第101創作猟兵大隊司令部内検索 / 「北海道の一番長い夏2」で検索した結果

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  • 北海道の一番長い夏2
    第二話 戦争が見える 7月22日8時39分、NHK総合。ラジオ。BS1、BS2。 報道特別番組 「―――ただ今入ってきたニュースをお伝えします。内閣は日本が外部から武力攻撃を受ける恐れがあるとして、全自衛隊に対して、防衛出動命令を発令しました。これにより自衛隊は部隊を展開し、日本より外部から何らかの計画的・組織的の武力攻撃があった場合、我が国を防衛すべく必要な武力を行使することができます。繰り返しお伝えします。内閣は日本が外部から武力攻撃を受ける恐れがあるとして、全自衛隊に対して、防衛出動命令を発令しました。これにより、自衛隊は部隊を展開し、日本より外部から、何らかの計画的・組織的の武力攻撃があった場合、我が国を防衛すべく必要な武力を行使することができます。尚、これに伴いまして予備自衛官の召集が正式に決定。部隊展開のため一部幹線道路や鉄道、船舶、飛行機等の交通機関が使用され...
  • 北海道の一番長い夏1
    第一話 歴史は繰り返す 200X年7月19日14時23分、日本、東京都千代田区、首相官邸地下 「ご覧下さい。これが米国の偵察衛星から撮った3ヶ月前の国後島のソ連空軍飛行場―――」 正面の大きな画面に滑走路の上空写真が写された。飛行機は1,2機くらいしかいない。 「そしてこれが昨日撮った同飛行場の写真です」 同じ滑走路の上空写真だった。だが航空機が大量にいる。 近年、その機能を移転された新首相官邸の地下、そこにある薄暗い会議室の演台に立つ統合幕僚会議議長の田宮陸将は大きな会議机を囲むように座る人々を見回した。 総理大臣から各官僚、防衛関係者たちが揃っている。 「ご存知のとおり、先月からワルシャワ条約機構軍と朝鮮人民軍は合同大規模演習『赤い7月』を行い、先日15日をもってこれの終了を宣言しました。ですが、このようにまだ大量の空軍機がここに待機しています。さらにこれは...
  • 北海道の一番長い夏
    プロローグ 1987年12月25日 第一話 歴史は繰り返す 第二話 戦争が見える
  • 北海道の一番長い夏0
    プロローグ 1987年12月25日 1987年12月25日昼、ソ連、モスクワ その日、モスクワは寒波に包まれていた。 吹き付ける雪が市民たちの頬に当たり、痛みを感じさせる―――もっとも市民のほとんどは外出などしていない。 いるのは兵士―――同じ国に所属していながら、今や敵対関係となって、戦闘を行っている軍やKGBの兵士たちだけだった。 無論、今、200名近い歩兵を引き連れて、クレムリン正門でクレムリン警備連隊と交戦しているソビエト陸軍少佐とて論外とはいえない。 むしろ彼はその象徴だった。 突然師団司令部より発令された命令は唐突で、あまりにも衝撃的だった。 クレムリンを制圧し、ミハイル・ゴルバチョフをはじめとする現政権内部の反動分子たちを逮捕、あるいは殺害せよ。 それは彼にも理解できた。つまりクーデターなのだ。 だが不可解なことにKGB将校たちもこれに賛同して...
  • 小説一覧
    タイトル 著者名 更新日時 新たなる帝國 頭痛 2012年12月21日 (金) 21時37分03秒 新たなる帝國外伝 独立観測航空隊 サヴァ 2007年11月05日 (月) 18時47分01秒 独立観測航空隊外伝 スカイシューター 流刑者 2009年09月03日 (木) 02時22分17秒 新たなる帝國外伝 飛鳥島守備軍を救出せよ 流刑者 2012年12月21日 (金) 21時37分03秒 鉄血竜戦記 流刑者 2007年10月31日 (水) 03時21分21秒 鉄血外伝・Imagine Sense サヴァ 2012年12月21日 (金) 21時37分03秒 バルカン・スタビライズ サヴァ 2007年10月31日 (水) 04時41分44秒 東京動乱 青海 2007年10月31日 (水) 04時42分02秒 北海道の一番長い夏 青海 2007年10月31日 (水) 04時42分17秒 鋼鉄の...
  • バルカン・スタビライズ11
    第11話  ゲリラ部隊の追撃を振り切った高鷲は、民家の屋根裏部屋に潜みながら奪った無線機からの声に耳を傾けていた。スラブ系の言語なのでまったくなにを言っているのか、落ちついて聞けばわからないでもなかったが、7割は意味がわからなかった。  何か警告している感じだった。しかし、具体的な固有名詞が出てこないので、何を警告しているのかわからない、本当は自分の無線を通じて本部の翻訳家に通訳してもらいたいところだが、長時間無線の回線を開く事は、電波で自分の位置を露見する危険がある。  ともかく本隊と合流しなくてはと、腰を上げようとすると無線から耳を離そうとした。 「アスタロージナ・・・、グヴォジーカ・・・ジヴェーイ」  高レベルの暗号回線のため聞き取りにくいが、辛うじて意味のわかる単語が漏れる。  滝の様に血の気が引いて高鷲の顔が青ざめた。 「グヴォジー...
  • 鋼鉄の戦神0
    プロローグ 「この戦争の結果、長江から日本本土にかけて、鉄のカーテンが降ろされた」                ―――ウィストン・チャーチル(英国首相、1952年)  1945年3月に終わった第二次世界大戦の結果、日本はソビエト連邦の傘下に加わることとなった。  その原因の全ては1944年にある。その年は時代が急激な変化を始めた年であった。  6月20日、アメリカ合衆国副大統領ヘンリー・ウォレスが、中国訪問中に帝国陸軍機の攻撃を受け乗機と運命をともにしたのを皮切りに、世界のあちこちで急激な変化が起こった。  共通の敵“日本”を倒すために同盟していた中国国民党と中国共産党は、アメリカの仲裁も聞かずに内紛をはじめ、中国大陸は日本、国民党、共産党が三つ巴の争いを始めた。  ヨーロッパでは、その一ヵ月後の7月20日、ヒトラー総統が総統大本営にて暗殺され、直後ベルリンで...
  • 鋼鉄の戦神1
    第1話  200X年1月14日  その年、北海道は久方ぶりに例年に無いほどの大雪が全土に降っていた。  そして、この日も朝から雪が轟々と風とともに舞い降りていた。  そんな吹雪の中、かつて旧ソ連太平洋艦隊が駐留していた最大の軍港であり、現在は日本人民海軍苫小牧地方隊の基地がある、ここ苫小牧軍港から艦隊が出航のサイレンをバックミュージックに、次々と港を離れていった。  今、この国は政治の季節を迎えていた。  日本民主主義人民共和国共産党最高幹部会議長であり現首相の危篤、このことが今、世界の目を日本へと向けさせていた。  現首相の健康悪化は数年前からささやかれていたが、一週間前の党大会の演説中に倒れ、危篤状態に陥っていた。  三代目首相である彼が死ぬことは、現在の“赤い日本”トロイカ体制(党政治局による共産党書記長、首相を選出する集団指導体制) の崩壊の危険があると...
  • 鋼鉄の戦神2
    第2話  200X年1月16日  晴天に恵まれた日本海は、風もなく穏やかであった。  だが、せっかくの好天にもかかわらず、沿岸の田舎町の漁師たちは船を出そうとしなかった。  その理由は簡単であった。  町の北側に目をやるとその理由が見えた。  それはとてつもなく巨大で、信じ難い事に周辺に浮かぶ軍艦が(たとえフリゲート艦程度であろうと)小指ほどの大きさにしか見えない程に大きかった。  少なくとも三十キロははなれたこの町からも見えることが、それの巨大さを物語っていた。  やがて、その巨大な物体が動き始める。  三十キロ先の町が揺れ動いた。  二十四基の巨大エンジンが唸りを上げ、巨大な機体を一気に加速させる。  上空から見れば巨大なエイのような機体が、ゆっくりと浮かび上がった。  轟音を残し、抜けるような青空に向って急角度で上昇していく。  日本民主主...
  • 新たなる帝國5
    第五幕 邂逅  長い列を組んで多くの人々が北へ北へと向かっていた。少なく見積もっても、千人か二千人は確実にいるようだ。  しかし、その多くは老人や女子供ばかりで、屈強な男性は全くいなかった。  彼らは重そうな台車を必死の思いで引きながら、川を越え、谷を越え、戦渦の免れる事のできる土地を目指して、ただひたすら北に向かっていった。  もう何日も何ヶ月も歩き続けて……。  そして、ある夜。  野営にちょうどいい場所を見つけた一行はそれぞれテントを張った。体力の消耗が激しいものは、そのまま毛布を適当にかぶって、テントの中で眠り始めたか、地面の上で横になった。  地面の上で横になったものは、テントの数が足りないか、何かあってもすぐに逃げれるように心掛けている人間だ。  そして、体力にまだ余裕があるものは、火を焚いて獣に襲われないように準備をし、消えないようにじっと見張りを...
  • 独立観測航空隊3-1
    外伝Ⅲ 加速する羽根 前編  精密な機械を駆使することは、きみをけっして乾燥無味な技術者にはしなかった。現代技術のあまりにも急速な進歩に恐れをいだく人々は、目的と手段を混同しているようにぼくには思われる。  単に物質上の財宝をのみ希求している者は、何一つ生活に価するものをつかみえないのは事実だが、機械はそれ自身がけっして目的ではない。飛行機も目的ではなく一個の道具なのだ。  鋤のように、一個の道具なのだ。 『飛行機』(サン・テグジュぺリ) 「レシプロなんか必要ないんだ」  バー『ギムレット』の一番奥のボックス席で一人、ワイルドターキーを飲んでいた有川に、男はそう告げた。今夜のギムレットは、そこそこ客の入りがあったが、暗く厭世的な空気を醸す有川の周りにはいつも空いている。  「そうだろ?」と男は続けた。 「君はパイロットだな?」 ...
  • 鉄血外伝・Imagine Sense 前編
    鉄血外伝・Imagine Sense 前編 「いてっ!」  芝のせいで地面との距離を見誤り、偵察任務は無様な尻餅から始まった。  最先の悪いスタートだ。  目の前にいる七飯がくすくすと忍び笑いをしていたので、睨みつけてやる。案の定、すぐに笑いを引っ込めた。  ヘリに合図を送り、離脱を確認する。こちらも少し離れた茂みの中で装備を確認した。  個人携帯火器はMP5SD、これはマガジンが6個ある。サイドアームとしてシグ・ザウエルとマガジンが3個、その他に手榴弾を5個持っている。レーション、水筒、ファーストエイドキッド、ナイフ、ロープ、コンパス、信号弾、バッテリー、カモフラネット、スターライト式暗視装置、携帯型無線機。  一度ザックから出して確認し、再び詰め込む。ザックのうえに今回の任務で一番重要となるレーザー照準器を置き、上蓋に挟んで縛りつけた。  俺に比べると七飯の...
  • 新たなる帝國19
    第十九幕 二十年の成果  北部にある異邦人である『彼ら』が作った国もようやく冬が明け始めた頃。  民衆は春の訪れを喜び、雪解け水が川に流れ出して十分に地力を回復させた肥沃な大地と草花が顔を出し始める。  山々の動物たちも活発に活動を開始し始める頃だ。  そして、その豊かな大地を駆ける『大きな鉄の箱』が存在した。それも一つだけではなく、幾つも幾つも……。  それらの名前は『T-34/76中戦車』。第二次世界大戦における最良の戦車と言われたものだ。  その後ろからは近代的な武装をした歩兵が走っていた。  ある者は自動小銃を持ち、またある者は機関銃を担いで戦車の後に続いてぞろぞろと。  戦争の歯車は、ギシギシと音を立てて回り始めていた。  帝國暦二十一年三月十二日  インビンシブル大帝國 帝都ノーブルラント  デオスグランテ城 ...
  • 新たなる帝國13
    第十三幕 奇襲  飛鳥島 第二十五特別防御区画  要塞司令官執務室 「そうか……予定通り勝ったか」  ギシリ、と自分の体重を預けている椅子が軋みを上げる。  机を挟んで目の前にいる榊原が手に持った書類を眺めながら続けた。 「はい、それも完全なる圧勝の模様です。作戦は順調に次の段階へと移行されました」  九条は満足そうに頷く。だが、決してその顔は晴れやかなものではなかった。ギラギラとした目と不気味に歪んだ唇が目立つ、酷く恐ろしい顔をしていたのだ。  普通はその表情から来る恐怖と見えないプレッシャーのようなもののせいで後退りくらいしそうなものだが、榊原は特に気にする事無く平然としたままでその場に佇んでいた。 「流石は紫芝、という事なのかな」 「彼は多少人格に問題はありますが許容範囲です。能力的には優秀な部類に入ります」  九...
  • 独立観測航空隊1
    外伝Ⅰ 実体のある幽霊機  しかし大鴉はひとり静かに胸像の上に止まり、  その魂を一言こめたがごとくに、あの言葉を吐いたばかり。  それから何も言わなかった、またいささかも羽博かず―  やがて私は僅かに呟いた、「たの友達はむかし去つていつた―  明日になればあれは私の許を去るだろう、私の希望がむかし去つていつように」  この時烏はないた、「またとない」  『大鴉』(ポー) 「レイヴン、フォックス・ツー、フォックス・ツー!」  日本空軍第311飛行隊所属、有川祐二中尉は背後を取った敵機に向かい、躊躇わずレリーズを押した。間を置かずしてパイロンから滑り出した2発の短射程ミサイルが、弧を描き敵機へ吸い込まれる。敵機は旋回と同時にフレアを撒いて対抗するが、IIRホーミングのミサイルをかわす事はできなかった。主翼の付け根部分に命中し、一瞬でバラバラにな...
  • 鉄血竜戦記6
    第6章 接近遭遇  午後3時、FF-X試作水戦2機とXEV-22オスプレイの編隊は、高度5000メートルで巡航しながら偵察活動を行っていた。艦隊から北北東300キロという地点である。  オスプレイの3名のオペレーターは、AEW&C340警戒管制システムのチェックに余念がなかった。  スウェーデン空軍が使用しているこのシステムは、機体背面に設けられたPS-890エリアイ・レーダーを中心に、敵味方識別装置や電波逆探装置などの各種電子機器から構成されており、同時に数百の目標を捕捉・追尾できる。柱状レーダーアンテナの特性から、索敵範囲は上下10度及び左右110度に限られているが、その探知距離は350キロ以上と、航空自衛隊のE-767早期警戒管制機・AWACSに匹敵している。イージス艦と並ぶ海上自衛隊の艦隊防空能力向上の要として、早くも期待されているゆえんであった。 「マザーシスターへ...
  • 新たなる帝國38
    三十八幕 決戦  時は流れに流れて帝國暦二二年八月二二日。  ダルフォード大帝国とインビンシブル大帝國の不可侵条約締結よりちょうど七ヶ月後のこの日、大デルフリード帝国とダルフォード大帝国の中部国境周辺に両陣営の軍勢が集結していた。  過去にザーブゼネ王国というインビンシブル大帝國に取って代わられた国があったが、その国は一○○万を超える軍勢を有していた。  しかし、それは民衆である奴隷に対する露骨なまでの搾取と国家の指導的立場に立つ人間たちに蔓延した軍国主義のためだった。  それ故に九条たちがやってきて王国を打倒し、インビンシブル大帝國を建国した時に熱狂的、あるいは狂信的な支持を民衆から得られたのだ。  そのザーブゼネ王国と違い、大デルフリード帝国とダルフォード大帝国は数○万単位の軍勢しか保有していない。  それは民衆に対する搾取が少なくともザーブゼネ王国より...
  • ルーン・トルーパーズ ~自衛隊漂流戦記~/コメント/3
    長い感想などは掲示板に書かれてもいいですよ -- (浜松春日(タケ)) 2011-04-29 22 48 48
  • 新たなる帝國22
    第二十二幕 始まりの鐘  インビンシブル大帝國  バルデバルド平原 国境地域より北方に約20kmの地点  広大で平らな大地が一面に広がるこの場所で、キュラキュラと履帯の音が五月蝿く鳴り響く。  戦車、戦車、戦車……普段は穏やかなこの場所は今、戦車の群れによって占拠されていた。  その戦車の上には歩兵がしがみつくようにして乗っており、戦車関連用語ではこれを『跨乗(こじょう)』と言う。そして、その跨乗している歩兵を『跨乗歩兵』と呼ぶ。  まぁ、それは兎も角として、現在このバルデバルド平原にはインビンシブル大帝國の機甲軍団が集結して、その圧倒的なまでの暴力的な力を発揮されるのを今か今かと待ち侘びていた。殺戮の風が思う存分に吹き荒れるのを。  そして、その平原にある一つの天幕にはこの軍団の頭脳が集められていた。  天幕の中は簡易的なテーブルと椅子が幾つかあり、テ...
  • 独立観測航空隊外伝0
    前編  有川祐二とデネブ・ローブの乗るTa152E改は、大陸での偵察任務を終えて飛鳥島への帰途に就いていた。機体の調子は快調そのものであった。  飛行場への着陸コースに入るべく雲の下へ降下した時、彼らの視界に1機の飛行機が飛び込んできた。  空軍のB-25ミッチェル双発爆撃機だった。魔導師か空の魔獣による攻撃を受けたらしく、機体に空いた穴からは火炎と黒煙が噴き出していた。コクピットや銃座には、深手を負ったり死んだりした搭乗員の姿が確認できた。飛んでいるのが不思議なほどのダメージであった。  Ta152に気付いた血まみれのパイロットが、通信機のインカムに向かって何かをわめき散らしていた。助けを求めているのか罵っているのかは判らなかったが、その声を有川らに届けるはずのアンテナは根元からもぎ取られていた。パラシュートで脱出しようにも、ハッチや天蓋のフレームが歪んでいて不可能のようで...
  • 鋼鉄の戦神6
     東京 200X年1月26日 11:44  日本国家保安省本部ビルは、五十年代に数万人の労働者と囚人を使って建造された、スターリン・ゴシック様式の建物である。  旧日本放送会館(現JHK)の跡地に、地下五階、地上三十三階の規模を有する巨大なスターリン様式の建物は、皇居と日比谷公園を見下ろす位置にあった。  それは、国家保安省が“秘密警察”という恐怖の象徴であることを常に民衆に思い起こさせるため、意図的にその場に作られた経緯があった。  そして今日、その国家保安省本部ビルの最上階にある一際豪奢な作りの部屋に、国家保安省の重鎮たちがそろっていた。 「先の異変よりすでに一週間が経過しましたが、いまだ通信は回復しておりません」 「衛星通信もか?」 「はい、閣下。我が国はおろか、ロシア側の衛星でさえ接触できません。しかし、“紅天蛾”(べにすずめ)との通信は回復し...
  • 飛鳥 就航ス
    飛鳥 就航ス 1941年 9月初旬  東京駅で汽車を降りた成瀬健次郎は、しばらく立ち止まって迎えを待った。ふと、空を仰く。彼にとっては、久しぶりやって来たの祖国の地であり、新しい門出の日でもあった。 「社長、こちらでしたか」  人ごみの中からひょろりと背の高い男が、声を掛けて来た。まだ残暑が残るためか、背広を脱いで肩に掛けている。あまり“社長”を迎える格好ではないが、成瀬はたいして気にした様子をみせなず「おう!」と片手を上げて応じた。 「馬場君か、久しぶりだな。フランクフルター・ツァイトゥングから連絡を受けたときは驚いたぞ」 「間に合いましたか。バルバロッサが始まった時は心配しました」 「シベリア鉄道の最後の客さ。君のくれた旅券が役に立ったよ」  互いに握手をかわし、駅の出入り口へ向け成瀬と馬場は歩いた。 「X-ディは恐ら...
  • 興国のイージス1
    飛鳥就航編 1941年 9月初旬  東京駅で汽車を降りた成瀬健次郎は、しばらく立ち止まって迎えを待った。ふと、空を仰く。彼にとっては、久しぶりやって来たの祖国の地であり、新しい門出の日でもあった。 「社長、こちらでしたか」  人ごみの中からひょろりと背の高い男が、声を掛けて来た。まだ残暑が残るためか、背広を脱いで肩に掛けている。あまり“社長”を迎える格好ではないが、成瀬はたいして気にした様子をみせなず「おう!」と片手を上げて応じた。 「馬場君か、久しぶりだな。フランクフルター・ツァイトゥングから連絡を受けたときは驚いたぞ」 「間に合いましたか。バルバロッサが始まった時は心配しました」 「シベリア鉄道の最後の客さ。君のくれた旅券が役に立ったよ」  互いに握手をかわし、駅の出入り口へ向け成瀬と馬場は歩いた。 「X-ディは恐らく1...
  • 新たなる帝國11
    第十一幕 前哨戦  鉄の鎧を着込み、剣を腰に差して盾を装備した一般的な中世歩兵がぞろぞろと列を組んで道を進む。勿論、槍や弓矢で武装したものもいる。  馬に乗っている者もいるがそれは圧倒的に少数で、それらは指揮官クラスの人間だと予想できる。言うまでもないが、明らかにこれは軍隊だ。  軍を動かす名目は北方で発生した民衆の反乱を鎮圧すること。  だが、実際には反乱を鎮圧すると同時に略奪と虐殺を徹底して行い、もう二度と起こらぬ様に他の民衆に対しての見せしめにするというものだ。  恐怖政治の典型と言えるやり方だろう。 「クソッ、何故こんな辺境にまで高貴なる私が足を運ばねばならんのだ!」  派手な金ピカの鎧を身に付け、偉そうに馬に乗っている男が不満をあらわにして言う。  歳は三十代後半と言ったところだろう。立派なヒゲで顎が覆われているのが特徴的だ。  この男が...
  • 新たなる帝國24
    第二十四幕 絶対無敵の帝國軍  ベルンネスト王国  王都ロバールブルグ 「ええいッ! 一体どうなっておるのだ?!」  ドンッ、と玉座に座っている白髪の老人が苛立ちを抑えきれぬと言わんばかりに手摺を叩く。  この老人こそがベルンネスト王国の現在の国王、君主だ。そして、現状では彼が苛立つのも無理は無かった。  既に敵国、インビンシブル大帝國の軍勢が国内の奥深くまで入り込み、盛大に暴れているのだ。  地方の領主たちがそれぞれ自慢の手勢で対抗するもあまりにも兵力が少なく、しかもバラバラに戦うものだから戦力の逐次投入になっている有様だった。 「は、はっ、もうしばらくお待ちを……直に連絡があるはずでございます故……」 「もうよい! そんなものどうせ何の役にも立たぬであろうがッ!」  ギリギリと歯軋りをさせ、憤怒の表情でその怒りをぶちまけ続ける。 ...
  • バルカン・スタビライズ13
    第13話  全てが黎明に照らされる朝、川島は全てのものが遠くに感じた。まるで脳みそだけ先に帰国したような気分だった。目を擦るためだった腕が、顎にあたってしまう。頭痛はないのだが、身体が感覚が薄く意識レベルと判断力ががた落ちになっているのが直にわかる。  こりゃ、午前中の仕事は、第二小隊の小沢に指揮を代わってもらわないとな・・・  中隊のつめるプレハブのドアを開くと、中にいた各小隊長達がこちらを向いた。 「酷い匂いですよ。川島一尉」 「ああ、わかってる。デスクを確認したら、ひとッ風呂いってくる」  自分の席に座り、昨夜のうちに提出された報告書などの書類に目を通す。 「補給はまだダメか? いいかげん捕獲武器の講習を考えなきゃな・・・」 「なに言ってるんですか」  対面する席の小沢ニ尉が顔を上げた。 「捕獲武器だけじゃありません、今日のうち...
  • 新たなる帝國39
    第三十九幕 猛攻  機甲兵、いわゆる『ゴーレム』と呼ばれる存在。  基本的に全身を甲冑で身を包んだ姿をしており、顔の部分は大抵人間の髑髏のようになっている。  その顔を見れば、不気味さとともに一瞬でそれが機甲兵であると分かるのだ。  機甲兵は通常、レイジェンス大陸に点在する『古代遺跡』の中で発見される。  中には地中に埋もれている遺跡から『発掘』という形で見つかる場合も多い。尤も、その場合は当然稼動状態にないものしか出てこないが。  そもそも彼らの役目は遺跡の番人、門番であり、遺跡への侵入者の排除を第一とする存在だ。  その番人たる彼らだが、実は種類も豊富で基本系の兵士型を始めとして、下半身が馬で上半身が人の騎兵型、犬や鳥などの動物の姿を模した獣型、蜂や蟷螂といった昆虫の姿を模した昆虫型、などがある。  中には、基本系である兵士型をベースに巨大にした巨人型というものも...
  • 新たなる帝國8
    第八幕 戦争計画  飛鳥島 地下5000m地点  第四会議室  部屋の中は衣擦れの音すら聞こえてこない沈黙で一杯だった。  幾人もの将軍が綺麗に軍服を身に纏い、厳峻とした空気の中で全員が決然たる態度で椅子に座っていた。  そうした言葉を出しにくい雰囲気で一人の男がこの場を代表して言った。 「閣下、今回の命令に関して我々は何の反対もありません。我々一同、閣下の判断に全て従います」  力強い口調でそう言った後、軽く頭を下げる。  彼の名前は『伊達義久』、階級は海軍中将で海軍第二機動艦隊の司令長官である。  鷹のような目が特徴的な人物で、その侍を思わせる風貌は非常に頼もしい印象を与える。 「うむ、諸君らの期待を裏切らぬよう善処しよう」  九条は堂々とした態度で応じる。  そこには確固たる自信がしっかりと見え、居並ぶ将軍たちを安心させた。...
  • バルカン・スタビライズ0
    プロローグ  ロシア陸軍ヴラチーミル・イワノビッチ・ゾーロトフ中尉は七人の部下を連れ、サラエボ郊外の空港のエプロンで自分達のお客を乗せた便を待っていた。予定時刻より1時間ばかり過ぎていた。  バルカン半島が再び戦渦に飲み込まれ、昨日まで最前線にいたヴラチーミルにとっては、ささやかな休暇だった。  まわりには自分達と同じ客を待つ各国のSFOR(平和安定化部隊)の部隊があたりをうろついていた。 自国からの来客者はその国の部隊が受け持つ、最近出来たこの地でのルールだった。という事は、自分達はロシア人の来客を待っているということだ。 いまこんなところにくる観光客はいない、くるのは厄介なジャーナリストばかりだ。 資本主義化したとはいえ、こんなところに特派員を派遣する通信社が出来ていることは正直驚きだった。  エプロンの一部から声が上り、 首を回してそちらを見ると旅客機...
  • バルカン・スタビライズ1
    第1話   世界で唯一ロータリーエンジンを搭載するマツダのRX-7は首都高が荒川を渡る頃、浦安のテーマパーク帰りの集団に巻き込まれていた。  運転席の男は腕時計で、時間を確認するとカーナビの画面を位置情報から民放に切り替えた。  六時台のトップニュースはすべて同じ、久しぶりのバルカン発のニュースは3週間経った今でもセンセーショナルに報じられていた。 「まぁ、国際貢献ってとこですかね。常任理事国への道も近づくし」  ハンドルを握る川島一尉は助手席の上司に問い掛ける。 「じゃあ、何で歩兵はおろか戦車まで持ち出しているドイツが、常任理事国になれないんだ」 「知りませんよ。そんなこと」 「結局、これがシリビアンコントロールなのさ、軍がよくても政府が馬鹿なら意味が無い」  萩原三佐の答えは辛辣だった。脊髄反射のような即断即決がモットーの三佐は、この手のわずらわしい話しが嫌いだった。  結局、渋滞を向...
  • 新たなる帝國25
    第二十五幕 早期終結  辺りに立ち込める黒煙と硝煙の香り。  それがこの場を生者と死者のみの存在しか許さない戦場であるという事を否応無しに実感させる。  榴弾の雨により焼け野原のようになっている大地を全力で疾走する戦車群にそれに追随する兵員輸送車両。  例によって、戦車には跨乗歩兵がべったりと張り付いている。  空を見上げれば、獰猛な鋼鉄の悪魔たちがその爪と牙をいつでも敵に喰い込ませられる様に悠々と翼を広げて飛んでいる。  それらをじっと見詰めるのは物言わぬ屍となった地べたに這い蹲る敵だけだった。  最早、ベルンネストは落ちた。  ベルンネスト王国 王都ロバールブルグ近郊  第一機甲軍団 第一機甲師団  一式指揮車両内部 「全ては終わり、後に残るは虚しさだけ、か」 「それがこの世界の軍事制度の脆さを如実に表しているのです...
  • 新たなる帝國23
    第二十三幕 侵攻開始 『ザー…ザザッ……に移動中の敵を確認。重装騎兵、軽装騎兵など多数。歩兵は若干名を確認。第三戦車中隊は至急急行の後、これを殲滅されたし』 『了解。第三中隊全軍突撃!』  無線からの報告を受けると、キュラキュラと履帯の音を鳴らしながら、指示された現場に急行する。  既に辺りでは砲撃音が五月蝿く鳴り響いてもいるため、履帯の音や戦車のエンジン音はあまり気にならない。ただ、森の中を進むのは戦車では辛いところだ。まぁ、そんなに深くはないのでなんとかなるが。  周囲を警戒しつつ、そのまま先を進んでいくと報告どおりに敵を発見する。  ――その瞬間ニヤリと笑う。  敵もこちらに気が付いたらしく、慌てた様子で馬の向きを変えようとしたり、歩兵は剣を構えたりする。だが、もう遅い。  哀れな彼等に容赦なく機銃を掃射し、その身体をズタズタに引き裂く。...
  • 戦国第四話
    最近は事務仕事も板についてきた。 元々、この時代の事務というものはそう複雑ではない。 文字が分かれば書類整理くらいこなせるし、算術ができれば織田家の収支状況をまとめたり、兵糧の計算などに使える。 そういうことをしながら時々信長様との面会を行い、家では孤児たちの面倒と教育、硝石作りに励むわけで結構忙しい。 ただ、硝石を作るために百姓の家々を回り、床下の土を集めるのは、彼らの年長者に任せているので、それについては問題はでていない。 彼らでも出来る簡単で安全な仕事でもあるので、奨励している。 しかし、そうやってただ毎日を過ごしていても、出世は出来ない。 このままでは俺は自らの目的を達成する事などできはしないだろう。 そもそも、この時代では武功の方が重要視され、俺のしているような事務では出世など望むべくもない。 ―――命を張る覚悟が必要なのだ。そして、それはもう...
  • 新たなる帝國37
    三十七幕 ステッキーワールド  大デルフリード帝国  帝都ランズベルク ホーエンハイム城 「ダルフォードが大規模な出兵をしたと?」 「はっ!」  日の当たるバルコニーで寛いでいた時にいきなりこの報告だ。機嫌も悪くなるというものだろう。  一緒にいたリュッデルも顔にこそ出してはいないが、なんとなく嫌な気配が伝わってくる。  ダリスは眉間に皺を寄せて溜息をつくと、すぐさま告げる。 「帝都にいる家臣たちを速やかに召集してくれ。集まり次第、対策会議を開く。その準備も任せた」 「はっ、承知致しました!」  バタバタと慌てて伝令は去っていった。  それをダリスは静かに見送り、呟く。 「また……血が流れるな」  憂鬱な気分になる。  近頃は大規模な戦なんて全く起きなかった。束の間の平和を謳歌していたのだ。  そもそも自分...
  • 新たなる帝國12
    第十二幕 崩壊  戦場に紫芝の機甲部隊の突入。これによって更なる阿鼻叫喚の地獄絵図がこの世に現れた。  その地獄絵図を生み出すための材料となる敵の兵士たちは全て悲惨な末路をたどっていた。  戦車の主砲から放たれる砲弾によって原形を留めぬほどに吹き飛ばされたり、戦車に搭載された機関銃で文字通り蜂の巣にされたり、さらにはその戦車自体の巨体で押し潰されて体中の骨を粉砕され、肉や内臓をぶちまけて辺りを血溜りにし、大地の貴重な養分にされていった。  だが、攻撃は戦車によるものだけにはとどまらない。  戦車の後方に控える装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車から次々と『装甲強化服』を纏った歩兵が降車する。  装甲強化服とは特殊合金と人工筋肉を組み合わせた日本の技術の集大成とも言えるバトルスーツだ。  外観は頭の天辺から足のつま先までを黒一色で統一された鎧に見える。顔全体を覆うヘルメ...
  • バルカン・スタビライズ6
    第6話 土岐は相手のナイフが首に掛る寸前、肘打ち食らわして避けた。首からヒンヤリとした鮮血が垂れるのがわかる。気管や頚動脈まで達していなかったのが幸いだった。  振り返ろうとする間に、またしても敵が突っ込んできた。 今度はナイフを腰で構え文字通り突っ込んでくる。一瞬早く土岐が脇にかわした。そのまま相手の右腕を掴み、ナイフを叩き落とそうとする。 相手の力が意外に強くてナイフは握られたままだった。顎に一撃食らわせ、相手が怯んだ隙にこちらもバヨネットを掴み態勢を立て直す。  2、3度鍔迫り合いをした。相手のナイフはこっちのバヨネットと似たり寄ったりの長さだった。煙幕で相手の顔が見えなかったが、ニヤニヤ笑っている気がした。 突き出されたナイフをバヨネットの柄でかわし、そのまま反撃に出る。相手もそれを予想していたらしく、あっさりかわされた。  土岐は劣勢だと感じた。なにしろ自分が築...
  • 新たなる帝國10
    第十幕 状況開始  その日はよく晴れた快晴と言える天気だった。  穏やかに流れる風が眠気を誘い、つい居眠りをしてしまいそうになる。  あちらこちらで商店が並び、ガヤガヤとそれなりの活気に包まれて貴族相手にものを売っていた。  しかし、物を売る商人たちは何処か諦めのような表情をうっすらと浮かべていた。  よく見れば、貴族たちに見下されて罵詈雑言を受け続けているのが分かる。  暴行こそされてはいないものの、それは商人たちが自分たち貴族に金を回してくれる大富豪の奴隷だからだ。  人の物に手を出して壊すわけにもいかない。たったそれだけの理由で控えているだけだった。  奴隷は彼らの所有物としてしか扱われず、奴隷の稼いだものの全てが奴隷の所有者のものとなる。  それが当たり前の国家。普通の国。  逆らっても貴族の兵士や魔法で粉砕されるだけ、ただ死にたく無いという一...
  • 新たなる帝國
    設定 勢力図 暫定世界地図 本編 新たなる帝國 序幕 神の火 新たなる帝國 第一幕 混乱 新たなる帝國 第二幕 氷室 新たなる帝國 第三幕 会議 新たなる帝國 第四幕 忙しき日々 新たなる帝國 第五幕 邂逅 新たなる帝國 第六幕 会話 新たなる帝國 第七幕 不穏 新たなる帝國 第八幕 戦争計画 新たなる帝國 第九幕 準備 新たなる帝國 第十幕 状況開始 新たなる帝國 第十一幕 前哨戦 新たなる帝國 第十二幕 崩壊 新たなる帝國 第十三幕 奇襲 新たなる帝國 第十四幕 陥落 新たなる帝國 第十五幕 大演説 新たなる帝國 第十六幕 掃討状況 新たなる帝國 第十七幕 榊原の提案 新たなる帝國 第十八幕 建国 新たなる帝國 第十九幕 二十年の成果 新たなる帝國 第二十幕 帝國の一風景 新たなる帝國 第二十一幕 準備段階 新たなる帝國 第二十二幕 始まりの鐘 新たなる帝國 第二十三幕 侵攻開始 ...
  • 新たなる帝國40
    第四十幕 北の巨龍  レイジェンス大陸の二大勢力が熾烈な戦いを繰り広げている一方、大陸北方に一大勢力を築き上げたインビンシブル大帝國は両勢力が争っている現在を好機として一大侵攻作戦を展開させていた。  帝國の西方に存在する四つの国々を自らの領土とするための作戦。これによって、大陸北方は完全に帝國の支配下に置かれることになる。  帝國は、十分な時間を使い、そのための軍備を整え、物資も充実させた。最早、彼らを止める事はできないし、また彼ら自身も止まる事はできない。  ことごとく世界を血と鉄で征服するために、ただ歯車は回るのみ。  それこそが、彼ら自身がこの異世界で生きる理由であるのだから。  ………………  …………  …… 「砲撃を願います。座標はF-026-156」  後方へ支援砲撃を要請すると、すぐさまに指定した場所へ砲弾が...
  • バルカン・スタビライズ2
    第2話  自衛隊がトゥズラに入って三日が経過した。パトロール任務は、二個分隊ほどがそれぞれ別ルートで街の中を歩き回っていた。パトロール部隊はおもに空挺があてられ、朝九時から夜十時まで常に二個分隊十六名が街に出ている。  それ自体、すでに部隊内のルーチンワークとなっていた。 「増援はいつ来るんだい…」  土岐恭兵ニ曹は二つに折った地図を眺めながらぼやいた。 「まぁ、そういうな。幕だって調整に大変なんだよ」  機動化学科中隊第一空挺小隊小隊長の川島一尉が仕方なさそうな顔をした。 「わざわざ隊長がパトロールに出なくてもいいんですけど」  第一空挺小隊第一分隊の分隊長神岡曹長が言った。 「部下との親睦を深めるのはこういうのが一番だろ」  川島が肩に担いだ89式空挺小銃を振りながら答えた。89式空挺小銃は安全装置がかけられ、マ...
  • 新たなる帝國14
    第十四幕 陥落  なんだ。一体何が起こっているというのだ。  いつもと変わりなく過ごしていたはずだったのに、何故こんなにも耳障りな悲鳴と断末魔が聞こえてくるのだ。  不愉快だ。この背中に感じる冷たさも、勝手に震える指も、カチカチと何処からか聞こえてくる音も――全てが不愉快だ。  国王は気付かなかった。  背中に感じる寒気は第六感の警告だと、勝手に震える指は恐怖の表れだと、カチカチと鳴る音は自分の歯の音だと……  そんな時、国王の座る玉座の目の前に跪く者がいた。  反乱鎮圧の軍を起こす際に唯一国王に反対した老臣であった。 「陛下、これ以上血を流す事は無駄の一言。彼らに降伏するよう、御願い申し上げます」  悲痛な表情をして頭を深々と下げる。  ザーブゼネ王国の終焉の時が来たのだ。これ以上運命に逆らう事はできようもない。ならば……ならば少しでも多...
  • バルカン・スタビライズ3
    第3話 自衛隊のバルカン展開を支援する六本木の作戦部は、おおよそ一般人が想像するようなものとは違った。映画館のように正面に大きなスクリーンがあり、大学の講義室のように階段状に配置された机に端末が置いてありオペレーター達がひっきりなしに連絡を取り合っているといったモダンなものとは皆無だった。  その部屋には北はハンガリー、東はブルガリア、西はスロベニア、南はアドリア海と今回戦場となったクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア・モンテネグロとの国境地帯までが収まった20メートル四方の巨大なジオラマがあり、それを囲むように数台の端末が並べてあるというお粗末なものだった。 「現在、自衛隊バルカン分遣隊が展開しているのはおもに3箇所、主力部隊である第七師団等から編成されたトゥズラ連隊、もう1箇所は分遣隊司令部が置かれるザダルに第二師団と空挺本隊から編成されたザダル連隊、ザダル...
  • 鉄血竜戦記3
    第3章 探索  10月1日の朝が来た。派遣艦隊は、洋上に停止していた。  8時から旗艦「たんご」の会議室で、梨林司令が召集した会議が始まった。各艦の艦長や艦隊幕僚のみならず、陸自第1危機即応連隊の幹部や空自航空業務支援小隊の指揮官らも出席していた。  各艦にはテレビ電話会議システムが備わっているが、このような状況では主要幹部全員が直接話し合った方がいいと、梨林が判断したのである。 「それでは副司令、頼む」 「はっ」  梨林に呼ばれて安達原一佐が立ち上がった。 「諸官らも御存知の通り、昨日1415時に始まった通信不能とレーダー失探は、現在も終息の兆しを見せていない。さらに夜間には、星座の類が全て識別できないことが判明した。日中の天測も、太陽の位置が本来とかなり違っており、ほとんど頼りにならぬ状況である。ジャイロコンパスに至っては、もはや気休めにしか使えなくなっている。そし...
  • 新たなる帝國28
    第二十八幕 演習  インビンシブル大帝國  ラーテノアス州 ミシア陸軍飛行場  現在、このラーテノアス州ミシア陸軍飛行場ではかなりピリピリした雰囲気に満ち溢れていた。  今日この日は帝國空軍の一大演習ということもあるのも大きな一つの理由だが、それ以上にこの飛行場に来ている人物こそが巨大な理由であった。  人民の皇帝、神の使者、世界の救世主、などと謳われる九条星夜その人が特別に用意された観覧用の席に着いているのだ。  これでピリピリしないはずがない。失敗などすれば眼も当てられないからだ。元々、空軍はついこの間まで――というには結構期間が空いているが――予備軍という存在で正規の軍ではなかったのだ。成果を出さなければまた予備軍に戻されてしまうか、最悪解体されて陸海軍に取り込まれてしまう可能性だってある。だから、殆どの――異世界人で空軍に入っている者たち――空軍の関係...
  • バルカン・スタビライズ7
    第7話  野戦指令所で補給を受けたOH-1は二機のナイト・コブラを従え、戦闘態勢を取った。 ナイト・コブラをある程度はなれた森の中の開けた場所に待機させると、 OH-1は森の木々の僅か上を疾駆した。2、3度確実に梢が機体の腹を擦る感覚が伝わった。 「機長、上げて上げて!、テストでも演習でもこんなに低く飛んだことはないですよ!」  ガンナーの高岩ニ尉がたまらず悲鳴を上げた。 「ガタガタ騒ぐな、気が散る! フルアームドで飛ぶのは久しぶりなんだ!」  機長の茂住三佐が怒鳴り返す。OH-1は19連装ロケット弾ポッド二個に、XATM-6多目的誘導弾4発、91式対空誘導弾2発のの重装備だった。もはやそれは観測ヘリではなく攻撃ヘリの部類にはいるものだった。 「騒ぐ暇があったら敵を探せ」 「ECM感あり! げ!?、シルカがいますよ」 「...
  • 独立観測航空隊2-2
    外伝Ⅱ 不帰順領域 第2話 「結界だって、これは魔法か!?」  有川も、この世界に魔法が存在する事は知っていた。元々自分が属する飛鳥島科学研究所所属、独立観測航空隊自体その魔法の謎を解明するために創設された部署であり、戦地を駆け巡り敵性魔法の情報を回収することが目的である。 「対魔装置が壊れていないなら間違いないでしょう、ここ一帯に魔力が張られてる。でも、こんなに広い空間に結界を張り続けるなんて、並の術じゃないわ」  異世界からやってきた有川とは違い、この世界の住人であるデネブは自身で魔法を使う事が出来たし、魔術についても知識を持っていた。そのデネブが悩むのだから、自分がどれほど異様な自体に遭遇しているのか有川には想像することすら出来なった。  ふと、消えた三機のムスタングが気になった。  「・・・ドロシー達はどうなったんだ?」 「結界は、...
  • 鉄血竜戦記16
    第16章 嵐の後  殺戮と破壊から一夜明けた朝。  死屍累々の国境地帯は、そのおぞましい光景を白日の下にさらしていた。  ネワディン軍を夜間攻撃で撃退した自衛隊は、そのまま戦場処理を行っていた。本来ならばパスキル軍がすべきことだが、自前で後始末まで済ませた方がパスキル側に対する印象をよくするであろうとの配慮からであった。  施設科隊員の操るブルドーザーやパワーショベルが、砲爆弾によって地面に空けられたクレーターを埋めるべく縦横無尽に動き回り、爆発物処理班に所属する隊員は、金属探知器で不発弾を捜し出しプラスチック爆薬で爆破処分していた。  捕虜となったネワディン兵は、パスキル兵や自衛隊員の監視下で遺体埋葬や障害物撤去などの作業に従事していた。作業のできない重傷者は、野戦救護所で応急処置を受けた後にトラックやヘリで後方へ運ばれていった。  田中川はジープに乗って前進基地から戦...
  • 独立観測航空隊2-1
    外伝Ⅱ 不帰順領域 第1話  鴬が世界の終りを歌い出す、  神は友として狂女のトリロでものを言う。  心に清い一撃が石弩から飛び出して  その鴬を枯木から打ち落とす。  『傷ついた祈り』(コクトー)  このところ上杉中将の悩みの種は、しだいに酷くなっていた。帝國空軍総司令官である彼は、司令室に掲げられた地図の一点を見据えため息をついた。それに、タイミングを計ったように内線の電話が鳴った。 「中将、氷室技監がお見えになりました」  「通してくれ」と答えるとドアが開き、助手の大林を従えた氷室技監が「やぁ」と挨拶した。 「おひさしぶりですな、上杉中将」 「ああ、悪いが挨拶は後にしてくれ、いろいろとこちらにも用事がある」  正直に言えば、あまり長い時間会っていたくない。氷室のような人間は、上杉の最も苦手とするタイプだった。面...
  • 新たなる帝國32
    第三十二幕 戦乱末期 「う、うわあああああッ!!」 「おりゃああッ!!」 「だあああああッ!!」  農民たちが鎧を着込み、更にその手に剣を持って斬りかかる。中には槍を振り回して襲い掛かるものもいた。  しかし、御世辞にも良いとは言えない太刀筋に槍使いである。だが、物量で討伐に来た貴族を少々押している。 「ぐっ、このォ!」  その討伐に来た貴族の一人であるゲルフィングは苛立っていた。  たかだか奴隷の反乱と舐めていたら相手はそれなりの武装をしており、必ず多人数で襲い掛かってくるのだ。  一人一人の技量なら自分が圧倒しているのに何たる様か!  心の中でそう叫ぶ。  魔法を使って一気にやるかとも考えたが、すぐにその考えを却下した。  反乱民、すなわち敵があまりに多く、自分の魔力が枯渇する危険が高いと踏んだためだ。  魔力が...
  • ランカスター出撃す1-2
    ランカスター出撃す1-2  高度3000メートルで水平飛行に移ったランカスターは、いったん進路を南へ取り中部国際空港、通称セントリアの管制空域へ連絡をいれた。 「セントリア・タワー、こちら『Wind Carrier』617便。聞こえますか?」 「こちらセントリア・タワー。感度良好です」 「九州方面の天候はどうですか?」 「提出されたフライトプランなら問題ありません。ただ、航路中四国沖での緊急時の着陸先が高知空港となっていますが、天候悪化でクローズ(閉鎖)する可能性が高いのでお気を付けて」 「了解」  七宗は無線を一旦切ると「まずいなぁ」と漏らした。高知空港が閉鎖されるということは、それより北の空港も駄目になるだろうから、ランカスターがダイバードできる空港はかなり限定される。 「行くしかないだろ。コイツが現役だった頃と同じ...
  • @wiki全体から「北海道の一番長い夏2」で調べる

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