きみはともだち

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  • きみはともだち
    「 ははっ、なんだよ、そんなことで落ち込むなんて。きみらしくないよ、元気出して。 ぼくがきみの役に立つって言うんなら、いつだって飛んで行くし、いつまでだってそばにいてあげる。 うまく言葉が見つからないけど、もしもぼくの声がきみの心を癒せると言うのなら、ぼくにも相槌を 打つくらいならできるから。 思えばきみとぼくは、まるで合わせ鏡みたいだね。きみが笑えばぼくも釣られて笑って、きみが 怒ればぼくも負けずに意地張って……でも、でもね。 ぼくが寂しい時に、わざわざぼくに付き合って上手く話を聞いてくれたきみ。それこそ相槌ひとつで 心を軽くしてもらったこと、今ではすごく感謝してる。 だから今は。今きみが泣いていても、ぼくは一緒に泣いたりしない。 だってそれじゃ何も変わらないし、それでいつかきみがいなくなりでもしたら、ぼくは本当に困るから。 うん、その、...
  • 4スレ
    ... アイマス小噺 きみはともだち ファイナル・ステージ 春香エンジェル 花は降り降り 霞のかかった夢の中で ある夜の帰り道 世界はキラキラ 小噺323 her definition 保守小噺366 three months later オフリミット~猛犬に立ち向かう メルヘンメイズ やよいの大冒険 プロローグ 第1話 おかしの国  ~やよいと不思議なシャボン玉~ 第2話 きかいの国  ~スーパーヒーロー真ちゃん?~ 第3話 みどりの国  ~響け! 千早の心の歌~
  • レシP ◆KSbwPZKdBcln作品
    ... 20100204 きみはともだち 菊地真 秋月涼 6 022 20101018 オフライン 水谷絵理 サイネリア 6 044 20101126 メロディ 秋月涼 桜井夢子 6 054 20101211 親友 萩原雪歩 6 133 20110211 ハミングライフ 我那覇響 6 141 20110219 4人のシンデレラ 秋月律子 双海亜美三浦あずさ 水瀬伊織 アイマス2、竜宮小町 6 121 20110223 You re my destiny 我那覇響 三浦あずさ 6 305 20110803 宵闇偶像草紙 秋月律子 秋月涼水瀬伊織 如月千早 クロス(宵闇眩燈草紙)、キャラ改変、オリキャラ 6 332 20110813 たるき亭の小川さん 三浦あずさ 小川さん キャラ改変 6 353 20110914 ふくれづき 高槻やよい 7 007 2011...
  • 『curtain raiser』
     暗い舞台に真上から、まばゆい光が降り注いだ。  ざわ、とどよめく客席に、あれ誰だ、とか、えっまさか、みたいなひそひそ声が聞こえてくる。まずは静かに、お辞儀とともに一言。 「本日は星井美希のコンサートにお越しくださり、ありがとうございます」  私の声には特徴がある。知ってる人なら間違えないくらい。案の定、気づいた人がいた。 「伊織ちゃん!」 「いーおりーん!」  舞台上の正体を知った会場の空気が一変する。そこからゆっくり、十まで数えた。  そろそろいいかなとあたりをつけて、マイクを構えて息を吸う。ゆっくりとした動きで指を開いた右手を、真上に向ける。 「さぁてっ!」  しん。私の一喝で、観客が息を潜めた。 「美希のために来てくださったファンのみんなに……」  五本指を右端の観客に移動。そこから呼吸に合わせて、反対端のファンまで順繰りにたぐりよせてゆ...
  • ハミングライフ
     夕方4時。  俺はいつものように、細く開けてある窓からベランダに出た。  檻はどうしたって?鳥や犬猫が開けられる程度のもの、俺ができない筈がなかろう?下の段に前足をかけて、歯で持ち上げて下に隙間を作る。隙間にもう一方の前足を差し入れて、広がったら今度は鼻面を突っ込む。そして首の力を頼りに格子を持ち上げれば完成だ。以前に檻が落ちたとき針金がゆがんで、ちょっとしたコツで入口が開けっ放しにできる。俺が檻を出入りできると彼女に知れたらコトなので、彼女が戻るまでには必ず檻の中に帰ることにしているのだ。……え?俺は誰だって?  俺の名はハム蔵。我那覇ハム蔵、あるじの響に飼われているハムスターだ。  今日は昼まではいい陽気だったが、さっき突然夕立が始まった。あるじの響は今朝たまっていた洗濯物を一気に干して出て行っており、これは少々残念なことになりそうだ。俺の力ではどうしようもないこ...
  • ボクノメガミ前編
     それは、僕が中学2年になって少し経った、初夏の夕方のことだった。  梅雨入り宣言はまだだったけれど、今日は朝からひどく胡散臭い天気が広がっていた。授業が 終わり、部活もないので帰ろうと校門を出たあたりで空は真っ黒になり、帰り道の半分を小走りで 行き過ぎたところで水を貯め込んだ雨雲がついに決壊した。  これはいけないと目前まで来ていたショッピングモールに飛び込み、僕はしばらく雨やどりを することにした。 「うわあ、傘もって来ておけばよかったなあ」  モールの出入り口、似たような境遇のたくさんの人に紛れて小さく悪態をついた。あんな空模様 だったけど降水確率は10%だったのだ。モールの雑貨店はあわただしく雨傘のワゴンを店先に 並べ始めて、サラリーマンの人が諦めたようにそれを買いに歩き出すけれど、当然僕にはそんな 余裕はない。  天気予報を信じるなら、...
  • ファイナル・ステージ
     その日春香は、いつもより早く目が覚めた。恐らく緊張からだろう。無理もない、今日は 彼女にとって、今までの総決算となるべき大事な日なのだ。ずっとずっと追いかけてきた 自分の夢が、今日、ようやく一大イベントとして実を結ぼうとしている。  春香は、ベッドの上で起きあがったまま、ぼんやりと今までのことを考えた。アイドルとして デビューしたあの日が、もう遠い遠い昔のことのように思えた。それから、今日これから 大勢の人の前でなすべきこと、終わった後のこと、そして明日からのことを考えた。  昼過ぎになると、プロデューサーが彼女を車で迎えに来た。本当は、春香も自宅から 両親たちと一緒にタクシーで向かい、プロデューサーと現場で合流するという予定のはずだった。 「いくら私の家が遠いからって、わざわざ迎えに来るだなんて…」春香は笑った。  確かにこんなのは破格の始まり方だ。...
  • ふたりの食卓
    「そうなんだ。それでどうなったの?響」  フライパンの温度を探り探りしながら、ソファにあぐらをかいてる響に訊ねる。響がボクの家に来るのももう3度目か4度目で、勝手知ったるなんとやらって感じ。 「いやー危機一髪だったさー。ねこ吉が気づいてくれて、こっち帰ってきてくれたんだ」 「そう、よかったぁ」  今日は二人でスポーツ特番の収録だった。まだまだ駆け出しのアイドルとなると収録現場もなかなかハードで、なんかめちゃくちゃお腹へったねって話になって。  ちょうどボクの家のほうが近くて、父さんも母さんもいなかったから都合いいやって思って、誘ってみた。 「まったくさー。ネコのくせに落ちて怪我でもしたら一大事だったよ」 「ボクが言ってるのは響のことだよ」 「え、自分?」 「きみのネコ吉ももちろん心配だけど、響が怪我したらそれこそ大変じゃない」 「え……真、きみ自分の...
  • 宵闇偶像草紙
     さて本日は陽気もよく、風爽やかにて乾きまこと好日である。 「ふあ……」  縁側で老猫よろしく寝そべり、見るものが見れば目玉を飛び出させるに吝かでなかろう 稀覯本を枕に呑気な欠伸をご披露するは失礼、僕こと秋月涼太郎と言う。  齢二十歳過ぎ、現在の職業は医者……現在の、と言うには理由があるのだがそこは ひとつ気にされぬよう願いたい。医者ではあるが診療所を構えているわけでも大病院に 勤めているわけでもない。この街の物好きを飯の種にしている回診医、といえば まだしも聞こえが良いが、要するに自分の医院も持てずにこうして従姉の家に 上がり込み、その商売の手伝いをしながらちびちびと小銭を溜め込んでいるという、 そんな結構なご身分である。 「涼太郎、涼、涼の字」  斯くの如き立場であるから従姉殿にはすこぶる頭が上がらない。こちとら手前の 食い扶持ひとつ稼げない居候、かたや萬小間物商として江戸の昔から名の...
  • メロディ
    僕と彼女の手の中に、ひとつひとつのレジ袋。 中に入った買い物は、タマネギ人参、肉・お芋。レシピを訊ねてきた時は内緒だよって言ったけど。 まあ、わかるよね、これならば。カレーのルーも買ったから。 「カレーって、けっこう家によって味違うわよね。私、割とうるさいわよ?」 「へえ、どんなのが好きなの?夢子ちゃん」 「美味しいのが好きね」 「……あ、そう」 答える顔は自慢げで、自分がなにを聞かれたか、そうしてなにを答えたか、カケラも気にしてないみたい。 もっともそれが隣の子……肩で風切り機嫌よく僕より先を歩いてる桜井夢子のいいところ。 今日は彼女と収録で、お互い午後はお休みで、これから何かしようかと誘った時の会話では。 『お腹すいちゃったわね、なにか食べない?』 『うん、僕もどうしようかって思ってたんだ。今日は予定なかったから、家で何か作ろうかって思ってたんだ...
  • はい。その真っ赤なのをお願いします
     ぽかぽかと暖かい陽気に、思わず出掛けてしまいたくなる春の午後。 都心から離れた田舎にある、どこにでもありそうな小さな家のどこにで もありそうな小さな部屋で、一人の女性が 座っている。 ピンクの壁紙で小物があちこちに置いてある、いかにも女の子が使っていますという部屋の真ん中にいる女性の前には1つのダンボ ール箱。開いたままの扉の向こうに見える クローゼットの中の様子から、どうやら仕舞い込んであったものを出してきたようだ。  いま女性が見ているのは一枚の紙。ダンボールの中に閉まってあったそれには拙い文字でこう書いてあった。 『 わたしのお母さん 2年1くみ あまみはるか  わたしのお母さんはえらいです。おうちでたくさんはたらいています。なんでもします。おそうじにおせんたくにおりょうりをします。わた しが手つだっても、お母さんみたいにうまく出きません。 ...
  • 無題(90)
    「あ、プロデューサー、あそこ見てください。男の子」 「どうしたんだろう、あんなに泣いて」 「ねえきみ、どうしたの?・・・え、上?・・・あ、木に」 「風船がひっかかって。さっきの握手会のか」 「あ、ボク憶えてる。一番前で応援してくれてた子だよね?どうもありがとう」 「風船離しちゃったのかあ。ごめんな、風船はもうないんだよ」 「プロデューサーちょっと待ってください。たぶんあれ、取れると思います」 「取れるって?え、真、お前まさか登っ・・・こっこら、やめっ、あぶっ」 「へっへー、大丈夫ですっ!んしょ、よしょ、っと・・・よし、取れた!おーい、取れ――」 ミシッ・・・バキッ・・・バキバキバキッ 「――わああーっ!?」 「真ーッ!」 ガシィッ 「・・・あ、れ・・・無事・・・?」 「むきゅう」 「うわーっ!ぷ、...
  • Home Place
    「こんばんわー。やよいいるかー?」 「おー、響じゃないか」 「あ、セクハラプロデューサー久しぶりー。元気だった?」 「……人聞きが悪くてたまらないんだが」  ある日の夜のこと。珍しく起伏のない一日で小鳥さんも定時で帰宅し、留守番状態の俺が 一人でいる事務所に現れたのはライバル事務所のトップアイドルだった。 「やよいなら伊織と二人でレッスンだよ。もうすぐ帰ってくるけど、時間平気か?」 「うん、今日はもう帰るだけだから。待っててもいい?」 「構わないよ。ただしスパイ行為は禁止だからな」 「ふっふっふ、自分を招き入れたときからすでに諜報戦は始まってるんさ。今日こそセクハラ 行為の証拠を掴んでやるからね」 「我々はスムースかつシークレットにセクハラを遂行するのだ。すなわちスリーSだな。 この技術力、きみに見抜けるかな?」  後半のやりとりは彼女と...
  • Wing gainer
     コツはいくつかある。あるが、全てエッセンスは同じだ。「少し不安になる くらい」、それが最大のポイント。  少し不安になるくらい、中火の上に置き放って。  少し不安になるくらい、たっぷりの油をなじませて。  少し不安になるくらい、粉を溶かした水を回して。  そして少し不安になるくらい、のんびりじっくりと蒸し焼きにするのだ。  黒い鍋肌に白い膜ができ、それがふつふつと泡を出し、やがて茶色く 焦げてゆく。  薄く見えるが小麦粉の皮は意外と頑丈だ。まして焼き固めるにつれ 丈夫になってゆく皮膜は、内側の具をほどよく煮込むまで充分な時間を 必要とする。家庭用コンロの中火は見た目以上に熱量が少なく、フライパンは テフロン製、それに油をたんと含ませれば、昔の鉄鍋とは違ってそうそう 焦げ付くことはない。  そんな御託を並べているうちに、旨そうな餃子が焼き...
  • 無題13
    ―――そうね、あれは私が小学校に入ってすぐだったかしら 夜中に目が覚めて、全然眠れなくなった時があったの なんで目が覚めたか?そんな事まで覚えてる訳無いじゃない、10年近く前の話よ? それはともかく、全然眠くならなかったから眠るのはあきらめて布団を出たの まあ、ちょっとした探検気分ね、今思えば何かが変わる訳でも無いけど あの時の私には夜中の家はお化け屋敷みたいに思ってた……と思うわ。 ……想像したら震えて来た?あなた、お化けが苦手って言っても限度があるでしょう? 落ち着いた? それじゃあ、続きだけど……まあ、そんな訳で夜中の家を探検してたんだけど 誰もいない家がだんだん怖くなってきたの、ママもパパも別の部屋で寝てたから 何笑ってるのよ……ママをママと呼んだら悪い? 確かに意外って言われるけど、あなたに笑われるのは気に入らないわね ...
  • 『wafer girl』
    「懐かしいな、こういうの」  四角い駄菓子を片手に持って、しげしげと眺めた。  『765エンジェルウエハース』と書かれたそれは新発売となる、765プロのアイドルたちのトレーディングカードを封入したスナック菓子だ。  デスクの俺に視線を合わせてかがむやよいは、不思議そうに俺の顔と駄菓子を見比べて言う。 「プロデューサーも、こういうの食べてたんですか?」 「おーよ、俺たちの時代にはものすごいブームだったんだぞ。あん時はおまけがシールでな、たくさん持ってる奴が一番えらかったんだ」 「へー、そうなんですか。そうしたらすごいお金持ちじゃないとダメだったんですねっ」  あの当時の騒ぎは、子供心にも記憶が残っている。シール欲しさに食い物を粗末にした者もいた、なんて話をしたら、やよいにこってり叱られるのは俺の方だろう。 「でも今は少しやり方が違うよな。友達と、ダブったやつ交...
  • 七草十草
     2010年のお正月もそろそろおしまいです。三が日もとうに過ぎ、週の終わりには学校の 授業が始まります。  芸能プロダクションである私たちの会社では、仕事納めや正月休みはむしろよくない ジンクスになってしまいますが、去年から今年にかけてはありがたいことに、社長や私や 他のスタッフの皆さんはほぼ休日返上となりました。ええ、初詣も事務所の裏の神社です。 いいんです縁結びの神様だっていう話ですし。  なにより、私たちよりずっと頑張っているアイドルのみんなのために、私たちにできる ことがあるんですから、それを喜ばなければなりません。 「お疲れさまです……おっと、小鳥さんだけですか?」 「あら、プロデューサーさん」  事務所のドアを開けて入ってきたのはプロデューサーさんでした。 「お疲れ様です。皆さん上がりですよ、もうこんな時間ですしね」 「えっ、まさ...
  • Brand New Fairy
    「社長、お呼びでしょうか?」 「おお、待っていたぞ。実は、新たに君にプロデュースを始めてもらおうと思ってだね。」 「は、はい。」 珍しいこともあるものだ。 たいがいはプロデューサーの方から社長に対して申し入れをすることで、新しいプロデュースがスタートするの が恒例の765プロで、逆に社長側からのプロデュース依頼だなんて。 「君にプロデュースして欲しいのは、他でもない、彼女なんだが。」 「・・・はじめまして。」 俺はその時、部屋の片隅にいた女性に初めて気付いた。そして驚愕した。 一目で知れる長身、スタイルの良さはもちろん、何よりも彼女を特徴づける、美しく輝く銀色の髪。 流れる様な優雅で華麗な立ち居振る舞い。風格までをも備えた表情に、意志の強さに光る瞳。 誰が名付けたか、しかし誰もが納得する、人呼んで『銀髪の王女』・・・ 「し、四条・・・貴音・・...
  • Merry Christmas
    「メリー・クリスマスか…」  12月23日の午後、会社の用事で外へ出た音無小鳥は、雑踏の中をぼんやりと考え事を しながら歩いていた。今日は一般的には祝日のはずだが、アイドルをたくさんかかえた 事務所には、この暮れの忙しい時期に、休みなどあろうはずもない。  先週の日曜日、小鳥は友人と一緒に買い物に行った。買い物はお昼過ぎで終わり、さて、 お茶でも飲みに行こうかという時、友人がビルの看板を指さし、「私、あそこで占ってほしい」 と言い出したため、勢いで小鳥も一緒に占ってもらうはめになってしまった。あとから わかったのだが、そこは割合有名な店らしく、小鳥たちが行ったときも、前に何人か並んで 順番を待っていた。  友人もシングルだったため、「二人とも恋愛運をお願いします!」と先に言われてしまった。 女性の占い師は、友人に、これこれこういうことをすれば運気がアップします、とか、家...
  • ユメノナカヘ 三話
    美希と私の初顔合わせの翌日。  ……いったい、「彼」は何を考えてるのだろう?  私、秋月律子を何度もそう自問させる「彼」の態度は、この日も変わら なかった。 「来週は、オーディションを受けようと思う」  あっさり言い放つ「彼」。  きょとんとしている美希。  唖然としている、私。  そんな午後の事務所。 「ち……ちょ、ちょっと、どういうつもりなんですか?! 私はともかく、  美希はまだ未経験の新人じゃないですか! まずはユニット内の意思疎  通を図るとか、レッスンに費やすとか、他にやることがあるんじゃない  ですか?!」  机を叩いて「彼」に詰め寄る私。  そんな私に、「彼」はあっさり言い放つ。 「これ、美希のデモテープ。で、美希、こっちが律子のデモテープ。衣装  は事務所の好きに使って...
  • 貴音の休日(fly "with" me to the moon)
     四条貴音が、彼のプロデュースで再デビューしてから、早くも二ヶ月近くが経った。 もともと961プロ在籍時、すでにトップランカーだっただけあって、人気の伸びも順調だ。 ファンにしてみれば、若干のブランクなど、問題ではないのだろう。もちろん、人気の復調と ともに、仕事の依頼も数多く寄せられるようになっていた。  だが、プロデューサーは、貴音が961プロにいた時のように、無理に仕事を詰め込むという スケジュールだけは絶対に避けていた。なるべく週一日は休日を設けるようにし、仕事も多くて 日に二つ。明らかにオーバーワークだった彼女の体調復帰も兼ねて、しばらくはゆったりさせて あげたい、と思っているのだろう。  ある日の夕方、帰り支度をしたままの貴音は、デスクワーク中の彼のところへやってきた。 「プロデューサー殿、少しお話が」 「ん?なんだ?」彼は書類の束から顔...
  • wasted
     赤い、赤い、夕焼け空に荒野が映える。地に生えるものは、茨だけ。 砂礫の隙間に棘を備えた木が生えている。葉も花も落ち、ただ茎だけが、 人間を拒絶するように立っている。そして、私は一人、茨の茂る地に佇む。 槍のように、剣のように生えた枯木たちに、守られ、囲まれ、捕らわれる。 針の原は無限に続き、決して抜け出せない。  これは夢だ。現実ではない。そう頭が理解していても、心は真実であると囁く。 これこそが東豪寺麗華の心象だと。そう思う限り、この風景から逃れる術はない。 無駄な抵抗と知りながら、静かに目の前の棘をつかむ。血が滴り落ちるにつれて、 繰り返し繰り返し、唱えた呪文が脳裏に蘇る。 ―私は荒野で歌を歌う  I sing in the wasteland. ―身に纏うはあまたの茨、  Many thorns envelop me. ...
  • カザフネ
     四条貴音の765プロ・デビューイベントはあいにくの空模様となってしまった。  新人アイドルとして再スタートを切ったのは遊園地の野外ステージで、こういう場所柄と 今シーズンのプロデュース方針『歌のお姉さん』を考慮した風船つきの観覧チケットも 傘の下で窮屈そうだ。  貴音の髪とお揃いの銀色の円盤風船。晴れた日であれば太陽の光を反射し、さぞきらびやか であろうそれらも、雨天の地上では雨雲の手先であるかのようなくすんだ色に見えた。 「ラストソングか、もう一息だな」 「はい」 「せっかくの再デビューなのに雨とはついてなかったな」  俺はタオルを被った貴音に声をかけた。 「こんなことなら狭くても屋根のあるイベント広場にするんだったよ、すまなかった」 「プロデューサー殿、雨の中でさえ新人のわたくしに会いに来てくださる方がこれだけ いらっしゃいました。もし...
  • 幻想LOVERS
    「お見合い――ですか?」 「うむ。この前の仕事で、先方が君をえらく気に入ったようでね。それで、そんな話が出たのだよ」  出勤するなりいきなり社長からお呼び出し。  何事かと顔を引き締めて話を伺うと、予想外も予想外の縁談――というのだろうか、この場合も? 「俗的だが、業界に強力なコネクションが出来るしうちとしては悪い事はない。  君も、今までと違った人生観が見えるかもしれない。結婚するしないはともかく、一度そういうのも経験してはどうかね?」 「はぁ……前向きに考えておきます」  一般常識で測れば、四捨五入すれば三十とはいえの独り身の男が、  プロデューサーとしてアイドル候補生と長く一緒に居ると親心としては不安になる。  まったく信用されてない、という事もないだろうが、当然社長も心の隅でいつもその事は危惧してるのかも知れない。 「社長のお話、なんだったん...
  • あわてんぼうのサンタクロース
     12月も後半にさしかかったある夜のことです。  エントランスのドアが開いた時、私はちょうどロッカールームから戻って 来たところでした。事務室は非常口を除くと出入り口が一つしかなくて、制服を 着替えて退勤するときも自分の持ち場を通り抜けなければなりません。  誰かと思ってそちらを見ると、亜美ちゃん真美ちゃんのプロデューサーさんが 立っていました。 「あれ、小鳥さん。お疲れ様です、いまお帰りですか」 「あ、プロデューサーさんお帰りなさい。早かったんですね」  プロデューサーさんは今日、担当している二人を連れてデパートのミニライブに 行っていました。壁のホワイトボードには『双子姫をエスコートしてから戻ります』 と書いてあったのを憶えています。几帳面な性質らしく、他の同僚が体言止めで 殴り書きをするような場所にも柔らかな筆跡の、ですます調が目立っていま...
  • ボクノメガミ後編
     翌日の日曜日、僕は二つ隣の駅のデパートに来ていた。 「屋上って言ってたけど……あ、これだ」  3本の路線が交差するターミナル駅の駅ビル、改札を抜けて地下1階をしばらくうろうろして、 目当てのポスターを見つけた。  『水瀬伊織・新曲発表コンサート』。別のポスターに上貼りされた単色刷りにはこのデパートの屋上 で開催されること、無料であることと、開始時間が判りやすく示されているだけだった。まだ数時間先 の話だけど、とりあえず屋上へ向かうことにした。  大きなデパートとはいえ、今どき屋上コンサートなんて珍しい。伊織も含めた無名の新人歌手が、 お母さんのお供で連れてこられた子供たちの暇潰しをする程度のイベントだし、新人なら誰でも 通るといったものでもなくなりつつある。僕も小さい頃連れてこられたことがあったけれど、 アイドルが一生懸命歌ってる目の前の客席...
  • 親友
     彼女には親友がいました。 「……っていうことがあって」 「あはははは!ほんと?あのビッグアイドルがねー。意外だわ」 「あっでも、他ではこんなこと」 「え?いい話なのにー。でももちろんだよ、雪歩が嫌なら言わないから」  友人の多い彼女でしたが、この話相手だけが唯一、『親友』と呼べる相手でした。他の『仲良しの友達』とは違う何かで、彼女とは繋がっている気がするのです。 「でも、なんか久しぶりだね、雪歩と一緒に帰るの」 「ごめんね、かずちゃん。近ごろ急に忙しくなっちゃって」 「ううん、いいことじゃん!雪歩、テレビ出ることも多くなったもんね」 「新曲、評判いいみたいで。なんか、ようやくプロデューサーや事務所に恩返しできるようになったっていう感じ」  親友は人気のアイドル歌手で、忙しい仕事の合間を縫って学校に来る毎日が続いていました。タレントを始めた頃は放課後のサークル活動程度と...
  • subtle flavor
    「……ふーむ」  私は自宅のキッチンで、お鍋を前に腕を組んでいた。 「なんでこうなるかなー」  目の前には野菜の煮物。いわゆる、けんちん汁。  古くは鎌倉の建長寺で作られたとか、中国の巻繊汁という料理名がなまったとか言われていて、 里芋や大根人参、ゴボウにコンニャク、野菜を美味しくたくさん食べられる秋の汁物の代表格。 いやいや、ネット検索で仕入れた知識はともかく。  もう一度意を決して、お玉で汁を掬って味見をしてみる。 「……うーん」  まずくは、ない。これにしたって分量はお料理サイトからの引き写しなわけで、おかしなものが 出来上がる可能性は限りなく小さいのだ。実は最後の調味前だが、このまま食べても充分いけると 思う。思う、のだけれど。  これを食べる予定の人物は、はたして美味しいと思ってくれるだろうか。 「プロデューサー、どんなのが好み...
  • What training?
     ティーンエイジのアイドルをたくさん抱えるうちのプロダクションは、事務所の外に レッスンスタジオを借りている。そこにはうちと契約した、レッスンを専門に受け持って くれる人たちがいて、アイドルたちの能力や基礎体力、つまり持久力だの瞬発力だの、 腹筋だの背筋だのを鍛えてくれるというわけだ。なにしろ、歌うにしても踊るにしても、 今のアイドルは相当の体力を要求されるのだから、歌唱力とか演技力とか、そういう ものの他にも、こういった力をつけておくのは、重要というか必要だ。  おれがプロデュースしているアイドルたちを鍛えてくれるのは、そのうちの一人で、 みんなは彼女をたんに「トレーナーさん」と呼んでいる。  今のプロダクションに入って少し経ったころ、おれは社長にこう言われたことがある。 「君が担当するアイドルたちと、恋愛関係になってやしないかね」  さも心配そう...
  • one night before
    「ふう。ごちそうさま」  ここは、都内某所にある、小さなフレンチレストラン。ここで、今をときめくAランクアイドルが3人・・・ いや、正しく言うと、Aランクアイドルユニットのメンバー3人が、全員揃って食事をしていた。 「・・・ごちそうさま」  その中の一人、天海春香も、食事を終えた。  元気はないが、皿の上はすっかり空だった。 「そう言えば、このお店も何度も使わせてもらったわね。私たち三人が、一つのユニットのメンバーとして ここに来るのも、今日が最後か・・・」  秋月律子が口を開く。  この店は、メンバーのもう一人、水瀬伊織の兄がよく使うとのことで、紹介してもらった。店の奥を 仕切って、他の客から見えない様にして個室の様な扱いをしてくれるので、あの水瀬グループの御曹司や 大人気アイドルが来店して食事をするにも、他に気をつかわなくて済むの...
  • コーヒーをいれたから
    少し鼻を通過していっただけでそれと分かる独特の苦味を含んだ香りと、ゴリゴリと豆が砕けていく心地良 い音を愉しみながら、昼下がりのオフィスで俺はコーヒーミルのハンドルをぐるぐると回していた。給湯室の ポットの前に陣取った傍らには、コーヒーサーバーに自分用のマグカップをセット済みだ。  スーツを着て働くようになって以来、食後にコーヒーを飲むことが習慣になっていた。つい先日、一人でオ フを取ってのんびりしようと思っていたがどうにも落ち着かずデパートへ出かけた際に福引をしたのだが、こ のコーヒーミルが当たったのだ。  どうせ自宅に置いておいた所で使う時間も無いだろうと職場へ持って来て見たが、これが中々楽しい。つい ついコーヒー豆なんぞを自分で買ってみたりと、給湯室の中にこっそり豆の種類が増えていたりもする。  少し豆の量が足りなかったかな、と思って足そうとした所で、...
  • 4人のシンデレラ
    1.律子 「はーい、リハーサルご苦労様」  フロアディレクターの合図を待って、私は3人に駆け寄った。沸き立つ心を、早く みんなに伝えたくて。 「最高だったわ、3人とも!あずささん、伊織、亜美、みんなバッチリ噛み合ってた」 「お疲れさまです、プロデューサーさん」  ゆっくり呼吸を整えながら、あずささんがこちらに微笑む。私が感じたとおり、 当人も満足のいくリハーサルだったようだ。 「キメのショット、女の私でも息が止まりそうでしたよ。日が短かったのにさすがの 吸収力ですね」 「姉ちゃん姉ちゃん、亜美も褒めて褒めて」  舞台の反対端から駆け寄ってきた亜美も、興奮で頬を赤らめている。普段は大概の ことをジョークにしてしまう彼女も、今日が何か違うと感じたようだ。 「いいわよ?いつもならリハの時はひとつふたつ嘘ステップ入れるのに、今日は 覚えた通りにやってたわね、偉かったわよ」 「うえ?バレて...
  • とりあえず何か食べよう
    だから違うって言ってるじゃない。 もう時計の針が頂点を過ぎそうなことにも気づいてないのか、目の前の千早ちゃんは私に厳しい目を送っていた。 レッスンルームに入ってかれこれ五時間超。そんな見つめられましてもぉ、なんて言おうものならどうなるか。 講師の先生も戸惑うぐらいの剣幕を浮かべる千早ちゃんに、私は力なく笑って誤魔化そうとする。 まあその、ダメでした。 事務所に戻り、ソファに突っ伏しているプロデューサーさんを起こさないように着替えを済ませると千早ちゃんが謝ってきた。 最終電車を逃すことはとうに分かっていたし、こういう仕事をしている以上これぐらい慣れっこだし。 「なにより明日は休みだしね」 私としては自然に言えたつもりなんだけど、千早ちゃんの顔はどうにも暗いまま。 いくら時間を押そうが気にしない以前に比べたらマシなんだろうけど、これはこれで春香さんは困っちゃ...
  • 無題220
    「お疲れのようで…」 その男はいつもの様に廊下の片隅に立っていた  いつもなら気にしないという訳ではないが、今日は特にこの男の顔を見たくなかったので 普段はエレベーターで降りる所をわざわざ階段で下りようと思ったらこれだ そのまるで… 「『そのまるで“何もかもお見通し”という雰囲気が気に入らないのです、この下郎』と?」 男は煙草の箱に手を掛けながら薄ら笑いを浮かべて言う 「おっと、銀の女王様は煙草はお嫌いだったかね」 貴音「その呼び方はお止めなさい。大体貴方は人に“様”を付けて呼ぶような人ではありませんでしょう    そういうことは人を少しでも敬える方がすることです。」 貴音はこの男の名前さえ知らない、知らされていないし、知ろうとも思わないが 分かっていることは黒井プロと何らかの契約を結んでいるということ そ...
  • 金色のHEARTACHE
     同級生の星井が……星井美希が髪を切ってきたときのクラスの動揺といったら、 並大抵のものではなかった。  その朝、星井のいつもと同じ「おっはよーなの」という声に返されたのは おおよそひとクラス分の「ええええっ!?」というどよめきだった。おおよそ、 と言ったのは、僕を含めてひと声も出せなかった奴らがいたからだ。  いつもと同じに始業ギリギリでやってきたので彼女に質問をする時間はまったく なく、10秒後に始業のチャイムと一緒にホームルームを始めようと入ってきた 担任が一瞬の絶句のあと、「おぉ、すっきりしたな、星井」と言い、「えへへ 先生、似合う?」と答えたのが唯一のプライベートトークだった。ホームルームの あとの休み時間はもちろん女子による囲み取材で、星井の左斜め後ろの席にいる 僕は気弱でバカ正直な自分の習慣にこっそり感謝しつつ、次の現国の予習を ...
  • 夢見る少女
    「プロデューサーさん、おつかれさまです。」 「あ、小鳥さん、片付けおつかれさまでした。もうほとんど終わりましたかね?」 「ええ。ところで、春香ちゃん達は?」 「春香もやよいも、遊園地で遊んで行く気まんまんだったんですけど、控え室を出たところで、たまたまいた ファンの人たちに囲まれちゃって、なんとか抜け出したところで、そのまま帰しました。」 「そうですか。二人とも終わった後も楽しみにしていたみたいなのに、ちょっと可哀想ですね。」 「まあ仕方ないですよ。じゃあ、我々も引き上げましょうか。」 「そうしましょう・・・あら?あの男の子は?」 小鳥さんの言う方を見ると、小さな男の子が泣いていた。ちょうど今泣き始めたところという感じである。 と、その真上を風船が空に舞い上がって行くではないか。 「あ、さっきのイベントで配った風船か!」 「ああ・・・これは、風船...
  • TOWもどきim@s異聞~第一章~ 春香編1
     見上げていると呼吸が詰まりそうな鈍く重苦しい空模様から、針のように細く鋭い雨が容赦なく地上に降り注いでくる。 あまりの勢いに、窓にガムテープ張りされた社名もペラリと剥がれそうだった。  ソファへと座った天海春香は、ともすれば猫背になりそうな背筋をピンと伸ばしながら、一台の携帯を親の仇の如く睨みつけ――― ―――ぱか。パタン。ぱか。ぱたん。 液晶に映った人名に目を通し、その度にため息混じりに再び閉じる。 ため息の数だけ幸せが逃げるぞー、などと、オーディションの失敗をちょっとおどけながら励ましてくれた プロデューサーの言葉が鮮やかに蘇る。 あの時は容赦なく『おじさん臭いですよー』なんて茶化していられたが、実際ため息を繰り返すその都度に、風船から抜ける空気みたいに エネルギーがどこかへ逃げていくような心地がした。 ・・・・・・ため息を止める方法な...
  • ある夜の居酒屋
      ガララッ。 「一人だけどいいかい?……おや、こんなところにヘンタイプロデューサー殿が」 「よお。春香の調子はどうだい?」 「上々だよ。それより一昨日だったか、お前が忙しすぎるのが悪いって理由で伊織に ケツを蹴られたぞ。いいキックをするようになったな、あいつ」 「そりゃ悪かったな。その間俺は小鳥さんと濃厚な情報交換ができたよ、憎いねMr.フラクラ」 「ん、なんて言ったんだ?フニクリフニクラ?」 「心当たりがないならいいんだ。座れよ、一杯やりに来たんだろう?」 「まあな、今日は終電前に帰れるんで、腹に少し入れとこうと」 「本日のおすすめはホッケだ」 「いいね。マスター、ホッケと生。小ジョッキで」 「俺にもおかわりを。中身ね」 「なに飲んでんだ。ホッピー?大概若いのにその場末っぷりはなんだ」 「TPOって奴さ。バーに行きゃマティーニを頼んでる」 「お前はジェ...
  • 千早振る
    暦の上では春だけれども、まだ寒い日々が続いている今の季節。  そうは言っても心の中まで寒いというわけでもなく、いやむしろほのかに暖かい、かもしれない。いや、俺が面倒を見ている子たちの仕事が、ようやく軌道に乗り始めたのだから、贅沢を言っていては罰が当たる。  …というより、色々と紆余曲折もあったことだし、これぐらいは…と思うのは自分に甘いかな。努力がそのまま認められるなんてことがいつもあるほど世の中甘くないだろうし。  俺がそんなことを考えながらプロダクションの事務室で小鳥さんと一緒に仕事をしている今は、土曜日の昼下がり。今まさに売れ時でというよりも今こそ売れなくてどうするんだ、というような子たちをプロデュースしているのに事務所で内職かと落胆する必要はまったくない。 今日はまず朝のニュースで顔出しできたし、その後には午前中にあった雑誌取材もうまくいった。それだけで、今の...
  • TOWもどきim@s異聞~第一章~ 春香編3
     それまで単なる辺境の小国家とばかり思っていた自分の生まれ故郷が、『ある側面』では特別であり幸運な国なのだということを、 風聞として知ったのはそれなりに幼い日のことだった。けど、実際それは彼にとってそんなに大した意味があるとは思えない。  屈折したプライドを持った一部の上流貴族の中には、世界樹の麓で生きているという事実だけで他国への妙な優越感を抱いている者も いるのだから、呆れるより他ない話だ。 「自分が生き仏にでもなったつもりかしら」―――と、同じ貴族達のそんな風潮を、嘆くようにそう呟いていたその少女の顔は、 会ったのが一度きりだったというのもあり細かい輪郭ももう思い出せないが、妙に疲れきっていたのを覚えている。 あと、眩しいを通り越して痛い位に自己主張してくるあの額とか。 閑話休題。 そんな『一応』特別な国ヴォルフィアナの北端に位置する、フロランタ...
  • 『マキアート・ハート』
    「はい、キャラメルマキアート」 「わ、ありがとなの!」  前はコーヒーか紅茶、それかオレンジジュースしか選べなかったのに、今日は お姉さんがこれ用意してくれた。聞いたら、エスプレッソマシン買ったんだって。 「美希ちゃん、好きだったでしょ?しばらく待っててね」 「うん、大好き!」 「でも……よかったの?ウチなんかで髪やっちゃって」  お姉さんがちょっと心配そうに聞いた。 「美希ちゃんもう有名人なんだから、ちゃんとしたメイクさん、いるんでしょ?」 「あははは、いないよそんなの。そーゆーのはもっともっーと、すごい人たちだよ」  おっきな声で笑ったら、安心してくれてみたい。だけど、シーってされちゃった。 有名なのには変わりないんだから、こんなトコで大声出さないの、って。  このお店は、ミキやお姉ちゃん、ママが前から使っているカットハウス。 レッス...
  • You're my destiny
     それは、ある暖かい春の夜のこと。  いつものようにいぬ美と、人けのない公園で散歩をしていた響の耳に、女性の小さな叫び声が聞こえた。 「きゃあ、と、とらたん、だめよ、待ってっ」 「ん?なんだ?」  どこかで聞いたことのある声の方を見やると、道の端の植え込みがガサガサと音を立てている。ぎょっとして硬直した直後、茂みから黒い塊が飛び出してきた。 「おわ!?」  慌てて飛びすさると、その影は響の足元を縫うように走り、いぬ美に突進する。茶色の毛むくじゃらの塊……犬だ、と判った。  響はこういう場面を以前にも見たことがある。近所の野良犬がいぬ美にケンカをしかけたのだ。今回もそれだと思い、とっさにいぬ美を制しようと引き綱を引いた。視界の端に飼い主らしき人影を捉え、相手にも迷惑をかけてはいけないと鋭く声を発する。 「いぬ美っ、待て――」 「あら?響ちゃん?」 「――へ?」  ところ...
  • three months later
    資料:関連カレンダー     2 月 月 火 水 木 金 土 日  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28     3 月 月 火 水 木 金 土 日  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31     4 月 月 火 水 木 金 土 日        1 2 3 4  5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18  19 20 21 22 23 24 25  26 27 28 29 30  冬将軍率いる寒気団は、1月の間は...
  • open face
     水瀬伊織は怒ったような表情で、となりに座っているプロデューサーの顔をじっと 見つめていた。 「どうした?」プロデューサーが訊く。 「リラックスしなさい」 「は?」彼はなんのことやら、頭の上にはてなマークを浮かべている。 「いいから、リラックスしなさいってば」 「リラックスねえ…こうか?」プロデューサーは不思議そうな顔をしながらも、伊織の 要求に応えるべく、座っていたソファの上で、体重を背もたれにかけ、伸びをするような 格好で足をテーブルの下へ投げ出した。伊織は彼の顔をじっと見ていたが、 「リラックスしてないじゃない」と不満げに言った。プロデューサーはよいしょ、と 体を起こした。 「なんだかよくわからないけど、時間があんまりないんだから、ちゃんと資料に目を 通してくれ」  ここは765プロダクションの応接室。これから伊織のスタジオ収録に出...
  • 冬の足音
     季節の変わり目とは色々厄介なもので、急激に変化する気温や湿度についていけず体調を崩す人が、古今東 西を問わず後を絶たない。世間の人々が上着を羽織り始める頃になってしばらく経つ。どうやら俺も、変化に ついて行けなかった人の仲間入りを果たしてしまったようだ。喉のひりつく痛みとツンと来る鼻の痛みに日々 頭を悩ませていた。発熱が無いのが唯一の救いだが、垂れてくる洟をどうにかすべくティッシュの持ち運びは 欠かせないし、担当アイドルに風邪を移しては一大事なのでマスクの着用も必須だ。鼻が痛いと頭も一緒に痛 くなるので、それが辛かった。  「よし、じゃあ今日はここまでだ。二人ともお疲れさん」  いつもよりも長く感じた一日もようやく終わり、頭一つ分低い所から俺を見上げる双子に声をかけて、右手 を挙げた。ブラインドに阻まれて外の様子は見えないが、きっと冷たい風が木々の落ちかけ...
  • たるき亭の小川さん
     私の所属する芸能事務所の下に、小さな居酒屋さんがあります。ランチタイムも 営業しているお店で、その時間はアルバイトの女性が切り盛りしており、よくここで お昼をいただく私は彼女と顔見知りになりました。  私より少しお姉さんで、髪が長くて。目が悪いからとぶ厚い丸眼鏡をかけて いますが、時折見えるその奥の瞳は美しく輝いていて。体は小柄なのに私でさえ 見ほれるような、魅力的なボディラインをお仕着せの和服に隠して(そういうの、 けっこうわかるんです)。  しかも、私の事務所仲間と声がそっくりなその女性は……。 たるき亭の小川さん 「あ、ごちそうさまでした、小川さん」 「ありがとうございました、あずささん。お口に合いましたか~?」 「おいしかったです、とっても。お野菜の煮物、私の好きな味だわ」  お料理の評判がよいこのお店は...
  • 武田の歌姫調査
    「もし幸っせー近くにあーてもー♪」 技術の進歩はめざましい。画面の向こうと繋がっているかのようなこの音質。 酷いな。 技量もだが、まるで歌詞を無視した明るい歌い方。 なぜこの曲をこの子に歌わせているのだろう。 まぁ、大体察しは付くのだが。確かに面白い趣向ではある。 「蒼い鳥」……いや、如月千早を知らぬ者は今や殆どいない。 いよいよ、僕の城に招待しなくてはならない頃合だろうな。 いきなり会う前に人柄も確認しておきたいのだが、 彼女はあまり他人を近付けないらしく、欲しい情報が出てこない。 何か方法はないものか。 例えば彼女が気を許していて、彼女の情報を教えてくれそうな存在。 と、そんなに都合良くはいかな…… 「千早さん。私の歌、どうでしたか?」 「ええ、とても可愛…コホン、素敵だったと思うわ、高槻さん」 ……都合良く...
  • 二つの距離
    瞳に焼きついたのは――。  流れ行く人の波。街頭の四角い窓から流れる流行のメロディ。  誰の心を映したのか――空は蒼く。今にも降り出しそうな雨は誰のモノなのか――。  俺は探していた。朝も夜ともつかない曖昧な世界で、ただその姿を。  見えない線に導かれる様に、その姿を雑踏の中に見つける。  揺れるトレードマークのリボン。笑顔の彼女と――  知らない男の笑顔。  二つ並んで、消えて行く――。  呼吸が止まる。視界が壊れて、その破片が体を刺したのか、斬りつけられた様に体が痛む。  痛む――悲鳴を出し、泣き出しそうなくらい痛いのに、どうしてか、何処が痛むのか分からない。  それで楽になる訳でも無いが、俺は膝と手を地べたについた。  麻痺、というより消失。感覚が無い。粒が濡らし濃くなった地面の点で、自分が泣いている事を知る。  内から広がる空の...
  • relations.・悲話
    敗者の気持。 考えた事が無い訳でもない。 知らなかった訳でもない。 そんなのは、オーディションで落選した時、あの気持を嫌と言うほど経験して来たから。 けど、今の気持はそのどれとも違う。 まるでスタートの違う、別な次元の物。 だが、明らかに敗けた事だけは判っているのだ。 けれど、それを教えてくれているのは、積み上げた経験や知識等ではない。 ──── もっと体の奥に潜む何か。 それが告げてくれている。 いや ──。 きっと認めたくないだけなのだろう。 そんな感情に振り回される事を軽蔑してきた、もう一人の偽りの自分が。 素直な女性なら、簡単に理解出来る事なのに。 本能が告げているのに。 ─── 『あの娘に敗けた』んだ、って。 ■ この人の唇が描いた、あの娘の名の形。 遡る血流。 早鐘の如き鼓動。 …ナン…デ………? ...
  • 無題235
    アイドル事務所の仕事はアイドル達に関するものだけではない 故に、所属アイドルが休みであろうともPや事務員の仕事は続く 小鳥「…熱いわね~」 P「今春香達は楽しい夏休みを送ってるんでしょうね…」 小鳥「ほんとにね~」 P「まあ休日出勤は良いんですけどよ。けど問題は…」 そういってPが見上げた上には P「ウンともスンとも言わないクーラー」 小鳥「そろそろ危ないとは思ってたんですけどね~」 P「社長がお金ケチって修理に出さないからかえって出費がかさむんですよね」 社長「ケチとはなんだね、ケチとは。清貧と言いたまえ、清貧と」 小鳥「ああ、そう言えば社長、コピー室のコピー機が壊れまして…    業者のヒトに見てもらったら、もう寿命だから新しいの買うようにって    込み込みで130万円だそうです」 社長「パソコンにつてるプリ...
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