それすらも、彼女には彼女の"誕生"を祝福する演出に思える。 と、かたわらに人影が音もなく輪郭を現した。 人影が告げた情報を耳にし、彼女は再び哄笑を発する。 彼女の雇用主はどうやら不要な"小細工"をろうしているようだが、 そんなものはもはや知ったことではない。 彼女は彼女の野望のためだけに動く。 人影が恭しく差し出した衣服に身を包み、彼女は研究所の壁に大穴を穿った。 まずは、この新たな肉体の機能を試すことから始めてみよう。   *  *  * 『説明は後や。とりあえず田中、そこ...
  • (35)225 『ヴァリアントハンター外伝(7)』
    「久しぶり……って言ってるんだけど、無視?」 「あ、いや、後藤さ……貴女、生きて――」 「ん? や、アンタに言ったわけじゃないんだけど」 凍りついたように動けなかった高橋が、我に返って発した言葉を、しかし彼女はただ一言で斬り捨てた。 なぜだ。 後藤真希生存の可能性については、先日の中澤と紺野による説明から理解できる。 だが高橋愛は後藤真希の弟子だったはずではないのか。 それに、声をかけたのが高橋に対してではないとすれば、必定それは、 「れいな。アンタに言ってるんだけど?」 聞きなれない声が、だが、れいなの胸の奥から郷愁を引き出した。 声は確かに聞きなれない。 彼女の容姿も肉眼でじかに見るのは初めてだ。 しかしこれは。この感覚は。 「ま、待ってください後藤さん! 一体いままでどこに、いやそれより――」 「っさいな...
  • (36)398 『ヴァリアントハンター外伝(8)』
    目の前で、小さな女の子が泣いていた。 空港だった。 女の子の傍らの床には、彼女の体躯には不釣合いなほど大きく膨らんだリュックが置かれている。 涙を溢れさせた大きな瞳は、やはり自分と同じ遺伝子を引いているのだろう、 泣いていながらそれでもどこか気の強そうな鋭さを持っている。 藤本れいな。 いや、今日からはもう田中れいなか。 美貴はこれから遠方の地へと養子へ出されるまだ三歳の妹を、 自身も泣きそうになるのをこらえながら、なだめるように抱きしめた。 父や母も姉妹の抱擁に混じり、「ごめんね、ごめんね」と呟きながら辛そうに顔を歪めている。 やがて遠慮がちに田中のおじさんが飛行機の搭乗時間が迫っていることを告げ、 れいなは気丈にも涙をぬぐい、笑顔を見せておじさんの手を掴んだ。 まだこんなに小さいのに、この子も自分の置かれた境遇は理解しているのだ。 ...
  • (36)817 『ヴァリアントハンター外伝(9)』
    中澤の直後に入って来た医師の診断で特に異常がないことを確認されてから、 れいなは改めてこの1ヶ月で激変したという世間の情勢を教えてもらうことになった。 「まずお前らが病院に担ぎ込まれた直後や。  "後藤真希"と外見的特徴が一致する人物によってエヴォリューションが襲撃された」 エヴォリューション。 日本におけるユニオンの本部とも呼べる施設だ。 「いや、襲撃っちゅー言葉は適切やないかもしれんな。  アイツは建物そのものにはたいした損壊も与えず、  ただ内部にいる特定の人間のみをほぼ全員"凍死"させた。  被害者は心臓の血液温度を一瞬で氷点下まで引き下げられ、  心臓と、それに伴う脳細胞の壊死で苦しむ間もない即死やったそうや」 不特定多数の人間の心臓のみを、それも外部から凍らせて死に至らし...
  • (40)118 『ヴァリアントハンター外伝(11)』
    「ってことで、藤本さんはれいなのために最凶の魔術師になった。  計画通り超能力者を殺し回って、実際、超能力者の人口はたったひと月で半数まで減ってる。  最初にれいなを襲ったのは調整が終わったばかりの身体で加減を間違えてもれいなに超能力は効かないってことと、  致命傷にならない程度の重傷を負わせて下手に自分の前へ現れないように、ってことみたい」 「…………。」 「魔術師も含めて虐殺してるのは、魔道協会自体がれいなにとっては危険な存在だし、  そもそも藤本さん自身、子供の頃から仕事の中で魔術師って存在を憎んでたんだろうね。  協力者だった寺田光男も藤本さんが嫌うタイプの人体実験を最初は超能力者以外でも試してたみたいだし、  利用価値が無くなったなら憎み殺すべき魔術師にすぎないってことだったらしいの。  実際、寺田光男だけ拷問じみた殺し方されてるし」 「…...
  • (40)271 『ヴァリアントハンター外伝(14)』
    彼我の距離、956m。 南南西の風、秒速約1.7m。 誤差を修正。 呼吸は正常。 夜半だが、月明かりのおかげで対象は十分に捕捉可能。 肩づけで固定した銃身にブレもない。 発砲。 着弾を確認。 次の目標を捕捉、発砲。 次。そしてさらに次。 「こちら亀井。カメラや警備、逃走車両は全部潰したよ。後はよろしく愛ちゃん」 『了解』 三年前に出現した最後のヴァリアントによる未曾有の災害の爪痕が深く残る場所。 東京都西部の、まだ再開発の手が生き届いていない場所に絵里はいた。 伏射姿勢を崩し、少し肩や首を回して筋肉をほぐす。 敵状の監視も兼任していたとはいえ、流石に三時間以上同じ体勢を維持するのは骨が折れる仕事だ。 壁面の崩れたオフィスビルの屋上から、眼下に見える廃病院を"鷹の目"で俯瞰する。 すでに戦闘は...
  • (40)175 『ヴァリアントハンター外伝(12)』
    瞬間移動で次の狙撃ポイントへ着地すると、足元がグラグラ揺れている。 姿勢を低くしつつ窓から外を覗うと、 ほんの数秒前まで自分たちがいたビルの屋上が上階部分ごと巨大な顎に噛み千切られたかのように消失していた。 この揺れはその衝撃の余波によるものだろう。 『チッ、さっきからちょこまかと五月蝿いなぁ……ッ!』 無線機越しに"後藤真希"の声をした"藤本美貴"の苛立ちが伝わってくる。 すでに十回の狙撃を行い、その全弾が敵の障壁の一点に着弾していた。 田中が聞いたさゆみからの情報によれば、"藤本美貴"は自分や絵里を殺さない方針に変えたそうだが、 徐々に攻撃の威力に容赦がなくなっている。 二人が確実に退避しているから――というわけでもなさそうだ。 邪魔をするなら消すという方針に再転換したのか、...
  • (27)126 『ヴァリアントハンター Ver.Ai Takahashi』
    「ガアアアアアアアアア!!!」 低く濁った咆吼が辺り一帯に木霊する。 その咆吼を上げているのは、2メートルを軽く超える異形の者。 赤黒い肌の色、異常発達した筋肉、血走った双眸…常人であれば、この姿を見た時点で腰を抜かすだろう。 異形の者が吠える度に、その全身から吹き出すのは青白い光だった。 その光は大気を切り裂く空気の刃と化し、常人の目では視認不可能な速度で“標的”へと放たれる。 黒い服に身を包んだ小柄な女性は、目に見えぬ刃を紙一重で回避した。 その動きは、まるで風に靡く柳の如く。 一切の無駄を感じさせない回避を見せながら、女性は両手に持った拳銃を構えて発砲した。 放たれた弾丸は、異形の者の全身を覆う淡く輝く“障壁”へと命中する。 刹那、弾丸は破砕し―――鮮やかな黄色の閃光が障壁へと炸裂した。 「…そろそろ終わり...
  • (39)758 (ヴァリアントハンター外伝リゾナント作2)
    辺り一帯の建物は最早、原型を留めてはいなかった。 崩れ落ちたビルの残骸、分断された道路。 生命の気配など一切感じられないその一帯に、たった一つだけ無傷の建物があった。 エヴォリューション。 全国に存在するヴァリアントハンターを統括するユニオンの本拠地であり、 所属人員は千人を超える地上地下合わせて53階にもなる高層ビルである。。 一人、また一人。 エヴォリューションを目指して歩く人間がいた。 その手には、鈍く輝く武器。 ただならぬ殺気をその身から迸らせた彼らこそ、異形を狩る者“ヴァリアント・ハンター”である。 エヴォリューション前にある広場には、既に多くのヴァリアントハンターが集結していた。 その数、およそ千人。 ハンター資格を得たばかりの新人から、ユニオン創立時よりハンターとして活動してきたベテラン、 ギル...
  • (39)387 タイトルなし(ヴァリアントハンター外伝リゾナント作1)
    眠る女性から漏れる吐息の音が聞こえそうな程、部屋の中は静かだった。 白やクリーム色を基調とした部屋。 その部屋で眠るのは、全身に包帯を巻き付けられた女性が二人。 中野区にある警察病院、その中の一室。 病室の外では、看護婦や医師達がせわしなく動き回っていた。 もぞりと、ベッドの布団が微かに動く気配。 ベッドの脇に提示された名札には、亀井絵里と書かれている。 ちなみに、もう一つのベッドには高橋愛という名札が掲示されていた。 「ん…」 目を開いた絵里の視界に広がるのは、真っ白な天井。 ここは一体どこなのかと、絵里は反射的に起き上がろうとし。 刹那、全身に広がる苦痛に声を失う羽目になる。 全身に走る痛みが、絵里の記憶を呼び覚ましていく。 ―――それは、思い出すことを拒否したくなる程、恐ろしい記憶だった。 ...
  • (30)482 『少年の瞳(3)』
    「あ~ん?誰だよ…?」 吉澤が、今さっきまで命のやり取りをしていたとは思えない、気の抜けた声を出す。 しかし、次の瞬間吉澤は再び“戦闘者”の表情になると、銃を構えなおしドアへと近づいた。 襲撃が想定される場合、ノックされたドアに正面から近づくのは危険だ。吉澤はセオリー通りドア横の壁際に立ち、一度ドアノブを回して音を立てて見せる。 …しかし、外からは何の反応も無い。 「うおおおおい!!誰だあ!?」 突然、面倒になったのか、吉澤が大声を上げる。小春の肩がビクっと動いた。 「俺っす!ヒロシっす!」 さっきの少年の声だ。 「あ~んだよぉ!今取り込み中だっつの!!」 「スンマセン!ちょっとだけでイイす!みんな集まったんで!」 「…みんな… って…え? なんだよ…?」 吉澤はいぶかしげにつぶやくと、右手でドアを少し開けて外を透かし...
  • (30)938 『一弾で倒せ』
    傷つき倒れた野良猫一匹、身体は泥と血で汚れても瞳の光は失われていない。 「何故抗うの?」 「お前らが! お前らみたいな奴らが人の暮らしを平気で踏みつけようからや!!」 「勝てないことが判ってるのに戦うつもり?」 「そんなん、やってみんとわからんちゃ」 野良猫の前には女が一人。 取り立てて目立つところがないのが女の特長だというのは失礼か。 「いいこと、田中れいな。 あなたは高橋愛に利用されてる、新垣里沙に騙されているのよ。  i914という生体兵器として、この世に生を受けた高橋愛。  任務を忘れて組織を裏切った新垣里沙。  この二人に巻き添えにされているだけ。  あの二人に関わらなければ、  あなたやあなたの友人の亀井絵里、道重さゆみは戦いに巻き込まることも、傷つくことも無かった。  あなたたち三人があの二人の運命に付き合うこ...
  • (30)922 (俺シリーズ9)
    「…もうあのコ達には近づかないことね…。でないと皆、死ぬわよ…。」 出た、また出たよこの女のインチキ予言が…。 此奴、二言目には死ぬわよとか不吉な事ばかり言いやがって馬鹿じゃねぇ? …と、昼間の俺ならインチキ女の“お告げ”に失笑していただろう。 だがリゾナンターの恐ろしさをまざまざと見せつけられた今となっては悔しいがインチキ女に同意せざるを得まい…。 そう、俺の本能が告げている。“リゾナンターには絶対に手をだすな”と。 「近付くな、か…。おもしれー。かおりんにそんな事言われたらさ、益々戦いたくなってきたぜ。」 「大体ダークネスがあんな子供の集団に負けっぱなしで引き下がれるかっての。オイラの手で全員血祭りにあげないと絶対に気がすまないし。」 …多分、身長的にはお前の方が子供だと思うんだがな…。 そんなチビへのツッコミは俺の胸の内に仕舞っておこう...
  • (30)269 『唯、蒼空を希う(ただ、そうくうをこいねがう)(五言絶句)』
     春 ○  小 ●  住 ○  久 ●  靄 ●  娃 ○  居 ○  遠 ●  待 ●  依 ○  不 ●  如 ○  空 ○  幻 ●  穏 ●  冥 ○  乾 ◎  影 ●  安 ◎  闇 ● <詩題> 唯希蒼空 <韻目> 「寒」韻 <中国語読み> jiu(3) yuan(3) ru(2) ming(2) an(4) zhu(4) ju(1) bu(4) wen(3) an(1) xiao(3) wa(2) yi(1) huan(4) ying(3) chun(1) ai(3) dai(4) kong(1) gan(1)   ※( )内数字は現代中国語の四声であるので 平仄とは必ずしも一致していません <書き下し> 久遠(きゅうえん) 冥...
  • (30)951 『08.朝露が輝いた』
    愛ちゃんの要領を得ない指導のもと、なんとかオムライスを完成させることが出来た。 おいしく出来てるか心配だったけど、「私のよりおいしい」とか 「料理上手いなぁ」とか言いながら愛ちゃんは全て食べてしまった。 こんな夜中にオムライスなんて食べたら太ってしまうに違いない。 それでも嬉しそうにオムライスを食べてくれる愛ちゃんを見ていたくて、 私はそんなこと無いとは言いながらも止めることはしなかった。 また帰ったら練習しよう。 作り方を忘れないように。 忘れてしまったら、もう二度とこのオムライスは作れなくなってしまう。 「里沙ちゃん」 「ん?」 「また、会えるよな」 可能性は限りなくゼロに近かった。 もう一度スパイとして送られることはないだろうし、 何より…次に会う時は愛ちゃん達に私の記憶はないのだ。 「きっと…会える...
  • (30)962タイトルなし(闇さゆみ)
    全部消えてしまえばいいのに。 そう思う、多分、世界中のどんな人間よりもそれを…世界の破滅を願ってる。 触れるだけで外傷を治すことが出来る、この力。 でも、向きを変えてしまえば―――触れるだけで、そこから全てを消し去る力。 大切なものがあるの。 でも、その大切なものはいつまでもそこにあるとは限らない。 今がピークだと言うのならば。 後から形を変えて、崩れ落ちて、大切だと思った時の姿から変わってしまうというのならば。 「―――全てを消し去っても、いいでしょう?」 紡ぐ言葉に返ってくるのは、理解不能と言わんばかりの困惑した視線。 そうね、分かるはずもない。 私だって、いつからこんな感情が生まれたのか分からないんだもの。 皆、皆大好きよ。 大好きだから―――これ以上は望めないのなら、今を終わりにしたっ...
  • (30)308 『ヤダ』
    ヤダヤダヤダ、リゾナントに行きたい。 心の中で泣きながら、顔からは笑みを絶やさない。 それはね、芸能人なんだから色々と自由は制限されるのはしょうがないと思ってる。 でも今日は私の誕生日を祝ってくれるというのに、収録が延びに延びて終わりが見えない。 このままじゃみんなが帰っちゃうよ。 道重さんのパーティーは楽しかったな。 初めてのお酒で酔っぱらった道重さんはキス魔になっちゃうし。 私はジュンジュンとコンビを組んで、青空小春・ジュン子という名で漫才をして、ボケのくせにツッコミたがるジュンジュンのせいでケンカみたいになって、新垣さんに怒られたけど、楽しかったな。 あーあ、こんなことなら一緒にお祝いをしてもらっとくんだったなあ。 収録の中休みに楽屋に戻ったらメールが着信していた。 みんなからなんだろうな。 折角集まってくれたのにごめんなさい。 ...
  • (36)452 モーニング戦隊リゾナンターR 第8話 「嘆きの救世主」
    第8話 「嘆きの救世主」 襲撃者「A」の攻撃を避けれず異世界に飛ばされた愛。 そこは―夕闇が迫り人気も疎らな遊園地。 古ぼけたメリーゴーランドの側に倒れていた愛は見知らぬ二人の女性に介抱されていた。 友人同士らしい二人は、メリーゴーランドの照明が当たりはっきりと映った愛の顔を見ると、足早に去っていく。 置き去りにされた愛は浮かない顔。園内の洗面所で鏡に自分の顔を映し、「そんなに怖い顔なんかなあ」と呟く。 「すいません」と消え入りそうな声が…鏡には黒い髪の女性、先刻の二人組の内の一人だった。 道重さゆみという名のその年上の女性は「傷の手当てをさせて欲しい」と申し出る。 「大した怪我ではないから」と断った愛だが、道重の真剣な様子に押されて申し出を受けた。 愛の手を握ったまま、祈るような眼差しで見つめるばかりの道重に戸惑う愛。 「ごめんなさい」...
  • (36)178 「かなしみ戦隊リゾナンターミラクルズ」~(36)777 「YAH!愛したい!」
    (36)178 「かなしみ戦隊リゾナンターミラクルズ」 (36)295 「TOP!」 2009/11/09(月) 19 15 47.19 0 (36)324 「HEY!未来」 2009/11/10(火) 21 29 42.76 0 (36)354 「春の歌」 2009/11/11(水) 22 25 38.41 O (36)386 「青空がいつまでも続くような未来であれ!」 2009/11/12(木) 21 32 04.61 O (36)434 「声」 2009/11/13(金) 21 35 23.60 O (36)508 「レモン色とミルクティ」 2009/11/16(月) 06 18 03.06 O (36)543 「強気で行こうぜ!」 2009/11/17(火) 07 36 12.54 0 (36)576 「SHIP! TO THE FUTURE」 2009/11/18(水) 06 ...
  • (38)071 「ナインスマイル」~(39)851 「しょうがない 夢追い人」
    (38)071 「ナインスマイル」 2009/12/11(金) 09 27 48.97 0 (39)125 「レインボーピンク」 2009/12/14(月) 21 50 14.02 0 (39)170 「すき焼き」 2009/12/15(火) 21 54 55.10 0 (39)233 「Intro」 2009/12/16(水) 22 46 00.38 0 (39)316 「INDIGO BLUE LOVE」 2009/12/17(木) 21 42 15.50 0 (39)370 「HELP!」 2009/12/18(金) 22 01 36.66 0 (39)506 「「すっごい仲間」」 2009/12/21(月) 11 46 18.89 0 (39)557 「すべては愛の力」 2009/12/22(火) 10 33 37.75 0 (39)602 「HOW DO YOU LIKE JAP...
  • (26)388 『黒い羊(3)』
    「みんなを集めなきゃ…。このままじゃ…」 愛がふらふらと立ち上がる。 「みんなに… “見せる”んですか…?」 愛佳が訊く。 「…うん…。見せた方がいい…、よね?」 「…わかりません… 愛佳は… もう2度と見たくありません…」 「わかった…。あーしが見せるよ… 愛佳は一緒にいて…」 愛はメンバーをさゆみと絵里のツインルームに集めた。みなが思い思いにベッドの上やソファに座る。 愛佳は部屋の端の小さな椅子に座り、虚ろな眼差しでじっと床の一点を見ていた。 理由もわからずに集められたメンバーたちだったが、蒼ざめた愛の表情と、凍りついてしまったような愛佳の様子に、あきらかな異常を感じ取り、皆押し黙ったまま愛の言葉を待っていた。 「…みんな…、落ち着いて聞いて…」 静まりかえった部屋に、震えを帯びた愛の声が響く。 「愛佳...
  • 短歌集
    (20)110 名無し募集中。。。 2008/12/08(月) 10 10 04.88 0 呪われし 運命(さだめ)を抱きし 人間を  癒しと光が 導く未来(さき)は ――モデル絵里短歌 (20)464 名無し募集中。。。 2008/12/15(月) 23 25 09.37 0   紅き月 蒼い共鳴 碧色     彼女の行方は 暗闇の先 (25)098 名無し募集中。。。 2009/03/26(木) 11 29 04.71 O 幸せを 欲した魔女の その指に  静かに煌めく 永遠の光 (28)308 名無し募集中。。。 2009/05/31(日) 09 06 23.80 O 恐れない 一人の夜の その闇を  夜の先には 朝があるから 恐れない 一人の夜の その...
  • (30)258 『小春日和』
    やあ元気かい 久しぶり 君と別れてから一年以上になるのかな あの暗い路上裏で君と出会って 別れの時が訪れるまで ほんのちょっとの間だけど幸せだった どれだけ長く生きたとか どれだけお金をかけられたとかで 幸せは測れない どれだけ深く愛されたか どれほど強く求められたか その一瞬の大きさで幸せかどうかは決まると思う 君の尖った言葉に隠れた 優しさあふれる思いに触れた 君といた日々は 小春日和だったよ
  • (30)158 『小さな巨人』
    地には瓦礫の山と累々たる屍。 空に黒雲と鋼翼の悪魔。 たった今自分が命を奪った能力者集団の骸を睥睨しながら、後藤真希の心は乾いていた。 ―こいつらならと期待してたけど、ダメだったね。 失望と諦観が交じり合った溜息を吐きながら、絶望の大地へと降り立つ。 万が一、仕損じていたなら、とどめをさして、苦痛から解放してやるため。 だがそんな憐憫は無用のものだった。 燃え上がる炎、崩落する瓦礫以外に動くものはありやしない、いや、誰かいる。 ジャリッ、と何かを踏みしめる音が響く。 その音の大きさは、その音を立てた存在が後藤に敢えて自分の存在を知らせようとしていることを示していた。 そんなことをするのは? 「何だ、やぐっつあんが来たの」 後藤の冷たい視線の先には、背丈だけなら子供かと見紛うぐらいにちっちゃな女が立って...
  • (30)616 『戦場の天使』
    今よりも少し昔のこと、戦場には確かに天使がいた。 愛らしいその容姿だけがそう呼ばせたのではない。戦い方すら、美しかった。 彼女は常に微笑みを浮かべながら、流れるように舞った。 華麗に彼女が腕を振りかざしたそのあとに残るものは、戦意を失った敵兵たち。 その実力は、圧倒的すぎた。並び立つものなどなかった。 それでいて、絶対に相手を殺すことはなかった。血は流さないことが、彼女の信条だった。 「―――平和のためには、戦う。でも、そこに殺戮はいらないでしょ?」 彼女は、やはり微笑んでそう言っていた。 天使は絶対の技を持っていた。すべてを消し去る、誰にも止められない技を。 けれど決して、その力を解放することはなかった。 時は過ぎ、荒れ果てた戦場で、天使はその身体をひどく傷付けていた。 「なぜ、力を使わない? なぜ、弱く醜い...
  • (30)584 『日食の街で』
    「世紀の天体ショーがいよいよ始まろうとしています」 TVの画面では何がそんなに嬉しいのかレポーターがはしゃいでる。 彼の手には晴天を願った特大のてるてるぼうず。 重量と紙の強度が折り合ってないのか、頭がだらんと下がってる。 まるで絞首刑みたい。 誰かの幸福は誰かの不幸の上に成り立っているってこと? それがあなたの解答なの。 それとも人は生まれながらにして、与えられた運命に隷属するしかないとでも? ふんっ、精々はしゃいでな! もうすぐあんたの、あんた達の縋っている人生の定理ってやつをひっくり返してやるからさ。 「ドクターマルシェ! 奴らが、リゾナンターがやってきました」 何をそんなに慌てているのさ。 それは来るさ。 だって私が招待したんだから。 広大な廃工場の一角から潜入を果たしたようだ。 無駄のない動き。 密...
  • (36)800 「友達(♀)が気に入っている男からの伝言」~(38)022 「無色透明なままで」
    (36)800 「友達(♀)が気に入っている男からの伝言」 2009/11/25(水) 08 45 01.62 0 (36)835 「パープルウインド」 2009/11/26(木) 07 27 55.71 0 (36)861 「女子かしまし物語3」 2009/11/27(金) 07 48 30.63 0 (36)956 「Yes!POCKY GIRLS」 2009/11/30(月) 20 26 13.27 0 (37)015 「卒業旅行~モーニング娘。旅立つ人に贈る唄~」 2009/12/01(火) 22 05 53.43 0 (37)048 「直感~時として恋は~」 2009/12/02(水) 21 53 36.07 0 (37)083 「「すごく好きなのに…ね」」 2009/12/03(木) 21 36 30.55 0 (37)117 「がんばっちゃえ!」 2009/12/04(金) ...
  • (30)433 『小さな風使い』
    みんなには内緒にしていたけど、私には彼氏がいる。 彼の名は翔君。 私が子供の頃からお世話になっている病院にずっと入院している男の子だ。 彼は私よりもずっと重い心臓の病気で、子供の頃からずっと入院している。 病院内の児童教室で彼の書いた作文を読む機会があった。 その作文の中では彼はとっても元気で、ゆうと君という友達とドッジボールをしたり、女の子のスカートめくりをしていた。 みんな空想。 叶わない夢。 私はちょっと前、さゆや愛ちゃん、皆と出会う前の自分を見ているような気がして、たまらなくなった。 辛い検査、上向かない病状に苛立った彼が、治療を拒否していることを彼のお母さんから聞いた私は、 さゆを伴って彼を病院の中庭に連れ出した、そして。 「ねえさゆ」 「何なの、絵里」「ちょっとそこに立ってみて」 「こうって、キャー絵里のエッチ」 ...
  • (39)776  タイトルなし(かなしみ戦隊M 「Yes!POCKY GIRLS」 リゾナント作)
    776 名無し募集中。。。 sage 2009/12/27(日) 12 31 58.46 0 かなしみ戦隊M [M-A5-09](36)956 「Yes!POCKY GIRLS」 にリゾナント 私のせいで愛佳が怪我をした。 弱まる力、揺らぐ自信。 私の心はもう折れそうだ、まるでポッキーのように。 ポキッ 「リンリン」 「HAHAHA!久住サン元気出して下サイ。 久住サンは一人じゃナイ。 私たちがいるジャナイですか。  ほら見てください、このポッキー。 1本では折れますけどこうして3本合わせると」 ポキッ 「HAHAHA! 折れましタネ。 久住サン、私の言いタイこと判りマスぅ」 リo´ゥ`リ<「リンリンが私を元気付けようとして、しくじった事だけは分るよ」 ポキナント 783 名無し募集中...
  • (30)516 『おにんぎょさん』
    「ヒィ-ッ、誰か!!助けてくれぇ!!」 私のかわいいお人形さん。 もう、そんなに逃げ回らないでよ。 「おにんぎょさん♪ おっにんぎょっさん♪  わ・た・し・の・か・わ・い・い・お・に・ん・ぎょ・さ・ん・は・ど・こ・か・し・ら♪」 もういじわるなんだから。 ここは広くて探すのが大変なんだよね。 かくれんぼみたいで楽しいんだけどさ。 「ここかな~?」 ある部屋の扉を開けたが…いない。 「いないなあ。 どこだろう?」 部屋の外に出たら、何かが視界の隅っこを横切った。 追っかけて回廊に出たら、柱の影にうずくまるお人形がいた。 「おにんぎょさん、見っけ~!!」 「ぎゃあぁぁっ!!」 おにんぎょさんったら私を見たとたん、走って逃げ出しちゃった。 失礼しちゃう。何か傷つくなあ。まるで私...
  • (30)276 『kiss of life』
    道重さゆみは暗い病院の渡り廊下で立ちつくしていた。 亀井絵里の病室を訪れた帰り、病院を訪れているうちに顔見知りとなった、入院患者の少年がICU(集中治療室)へと運び込まれるのを目撃してしまったのだ。 少年は小児癌だと聞いていた。大人に比べ死亡率はそれほど高くは無いものの、進行が早い為予断を許さないのだ、とも…。 暗い廊下の奥から、誰かが歩いてくるのが見える。 病院には似つかわしくない、黒衣に身を包んだ女だった。長い漆黒の髪が陶磁器のように白い顔を浮き立たせている。 「さゆみ」と同じ顔をもつその女は、しかしさゆみとは全く異なる…、闇をしか見つめていないような、冷たい眼差しを持っていた。 「お姉ちゃん…!?」 驚きの声をあげるさゆみ。 「…『癌』というのは不思議な病気ね…。細胞が異常な増殖をはじめる…。そしてその細胞が消費する異常な...
  • (30)378 『光の抗争-5-』
            ◇◇ 白い十字架の前に立ち、祈りを捧げ、白い花束を置く。 それは信頼していたパートナーへの追悼の意。 あの時負った傷は治ったが、痕は残ったまま。 それも自分への戒めだと思い、そのままにしている。 空を見上げて、目を細める。 いつも以上に晴れ渡る空は、あの時に見た涙のように青く染まり、とても綺麗だった。 そして上げていた顔をまた十字架へと向け、腰に差している刀をゆっくりと撫でた後、その場を後にした。         ◆◆  「…っ……あーしは、…っ負けない……!!」 その強い眼差しは、先ほどまでほとんどが憎悪で彩られていたのに。 今では光を湛えて、内に秘める希望を胸にその瞳は輝いていた。  「…そうまでして戦おうとするのはなんで?」  「っ…あーしは、…世界中の、す...
  • (30)133 『マルシェの秘密』
    「おう、コンコン。何やってんだよ」 突然背後から聞こえた大きな声に、紺野あさ美は慌ててマウスを操作してウィンドウを閉じた。 「吉澤さんですか。もう、驚かさないでくださいよ」 冷静を装うあさ美の表情を楽しげな顔で覗き込みながら、吉澤ひとみは軽くその肩を叩いて笑う。 「なんだなんだ、また秘密の研究ってヤツ?今度は何企んでんだ?」 「人聞きが悪いですよ吉澤さん。私は組織に言われた研究をしてるだけです」 内心冷や汗をかきながら、あさ美は涼しい顔で吉澤の言葉を受け流した。 「ふーん、どんな?」 「それこそ秘密ですよ」 「何だよ、誰にも言わねーって。オレ、こう見えて口は堅いんだぜ?」 「別に吉澤さんのことを信用してないわけじゃないですよ。ただ、言えないだけです」 「ちぇ、相変わらず秘密主義だなー。オレとコンコンの仲じゃねぇか」 「ダメな...
  • (30)194 『孤独を癒すもの』
    暗い暗い暗い――― かつてないほどの闇が覆いかぶさってくる。 今までに経験したことのある、どんな暗がりよりもなお暗い闇が。 痛い痛い痛い――― 頭がおかしくなりそうなほどの苦しみだ。 生きていたときの苦しみとは比べものにならない。 怖い怖い怖い――― 死がこれほどに絶望的なまでの恐怖を伴なうものだとは知らなかった。 やはり安易に現実からの逃避に選んでいい道ではなかったのだ。 だけど―――もう―――    *   *    * 誰かに呼ばれたような気がしてゆっくりと目を開けた私の前に在ったのは、美しい一人の女性の顔だった。 ―どうやら無事に死ねたらしい 反射的にそんな考えが頭に浮かんだのは、その女性の際立って端麗な顔立ちや白い肌、長い黒髪に常世の国の気配を...
  • (30)546 『光の抗争-6-』
            ◇◇  ずっと昔から、孤独の中で生きてきた。  今でも、孤独だと思っていた。  幼い自分を闇から救ってくれたのは、今では闇を統べる組織の総統。  信頼していたパートナーは、自分とは違う目標を胸に秘め、気付いた時に自分がこの手にかけた。  ずっと、ずっと。 一人ぼっちだった。  生き残る為に、戦ってきた。  闇も光も無い新世界を作る為に、今は戦っている。  なのに、なんでだろう。  この悲しみは。苦しみは。  胸を少しずつ、締め上げる。  ずっと、ずっと。 昔から、少しずつ、この胸の痛みが。         ◆◆  「っガキさん!!…ガキさん…!!」  「…久し振りに、この力を使ったけど鈍ってはなかったみたいだね」  「……っこの…」 力、とは。それ...
  • (30)028 『07.恵みの雫』
    雨の中にリゾナントが見えて、なんだかとても懐かしい感じがした。 リゾナントに着いたということは、それなりに時間が経ったということだ。 いつもは嬉しくなるこのシルエットも、今は胸を締め付けるものでしかなかった。 ドアの前に着くと同時に、愛ちゃんが傘を閉じる為に繋いでいた手を離した。 ポケットから鍵を取り出し、扉を開く。 離された右手が寂しかった。 もう繋ぐことはないんだろうな。 そう思うだけで、視界が涙で滲む。 中は暗くて暖かかった。 ついさっきまで田中っち達がいたのかもしれない。 愛ちゃんは私にタオルを渡すと、自分も頭からタオルを被りながらキッチンへ入っていった。 「ガキさん、カフェモカでええやろ?」 「あ、うん」 頭をタオルで拭いていたら、さっきと同じ格好のままの愛ちゃんが 二つのカップを持って出てきた...
  • (30)293 『Friends』
    営業を終えた喫茶『リゾナント』の店内では、高橋愛、田中れいな、新垣里沙の3人がテレビを囲んでいた。今夜は、最近仲間に加わった、アイドルタレントでもある久住小春が、生放送の番組に登場するというのだ。 「今日は生やからね~!」「小春がテレビに出とるの見るのドキドキするっちゃ~!」 ワクワクしている様子の愛とれいなを見ながら、里沙は「その日はみんなで見てるよ!」と言われた時の、小春のなんとも言えない困ったような表情が気になっていた。 *** *** それはお笑いタレントがパーソナリティを勤める、軽いノリのトーク番組だった。 無難に番組は進み、番組の目玉である、ゲストの友人が登場してゲストへの手紙を読む、というコーナーに差し掛かる。 「では、お友達の方、どうぞー!!」 そう言われて、小春は息を呑む。 …いままでは、こんな時、『念写』と『幻術』の...
  • (36)339 『唯、黎明を待つ』
     奈 ●  麗 ●  中 ○  田 ○  落 ●  娘 ○  情 ○  野 ●  密 ●  孤 ○  願 ●  馨 ○  嘉 ○  歩 ●  響 ●  懐 ○  招 ◎  闇 ●  霄 ◎  昔 ● <詩題> 唯待黎明 <韻目> 「蕭」韻 <中国語読み> tian(2) ye(3) xing(1) hua(2) xi(2) zhong(1) qing(2) yuan(4) xiang(3) xiao(1) li(4) niang(2) gu(1) bu(4) an(4) nai(4) luo(4) mi(4) jia(1) zhao(1)   ※( )内数字は現代中国語の四声です <書き下し> 田野の馨 昔を懐かしませ 中情の願 霄...
  • (30)284 『言ってはいけない』
    「お願い、助けて」 「大丈夫、心配しないで。 あなたは私が助けるから」 女の人が脅えている。 可哀そうに、ぶるぶる震えてる。 髪も化粧も装飾品も派手なのが、彼女の感じている恐怖を引き立てている。 「さあ、こっちへ来て。 私が助けてあげるから」 「いやあーつ、寄るな。 化け物」 かわいそうな人。 気が動転して、敵と味方の区別がつかないのね。 「私はあなたを救うために、ここにいるのよ」 「寄るんじゃねえよ。 この化け物が」 汚い言葉。 手にはカッターナイフ。  危ないわ。 「頼むから落ち着いて。 私はあなたの敵じゃ無い。 私ならあなたを苦しみから解き放ってあげれる」 「ふざけんじゃねえよ。 この人殺しが」 「殺したって、何のこと」 「お前が、お前が、あの人を殺したんだ」 「あの人? ああ、あ...
  • (30)105 『復讐と帰還(10) R-again(前)』
    愛は、心で里沙に語りかけた。 里沙は、心で愛の声を聞いた。 ――ガキさん ――里沙ちゃん ――お姉ちゃん ―お姉ちゃん、聞こえる? … ―起きて、お姉ちゃん 精神の深層のさらに下方に存在する、人間のあらゆる感情や、原始的な衝動が生み出される源泉。 人間という存在の最も根深いものの一つ、混沌が支配し、感情と衝動が無秩序に渦巻く領域。 いかなる理性も、常識も通用しない神秘の象徴。 常人なら数秒、経験を積んだダイバーでも数分で精神を破壊される精神の暴風雨が吹き荒れる海。 サイコ・ダイバーはそれを、混沌の海と呼ぶ。 少女の声で眠りから覚めたサイコ・ダイバーは、その混沌の海に漂っている自分を発見した。 「ここは…そうか、愛ちゃんの中に潜って…」 サイコ・ダイバー新垣里沙は、自分の身...
  • (26)904 『黒い羊(6)』
    「逃がしたか…。まあ、とりあえず命拾いはしたわな…、お互いに」 愛はつぶやくと、里沙の元へと駆け寄る。 「ガキさん、大丈夫か!?」 「うん…、もう大丈夫。さゆのおかげだよ…ありがと」 服には電撃によるひどい焼け焦げが残ってはいたが、身体の火傷はほとんどさゆみの『治癒』の『能力』で回復したらしい里沙は、愛に手を引かれて立ち上がる。 「…勝ったね、愛ちゃん…」 「…どうかの…?まだこれからやったからな…」 そんな会話をする二人に、愛佳の号泣が聞こえて来る。 「あれぇ?ミッツィー、どうしたの?」 「…あ…、新垣さん…!ごめんなさい…!愛佳の『予知』がもっとしっかりしてれば…新垣さんもそんな目にあわなかったのに…」 「そんなことないよー、愛佳の『予知』のおかげでみんな助かったんじゃん!あたしだってほら、さゆのおかげでもう全然大丈夫だよ?」 ...
  • @wiki全体から「(30)906 『ヴァリアントハンター外伝(3)』」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索