問題:頒布権の国際消尽は生じうるか。
著作権法において、映画の著作物のみが頒布権を認められている。その他には譲渡権が認められているが、譲渡権については譲渡の場所が国外であっても消尽することが法定されている。(著作権法第26 条の2)そこで、問題となるのは譲渡の場所が国外であっても消尽するという規定がない映画の著作物の頒布権は、国外での譲渡によって消尽するか否かである。
映画の著作物とは
著作権法は、10条で著作物として映画の著作物を例示している。また、2条3項は映画の著作物の定義を規定している。
著作権法2条3項
この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。
映画の著作物である
中古ゲームソフトについて、国内での頒布により頒布権が原則的に消尽するとした最高裁判決(平成14 年4 月25 日最高裁第一小法廷判決・平成13(受)952)がある。ビデオテープも消尽すると考えられる・・・?(前記最判は映画の「配給」に用いられるもの以外は消尽すると考えているようだ。)ただし、国外での譲渡によっても消尽するかどうかはわからない。
譲渡権:平成11年改正によって創設された。また、同時に譲渡権が国際消尽することが法定された。(著作権法第26 条の2)
並行輸入ビデオカセットが合法であると言うためには、26条の2が類推適用されることと同じ頒布権の解釈が必要になる。
- 国内での譲渡と国外での譲渡を同じと見なすこと
- 頒布権が消尽すること。
これは無理ではないか?譲渡権に関して国際消尽が規定され、他方頒布権に関してそれがない。反対解釈によれば、少なくとも同じ扱いはできないだろう。著作権法は著作物の内容の種類によって扱いを分けているのであり、媒体の種類や拡布の形態で分けているのではない。
判決引用
ところで,映画の著作物の頒布権に関する著作権法26条1項の規定は,文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(1948年6月26日にブラッセルで改正された規定)が映画の著作物について頒布権を設けていたことから,現行の著作権法制定時に,条約上の義務の履行として規定されたものである。映画の著作物にのみ頒布権が認められたのは,映画製作には多額の資本が投下されており,流通をコントロールして効率的に資本を回収する必要があったこと,著作権法制定当時,劇場用映画の取引については,前記のとおり専ら複製品の数次にわたる貸与を前提とするいわゆる配給制度の慣行が存在していたこと,著作権者の意図しない上映行為を規制することが困難であるため,その前段階である複製物の譲渡と貸与を含む頒布行為を規制する必要があったこと等の理由によるものである。このような事情から,同法26条の規定の解釈として,上記配給制度という取引実態のある映画の著作物又はその複製物については,これらの著作物等を公衆に提示することを目的として譲渡し,又は貸与する権利(同法26条,2条1項19号後段)が消尽しないと解されていたが,同法26条は,映画の著作物についての頒布権が消尽するか否かについて,何らの定めもしていない以上,消尽の有無は,専ら解釈にゆだねられていると解される。
そして,本件のように公衆に提示することを目的としない家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については,市場における商品の円滑な流通を確保するなど,上記(ア),(イ)及び(ウ)の観点から,当該著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡されたことにより,その目的を達成したものとして消尽し,もはや著作権の効力は,当該複製物を公衆に再譲渡する行為には及ばないものと解すべきである。
なお,平成11年法律第77号による改正後の著作権法26条の2第1項により,映画の著作物を除く著作物につき譲渡権が認められ,同条2項により,いったん適法に譲渡された場合における譲渡権の消尽が規定されたが,映画の著作物についての頒布権には譲渡する権利が含まれることから,譲渡権を規定する同条1項は映画の著作物に適用されないこととされ,同条2項において,上記のような消尽の原則を確認的に規定したものであって,同条1,2項の反対解釈に立って本件各ゲームソフトのような映画の著作物の複製物について譲渡する権利の消尽が否定されると解するのは相当でない。
反論:同じ映画の著作物の中で、権利の内容が変わってしまうことは許容されるのか?映画の著作権にはある権利が認められるものとある権利が認められないものがあるというようなところまで、解釈にゆだねられているというのか。
DVDのリージョンコード
DVDにはリージョンコードがあり、また、リージョンコードは次期大容量光学ディスクにも採用された。よって、ビデオに関して、著作権者が光学ディスクで販売する限り、並行輸入されることはあまり考えられない。
最終更新:2006年12月06日 01:44