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THP (テトラヒドロピラニル) 基 - (2007/09/07 (金) 19:53:10) のソース

*THP (テトラヒドロピラニル) 基
#right(){[[戻る>保護・脱保護反応]]}
>Greene's PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS p.59
#center(){&ref(THP01.png)}

水酸基に対する保護基で,塩基や求核剤に対して安定。
酸を用いて簡単に外す事ができる手軽な保護基。

-保護基の反応性 (◎:反応する ○:反応性がある ×:反応しない △:特殊な反応をする)
|CENTER:酸|CENTER:塩基|CENTER:酸化|CENTER:還元|CENTER:求核剤|CENTER:ヒドリド|CENTER:熱|
|CENTER:0.1 N HCl (pH 1)|CENTER:0.1 N NaOH (pH 12)|CENTER:CrO3, Py|CENTER:H2, Pd|CENTER:RLi|CENTER:LAH|CENTER:150 ℃|
|CENTER:◎|CENTER:×|CENTER:×|CENTER:×|CENTER:×|CENTER:×|CENTER:×|


**実験プロトコル 
-保護
|BGCOLOR(#ffdddd):Brenady, K. F. et al. J. Org. Chem. 1979, 44, 1438.|
DHP, TsOH, CH2Cl2, 20 ℃, 1.5 h, 100%

-脱保護
|BGCOLOR(#ffdddd):Brenady, K. F. et al. J. Org. Chem. 1979, 44, 1438.|
DHP, TsOH, CH2Cl2, 20 ℃, 1.5 h, 100%


**Tips

>THP保護反応を行ったところ,2つの生成物が得られた。

原料に不斉中心がある場合,おそらく両方とも目的物.
分ける必要はないが,系が複雑化することを覚悟しなければならない.

-概要
 1級アルコールに対して,アセタール型保護基であるTHP基で保護しようと考えた.Dihydropyraneを用いてTHP化反応を行ったところ,2つの化合物が生成した.これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて単離精製し,各種スペクトルデータを測定した.すると,どちらの化合物も目的物らしい.また,二つの化合物のプロトンNMRデータが非常に類似していた.どちらが目的物なのか決める方法はあるか.

-原因
#center(){&ref(THP03.png)}
 THP基の1'位炭素は不斉炭素である.その為,単純にTHP化反応を行うと,R体,S体の両方が生成する.この二つの生成物はどちらも目的物であるから,分けて扱う必要がない場合が多い.
 原料が不斉中心を持たない場合,生成した目的物二つはエナンチオマーの関係となり,上記の単純なシリカゲルカラムクロマトグラフィーでは分離されない.
 原料が不斉中心を持つ場合,生成物はジアステレオマーとなり,クロマトの条件によっては分離される.

-解決法

 二つの生成物がジアステレオマーである場合,分離は不必要.ただし,二つのジアステレオマー混合物として続く反応に用いる場合,解析や精製が複雑になることを覚悟しなければならない.それを避けるためには,ジアステレオマーを分離してそれぞれ別々に反応を進めればよいが,非常に非効率.
 不斉中心を持つ化合物に対してTHP保護基を使うことは,系の複雑化につながるため,避けたほうが無難.
 どうしてもアセタール型の保護基を用いなければならない場合,代替できるものとして,MOM,SEMなどの保護基がある.これらは不斉中心を生じないため,効率的.
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