たるき亭の小川さん

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  • たるき亭の小川さん
    ... たるき亭の小川さん 「あ、ごちそうさまでした、小川さん」 「ありがとうございました、あずささん。お口に合いましたか~?」 「おいしかったです、とっても。お野菜の煮物、私の好きな味だわ」  お料理の評判がよいこのお店は、お昼休みには近くのサラリーマンの人たちで ごったがえしてしまいます。ですから、私はピークから外れた時間帯に食事に 来ることに決めていて、おかげさまで小川さんとも世間話をする時間がとれる のです。 「ああ、よかった。今日の煮物、わたしもお手伝いしたんですよ~」 「ええ?マスターさんがお鍋を任せるなんて、すごいじゃありませんか」 「任された訳じゃありませんけれど、今日はいいお魚が入ったそうで、朝から オーナーそれにかかりきりなんです」 「あら、そっちも興味あるわ。今晩のお献立かしら」 「イ...
  • 6スレ
    ... 宵闇偶像草紙 たるき亭の小川さん ふくれづき 無題356 無題371 黒い鳥
  • レシP ◆KSbwPZKdBcln作品
    ... 20110813 たるき亭の小川さん 三浦あずさ 小川さん キャラ改変 6 353 20110914 ふくれづき 高槻やよい 7 007 20110926 赫い契印 萩原雪歩 四条貴音 7 058 20111013 絵理の貯金宣言 水谷絵理 サイネリア 尾崎玲子 7 059 20111013 真の中の人がやばい 萩原雪歩 菊地真 7 059 20111013 翔太風邪ひいた ジュピター 7 142 20111208 『祓魔の聖戦<Evildream crusaders>』 萩原雪歩 四条貴音 水瀬伊織 7 184 20111221 あわてんぼうのサンタクロース 音無小鳥 7 216 20120113 ホーム・メイド 天海春香 如月千早 7 269 20120215 ゆとり指南 星井美希 高槻やよい 7 284 20120322 いちばん咲き、み...
  • TOWもどきim@s異聞~序章~1話
    夢は自分の深層意識の現れだと、いつだったかクラスメイトが雑誌片手に話していた。  お姫様、アイドル、お嫁さん。この3つを自分は、女の子が幼い頃に思い描く願望の三種の神器、 みたいな感じで捉えている。 最初の一つは高貴な生まれに恵まれない限り選びようもないような肩書きだけど、後の2つは 自分の努力次第で掴みようもある。 なりようがないのだ。おとぎ話で出てくるような、ティアラや風船みたいにスカートの 膨らんだキラキラのドレスに身を包んだお姫様には。 だからこそ、少し呆気に取られてから気づいたのだ。夢なんだ、と。  最初に気づいた時、見えたのは周囲を飛び交う蛍火の群れが醸す、天を射抜く猛々しさ、母のような 包容力を感じさせる大樹のふもとだった。 シンデレラ城のように子供の幻想の、綺麗な部分だけ切り取って城という形にしたのではない。人間の命数では...
  • 無題36
     もうはっきりと陽射しは傾いたが、まだ夕暮れには早い。そんな時刻に、ときどき出会 える光景だった。蒸気は少なく、澄んだ空は深く透き通った独特の青みを見せ、ちぎれ雲 に反射する日の光がオレンジ色を帯びて何となく夕方の海を思わせる。  きれいだ、と雪歩は思った。車から降り、すぐに目が行った景色に、雪歩はしばし見と れていた。心底美しいと、――それ以外のことは忘れていた。 「きれいだなぁ」 「あっ、はい。……とっても、きれいです」  いつの間に三井が隣に来ていた。雪歩のプロデューサーである。雪歩は空を見上げるの を止めて三井の方を向いたが、それでも見上げることには変わりない。近くにいるときは 特にそうである。雪歩と同じように見とれた風のプロデューサーの横顔が見えた。  ――嬉しいな。  さきほどまでの感動はもう霞んでしまって、ひとつの共感を得た喜びが雪...
  • 春香エンジェル
    ええと・・・志望動機、志望動機は、と。 俺はもう一度、手元のメモに目を落とす。 『世界的な大恐慌と言われるこの経済危機の状況において、業種を問わず各企業が業績を落とし、喘いでいる 中、業容を拡大しようという御社の意欲、並びにその伸びゆく業績に対して、大きな将来性を感じ、私自身の 経験を御社のために役立てると共に未来に以下略 ヤバい。 覚えきれない。 っていうか、昨夜一度は完全に覚えたはずなのに、メモリクリア。 どうしよう? もう、そろそろ本番だぞ。 てか、落ち着け俺。こんなの初めてじゃないだろ。 「では、次の方、どうぞ」 え? 次って、俺じゃん? まずい、とにかく返事しないと・・・ 「はぃいいぃ」 ど、どうした、俺の声?裏返るんじゃねえ! 「それでは、まずは当社を志望した理由を聞かせてください」 「あ...
  • 第7話 そらの国  ~あずささんと迷子のひよこ~
     少し冷たい風が吹いています。 下を見ると、そこには図鑑でしか見たことのないような高い山がいくつも、そして雲すらも足元を悠然と 流れていました。 「ここは空の国… 鏡の国の中心部に向かう通路みたいなところですね」 「じゃぁ女王にも…」 「ええ、まだもう少し道はありますけどね」 見渡す限り青い空、まぶしい太陽、そしてどこまでも続く床。 普段だったら、こんなところでお弁当でも広げておしゃべりとかしたくなるようなところです。 でも、やよいは遊びに来たわけではありません。ここにも誰か助けを待っている人がいるはずです。 「誰かいれば、すぐに見つかるよね?」 「ええ、見通しもいいですし、間違ってもここで迷子になるようなことは無いでしょう」  その頃…。 「え~と、ここはどこなんでしょう…」 「私は寝る前にコンビニに行って、お買い物をしてきたはず...
  • TOWもどきim@s異聞~序章~2話
    『世界樹』と呼ばれて、この地に生きている限り何処からでも見えるその樹は、『あちら側』での言葉を借りるなら正しく神様仏様イエス様の化身だった。 ただ、あの世界と違うのは単純に心の拠り所、という意味でなく、『実際に』人の営みを、生活を支えているということだ。  数千年だか数万年だかの太古の昔から、その樹が世界の隅々へと生み出し、浸透する見えざる神秘。その力あってこそ作物は実り、土を潤わせる雨雲が生み出され、 数千年に渡ってこの世界を支えてきた。  その神秘の名を、この世界の人々はマナと呼ぶ。 世界樹の麓近くにあり、精霊やマナを信仰する聖職者達が数多く集っているという以外は、歴史の古さ以外に特筆すべきこともない辺境の小国家。小鳥が現在住まう ヴォルフィアナなる地は、そういう国である。 この国を含めた「世界」の名前については―――まだ直に確かめる術...
  • 無題7-230
    「春香ー?夏休みの宿題は終わったのー?」 夏休みももう少しで終わりという日の夜 母から毎年お決まりのセリフを頂戴した春香は、返答に詰まっていた 今年の夏は、海外ロケやら何やらで忙しかったのだ 「うー…Pさんは出張だし、困ったなー」 「しょうが無いわねー。明日にでも、お兄ちゃんに聞いてききたら?」 春香の家の裏手には、春香と7つ程の離れた従兄が一人で住んでいる 天海家の血を引く者の中ではずば抜けて頭が良く 主に生物学を専門としているが、他にもわけの分からない研究を色々やっている 世界レベルの大手企業から主任待遇で幾つも誘いを受けているが 全て『めんどい』の一言で断っているらしい 今は家庭教師と塾の講師をして生計を立てている 最近はPに宿題や課題も手伝ってもらっているが 昔から、この時期の春香の切り札は彼だった 「うん。そうする」 一...
  • 第6話 みずの国  ~律子さんは水がお嫌い!?~
     亜美ちゃんと真美ちゃんを元の世界に帰して、やよいたちは次の世界に。 「次は水の国ですね」 「どんなところなの?」 「んー… まぁ見てもらったほうが早いでしょうか」 そんな会話をしながら鏡の中を進んできて、出てきたのは… …一面水で埋め尽くされた世界でした。 正確に言うと、ポツリポツリと浮島がある他は、ほとんどが水、それも流れの早い水というところです。 「これは… 川?」 やよいがそう訊いてみます。 「ええ、以前はもっと穏やかな川だったのですが、ここも女王の魔力でこんなことになってしまいました」 ウサギが答えました。水の流れるほうを見てみると、そこは滝壷になっていました。 下の様子は分かりませんが、恐らく危険なことになっているのでしょう。 「でもこれじゃぁ前に進めません~」 そうです。やよいたちが今いる所も浮島。 どこを見ても、...
  • 第8話 かがみの国  ~春香さんがいっぱい!?~
    「うぬぬ、ウサギの奴め…」 暗い暗い、闇の中。 水晶玉を眺めながら、恐ろしい形相で何やら呟いている人影。厚いコートを身にまとったまま、いらいらと 歩き回っていました。 …これこそが、鏡の国を支配しようとしている女王でした。 その視線の先には、水晶玉に映ったウサギ、そしてやよいの姿が。 「ただでさえこのような体になって窮屈しておるのに、人間を連れてこの私に立ち向かうとは…」 女王のいらいらは、周りにいたトランプの兵隊達にもはっきりと伝わってきます。 「お前達、何としてもあの二人を捕らえて、首を刎ねてしまうのだ、よいな!」 「へ、へへー」 「…これが、鏡の国?」 「…そうです、もっとも今ではここも女王の支配下になってしまって、すっかり変わり果てた姿になってしまって ますが…」 やよいとウサギの二人は、そんな話をしながら目の前の光景を呆...
  • 『white step』
     朝の出掛けの小糠雨は、電車を降りるころにはみぞれ混じりになっていた。  あー雪だ、えっほんと、じゃあ初雪だね、なんていう女の子たちの歓声を横で聞きながら、顔を伏せて改札を 抜ける。ほんとは少し前に初雪のニュースをやっていたけれど、わたしも目にするのは今シーズン初めてだし、 そう思っていた方が気分はいいかも。  ――お前もそろそろ顔が売れてきたし、ファンの子に囲まれたりしないように工夫しなきゃな。  プロデューサーがそう言っていたのを、ふいに思い出した。今日は傘があるから大丈夫だと思うけど、春香ちゃん みたいにメガネとか帽子とか、なにか考えなくちゃいけないかなぁ。でもわたしはメガネ似合わないし、帽子は 髪に跡がついちゃうし、なんだかヘンな見た目になってかえって目立っちゃうかも、そんなことを考え始めると なかなか踏ん切りがつかなくて。  少し先を歩いてる高...
  • すごいよ! わくわくさん!
    1 事務所に顔を出したら、アイドルの一人とプロデューサーが鬼ごっこをしていた。 もっとも、普通の鬼ごっこならば 「やろう、ぶっ殺してやる!!」 なんて台詞は中々出てはこないだろうが。 「おはよう。で、一体あれは何の騒ぎ?」 「あ、おはようございます和久井さん。いつもの通りプロデューサーさんが向井さんにパイタッチしただけなんですけどね」 「飽きないわねあの二人も。一々必死になって反応を返すから面白がって手を出される事をいい加減学習してもよさそうなものだけど」 「いやあでも向井さんのあのバストは女の私でもちょっと触ってみたくなる何かがありますよ」 そう会話を続ける二人の横ではまだ追いかけっこが続いている。 とはいえ今までの事を思い返せばそろそろ 「破壊力ぅー!」 の声と共に渾身の右ストレートを炸裂させる事だろう。 そこまでされると後々面倒なので...
  • TENGAさん万能説
    たとえば女性の前で男が軽々しく生理の話題をするような、そういうフインキだということは分かってほしかったと涼は思う。 なんとなくそういうものは会話の端々で感じ取るものだし、 歳を経るにつれて追いついてきた知識も相まってそういうものを回避する術も身につけていくもの。 ある程度の感性というかセンスというか、そういうものが求められるわけだけれども誰にでも出来ることだと、 少し短く感じる膝上のスカートの端を握る涼は考えていた。 さて、そういうものって何回、言ったでしょう。 だから、おもいっきしそういうものが分からなくて、お子様な彼女の前では通用しなかったわけだ、と。 「涼さん! この筒みたいなのなんですか!? なんかオシャレですね! デザインが!」 そうだね、愛ちゃん。だからちょっと手放そうか。 女装アイドル、秋月涼の目はどこまでも冷ややかだった。 ...
  • 無題13
    ―――そうね、あれは私が小学校に入ってすぐだったかしら 夜中に目が覚めて、全然眠れなくなった時があったの なんで目が覚めたか?そんな事まで覚えてる訳無いじゃない、10年近く前の話よ? それはともかく、全然眠くならなかったから眠るのはあきらめて布団を出たの まあ、ちょっとした探検気分ね、今思えば何かが変わる訳でも無いけど あの時の私には夜中の家はお化け屋敷みたいに思ってた……と思うわ。 ……想像したら震えて来た?あなた、お化けが苦手って言っても限度があるでしょう? 落ち着いた? それじゃあ、続きだけど……まあ、そんな訳で夜中の家を探検してたんだけど 誰もいない家がだんだん怖くなってきたの、ママもパパも別の部屋で寝てたから 何笑ってるのよ……ママをママと呼んだら悪い? 確かに意外って言われるけど、あなたに笑われるのは気に入らないわね ...
  • 春香が家にやってきた
    ・春香が家にやってきた:第一話 家に帰ったら、春香がいた。 俺は驚いた。 だって、このリアルの世界に、3Dモデリングの春香が存在していたのだから。 しかも、飯を食っていた。ウチのお袋が作った飯だ。 「あ、お邪魔してまふ。」春香は中の人さながらに口にものを頬張ったまま答えた。 「た、ただいま。」それ以外の言葉が出てこない。 「おかえり。急にお客さん来たからご飯なくなっちゃったけど、食べるなら冷蔵庫の温めるよ?」 お袋は、この異次元からの訪問者に普通に食事を用意したっぽい。 「いや。俺は食ってきたからいいよ。」 そんなことより、この春香は、何?誰?何故?いつ?どうして? 「あの・・・プロデューサーさん?そんなに食べるとこじっと見られると・・・」 「あ、ごめんごめん」 春香のモーションも話し方もいつも通りだ。しかし、それがリアルの世界で見ると、こ...
  • 『紳士』
    「芯の強い娘を最後まで折ってこそ紳士だろう」 ああ、またプロデューサーが変な事を言ってます。誰か、止めて、 「それは、違う」 真ちゃん。しっかり止めてね。凄く嫌な予感がするから。 「プロデューサー、真の紳士たるもの……」 そうそう、紅茶を嗜むとかレディファーストとか…… 真ちゃんとお茶会とか、憧れるなぁ、 「気の弱い娘に攻められて、否、攻めさせてこそだ!」 って、え、ええ? ……白い歯が嫌に眩しいよ、真ちゃん。真ちゃんも遠い人だったの!? ねぇ、真ちゃん。格好良くて、王子様みたいなあなたはどこに行ったの? 私の中の真ちゃんは答えてくれない。いつもと変わらない笑顔を向けてくれるだけ。 「「雪歩!」」 二人に、呼ばれ現実に戻される。小鳥さんがちょっと羨ましい。戻らないで済むから。 「は、はい」 弱々しく口を開く。願わくば、 「「雪歩は...
  • ミル姉さんのアイマス紹介
    はぁいこんばんは。気だるい夜いかがお過ごし? ミル姉さんよ。 あのね、この間新宿歩いてたら昔の仲間……ウシ美っていうんだけど、その子とばったり会ったの。 こんなトコでなにしてるのって聞いたら、ご主人様とはぐれちゃってモウどうしていいかわかんないって言うじゃない。 当然、一緒に探してあげたわ。すぐにご主人様も見つかってアタシもホッと一安心。 それでウシ美がね、ありがとうって何度も言うから、こう言ってやったの。 同じ桶の草を反芻した仲だもの、当然じゃないって。 それで、ウシ美のご主人様。我那覇響ちゃん。今、アイドルをしてるんですって。 小柄だけど、とっても元気そうな娘だったワ。思わずギュウって抱きしめたくなっちゃった。 ただね、ひとつ気になったのが、響ちゃんと一緒にいた高槻やよいちゃんっていう子、この子もちっちゃくて可愛いかったんだけ...
  • 春香が家にやってきた:番外編
    ♪ちゃ~ら~ ちゃらら~ら~ら~ら~ ちゃ~らら~ ちゃらら~ら~ ♪私は天海春香です!イェイ!トレードマークは頭のリボン! プツッ ”はい。天海春香です。ただいま電話に出ることができません。すみませんけど、発信音の後にメッセージを ブツッ 部屋の片隅、白いゲーム機の大柄な箱の上に置かれた携帯は、応答を得る事なく空しく切れた。 着信履歴を示すランプが、小さく灯る。 コンコン・・・ 部屋のドアがノックされた。 返事はない。 やがて、とまどい気味にドアが少しずつ開く。 「プロデューサーさん・・・?」 ドアの隙間から、少女が顔をのぞかせた。 キョロキョロと部屋の中を伺う、その動きに連れて、頭のリボンが揺れる。 彼女の大きな瞳が、部屋の真ん中で向こう向きに横になっている男の姿を捉えた。 『あ、もうお休...
  • 無題(298)
    「すいませんでしたっ!」  九十度直角に頭を下げる、体が柔らかかったら逆さまになっている後の景色が見えていることだろう。  あずささんは既にレッスンへと出かけている。  そして俺は今、765プロの社長である高木順一郎氏の前で、解雇通知覚悟で頭を下げているというわけだ。  しかし、社長の言葉は俺の想像とは全く違っていた。 「まあまあ、誰にでも失敗はあるものだ、これから我が765プロで活躍してくれたまえ」  ああ、一生ついていきます社長。感謝の意思を伝えるためにフトモモの裏が痛くなるまで頭を下げた。 「そういえば、君はうちのアイドル達と顔合わせするのはまだだったね」 「あ、はい、あずささんとは繰る途中で会いましたけど」  突然変わった話題に困惑しつつ答える。  後々挨拶に回ろうと思っていたのだが、遅刻という大失態をしでかしたので、社長に謝りに行く前に会い...
  • 虹色の鳥
    あるところに、トップアイドルを夢見る女の子がいました。 歌が好きで、ちょっぴりドジな、ごくごく普通の女の子。 女の子の歌を聴きとめたのは、プロデューサーの青年です。 自分の歌を褒められて、嬉しくなった女の子は、毎日毎日レッスンに励みました。 レッスンのコーチが、審査員の先生が、 その頑張りと歌を、だんだん認めるようになりました。 数えきれないほど大勢のファンが、女の子に夢中になっていったのです。 拍手と共に女の子が戻るたび、「すごいなあ」と青年は言いました。 その嬉しそうな一言で、疲れは吹き飛び、また次のステージに登れるのです。 女の子はステージに立ちつづけました。周りの期待以上に眩しく輝いていました。 その歌声を聴いて笑顔にならなかった人なんていません。 間違いなく、たくさんのファンを幸せにする、夢のトップアイドルになっ...
  • 北風と太陽
    「こんばんは、やよい様。いつも伊織お嬢様がお世話になっております」 「あっ。伊織ちゃんちのヒツジさん。こんばんはー!」 「いかにも。私めは伊織お嬢様の従順たる羊にして、執事の新堂でございます。  伊織お嬢様をお迎えにあがったのですが、未だ熱心に残られているようですな」 「えっと、そうなんです。……新堂さんって、じゅうじゅんな執事さんなんですか?」 「はい。伊織お嬢様のためならば、たとえ火の中水の中でございますよ」 「あっあのっ! じつは伊織ちゃん、プロデューサーと大ゲンカしちゃったんです。  それで火の中水の中より大変になっちゃって。新堂さん、なんとかできますか?」 「なんと。それは一大事ですな。やよい様、私をそちらへ案内していただけますか」 「プロデューサー! プロデューサー! 立てますか? 大丈夫ですか?」 「痛たたたたっ。……ううう...
  • 絵理の貯金宣言
    「サイネリア、私、貯金、始めようと思う……?」  その朝、いつものチャット中に絵理センパイがこう言った。 「……貯金って、あの、お金を貯める貯金、ですか?なんでまたいきなり」  素直にそう言葉が出た。だって、あの水谷絵理だ。ぶっちゃけ金に困っている筈がない。 「ちょっと買いたいもの、あって」 「なに買おうって言うんですか。宇宙ロケットとか無人島とか?それともチョーでかい豪邸? 高級車・運転手付き、あと執事も」 「執事はちょっと魅力あり?」 「デスヨネ」  理由は不明だがセンパイはわざわざそのために古風なブタの貯金箱を手に入れ、お金は 例えばご両親からのお駄賃だったり、お遣いのついでに社長からお釣りを貰ったりするという。 「……昭和時代の小学生デスか」  アタシはチャットを閉じた後、そんな風につぶやいた。  それから数ヶ月、センパイは驚くほ...
  • three months later
    資料:関連カレンダー     2 月 月 火 水 木 金 土 日  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28     3 月 月 火 水 木 金 土 日  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31     4 月 月 火 水 木 金 土 日        1 2 3 4  5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18  19 20 21 22 23 24 25  26 27 28 29 30  冬将軍率いる寒気団は、1月の間は...
  • TOWもどきim@s異聞~序章~3話
    ―――某日。レッスン帰りに立ち寄った喫茶店にて、「音無」小鳥はクリームソーダに突き刺さったスプーンをかき回して、向かい合った席で顔を抑えながら小刻みに肩を震わせている担当プロデューサーの姿に少しばかり頬を膨らませた。 「・・・・・・そ、それでその・・・・・・どうしたんだね?」 「―――どうするもこうするも」 心なしか、ストローをくわえた唇に思いの外強い力がこもり、思わずズッ、と音を立ててしまう。 「その後は騎士の人達が手伝ってくれて、お城勤めの法術師や街の獣医の方々に連絡つけてくれましたから、子猫は何とか無事でした。今じゃさっき話したミントちゃんが引き取り手を捜してくれてるって話です」 「い、いやそうじゃなくて・・・・・・その助けてくれた男の子というのは・・・・・・」 「・・・・・・神妙な顔で謝られちゃいましたけど何か?」 事実を知り、茶化すこともなく、生真面目...
  • 待ち焦がれ
    年度末だっていうのに、というよりも年度末だからこそ忙しい。 新しく入社する人、お別れになる人のために色々と書類を整える。 でも私には関係ない。私は去年も今年も、そして来年もきっとここにいる。 自分だけ時が止まっているようなものだ。 友人にも知り合いにも、先輩にも後輩にもあるような「時の刻み」。 私にはない。ただ、それだけのことなのかもしれない。 ただただ、流れるように私の周りを過ぎていく。 事務所の隅で仕事をしている私。 一人ではないのが、唯一の救いかもしれないけれど。 でも、彼女の時も止まったままなのかもしれない。 帰る家を失った犬のような眼をしながら、ただ黙々と仕事をしてくれている。 私はふと手を止めて、彼女の横顔を見る。 綺麗な長い髪に、ほっそりとしたしなやかな身体。 一見たやすく手折ることができそ...
  • 第1話 おかしの国  ~やよいと不思議なシャボン玉~
     やよいが辺りを見回すと、そこはお菓子… の形をしたオブジェがいっぱいの空間でした。 床の遥か下にも同じような世界が広がっていて、自分のいる所がかなりの高さであることが分かります。 それに… やよいの服もいつものものではなくて、オレンジと白の上着にスカート、そして前にはフリルの 付いた小さなエプロンが。 とても可愛らしいものでした。  しばらくそれに見とれていたやよいですが、ハッと気が付いてウサギに尋ねました。 「…それで、さっき言ってた女王の手下って… どうやって戦うの?」 「その渡したストローでシャボン玉を出して…」 「こう?」  やよいがストローを吹くと、そこから虹色のシャボン玉が。 続けざまにいくつものシャボン玉が飛んで行っては、同じところで弾けて虹を描きます。 「これは悪い者たちが大嫌いなシャボン玉なんです、これを使えばきっと女王...
  • メロディ
    僕と彼女の手の中に、ひとつひとつのレジ袋。 中に入った買い物は、タマネギ人参、肉・お芋。レシピを訊ねてきた時は内緒だよって言ったけど。 まあ、わかるよね、これならば。カレーのルーも買ったから。 「カレーって、けっこう家によって味違うわよね。私、割とうるさいわよ?」 「へえ、どんなのが好きなの?夢子ちゃん」 「美味しいのが好きね」 「……あ、そう」 答える顔は自慢げで、自分がなにを聞かれたか、そうしてなにを答えたか、カケラも気にしてないみたい。 もっともそれが隣の子……肩で風切り機嫌よく僕より先を歩いてる桜井夢子のいいところ。 今日は彼女と収録で、お互い午後はお休みで、これから何かしようかと誘った時の会話では。 『お腹すいちゃったわね、なにか食べない?』 『うん、僕もどうしようかって思ってたんだ。今日は予定なかったから、家で何か作ろうかって思ってたんだ...
  • Wing gainer
     コツはいくつかある。あるが、全てエッセンスは同じだ。「少し不安になる くらい」、それが最大のポイント。  少し不安になるくらい、中火の上に置き放って。  少し不安になるくらい、たっぷりの油をなじませて。  少し不安になるくらい、粉を溶かした水を回して。  そして少し不安になるくらい、のんびりじっくりと蒸し焼きにするのだ。  黒い鍋肌に白い膜ができ、それがふつふつと泡を出し、やがて茶色く 焦げてゆく。  薄く見えるが小麦粉の皮は意外と頑丈だ。まして焼き固めるにつれ 丈夫になってゆく皮膜は、内側の具をほどよく煮込むまで充分な時間を 必要とする。家庭用コンロの中火は見た目以上に熱量が少なく、フライパンは テフロン製、それに油をたんと含ませれば、昔の鉄鍋とは違ってそうそう 焦げ付くことはない。  そんな御託を並べているうちに、旨そうな餃子が焼き...
  • ふたりの食卓
    「そうなんだ。それでどうなったの?響」  フライパンの温度を探り探りしながら、ソファにあぐらをかいてる響に訊ねる。響がボクの家に来るのももう3度目か4度目で、勝手知ったるなんとやらって感じ。 「いやー危機一髪だったさー。ねこ吉が気づいてくれて、こっち帰ってきてくれたんだ」 「そう、よかったぁ」  今日は二人でスポーツ特番の収録だった。まだまだ駆け出しのアイドルとなると収録現場もなかなかハードで、なんかめちゃくちゃお腹へったねって話になって。  ちょうどボクの家のほうが近くて、父さんも母さんもいなかったから都合いいやって思って、誘ってみた。 「まったくさー。ネコのくせに落ちて怪我でもしたら一大事だったよ」 「ボクが言ってるのは響のことだよ」 「え、自分?」 「きみのネコ吉ももちろん心配だけど、響が怪我したらそれこそ大変じゃない」 「え……真、きみ自分の...

  • 初産であることを差し引いても、娘の難産には正直、自分の時以上に血の気が引いていく感覚に襲われた。 既に産気づいてから十時間も経過しようとしていた。震えの止まらない手を、既に他人になって久しい夫の大きな掌が包む。 そういえばあの子を産む時もこうして貰った気がする。思い出とはなんと都合が良いのだろうか。 思えば、あの子には何度謝っても謝りきれない大きな傷を、大きな溝をつけてしまった。 あの子の弟でもあるはずなのに、さも私達だけの息子が亡くなったという意識が、あの子をどれほど苛ませたか。 慣れないことをしてでも笑わせようと無理をしたあの小さな女の子をどれだけ追い詰めたか。 今更になって責め立ててくる罪悪感に涙を流すことしか出来ない。親としての私はなんと脆いのだろう。 せめて傍にいてやりたい。励ますことだけでも、と息巻く私達をあの子はきっぱりと跳ね除けた。 大...
  • たてせん
     三浦あずさが事務所に着くと、応接セットのソファに先客がいるのを見つけた。タレント仲間の高槻やよいである。  いつもならドアを開けて挨拶をすればまっさきに元気な声を聞かせてくれる可愛らしい同僚であるが、今日はなにやら他のことに気を取られているようだ。深く腰かけて前屈みになり、束ねたプリントアウトに見入っている。  きわめつけは眉間のシワである。やよいの両の眉の間に、見事な縦線が刻まれているのだ。  あずさはつとめて明るく、話しかけながら向かいのソファに腰を下ろした。 「おはようございます、やよいちゃん。外はいいお天気ね」 「はわっ、あずささん!おはようございますっ」  声を聞いてようやく気付いてくれたようだ。バネ仕掛けのおもちゃのように飛び上がると席を立ち、深々と頭を下げてくれた。 「ごめんなさいね、驚かせちゃった?ずいぶん夢中だったのね」 「あ……すみませんあずささん。来...
  • 第3話 みどりの国  ~響け! 千早の心の歌~
     機械の国を抜け、やよいたちは次の世界へと歩を進めていきます。 「真さん無事に帰れたかな…?」 「それは心配ありません。できれば一緒に戦ってもらいたかったのですが…」 「無理なの?」 「ええ、ストローは一つしかありませんし、それにそのドレス無しではこの世界の邪悪な瘴気によって あっという間に体力を奪われてしまうことでしょう」 ウサギはそう言ってやよいのエプロンドレスを見ました。普通の服のように見えるのに、とってもすごい ものだったのですね。  鏡の中の通路を抜けると、向こうに光が見えてきました。 そして出てきたのは… 「きゃぁぁぁぁっ!」 やよいたちを出迎えてくれたのは、甲高い悲鳴でした。それもやよいには聞き覚えのあるものです。 「千早さん」 「あ、高槻さん…? いきなり何か出てきたかと思ったら…」 千早さんとやよいの出...
  • 美希曜日よりの使者
     久しぶりにオフとなった日曜日は、あっという間に過ぎてしまった。もともとこの業界に潜り込んでは いたものの、ひょんなことからプロデューサーなどという職業について数ヶ月、まだ手の指で数え られるほどの暦通りの休日である。  時はすでに夕刻、アパートの築年数に似合いのインターホンが死にそうな音を出した時、俺は 晩飯でも食いに出ようか、それとも自炊に挑戦しようかと思案しているところだった。 「ん、なんだ?……はい」 「書留なのっ……です」  ドアの向こうからはこんな声がする。 「……ええっと?なんですって?」 「書留ですのー」  この世に生まれて二十数年、俺の知る限りこういう言葉遣いの郵便局員は記憶にないし、そもそも いくら民営化したとは言えローティーンギャルが書留を配達するサービスがあるとは到底思えない。 俺は足音を忍ばせてドアに近づき、そっとノ...
  • 風船
    俺は、765プロダクション所属の音楽プロデューサー。  担当アイドルの高槻やよいを伴って、今、新曲の広告活動を重ねている。  本日の営業場所は、とある郊外型テーマパーク。天候は、薄曇りして暑からずというところ。  野外ステージの客席は、大量の家族連れでごった返していた。  無線マイクを手にとって、やよいが会場全体にアピールする。 「じゃあ、みんな、お姉ちゃんと一緒に歌っちゃおう!」  まず最新のシングル曲、次いでそのカップリング曲を歌う。そして、最後に歌うのは、  もちろん「おはよう! 朝ごはん」。彼女を代表する一曲である。  それが終わると、子供相手の風船配り。  無数のゴム風船にあらかじめサインを入れておき、俺たち裏方がこれを膨らます。  そして、紐をつけた状態で、やよいが次々に手渡していく。  その際、空いた右手で、子供にポンとハイタッチ。...
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     冬本番、暖房の効いた車の中でさえ、窓は冷気を放っている。  助手席から眺める東京の街は、今日も忙しい。日も落ちてシャッターを下ろす準備をする店も中にはあるが、 まだまだ道も明るく、歩道を行く人の表情に疲労感はあまり見えない。一般的な企業の終業時刻は過ぎている。  信号待ちをしているあの人は、隣の人と楽しそうに談笑している。きっと、あの後アフター5でお酒でも飲 みに行くんだろう。見知らぬ人ながら、いい表情をしていると思った。  一方私はといえば……体が声にならない悲鳴をあげている。前腕や太もも、ふくらはぎの辺りがミシミシ言 っているようだ。それも、今日一日を振り返ってみれば、無理も無いことだろう。  元々予定では午前中にダンスレッスン、午後に歌詞レッスンを入れてあったのだが、トレーナーの都合で午 後のレッスンがキャンセル。ダンスのスタジオの方も予約が入ってお...
  • another year around
    ♪ハートをロックオン! するの♪  曲の終了と同時に、会場は地響きの様な大歓声に包まれた。観客は総立ちで拍手を送り、中には声を限りに ステージ上のアイドルの名を叫び続ける者や、感極まって涙を流している者もいる。  まばゆいばかりの照明が煌々と照らしだすステージの中央、天海春香は、チラリと隣を見やる。律子がいる。 その逆の隣には伊織。二人とも、満足そうな笑顔だ。  二人ともすごく素敵な顔!と春香は思った。  私も今、こんな顔してるのかな?だったらいいな・・・。  アイコンタクトでタイミングを計り、三人で広いドームスタジアムのステージの最前部まで歩み寄る。  春香が、マイクを持って口を開く。 「みなさーん!今日は、本当に」そこで一拍おいて、三人で息を合わせて「ありがとうございました!」  再び地鳴りの如き歓声。  その中、三人はステ...
  • とある舞台裏 00X
    とある、大規模なライブが出来る場所。 そして、今日はその最終日。 会場には"THE iDOLM@STER"がBGMとして響いている。 「今日で最後だな。  最後だから、余計に気を引き締めていこう。  じゃあ、始めるぞ」 765プロ主催のライブ。 総勢十一人のアイドルたちが共演するというファンにはたまらないライブだ。 全アイドルがBランク以上であることもあり、全六回の公演が販売初日で全日程、全席売り切れを起こしていた。 開演十分前。 アイドルと、一人のプロデューサーが円陣を組む。 いつからか、大きなイベントやライブでは、当たり前になった儀式。 「アイドルとは!」 と、自分が言う。 「華麗であること」 と、真。 「美しくあること」 と、あずさ。 「明るくあること」 と、春香。 「元気であること」...
  • 浮くもの、飛ぶもの
     今日は俺の担当アイドルの握手会だった。  町外れの小さな遊園地で子供たちを集めて風船を配る、と言う小ぢんまりとしたイベント だが、客も相応に集まったし、彼女も大いに楽しんだようだ。 「疲れたか?けっこうテンション高かったな」 「へっちゃらさー!3ヶ月前までは5万人相手に何日もコンサートやってたトップアイドルを なめるんじゃないやい」 「へえへえ。むしろこんなちっぽけなイベント、やってらんないか」 「おっとプロデューサー、それも間違いだよ。自分、これはこれですっごい楽しかったんだぞ」  そう、俺の担当アイドルは我那覇響。先日IUで我が765プロに負け、961プロを自由契約 となった元トップランカーだ。  最近のファンはユニットプロデュースというものをよく理解していて、前シーズンまで トップアイドルだろうか低ランクだろうがぜんぜん気にしないようだ。...
  • Sometimes
    腕時計に目を落として時間を確認する。只今の時刻午前10時半。予定の時間を大幅に過ぎているが未だ待ち人来たらず。 レッスンスタジオの前で待ちぼうけを食らっていたプロデューサーははて、と首を傾げる。 今日ここに来るはずだった雪歩はどれだけ気の進まない仕事であったとしても体調不良以外で休んだことは無いし、 仮に休まなければならない事情があった場合は必ず連絡を入れてきたのだからその疑問は当然でもある。 考えたくはないが連絡の入れられない状況にあるのだろうか、事故にでも会ったのだろうかと不安が頭をよぎり、 何か知っていることはないかと事務所に居る音無小鳥嬢へと電話をかけた。 「すみません小鳥さん。まだ雪歩がこっちに来ないんですが何か連絡は来てませんか?」 「ああそのことでしたら昨日の夜に雪歩ちゃんから電話がありまして」 「ええ」 「今日のレッスンはドタキャンするそ...
  • 風船のお家
     日の傾き始めたテーマパーク。オレンジ色に染まり始めた空の下、金髪をなびかせる美希の隣で俺は手元の メモ帳で訪れた客の数を確認していた。数は上々。テーマパークのステージの上で行われた美希のライブイベ ントには多くの人が訪れ、ライブ後のサイン会にも長い列ができていた。まだメジャーアイドルとまではいか ずとも、今日のイベントで美希の知名度も上がってくれたことだろう。 「疲れたか、美希?」 「うん、もうヘトヘト……早くおウチに帰ってゆっくり寝たいの……あふぅ」 「ははっ、頑張ってたもんな、今日は」  のんべんだらりとしていることの多い美希だが、今日は客の目が多かったこともあって、気を抜かずに頑張 っていてくれた。今日の客層に、自分よりも幼い子どもが多かったせいもあったのかもしれない。 「……ん?」 「あっ……」  俺の耳が子どもの泣き声を拾ったことに気...
  • 第4話 こおりの国  ~雪歩の大事なお友達~
    「段々寒くなってきたね…」 やよいがそうウサギに言いました。 「ええ、今度は氷の国なんです。やよいは大丈夫ですか?」 「うん、でも待ってる人はきっと寒くて大変だから、早く助けてあげないと」 やよいはやっぱり優しいですね。  出てきたのは一面氷の床で出来た島のようなところ。そして、その周りにはとても冷たそうな水が流れています。 さすがに寒くてたまりません。こういうときは運動をして体を温めることにします。 やよいが走ろうとして構えを取ると…  べしょ。 そのままやよいは見事に転んでしまいました。 「うう~」 うつぶせに倒れたやよいはなんとか起き上がろうと頑張って、何回かの後にようやく立ち上がれました。 でもこれでは到底先に進むことは出来ません…。 それを繰り返すうちにやよいは床の端っこまで。滑って落ちてしまいそうになって、...
  • 千早振る
    暦の上では春だけれども、まだ寒い日々が続いている今の季節。  そうは言っても心の中まで寒いというわけでもなく、いやむしろほのかに暖かい、かもしれない。いや、俺が面倒を見ている子たちの仕事が、ようやく軌道に乗り始めたのだから、贅沢を言っていては罰が当たる。  …というより、色々と紆余曲折もあったことだし、これぐらいは…と思うのは自分に甘いかな。努力がそのまま認められるなんてことがいつもあるほど世の中甘くないだろうし。  俺がそんなことを考えながらプロダクションの事務室で小鳥さんと一緒に仕事をしている今は、土曜日の昼下がり。今まさに売れ時でというよりも今こそ売れなくてどうするんだ、というような子たちをプロデュースしているのに事務所で内職かと落胆する必要はまったくない。 今日はまず朝のニュースで顔出しできたし、その後には午前中にあった雑誌取材もうまくいった。それだけで、今の...
  • シンデレラガールズの地元紹介新潟編
    うだるような夏の暑さから逃れようと事務所のあるビルへと入り、いつも通りに軋む音を立てるドアを開けて中にに入った瞬間空気がいつもと違う事に気づいた。 その違いを感じ取ったのは視覚ではなく嗅覚。 辺りには本能に訴える芳しい香りが漂っている。 原因を探るべく弱小アイドルプロダクションらしくこじんまりとした給湯室を覗き込む。 コンロの上には見覚えのない土鍋。 中には既に炊きあがった白米が湯気を立てている。 そして傍らには所属アイドルの一人である江上椿が立っていて、その長い髪を邪魔にならないよう首の後ろで纏めエプロンを付けている。 「おはようございます椿さん」 「おはようございますプロデューサーさん」 とりあえず挨拶をしてから問いただしてみる。 「何をしてるんでしょうか」 「おにぎりを作ってます」 少し悪戯っぽいニュアンスを含ませた返答が返ってくる。 「いやそれ...
  • 無題42
     昨晩から今朝に掛けて一気に展開した引っ越し作業も昼に差し掛かる頃には一段落を迎え、 午後になっていつでもおはようなギョーカイ挨拶と共にアイドルたちが事務所に出てくる頃までには、 ほぼ新事務所も仕事に支障がないほどには片付いた。  この事務所を手配するに至った原動力たる伊織は、だいたいIU優勝した段階でなんでまだあのビルいたのよ、 移転先がマンションってのもショッパイ話ね、なんぞとぶーたれてはいたものの、だいぶ環境がよくなったので ああ見えて結構機嫌もよいようだった。  確かにあの雑居ビルは、ボロで手狭だった。その上で貴音たちが新たに入ってきてさらに余裕が なくなったことを考えると移転も必然なわけだが、それでも狭い分だけ人の温かみというか、 身を寄せ合って過ごすような良さはあったよなあ、なんぞとも思ってしまう。  そんな自分の思い入れを言って...
  • くのいち雪歩・忍び穴後編
     一方こちらは高木一朗斎の長屋。高木老人が読み物をしながら茶を飲んでいると床下から 声が聞こえる。 「頭領、頭領」  高木は眉を動かしただけで視線を遣ろうともしない。声の主を心得ているのだ。 「雪歩か」 「申し訳ありません。伊織ちゃんを攫われてしまいました」  雪歩、と呼ばれた相手は、声を潜め、状況を説明する。 「武術大会にみんなで行く約束をしていたのですが、伊織ちゃんが先に屋敷を出てしまって。 少し高をくくってしまいました。まさか功徳新報がそこまで手が早いとは」 「催しがある時は人の波も心の波も乱れがちだ。少々気の短い輩がいたのだろう」 「いきなり殺すということはないと思います。手遅れにならないうちに探して、助けてきます」 「うむ、そうだね。伊織お嬢さんは可愛らしい娘さんだ、まだ日が高いとは言え見境の つかない奴がいないとも限らない」 ...
  • 赫い契印<Signature blood>
    「萩原雪歩……可愛らしい娘」 「し……四条……さ、ん」  四条さんの顔が私に迫って来ます。私はまるで体が痺れたみたいになっていて、指の 一本も動かせなくて、声を出すのも途切れ途切れで。 「さあ、心を落ち着けて」 「あ……」  四条さんの唇が私の頬をかすめて、まっすぐ私ののどに向かって行って。そこから先は 視界の外のはずなのに、彼女の紅い唇が大きく開かれてそこから鋭いキバが覗くのが どうしてか私にはわかって。それでも私は催眠術にでもかかったみたいに四条さんを 自然に受け入れて、首の右側にチクリとした痛みと、それから言い知れない快感みたいな ものを感じて……。 「──はっ」  そして、目が覚めました。 「……え、と」  きょろきょろとあたりを見回してみます。なんの変哲もない、いつもの私の寝室でした。 「えーと、あ、そうか、昨日打ち上げ...
  • Wizard and Witch
     あちらのアトラクションへ、こちらのカフェへと慌しく駆け回っていた人々の足並みも帰路へ落ち着き始め た頃、ステージショーの司会進行とライブを行っていた律子も撤収を終えてステージ脇へ戻ってきた。トーク への食いつき、遊園地という場所を考えると十分といえるライブの盛り上がりを考えると、今日の仕事は成功 だった。これから先へ繋がる大きな一歩になるかもしれない。  笑顔を隠しきれない様子でこちらへ歩み寄ってくる律子の表情も、そのことを物語っていた。 「プロデューサー、お疲れ様です」 「ああ、お疲れ様。随分と楽しそうだったな」 「ええ、今日は気分も乗ってましたし、ステージの前の方にいたチビッ子がもう可愛くって、うふふ」  声を弾ませて、スキップになりかけの軽い足取りで律子が俺の横に並んだ。ステージの脇から見ていた俺も 俺でまだ興奮冷めやらぬ所だが、張本人はそれ以上...
  • TOWもどきim@s異聞~第一章~ 春香編3
     それまで単なる辺境の小国家とばかり思っていた自分の生まれ故郷が、『ある側面』では特別であり幸運な国なのだということを、 風聞として知ったのはそれなりに幼い日のことだった。けど、実際それは彼にとってそんなに大した意味があるとは思えない。  屈折したプライドを持った一部の上流貴族の中には、世界樹の麓で生きているという事実だけで他国への妙な優越感を抱いている者も いるのだから、呆れるより他ない話だ。 「自分が生き仏にでもなったつもりかしら」―――と、同じ貴族達のそんな風潮を、嘆くようにそう呟いていたその少女の顔は、 会ったのが一度きりだったというのもあり細かい輪郭ももう思い出せないが、妙に疲れきっていたのを覚えている。 あと、眩しいを通り越して痛い位に自己主張してくるあの額とか。 閑話休題。 そんな『一応』特別な国ヴォルフィアナの北端に位置する、フロランタ...
  • 天海の岩戸
    「もー、プロデューサーさんのバカバカバカーっ」 「だーからなに怒ってんのかわかんないけどゴメンって。機嫌直して収録行こうぜ、春香ぁ」 「嫌です!もう私ここに閉じこもって一生外に出ないんですから!」  765プロダクションの小会議室のドアを挟み、大きな声で会話しているのはアイドル・ 天海春香とそのプロデューサーである。  音無小鳥の耳には先ほどから言い争いが聞こえていたが、ちょうど資料室へ行く用事が できたところで枝道の廊下を覗いてみると、この状況が見て取れた。  廊下側から声をかけるのがプロデューサー。いつものごとく今ひとつしゃんとしない服装 で、それでも表情は真剣だ。 「そんな子供みたいなこと言ってないで現実を見ろ。お前はタレントで、今から久しぶりに 全国ネットの歌番組の収録だ。お前のギャラと765プロの業務収益のために、お前は仕事に 行かねば...
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