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たゆねのはんざいっ! - (2006/09/21 (木) 22:39:33) の編集履歴(バックアップ)


たゆねのはんざいっ! ----  ここは川平啓太のテント…その日、啓太達は、拾ってきたもので一杯になっていたテント内の掃除をしていた。 すると、啓太はあるモノを発見する、それは、赤道斎の魔道具の一つで、前に仕事で薫から拝借したものであった。 すっかりこの存在を忘れ、借りパク状態であった魔道具。 最近、ようこのせいでストレス満タンの啓太は、憂さ晴らしをするかの様に、その魔道具を悪用しようとしていた。 「にひひっ…ハーレム!、恋人一杯!犬神とやっても人間の子~!」 「ケイタ?何やってるの?」 タイミング悪くようこが登場…それに焦る啓太。 「げっ!ようこ!」 「何それ?」 「あ、いや…これは…そのだな…ちょ、ちょっとした遊びで…」 「遊び?ちょっと!人には掃除させといて、そんな子供みたいな…!」 とようこの怒号に反応してか、魔道具が啓太の掌で輝き始める。 「う、うわっ!馬鹿!」 「え?ええ?」 訳の分からなく慌てるようこと、訳が分かっていて慌てている啓太。 啓太は大惨事を免れようと、何とかして止めようとするが、発動してしまった魔道具は止まらず、輝く光は啓太を包み込んでいった。 「うぉぉぉぉ!この感覚まさかぁぁぁ!またアノ姿になるのかぁぁぁー!」 「ケイタ?ケイターーーーー!」 「赤子はもう嫌だぁぁーーーーー!せめて猫耳メ…!」 絶叫と共に消えていく光…やがて収縮していき、ようこの目が眩しさから和らいでいく。 ようこは、ハッとして啓太の身を心配し、彼の方に顔を向けたが、そこに彼の姿はなかった…そう今の彼の姿は…。 「ケイタ…?あ、あれ…あたし…?」 1 子供っ! 啓太の犬神である、ようこは、ある事情で川平薫の屋敷に訪れていた。 しかし、いつもはいる筈の啓太は、何故か一緒ではない。 その代わりといっては何だが、ようこと手を握って、ソファーに遠慮がちに座っている、まだ幼い子供がいた。 年頃で言えば、まだ4~5歳くらいであろうか。 一見、女の子のようにも見えるが、半ズボンにティーシャツの姿であった為、どうやら男の子らしい。 だが、その愛らしい姿に、薫の犬神達は、ずーっとその子供の事を見ていた。 「よ、ようこ…その子って…」 せんだんが、扇子を口の前で開かせて、まさか!と思いながら、ようこに問う。 応接間に集まった薫の犬神達が、驚きと興味の目を、その小さな子供に集中させる。 人見知りが激しいのか、子供は黙ったまま、ようこの後ろに隠れてしまった。 「うん、私とケイタの…って言いたいけど、そうじゃないのよねぇ…」 そうであれば良いなぁ、と思いながら、ようこは自分の子ではないと否定する。 「じゃあ、寝取られた女の子供?」 どこでそんな言葉を覚えたのか、ともはねが首を傾げて質問する。 「ちーがーう!この子はケイタなの!第一!私たちの子供が、1年やそこらで、こんなに急激に成長するわけないでしょ!」 「啓…太…様?」 ポカーンと一同が口を開けて、しばらくのまま黙り込むが、すぐに大変な状況だと理解したのか。 「啓太様ーーーーーーーー!?」 と身を乗り出して、ようこの後ろに隠れている、幼い川平啓太に密集した。 「ウソ!ウソ!何で?何で?」 いまりとさよかが、啓太である幼い子供の頬をツンツンと突付く。 「どうして、こうなっちゃったんですか~?」 フラノが、啓太の手を優しくニギニギする。 「ちょ、ちょっと…本当に啓太様…!?」 せんだんは、緊張で縮こまっている、啓太の頭を撫でる。 「薫様との…ショタ本が出来る!」 「うん…なるほど…」 いぐさが、何かノートに書き込んでおり、てんそうが、その内容をスケッチブックに明確に描いている。 その中身とは…とても言えない状況の薫が、幼い啓太を…後はご想像にお任せしよう。 皆は皆で迫力はあるが、それ以上の威圧と覇を放っている二人がいた。 「(美味しそう…)」「(啓太様の小さいお姿…今からでも遅くない…貰う)」 たゆねと、ごきょうやである。 二人は黙ったまま、幼くなってしまった啓太を、まるで獣が餌を狙っている時の目をしていた。 「こ、こら!あんた達!あまりケイタを弄るんじゃないの!」 群がる犬神達を、払いのけるように、しっ!しっ!と手でジェスチャーをするようこ。 その隙をついてか、後ろで待機していたなでしこが、すかさず啓太である幼い子供を抱かかえる。 「啓太様、お姉ちゃんと一緒にお昼寝しましょうか?」 「……」 甘いなでしこの言葉に、恥ずかしがりながら、小さくコクンと頷く啓太。 「こら!デレデレしない!」 ようこは、ポコツン!と軽くケイタの頭を叩くと、それに驚いたのか、啓太は、口元を歪ませて、目元に涙を溜めていた。 「ひっぐ…」 「あっ…ご、ごめんね、つい、いつもの癖で…」 「ようこさん!駄目じゃないですか!あー、ほら、泣かないで」 なでしこは、泣きそうになっている啓太を、上手にあやして、我慢するように優しく声を掛ける。 その甲斐あってか、ギュッと、なでしこの服を掴んで、涙を堪える啓太。 「うん、いい子、いい子」 なでしこは、我慢したのを褒めると、啓太を強く抱きしめて、自然にと、応接間から出ようとしていた。 「ちょっと待ちなさい…」 「…はぁ、失敗ですか」 だが、ようこがそれを許さず、なでしこの策略はここで潰えた。 「ほら、貸しなさい!はーい、ケイタ~、怖いお姉ちゃん達はみーんな、私が追い払ったからね~」 ようこは、なでしこからケイタを奪うように取り返すと、微笑みを見せて、ケイタを抱っこする。 「あーん、ずるっいー!あたしも!」 「ともはねの体型じゃ、抱っこ出来ないでしょ」 ともはねは、お姉ちゃん気分を味わいたいのか、啓太を抱っこしたいと、ようこにせがむ。 しかし、ともはねの身長では、啓太と手を繋ぐくらいしか出来ないであろう。 「いいな~、フラノも抱っこしたいな~」 フラノが羨ましそうに指を咥えながら、自分も抱っこしたいと、ようこに訴えている。 「はぁ…あのね、今日はケイタを玩具にする為に、連れてきたんじゃないの!」 ヒョイッ!とフラノを回避すると、今日訪れた事情を、一同に話し始めるようこ。 「なるほど…では、啓太様は、薫様から借りた魔道具を使って、こうなったと…」 「ええ、そうよ…しかも、記憶も曖昧でね…ある程度の事は憶えてるんだけど、名前とそれが誰なのかは一致しないのよ…性格まで変わっちゃって…もう3週間もこのまま」 せんだんは、ようこの説明に納得して、頭の中で整理すると、ポケッとこっちを見ている啓太を見る。 「(啓太様のその瞳…今から私色に染めろと…そう仰るの!)」 「あ、でも、はけの事ははげ…って…せんだん?聞いてる?」 「あ、え、ええ!聞いてますわ!」 せんだんは、不覚にも、啓太の無垢な顔に見惚れてしまっていた。 「それでね、はけに聞いたんだけど…強力な呪いか何かで、いつ解けるか解らないって言うのよ…だから、管理者の薫なら、何か知ってるんじゃないかと思って来たんだけど…」 「その薫様は、仮名様とお仕事でいない…と」 ようことせんだんの会話を聞いていたなでしこが、空かさず薫の携帯に電話を掛けるが、携帯は圏外か電源を入れていないらしく、連絡が取れない。 「駄目ですね…繋がりません」 「そう…はぁ…どうしよう…」 ようこは、頼みの綱の薫がいないと知って、頭を抱えて悩んでいると、それを知ってか知らずか、啓太がモジモジしながら、黙っていた口を開いた。 「ねぇ…ようこお姉ちゃん…僕…もう帰りたい…」 「よ、ようこお姉ちゃん!?」 一同が驚愕し、またも身を乗り出して、ようこにグワッ!と喰い付いてくる。 「な、何よ…?」 「ねぇねぇ!啓太様!私達の事も、いまりお姉ちゃん、さよかお姉ちゃんって言ってみて!」 双子の姉妹がハモリながら、啓太にお姉ちゃんと呼んで欲しいと頼む。 「わ、私の事は、せんだんお姉さまで宜しくってよ!」 「あたしは、ともはねお姉ちゃんね!」 「てんそう…お姉さんでいいわ…」 次から次へと、啓太にお姉ちゃん、お姉さん、もしくはお姉さまと呼んで欲しいと、ここぞって集まってくる犬神達。 小さい啓太には、その圧倒的な女の恐怖は重く、またも泣き出してしまいそうであった。 「はいはい!皆退がって~、退がらないと、だいじゃえんするわよ」 しつこ過ぎる皆に痺れを切らしたのか、ようこの指の先に、ボッ!という音と共に、じゃえんが集まってくると、犬神達は、しゅん、と大人しくなって、ようこと啓太から離れていった。 「みんな、理解のある子で、私は嬉しいよ~…じゃあ、そんな皆にすごいもの見せてあげる」 そう言うとようこは、いきなりサマーセーターを上にずらすと、胸の下着のホックを外し始めた。 「よ、ようこ!な、何をはしたない事を!」 突然の奇行に驚く一同。 代表のせんだんは、デリカシーが無い!と、ようこに注意するが。 「だまってなさい…」 と睨みつけて、せんだんを一蹴した。 「はーい、ケイタ~、お待ちかねのおっぱいでちゅよ~」 下着のホックを外し終えた途端、耳を疑うようこの言葉と同時に、彼女の胸の先端にある母乳パットに目が行く一同。 その様子にフッと笑うと、ようこは見せ付ける様にして、貼っていた母乳パットを外した。 すると、啓太の目の前に、ぷるんっ!と弾力性のある胸と、その先端から滴っている母乳が曝け出される。 唖然とする犬神達…いぐさなんかは、両手で顔を覆って、指の隙間からそれを見ていた。 「ふふっ…おどろいた?」 「お、驚くも何も!ど、どうしたんですか!ようこさん!」 勝ち誇った顔をするようこに、なでしこが質問をすると、高圧的な態度になって、その質問に答え始める。 「実はねぇ…呪いにかかったのはケイタだけじゃないのよ、その場にいた私も、何だか知らないけど呪われちゃったみたいでね」 「呪いって…そんな!」 「妊娠もしてないのに、ぼにゅーが出ちゃうなんて、おかしいわよね?」 「おかしいとかそんな問題じゃ…!」 自分の身に何が起きてるのか分かっているの?、と疑問をぶつけたいなでしこであるが、それを遮ろうとしているのか、ようこの話は続く。 「最初は私だって大慌てよ、これからどうすればいいのか…ってね…でもね…こうやって…」 ようこは、片方の手で啓太の後頭部を優しく押すと、自らの乳房へと押し付けて、彼の口に、母乳が溢れ出している突起物を含ませた。 「んくっ…」 「ケイタに自分のぼにゅーを飲ませてあげられるのよ…私自身の身体は、このままでもいいかなって思うわけ」 慈母と悪魔の顔が混ざった表情で、啓太を見つめながら授乳するようこ。 その異様な光景に、薫の犬神達は退くどころか、じっくりと観察している。 せんだんは、可愛らしく母乳を飲んでいる啓太に、ゴクッと喉を鳴らし、なでしこは、啓太に授乳させる事が出来るようこを羨ましく見て、 ともはねは、母と子の様な二人の姿に感動し、いまり、さよか、フラノに関しては、いつの間にか、ようこの両隣に陣取り、啓太の頬を突付いていた。 「何か…エッチだけど…ほのぼのする」 と、後ろで見ていたてんそうがボソっと呟く。 「(ようこぉぉ…ボクの啓太様に何してるんだぁぁ…)」 「(け、啓太様が…ようこに汚されてしまう!)」 てんそうの更に後ろでは、ようこの傍若無人なケイタ独占に、憤りと怨念を放っているたゆね、ごきょうやの二人がいた。 「それにね…ケイタったら、お腹が一杯になるまで、どんどん吸っていくから、すっごく気持ちいいの」 ようこは、快感を独占している事を、誇らしげに伝える。 「…ようこお姉ちゃん…恥ずかしいよ…」 皆からの視線に耐えかねた啓太は、ちゅぱっという音と共に、ようこの乳房から口を放す。 吸っている途中であった為、ようこの母乳が、啓太の口の周りを白く塗っていた。 「なぁに言ってるの、いつもは、おっぱいおっぱい甘えてくる癖に」 「だ、だって…恥ずかしいんだもん…」 羞恥心に駆られた啓太は、またも泣きそうになって、ようこの腕から解放されようと、必死に抵抗するが、普段の啓太でも勝てない相手に、力で勝てるはずもない。 やがて、体力もそれ相応分しかない啓太は、疲れきって抵抗空しく、力尽きようとしていたのだが…。 「止めろ!嫌がってるだろ!」 「そうだ、可哀想だ」 ようこの腕を払いのけて、啓太を略奪する犬神。 啓太を奪ったのは誰だと思い、ようこがフッと顔を上げると、そこには、先ほどまで大人しくしていた二人の犬神、たゆね、ごきょうやがいた。 「ちょっと!私のケイタに何するの!」 「どうもしない!それより、啓太様が嫌がってるのに、何やってるんだ!」 小さくても、愛しの啓太の嫌がる顔が見たくないたゆねは、ようこが相手だとしても、怯えずに激昂した。 「何って!じゅにゅーでしょ!」 「バカ!赤ん坊じゃないんだから、授乳する必要なんてないだろ!」 「そうだな、見てくれはもう幼児なんだ…たゆねの方が正しい」 喧嘩している二人の間に入り、たゆねに味方するごきょうや。 だが、それが気に食わなかったのか、ようこは額に青筋を立てて、手に霊力を溜めていた…。 「ふーん、そう…そんなに死にたいんだ…」 「くっ!そ、そんな脅し…効かないからね!」 徹底的にようこに抗戦するたゆね。 その腕の中では、啓太が恐怖のあまりに震えていた。 2 ようこ、きらいっ! 「たゆね…ケイタを返しなさい…さもないと…」 「うっ…い、嫌だ!お前に啓太様を返したら!啓太様が可哀想だ!」 「た、たゆね…!」 たゆね、ごきょうやとも、怒り心頭のようこから一歩も退かず、懸命に啓太を守ろうと、彼女の脅しを耐えていた。 「そう、ならいいわ…しゅくちを使って啓太を奪ってから、あんた達を丸焼きにしてあげる…」 「ようこさん!やめて下さい!」 「うるさい!なでしこ…今の私はあんたでも止められないわよ…」 「ど、どういう意味ですか?」 口元をニヤッとして、自信ありげな表情で、なでしこを威嚇するようこ。 「言い忘れてたけど、呪いにはねぇ…何故か知らないけど、霊力を高めてくれるっていうサービスもついて来たのよ…この前ちょっとだけかるーく、じゃえんを使ったらね…お山が一つ、一瞬で消えたの」 「よ、ようこさん…じゃえんで、山一つって…そんなに…」 「ええ、綺麗さっぱりね…まぁ、どのくらいの強さか例えると…あの漬物石が30000あっても足りないわね」 「さ、30000でも足りない!?」 ようこのその言葉に、さすがのせんだんも冷や汗を覚える。 「設定に無理があるんじゃないでしょうか…ようこさん」 「いいの!こうでもしないとケイタ取り返せないじゃない!」 何か、適当に10倍界○拳でも使ったかのようになっているようこに、なでしこが冷静にツッこむ。 「じょ、冗談だよね…ようこ」 強気であったたゆねも、破滅的なようこの霊力に、先ほどの姿勢を崩し始めていた。 明らかに怯えている様子…ようこは更に悪ぶった顔を見せ付けると、ウソではない事を証明する。 「冗談かどうかは、あんたの後ろの犬神を見てみれば分かるんじゃないの?」 「えっ?…あっ!いまり!さよか!」 たゆねの目に映ったのは、床に伏して震えているいまりとさよかの姿であった。 その他にも、フラノ、てんそう、いぐさ、ともはねも、ようこからなるべく離れて、恐怖に引きつった顔になっていた。 「うっ…」 「ごきょうや!」 「わ、私なら…大丈夫だ…それより啓太様を…」 床に膝をついて、プレッシャーに苦しむごきょうやは、自分ではなく愛すべき啓太の身を案じている。 「ど、どうやら…冗談では…ないよう…ですわね」 「ええ~、これで分かってもらえたかしら?」 禍々しいプレッシャーに、せんだんの声も上ずっていて、なんとか立っているのが精一杯だった。 「ようこさん…」 「なでしこ…やっぱりあんたは平気なんだ」 「本当に止めて下さい…本気で怒りますよ…」 「いいんじゃない~、別に怒っても」 勝つ自信は充分にある…目に映るなでしこは、蟻よりも小さく思え、指先でプチン!と潰せそうにようこは感じた。 「さぁ、怒りなさいよ!」 ようこは、髪を掻き揚げて、なでしこを挑発する。 「ようこさん…!」 お腹に力の入ったなでしこの声が、応接間に響いて、ようこの霊力を拡散していく。 「このままでは…町一つ所じゃ…済みませんわ…!」 膨大な霊力の衝突が、起きた場合の事を想像するせんだん。 彼女の言うとおり、今の二人が戦闘を行えば、大惨事へと繋がる。 「へぇ~、やれば出来るじゃない…やらずのなでしこさん?」 「ようこさん…行きますよ…」 グッ!と身体全体に霊力を帯び、戦闘へと移行しようとする二人…もはや止めようが無いのかと、皆が絶望へと堕ちそうになっていたその時。 「ようこお姉ちゃん嫌い!」 「へ?け、ケイタ?」 たゆねの腕の中で、不機嫌そうな顔している啓太の一言で、シュゥゥ…と霊力が身体から抜けていくようこ。 それに伴い、冷静さを取り戻したなでしこも、いつも通りの彼女に戻っていた。 「け、啓太様…?」 「い、今、なんて言ったの?」 不安そうな顔で、啓太が今言った事が空耳だと思い込み、もう一度聞いてみるようこであったが、次の言葉は更に酷く。 「やだっ!ようこお姉ちゃんなんかどっか行っちゃえ!」 という子供である故の無慈悲な言葉であった。 「ど、どっかいっちゃえ…どっかいっちゃえ…?」 暫く、啓太の言葉を理解出来なかったようこ。 諦めが悪く、啓太から否定を受け入れない彼女は、何度も啓太の言葉を連呼すると、彼女の顔は悲しみに歪んで、今までに見せたことの無い泣き顔を曝した。 「ひっぐ…えぐっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーん!」 「うぐっ!な、何だよ!この泣き声は!」 物凄いようこの、泣き声の音量が、全員の脳に揺さぶりをかける。 「ケイタに、ケイタにきらわれたぁぁーーーーーー!」 「痛い!頭が痛いですわ!」 耳を抑えても、直接脳へと進入してくるようこの泣き声は、ケイタを含む11人全てに苦痛を与える。 「うえぇぇぇぇん!もういきていけないよぉぉぉーーー!」 もうようこは、何をやっているのか分かっていないだろう。 泣きながらゆっくりと歩き始めると、何を言っているのか分からない叫びを上げて、応接間を出て行こうと、廊下に続くドアへと向かって行った。 だが、そこがドアだと理解していないのか、豪勢に頭をぶつけて倒れると、しゅくちを使って何処かにいなくなってしまった。 「よ、ようこ…?」 啓太を抱かかえているたゆねが、ようこの名を呼んだが、彼女の姿は既にない。 あるのは、ようこの泣き声で破壊されたガラス窓やテーブルの残骸であった。 「た…助かりましたわ…」 ようこの重圧から逃れられ、へなへなと内股で座り込むせんだん。 なでしこも、相当の恐怖を感じていたのか、息を乱しながら、額の汗を拭っていた。 「皆さん、無事ですか?」 「う~ん、何とか…」 「私も~」 なでしこの問いに、いまり、さよかがフラフラになりながら答える。 「ともはねは?」 「だいじょうぶぅ~…」 余ほどの事だったため、まだ霊力の低いともはねは、目を回しながら壁にもたれかかっていた。 「しかし…啓太様があの時、ようこを嫌いって言ってなければ…私達は死んでいたな…」 「そうですね~、フラノもあの時は動けなかったですぅ…」 「死ぬかと…思った」 「ふぇぇ…薫様と啓太様のショタコンが…」 てんそう、いぐさは、バラバラになった、スケッチブックと紙切れを、せかせかと集めていた。 「…命があっただけでも良かったと思うんだ…」 ごきょうやは、お尻をパンパンと叩いて、埃を落とすと、たゆねに抱っこしてもらっている啓太に近づき、優しく頭を撫でる。 「啓太様…有難うございます」 「…えへっ」 まだ穢れを知らない(もう知ってしまっているのだが)啓太の笑顔が、ごきょうやの胸をドスン!と貫く。 「(か、可愛い!今すぐ食べたいっ!というか食べてください!と神の思し召しだぞ、これは!)」 ショタ気が、あるのかないのか知らないが、欲が抑えきれなくなっているごきょうやは、片手をワキワキさせながら、啓太を掴もうとしたのだが。 「こらっ!ごきょうや!」 たゆねに手を払われて、見事に阻止される。 「あっ…つい…」 ごきょうやは、手の甲の痛みにハッとすると、正気に戻り、啓太に申し訳無さそうにしている。 「ったく、油断も隙もないよ!」 と言いつつも、目の奥では啓太を獣の目で捉えて、ここぞと好機を待っているたゆね。 「なでしこ…お聞きしたい事があるの」 「何ですか…?せんだん」 まだ座り込んでいるせんだんは、真剣な眼差しで、なでしこを見ると、扇を開いて顔を半分隠した。 「あの時…貴方はようこに勝てました?」 「……いいえ」 率直に答えるなでしこに、やっぱり…という顔で納得するせんだん。 「そうでしょうね…見ていて分かりましたけど…あの時の貴方…本当は動けなかったんじゃなくて?」 「はい…その通りです…形だけは構えてましたが…その後はもう…」 なでしこの独白に、一同がざわつく。 ようこに恐れられている自分でさえも、今の彼女にとっては赤子同然であったと、皆に言っているようなものであった。 ようこの圧倒さを思い出し、シーンとする室内…誰もが重苦しく口を閉ざして、黙り込んでいる。 「ま、まぁ…過ぎたことを悩んでも仕方ないしさ…それよりも、今は啓太様をどうするかだよ」 と、たゆねが、重い空気を払うように、抱かかえている啓太の処遇を聞いた。 「そうですね…ようこさんが拒絶されたから…啓太様は一人ぼっちなんですよね」 「ん?そんなに悩む事でもないだろう…」 ごきょうやは、何か良い提案を思いついたのか、キリッとした顔で皆に考えを聞かせた。 「私達で預かればいいだけの話だろう?」 「あずかるって…啓太さまを!?」 ともはねが、ごきょうやの提案に驚く。 「そうだ、今の啓太様は純粋な子供だ…こんな子供を一人で放って置いたらどうなる?」 「誘拐…そして調教…最後には肉奴隷…男の子なのに女の子の服を着せられて…うふふふ」 「い、いぐさ…何言ってんだよ…」 「いぐさ…最近おかしくなってきた…」 眼鏡を光らせて、不敵な笑みを浮かべるいぐさに、たゆねは元より、てんそうも少し退く。 「ご、ごほん!そ、そこまではいかないが、ショタコンの魔の手による誘拐の危険性はある!そこで!啓太様は私が!」 「ごきょうやがショタコンだろ!」 ごきょうやの啓太強奪突進を、ヒョイッと回避するたゆね。 案の定、ごきょうやは、スイーっと応接間の床を、ボブスレーの様に滑っていった。 「ご、ごきょうや…」 「け、啓太さまー…」 壁に頭をぶつけて目を回しながら、気絶するごきょうやを見て、なでしこは、アーメンと祈りを捧げた。 「ごきょうやちゃんは駄目だとして、どうするんですか~?」 フラノが、リーダーであるせんだんに聞くと、彼女は。 「こういう場合は、白骨遊戯…むぐっ!」 「せんだん…それは禁忌だから無理です」 なでしこは、これ以上言わせないように、せんだんの口を思いっきり塞ぐ。 そのせいで、あろうことか、せんだんは気を失い倒れてしまった。 「せんだん…」 この時、本当はようこではなく、平然とした顔で仲間を殺れるなでしこが、一番怖いと皆は思った。 3 けものたちっ!  結局、割り箸くじ引きで啓太を誰に預けるか決めた一同は、気絶しているせんだん、ごきょうやを抜いて、勝手に話を進めていた。 そして、見事に当たりクジを引いたのは、啓太をようこから守った、他でもないたゆねであった。 でも、当たって当然である、何故なら、当たりの棒に匂いをつけて、必ず引けるようにと、イカサマしていたからであった。 「じゃあ、ボクで決定だね!」 「えーっ!たゆね、ずる~い!」 いまりが不満そうに頬を膨らませる。 「何でずるいんだよ!くじ引きだから公平だろ!」 「だってだって!さっきも、たゆねが啓太様を抱っこしてたし~…」 さよかもいまりと同じく、不満タラタラであり、たゆねにイチャモンをつけてくる。 「(…あれ?このクジが当たりだった気が…たゆねにしてやられました?)」 イカサマをしたのに、ハズレになったなでしこが、誰にも悟られないように、黙ったまま片手で、持っていた割り箸をへし折った。 「う~、あたしも啓太さまと一緒が良かったのに~」 ともはねは、ハズレてしまい泣きそうな顔で、引いた割り箸をカミカミしている。 「せっかくのショタのモデルが…身体が…」 別の意味で残念だと、涙を流しているいぐさ。 「まぁ…まぁ…」 それを宥めるてんそう。 「あーあっ…フラノと一緒なら、夜のお勤めも充実しているのに~」 「充実させるなっ!」 何を垂らし込ませようとしているのか知らないが、フラノはハズレた割り箸を投げて、つまんなそうに愚痴を言う。 「たゆね~、本当は何かイカサマしたんじゃないの~?」 どうしても不服ないまりが、カマをかけるように、疑い深くたゆねに聞いた。 「な、何を!バカな事を!」 と分かりやすいご丁寧な返事を返してくれたたゆね。 「だってさ~、このクジ作ったのたゆねだし~」 「最初に引いたのも、たゆねだったし~」 双子の疑いの目が、たゆねに、じろ~っと向けられる。 「で、でも、ビンの中に割り箸入れてシャッフルしたのは、なでしこだろ!」 「そうですけど…私はハズレでしたよ?」 バッキボキに折れている割り箸を、たゆね達に見せるなでしこ。 その凄まじい折れ具合に、これ以上はなでしこのせいにしない方が良いな、と三人は思った。 「と、とにかく!ボクはイカサマなんてしてない!」 逃げるようにいまり、さよかから離れると、ちょこんとソファーに座っている、啓太の隣に座るたゆね。 「さぁ、啓太様…お部屋に行こう?」 たゆねは、啓太の手を取り、優しくエスコートする。 意外と面倒見の良い彼女には、啓太のお守りも適任であろう。 「ボクの事は、たゆねでいいからね」 「たゆね…?」 「なーんか、むかつく~」 「むかつく、むかつく~!」 やっぱり納得いかない、いまりとさよかは、ぶーぶーとブーイングをして、たゆねに抗議した。 「う、うるさいっ!いつまでもしつこいぞ!啓太様、こんなバカほっといて行こう!」 「あ…うん、じゃあね…いまりお姉ちゃん、さよかお姉ちゃん」 たゆねに連れられて、応接間を後にする啓太は、いまりとさよかに小さく手を振って、お別れの挨拶をした。 「聞いた?いまり」 「聞いた聞いた!さよか!」 「お姉ちゃんだってー!」 啓太に、お姉ちゃんと呼ばれたのがそんなに嬉しいのか、二人は手を合わせて、ぴょんぴょん跳ね飛びながら、応接間を出て行った。 「ぷにぷに啓太様と一緒に寝たかったです…」 「フラノ…今、犯罪的な事考えてたでしょ…」 フラノの心を読んでいたかのように、てんそうは、スケッチブックに啓太を襲っているフラノを描く。 「そんなそんな!フラノは啓太様を癒してあげたいだけです~」 「目が据わっていますね…」 なでしこが言うと、皆が「うん」と頷き、一同が溜息をつく。 「ショタ啓太様が拘束具で…薫様が鞭を打って…うふふふ」 「いぐさ…分かったから…もう行こう…」 「あ、待って、てんそうちゃん!」 いぐさは、完全に一人の世界に入って、啓太が虐められる姿を妄想しており、見かねたてんそうが、いぐさを引っ張って、応接間から出て行く。 そして、フラノも気絶したままのごきょうやを起こすと、肩を組んで、二人の後を追うように出て行った。 「みんな行っちゃったね」 「そうだね、それじゃあ、私達はせんだんを部屋まで送りましょう」 「うん」 なでしこは、気絶させたせんだんをヒョイッと担ぎ上げると、ともはねと手を繋いで、誰もいなくなる応接間を後にした。 彼女達は知らない…本当に危ないのは誰だったのかを…。 [[続く>たゆねのはんざいっ!2]]