とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

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匿名ユーザー

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少年の手術を担当していた冥土帰しが首を横に振る。
それは、もう無理だという、単純かつ分かりやすいサインだった。
まず、銀髪碧眼の少女が泣き崩れる。
次に、赤い髪の少年が天を仰ぐ。
金髪アロハの少年はその場を立ち去り、
吸血殺しはその場に倒れこむ。
少年に救われた者たち、元ローマ正教のシスター4人や、
とある日に、少年と出会ったことのあるロシア成教のシスターも、
何かしらで顔を拭っていた。
そんな中、常盤台中学のエース、超能力者の御坂美琴だけは、
動くこともできずに、ただ、茫然と立ちすくんでいた。
(嘘よね。う、嘘なのよね?)

「お姉さま……」
状態を把握し、現実を受け入れた者から、その場を立ち去って行った。
まずは、赤髪の神父が立ち去る。その眼に見えたのは、涙。
次に、五人のシスターたち。三人は涙で前が見えないようで、水着のような服を着たシスターと一番身長のあるシスターが他を支えながら出ていった。
吸血殺しと銀髪碧眼の少女は、身長の低い教師に引き取られていった。
そんな中、御坂美琴を迎えに来た白井黒子は、涙で頬を濡らす美琴の姿を見てしまった。
その表情は、あの少年以外には見せたことのないものだった。
(よほど、あの殿方の死がショックだったのでしょうね)
白井黒子は考えた。
美琴との(行き過ぎた)スキンシップの時に、一番目障りだった少年が消えたのに、何故こんなに釈然としないのか。
美琴の悲しげな表情を見たからだろうか。
いや、違う。今までの白井なら、「代わりにわたくしが」などと言って美琴とのスキンシップを取りに行っていただろう。
それなのに、この感情は何なのか。白井にはわからなかった。

その場に居合わせた佐天涙子は白井以上に驚愕していた。
美琴が涙を流している。
それは、佐天があこがれる美琴のイメージとかけ離れていた。
どんなにつらいことがあっても、美琴はその場では泣かないと思っていた。
裏では涙を流しているかもしれないが、表には絶対に出さないと思っていた。
というか、それ以上に、美琴の想い人らしき少年の姿を見て、佐天は驚いていた。
(と、当麻さん?)
佐天が驚いたのにはわけがあった。
同じ無能力者同士、その少年と佐天との間にはいろいろと交友関係があったのだ。
それが、友人関係であろうと。それ以上の恋人関係であろうと。
最近、佐天はその少年と連絡が取れないことに、不信感を抱いていた。
それが、美琴と一緒に居たからだと考えると、自然と胸が苦しくなった。
(今の私に、御坂さんに合わせる顔は、ない)
佐天涙子は走りだす。
ここが病院だということも忘れて。

誰もが幻想殺しの死を知った。
名前は伏せられて、ニュースにもなったほどだった。
ただし、「上条当麻」が死んだのではなく、「学園都市最大の防御壁」が無くなった、と。
ローマ正教との戦争、そしてつい先月の「0930」事件。
上条当麻の死は、学園都市の防御力をガクンと下げてしまった。
「……というわけなのって、ミサカはミサカは10032号からの連絡を包み隠さず伝えてみたり」
打ち止め、と呼ばれる見た目10歳の少女が、白髪の少年に伝えた。
その横には黄泉川愛穂と芳川桔梗もいる。
ここは、黄泉川の家のリビングだ。
「ああ、それで小萌先生がここ最近、ずっと休暇を取ってるじゃん?」
黄泉川は納得したように言うと、うつむいてしまった。
「あの少年とは、9月の初めに地下街で戦ったじゃん。正直、死んだなんて信じられないじゃん」
黄泉川はそう言ったあと、黙った。
「あンだ?そういやお前、アイツが死ンだって言ってから、色々と司令みたいなンを出してっけどよォ。そりゃなンでだ?」
「そ、それは……」
打ち止めは黙った。しばらく無言の状態が続く。
「……彼の死に、妹達が精神的ショックを受けて、暴走をし始めちゃったから止めてるだけだよってミサカはミサカは強がってみたり」
「はァ?」
白髪の少年は黙った。
彼がこの生活を手に入れたのは、何を隠そう上条当麻のおかげだ。
上条がこの白髪の少年に勝たなければ、この生活はなかった。
そして、今暴走し始めている妹達の命もなかった。
その場がまた、無言になる。
(オレには、何もできない……)
白髪の少年は、自分の悲しみを悟られないように、静かにリビングを後にした。

「まさか」
神裂火織は上条当麻の部屋で座り込んでいた。
(上条当麻が、亡くなるとは……)
イギリスのローラが出した指令は、「治療部隊を派遣する」ということだった。
(間に合う訳が、ないのに……)
神裂は自らの頬を伝う、水滴に気付いた。
(涙……)
自分も相当なショックを受けていることを、神裂は悟った。
止めようと思っても、止まらない。
(お礼を、言い損ねましたね…)
神裂は天を仰ぐ。
(流石に、失礼なことをしてしまいました)
それ以上に、神裂は思う。
(私は、この魔法名を名乗っていてよいのでしょうか)
救われぬものに、救いの手を。
魔法名に従うなら、今しかない。
でも、神裂にはどうすることもできなかった。

余談だがその頃、天草では、五和が自殺しようとしているのを建宮が必死に止めている最中だった。

上条刀夜、同じく詩菜、そして竜神乙姫の3人は学園都市の入口に立っていた。
上条当麻の、亡骸を見るために。
「当麻……」
声を出せたのは刀夜だけだった。
詩菜はずっと泣き続け、乙姫に関しては、泣き疲れて寝てしまった。
そんな3人の前を、身長の高い一人の少年が走っていく。
「これで、第一段階は成功や。あとは、西に逃げ切れば……」
青い髪でピアスを付けた少年は走っていってしまった。
しかし、3人にそれを気にする余裕はなかった。
その時、
「すみません。学園都市って、ここであってますよね?」
上条と同い年ぐらいの少年が、刀夜たちに尋ねた。
「そうですが……何かご用でも?」
刀夜が尋ねると、少年は頭をかきながら、
「いやあ、インターネットで知り合った友達が学園都市に居るって言ってて、今日会う予定なんですよ」
「そうなんですか……」
少年は刀夜の言葉に対して、こういった。
「まあ、ウチのクラブのサイトにコメントを残してくれてた人なんですけど、何度かメールで愚痴りあってたんですよ。んで、会おうってことになって」
刀夜は言う。
「でも、最近学園都市では、色々な現象が起こってるらしいですよ。気を付けてくださいね」
「ご忠告、ありがとうございます」
少年は、最後にこう言った。
「色々な現象、か。アイツが喜びそうな街みたいだな」

「ううぅぅ、白井さんがさぼったぁぁぁ」
パソコンのキーボードをカタカタと鳴らしながら、風紀委員の初春飾利が言う。
初春も、ショッピングモールで上条に助けてもらった経験があるが、名前を知らない初春は「上条当麻」がその少年だということを知らない。
「こういう時に限って、仕事は多いんですよぅぅぅぅ」
もう、半泣き状態の初春は「もう、いいですっ」と言って、仕事を一旦止め、とあるサイトにアクセスした。
(そういえば、今日はここの人と会うんだったなぁ)
仕事を終わらさないことには、後で固法の痛いお仕置きが待っている。
「ふぇぇぇ、あと一時間で終わらさないと……」
初春はキーボードを打ち続ける。
約束の時間に間に合わせるために。
待ち合わせは第七学区の常盤台中学の前。
時間まで、あと1時間ちょっとだ。

「では、青髪ちゃんが犯人なんですね?」
「はい。そうなります」
親船が上条の担任である月詠小萌に告げた。
美人のエゴだろうか、彼女にはとても情報が集まっている。
「その青髪って子は学園都市を抜け出して、現在逃亡中だそうです」
親船がそういうと、小萌はさらに落ち込んでしまう。
自分の教え子が殺人を犯したのだから、当然だ。
ましてや、被害者も自分の教え子なのである。
「とりあえず、クラスのみんなにはまだ、告げないほうがいいと思います。みなさん、ショックを受けると思うので」
親船が言ったことは、最善の事だろう。
しかし、小萌は首を横に振る。
「そんなこと、できるわけないじゃないです。私、涙を抑えるのが一番苦手なのですよ。すぐにバレてしまいます」
「そういうことじゃありません」
親船はしっかりとした目つきで小萌に告げた。
「死んだ人を生き返らせる能力。そんな能力だってあるんです」

「ふむ、興味深いねそれは」
ステイル=マグヌスはとあるビルの屋上でタバコをふかしながら座り込んでいた。
ちなみにこれは親船と小萌の会話を聞いて出た言葉だ。
(アークショップは、そのことを知っているから、言わなかったのだろう)
カエル顔の医者は、上条がまだ死んでも生き返らせる人間がいると、イギリス清教側にだけ伝えていたのだ。
(そうでなければ、インデックスはイギリスに連れていかれてただろうしね)
ステイルは上条当麻が死ぬことで、あの少女の周りの世界が失われることが、何よりも恐かった。
(あの子の悲しい顔は、もう見たくない)
ステイルは横に居る神裂、そして土御門のほうを向いた。
「……ま、まだ完全に死んでいないのですか?」
「神裂、まさかアークビショップからの電報をまだ見ていないのか?」
ステイルは呆れたように自分の同僚を見た。
「だって……あの時は気が動転してて…………」
「そ、そーだぜ、ねーちん。き、気づいてなかったのかよ」
「お前もだろ、土御門」
冷静になれていたのはステイルただ一人だった。
(もう、僕は知らん)
あとは、上条当麻の生命力にかけるだけだ、と。
ステイルは十字架を握った。

第七学区の常盤台中学の寮の前、頭に髪飾りを付けた少女、初春飾利はある人を待っていた。
もとはと言えば、友人である佐天涙子に進められて一度、観覧したブログに何度か出入りしていた時に、そこのブログ主がコメントの返事をくれたことが始まりだった。
その相手は、文の使い方からして男だと推測した初春は、ブログ主に会いたいと思っていた。
美琴に想い人がいるのはわかってるし、(百合な黒子は除外)佐天にも恋人が出来たようで、初春は取り残された感があったのだ。
それに、遠距離恋愛になれたら素敵だな、というメルヘンチックな思考回路を持つ彼女にとって、外部の人との恋には、興味があったようだ。
そして、待ち人と同い年ぐらいの人が目の前を通り過ぎていこうとした。
その男性は、初春が知っている美琴の想い人に似ていた。
「えっと、そうだ。カミジョーさんだ。すみませーん」
初春は白井の言葉を思い出し、とっさにその言葉が出た。
しかし、その男性は、
「えっ、俺?俺は上条じゃないんだけど……」
と困惑しきった様子だった。
ちなみに初春は名前が出てきているのに、美琴や白井が風紀委員の仕事に来ないのが、まだわからない。
「あっ、人違いでした。すみません」
「いえいえ、いいですよ。ってうわあぁぁ、猫じゃねえか」
その男性は猫を見たとたんに逃げ出した。
「うーん、見たところ猫にトラウマがあるのでしょうか……」
まあいいです、と初春は正面を向く。
「あっ、初春さんですね」
やっと初春が待っていた男性が来たようだが、その男性の様子がおかしい。
「何も聞かないで。一緒に逃げてください」
「はは、はいぃぃぃぃ?」
初春は手をひかれて走り出す。

「やはりこの街に来ていたのですか。厄介なことにしてくれましたね。貴方がここに来ることで、彼女が超能力者の存在を知ってしまった場合、我々の世界にも超能力者が現れてしまうでしょう。もっとも、彼女が退屈することはないと思いますが」

一方通行、超電磁砲。二人の超能力者が戦意を失った今、ローマ正教およびロシア成教からすると、攻撃のチャンスとなる。
そしてロシア成教先鋒部隊が学園都市のすぐそこまで迫っていた。
その中の一人、サーシャ・クロイツェフは複雑な思いに心を奪われていた。
(私は、ロシア成教のエージェント)
先鋒部隊のエース。
(学園都市とイギリス清教は敵)
もう、戦争へと突入してもおかしくない状況である。
(ローマ正教が神の右席を失ったように、学園都市も幻想殺しを失った)
彼女は幻想殺しを復活させるために、学園都市内の再生能力を持つ人間を集めに集めていることを知らない。
(ロシア、ローマ側からすると。いや、ロシア側からするとこれはチャンス)
第二部隊は現在、日本では北方領土と呼ばれているあたりで待機中だ。
(しかし、問題はイギリス清教がどう動くかでしょう)
おそらく、まだ動いては来ないと思われる。
(先制攻撃でたたみかけるなら、今がチャンス)
幻想殺しの治療に最大の力を注ぐ学園都市は、警備員や風紀委員の救護係までを幻想殺しの治療へと向かわせた。
ここを逃せば、またあの鉄壁の守備で食い止められてしまう。
なのに、
(ためらってしまう、この感情は何なのでしょう)ミーシャは悩む。
まだ13歳のお年頃な女の子にとってそれは何という感情なのか。
エージェントの彼女にはわからなかった。

「あのバカ。本当に周りを考えずに動くんだから」
「で、でも熱中しすぎてた私たちにも非があると思うんですが……」
「…………私は、そうは思わない……………………」
「あーもう、行くわよ」
女性三人組。ロシア成教先鋒部隊を通り越して、学園都市へと向かう。

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