201 名前:小ネタ 吸血鬼と少女[sage] 投稿日:2010/10/08(金) 23:00:11 ID:yQqUWT/H ―――ある吸血鬼の独白――― 貴女は人間。 私は吸血鬼。 貴女は美しく日の光を下を生き。 私は醜く夜闇の中を逝く。 私は貴女の血を吸って。 私は貴女という光を得る。 それがいつしか日常となって。 私は貴女に言った。 光を得られるのは一人だけ。 貴女という光を得た私は幸せだった。 血液なんてただの口実。 ただ貴女と話をしたかった。 ただ貴女に笑いかけてもらいたかった。 ただ貴女と一緒に居たかった。 貴女がただ私とだけ。 貴女という光を独占したかった。 貴女に分かるだろうか。 二度と日の光を浴びることの適わぬことを知ったときの絶望が。 夜の闇の孤独の中に消えねばならないことの絶望を。 そして、貴女という味方を、光を、愛する人を手にした喜びを。 私には貴女しかいない。 貴女にも私しかいないよね。 けれど、何であんな男たちと話しているのかな? けれど、何であんな子供に笑いかけるのかな? けれど、なんであんな家族と一緒に居るのかな? 私にとって貴女が唯一の光なのに! どうして貴女はそんな奴らと! 貴女のいない世界はあまりにも暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い! だから私は光(あなた)を取り戻した。 頑張って取り戻した。 奴らすべてを排除して。 だから、怒らないで? だから、あんな奴等のために怒らないで? 私から貴女を引き離そうとした下種な連中のためになんか怒らないで? もし、貴女が奴等のために怒っているのなら。 もし、その手の刃が私に向くのなら。 私は妬んで怒って狂って―――貴女を殺してしまうかもしれないから。 202 名前:小ネタ 吸血鬼と少女[sage] 投稿日:2010/10/08(金) 23:01:11 ID:yQqUWT/H ―――ある少女の独白――― 貴女は吸血鬼。 私は人間。 貴女は美しく月下を行き。 私は醜く惨めにヒトの世を生きる。 貴女は私の血を吸って。 私は貴女という光を得る。 それがいつしか日常となって。 そして、貴女は言いました。 光を得る者は一人だけ。 貴女という光を浴びた私は幸せでした。 血液だけではなくなっていました。 もっと貴女と話をしたいと思いました。 もっと貴女に笑いかけてもらいたいと思いました。 もっと貴女と一緒に居たいと思いました。 貴女がただ私とだけ。 貴女という光を独占したいと思い始めました。 貴女に分かるでしょうか? 集団の中に溶け込めず、1人惨めに過ごしていた女の子の気持ちが。 そして、貴女という味方を、光を、美しい鬼と出会えた喜びを。 体を重ね、私の血を提供する度に貴女の血液が私のモノで構成されていくことの恍惚を。 ある日、私の男友達が死にました。 ある日、私の弟が死にました。 ある日、私の両親が死にました。 体中の血を抜き取られて。 けれど、私は悲しいとは思いません。 不幸だとは思いません。 貴女のいない世界があまりにも暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗いことは良く知っていますから。 私には貴女という光があれば、私にはもう何もいらないのですから。 けれど、もし殺したのが貴女なら。 けれど、もし貴女が彼らの血を一滴でも吸ったのなら。 私ではなく彼らの血を一滴でもその身に取り込んだのなら。 貴女が私で無くなったのなら。 私は妬んで怒って狂って―――貴女を殺してしまうかもしれません。