2013年度


第17回研究会

  • 日時:11月29日(金)17:30-20:00
  • 場所:上智大学四ッ谷キャンパス2号館1015a室
  • タイトル:「1920年代のブラジル移民運動とその思想的背景」
  • 報告者:アンドレ・小林・デックロウ

【要旨】
本研究は、日本政府の戦前のブラジルへの国策としての移民運動の思想的背景を分析するものである。1920年代のブラジルへの移民運動は、帝国日本の経済発展政策および人口政策の一環として 推進されたものであった。本研究では、北大学派の高岡熊雄など当時移民を推進した学者や政治家 の文献を参照しながら、ブラジル移民政策が推進された要因を明らかにする 。

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第16回研究会


  • タイトル:『ムラの国際結婚再考』から東アジアにおける結婚移住現象の比較研究へ
  • 報告者:武田里子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員)
  • 日時:2013年7月26日(金)18時~20時
  • 会場:上智大学四ッ谷キャンパス2号館5階510室
【要旨】
アジアは女性の国際移動が顕著な地域である。それを特徴づけているのが家事労働者と結婚移住者である。特に後者は受入国のエスニシティや社会変容に関わることから注目が集まっている。本報告では、はじめに80年代に社会的注目を集めた「ムラの国際結婚」で来日した結婚移住女性の多様な実像から、女性たちの適応過程に農村コミュニティの変化が関わっていたことを明らかにする。次に、「編入モード」の概念を手掛かりに、90年代半ばから国際結婚が急増した台湾と韓国における結婚移住女性の受容のあり方について日本との比較を試みたい。なお、後者は研究途上のため、試論的報告になるが、参加者との議論を通じて今後の示唆を得たいと考えている。

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第15回研究会
  • タイトル:「国策小説」における満洲開拓イデオロギー研究
  • 報告者:安志那(東京大学総合文化研究科博士課程)
  • 日時:2013年6月7日(金)17時半~20時
  • 会場:上智大学2号館10階1015a室
【要旨】
本報告では、日中戦争から終戦まで、「国策」である戦争遂行に協力するための所謂「国策文学」の中で、「満洲」開拓を題材とした小説を分析の対象とする。当時、「国策団体」に参加した作家たちは、国家の支援を得て現地視察、旅行、調査などを行い、「満洲」移民を奨励するための文学作品を創作した。しかし、文学作品のイデオロギーはただ作家個人のみに還元されるものではない。作品の内容を具体的に検討することで、これらの小説で描かれた現実と、掲げるイデオロギーの間の亀裂が内包する限界を可能性を模索したい。

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第14回研究会
タイトル:在韓の「在日コリアン」日本語教師のアイデンティティと日本語教育における位置取り
  • 日時:2013年5月10日(金)17時半~20時
  • 会場:上智大学2号館10階1015a室
  • 報告者:田中里奈(山口福祉文化大学/日本語教育学)
【要旨】
本報告では,在韓「在日コリアン」の日本語教師(日本で生まれ育ち,成人してから韓国に「帰国」し,日本語教育に携わっている/いた教師)のライフストーリーを取り上げ,「言語=国籍=血統」という思想が根強い日本語教育の中で,彼らが自身をどのように捉え,位置取りを行っているのかを考察する。具体的には,日本語教育という文脈において,「在日コリアン」という「カテゴリー」の明示化や本名/通称名の使い分けなどの「戦略」が使われる意味について検討していく。《母語とする言語》と《国籍》,《血統》との間にズレをもつということが,言語教育や韓国社会という文脈の中でどのような意味をもつのかを明らかにしていく。(なお,本報告は2012年度に提出した博士学位論文の内容に基づいている。)









2012年度


第13回研究会
タイトル:「1940年代以降におけるハワイ日系人社会の重層化」・日時:1月18日(金)17時半~20時
  • 場所:上智大学四ッ谷キャンパス2号館10階2-1015a
  • 報告者:秋山かおり(総合研究大学院大学博士課程・松本市立博物館、歴史学)

【要旨】
本報告では、1940年代に日系人がハワイ社会においてどのような位置にあったのかを新聞記事・社会学的な統計・オーラルヒストリーなどから考察し、1940年代までに日系人が築いていた太平洋戦争以前、以後のハワイ社会の再検証をおこない、日系社会が経験した変容を多様化ではなく、「重層的」として検証する。その際、変容の起因は太平洋戦争による日系人のアメリカニゼーションであったとする見方を再検討することを目的とする。

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第12回研究会
タイトル:沖縄返還後の沖縄の社会変動と琉球華僑
  • 日時:12月21日(金)17時半~20時
  • 会場:上智大学四ッ谷キャンパス2号館10階2-1015a室
  • 報告者:八尾祥平(早稲田大学アジア研究機構助手、社会学)
【要旨】
本報告では1980年代から1990年代にかけての時期の沖縄の社会変動が在沖縄台湾系移民である琉球華僑に与えた影響を明らかにする。沖縄返還後の沖縄は政治的には様々な制度が日本の法体系と一体となるなかで、経済的には基地経済から財政依存型経済へと構造の転換がみられるようになった。また、1980年の中華民国・台湾における一般人の海外渡航の解禁は沖縄と台湾の間の人の移動を大きく転換した。こうした変化があわさる形で沖縄においては琉球華僑が観光産業に集積することになるのだが、こうした集積の社会的な過程を分析することを通して琉球華僑が地域の社会経済構造に深く組み込まれ、決して地域社会における「よそ者」ではもはやなかったことを実証的に明らかにしたい。

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第11回研究会
タイトル:在日朝鮮人の「民族」をめぐる経験と実践の社会学
  • 日時:11月30日(金)17時半~20時
  • 会場:上智大学四ッ谷キャンパス 2号館10階1015a室
  • 報告者:李洪章(日本学術振興会特別研究員PD、上智大学客員研究員)
【要旨】
本報告では、報告者が今年提出した博士学位論文の概要を紹介する。報告者がこの論文で目指したのは以下の2点である。
ひとつは、現代日本社会に生きる在日朝鮮人の、生活レベルでの民族経験を詳述することである。朝鮮半島の分断状況や、民族抑圧状況などによって規定される在日朝鮮人の民族的経験のあり方は、きわめて多様化していると言われている。しかし、その経験のあり方を個人に根差して詳細に明らかにしようとした研究の蓄積は十分とはいえない状況にある。それに対し、多様な背景をもつ在日朝鮮人個人の語りを通して、かれ/かのじょらにとっての日常において経験される「民族」に迫りながら、多様性の中身を描き出すことを試みる。
いまひとつは、民族実践の記述である。民族経験が多様化するなかで、在日朝鮮人の連帯はいっけん解体の一途を辿っている。しかし、民族差別は、決して在日朝鮮人個人にではなく、あくまでも民族集団に対して向けられているものであり、したがってそれに対する抵抗は「民族」を単位としてしかありえないのが現実である。そのことを前提にするならば、従来の連帯に代わる、在日朝鮮人の民族経験に即した共同性の新しいかたちが示される必要があるだろう。そこで、個人による民族経験への対処のあり方(民族実践)に着目したうえで、「開かれた共同性」を実現するためのコミュニケーションのあり方、あるいはその基軸に据えられるべき普遍的な原理について検討する。

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第10回研究会
■ 第1報告(13時半~15時半)
タイトル:「“在外同胞”の「復帰」支持:「布哇タイムス」、雑誌「おきなわ」、「沖縄新民報」から考える日本とハワイの1951年沖縄帰属論議」}
  • 報告者:上地聡子(早稲田大学)
  • コメンテーター:飯島真理子(上智大学)
【要旨】
戦前より沖縄と緊密なネットワークを維持し、同戦争の後も盛んに沖縄救援活動を展開した在ハワイ沖縄人が、1951年のサンフランシスコ講和会議直前に焦点となった沖縄帰属問題に対してどのような態度を示したのか。在沖縄米軍基地の駐留を容認した上で日本主権保持を主張したといわれている在東京沖縄人の「復帰」主張をどう読み解くか。本報告ではハワイと東京という沖縄の「外」に生活していた沖縄人が同帰属問題に対して示した反応を、ホノルル、東京、福岡で出版されていた沖縄系出版物を対象に分析し、沖縄人「同胞」と帰属問題との間に存在する緊張関係を明らかにする。

■ 第2報告(15時45分~17時半)
タイトル:「1930年代の東京における日系アメリカ人二世留学事業と日本植民地主義」
  • 報告者:東栄一郎(ペンシルバニア大学)
  • コメント:蘭信三(上智大学)
  • 吉田編著『アメリカ日系二世と越境教育-1930年代を中心に』(不二出版、2012年)の東論文に基づく報告。

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第9回研究会
タイトル:「在英ブラジル人についての基礎的調査研究」
  • 日時:6月1日(金)17時半~20時
  • 会場:上智大学2号館10階1015a室
  • 報告者:ヤマグチ・アナ・エリーザ(上智大学)
【要旨】
報告は、大きく3つに分かれる。①ロンドン市内にあるエスニック・ビジネスとブラジル人集住地の地理的空間を紹介する。②ブラジル人のイギリスでの法的地位と移動戦略の相互関係を明らかにする。③彼ら彼女らは、ロンドンでどのように生活し、具体的にどこで働いているのかを社会学的な調査方法により分析し、インタビュー調査からブラジル人の基本属性を明らかにする。






2011年度


第8回研究会
タイトル:ブエノスアイレスにおける「シリア・レバノン人」の創出
  • 日時:2012年3月9日(金)午後3時~5時
  • 会場:上智大学四ッ谷キャンパス 2号館10階1015a室
  • 報告者:大場樹精(上智大学大大学院GS研究科博士課程・日本学術振興会特別研究員DC)
【要旨】
 オスマン・トルコ帝国下の大シリア地方を出自とする移民は、「祖国」をもたずにアルゼンチンへと渡った。彼らは近代化のさなかにあったホスト社会アルゼンチンでは、非西欧からの移民であったために「トルコ人」と呼ばれ、望まれざる移民としてのカテゴリー化を経験する。本報告では、この20世紀初頭のブエノスアイレスを舞台とした彼らの集団化を、「シリア・レバノン人」というエスニック集団へと凝集する過程として論じる。


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第7回研究会
タイトル:移民・ケアワーク・国家-東南アジアからのケアワーカーを迎えて
  • 日時:11月18日(金)午後5時半~7時半
  • 会場:上智大学四ッ谷キャンパス 2号館13階1315室
  • 報告者:小川玲子(九州大学法学研究院)
【要旨】
 日本と東南アジアとの経済連携協定(EPA)により、2008年以降、インドネシアとフィリピンから1000名以上の看護師・介護福祉士候補者が来日し、全国の病院や介護施設で就労をしている。本報告では、これまでの調査結果から明らかになったことを提示し、今後の制度構築や移民研究とケアワーク研究の問題領域について議論したい。


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第6回研究会
タイトル:現代日本の入国管理政策をめぐる考察
  • 報告者:明石純一(筑波大学)
  • 日時:2011年7月1日(金)18:00-20:00
  • 会場:上智大学2号館5階510室 
【要旨】
本報告では、報告者の近著『入国管理政策:「1990年体制」の成立と展開』(2010年、ナカニシヤ出版)を取り上げ、その内容を概括、検討していきたい。とりわけ、筆者が問題関心を向ける「入国管理」を主題化することの意義を明らかにしつつ、国境を越える人の移動の政策的管理をめぐる今日的課題を模索する。


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第5回研究会
タイトル:「在日韓国・朝鮮人の結婚事例にみる<民族>の現在」
  • 報告者:橋本みゆき(立教大学他非常勤講師)
  • 日時:2011年5月20日(金)18時~20時
  • 場所:上智大学2号館9階 915号室
【要旨】
 韓国併合から100年。在日韓国・朝鮮人は世代を重ねるに伴って、「民族に関する認識・行為」のあり方を変化させてきたのではないだろうか。本報告では、報告者の博士論文が元となった『在日韓国・朝鮮人の親密圏』(2010年、社会評論社刊)に収められている結婚インタビュー事例を素材として、その一様でない形を描いてみる。


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第4回研究会
タイトル:ポルトガルにおける移民政策の変遷}
  • 報告者:西脇靖洋(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科特別研究員PD)
  • 日時:2011年4月15日(金)17:30-19:30
  • 場所:上智大学2号館5階 506号室
【要旨】
欧州 の小国ポルトガルにとって、近隣諸国や植民地諸国をはじめとした「外部」との関係構築は、独立や発展において重要な課題であり続けてきた。よって、対外関係のあり様が移民政策を含む政策領域にも重大な影響を及ぼしてきた。本発表では、対外関係との関連性に注目しながら、同国の移民政策の変遷について検討する。





2010年度



第3回研究会
タイトル:『日本の移民政策と多文化共生のあり方をめぐって』
講演者:近藤敦 (名城大学法学部教授)
日時:2010年12月3日(金) 17:30ー19:30
開催場所:上智大学四ツ谷キャンパス2号館5階506号室
【要旨】
欧米諸国との比較から日本の移民政策の特徴、その歴史性、現在の問題点、将来展望を体系的に論じる。いまなぜ移民政策が必要か、その課題は何か、そして向かうべき多文化共生の姿を指し示したい。


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第2回研究会
タイトル:『ポストナショナル市民権の国際社会学』
報告者:樽本英樹(北海道大学大学院文学研究科社会システム科学講座准教授)
日時:10月22日(金)17時半―19時半
場所:上智大学2号館5階510会議室
【要旨】
登場してからほぼ20年の年月を重ねた国際社会学は、グローバル化する世界の中でますますその重要性を増している。特に、人の国際移動に関わる国境管理、格差、統合、統治を重要な研究課題とすることになる。それら課題にアプローチするひとつの鍵が市民権である。市民権は、国家や市民社会の伝統的な境界や結びつきを超えて社会を再編する社会的道具として期待を集めてきた。しかしその期待はかなえられるのだろうか。アジアの動きにも配慮しつつ、考察していきたい。


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第1回研究会
タイトル:『EUが促すグローバル化秩序の変化-国境管理分野における欧州連合の観察』
報告者:岡部みどり(上智大学法学部准教授)
日時:2010年7月23日(金)17時30分~20時
会場:上智大学四谷キャンパス2号館5階506会議室
【要旨】
本報告は、人の出入国管理を目的とする国境管理分野での欧州統合が、現在のEU域外世界に及ぼす影響を検討するものである。シェンゲン協定により域内 国境での検問が撤廃されて以来、欧州統合は、経済統合を通じた安全保障共同体の実現に加えて、域内開放空間の治安維持という新たな目的を掲げることになった。EU加 盟国の国籍を持たない人々の社会統合を含めた、社会保障、公的福祉の加盟国間協調という選択肢があったにも拘わらず、EUは域内の社会問題を域外で解決しようとし、またそのための手段を外交のうちに見出すこととなった。EUが実践するこのような「移民外交」が、グローバル秩序の変化にどのように関与しているかを、本報告において明らかにする。












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最終更新:2015年02月12日 09:27