第101創作猟兵大隊司令部内検索 / 「新たなる帝國」で検索した結果

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  • 新たなる帝國31
    第三十一幕 条約締結  帝國暦二二年一月二二日  インビンシブル大帝國 南部国境地域  南方臨時司令部 大会議室 「……これで、宜しいのですな?」 「ええ。署名も今終えましたし、もう何も問題はありません。貴国との不可侵条約はこれにて締結されました」  ダルフォード側の代表にそう告げる帝國の外交官。  彼はニコリと笑い、代表の署名が入った外交文書を脇に抱えると握手を求める。  代表は少し迷ったようだが結局それに応じた。  グッと握った手に必要以上に力を入れるとかそういう子供染みた事はせずに握手している手を何度か上下に振る。  今回の不可侵条約案ではインビンシブル側が多大な譲歩をした事になっている。  何せ最初に提示した六つの条件のうち五つを完全に撤回したのだから。  インビンシブル側が得たものは、隣接する西方二ヶ国及び譲歩の見...
  • 新たなる帝國20
    第二十幕 帝國の一風景  既に太陽も沈んで、本来ならば暗闇に支配される時間。  だが、このインビンシブル大帝國の帝都では電気の力によって闇を打ち払い、眠らない都と化していた。  インビンシブル大帝國  帝都ノーブルラント  第二工業区 第十四缶詰工場 「皆お疲れさん! 交代の時間だ!」  工場の監督役の人間がそう言うと、今まで作業に従事していた工員たちは思い思いに身体の筋を伸ばす。  やっと今日の仕事も終わった……。工員たちの心はそれ一つだった。  労働制度が整えられたインビンシブル大帝國では随分と労働自体は楽になっているが、大量生産という効率化のために精神面ではかなりの苦痛だ。  だが、それでも貴族たちに支配されていた頃よりは何十倍もマシなので誰一人として文句は言わなかった。貴族の支配を経験していない若い世代も歴史の授業でその支配の酷さを勉強...
  • 新たなる帝國19
    第十九幕 二十年の成果  北部にある異邦人である『彼ら』が作った国もようやく冬が明け始めた頃。  民衆は春の訪れを喜び、雪解け水が川に流れ出して十分に地力を回復させた肥沃な大地と草花が顔を出し始める。  山々の動物たちも活発に活動を開始し始める頃だ。  そして、その豊かな大地を駆ける『大きな鉄の箱』が存在した。それも一つだけではなく、幾つも幾つも……。  それらの名前は『T-34/76中戦車』。第二次世界大戦における最良の戦車と言われたものだ。  その後ろからは近代的な武装をした歩兵が走っていた。  ある者は自動小銃を持ち、またある者は機関銃を担いで戦車の後に続いてぞろぞろと。  戦争の歯車は、ギシギシと音を立てて回り始めていた。  帝國暦二十一年三月十二日  インビンシブル大帝國 帝都ノーブルラント  デオスグランテ城 ...
  • 新たなる帝國29
    第二十九幕 動き出す氷室  帝國暦二一年一二月三日  インビンシブル大帝國 帝都ノーブルラント  デオスグランテ城 皇帝執務室 『――……で、どうでしょうか、陛下?』 「ふむ、政治に関する事は全て貴様に一任しているから好きにすると良い。ただ、私の管理する軍事にまであまり影響を飛ばすなよ?」  手元のコンソールを叩きつつ、モニターの片隅に映る榊原に返答する九条。  最近では榊原がいちいち九条の執務室に訪れられないくらいに忙しくなって来たのだ。  まぁ、やる事は山ほどどころか海ほどある今の状況では仕方の無い事だが。 『承知しておりますとも。出来得る限り善処させて頂きます』 「善処、か。便利な言葉だが、私に使うのは褒められんな」 『申し訳ありません。では、結果を出します、と言えば宜しいでしょうか?』 「それでいい。とこ...
  • 新たなる帝國21
    第二十一幕 準備段階  帝國暦二十一年四月二日  インビンシブル大帝國 帝都ノーブルラント  デオスグランテ城 帝國最高会議 「――……以上のようにT-34の量産体制は万全であり、月産最大生産数を数百両単位にまで引き上げる事が可能です。T-34/85の生産に移る準備もできてはいますが、それは今後の敵がT-34/76の砲撃に耐え得る防御力を持った何かを出してきた時になるでしょう。あと、先日出した動員令により、着々と地方から兵士たちが集まってきています。但し、これが使用できるようになるには最低で二ヶ月は必要となりますが」 「歩兵の装備も増産に入っています。夏の開戦までには動員された兵士たちに装備を行き渡らせる事は十分に可能です」 「今回の戦争計画によって、我が国は南方諸国の持つ、大規模な鉱山地帯を手に入れる事となります。これによる鉱工業生産高の増大はか...
  • 新たなる帝國22
    第二十二幕 始まりの鐘  インビンシブル大帝國  バルデバルド平原 国境地域より北方に約20kmの地点  広大で平らな大地が一面に広がるこの場所で、キュラキュラと履帯の音が五月蝿く鳴り響く。  戦車、戦車、戦車……普段は穏やかなこの場所は今、戦車の群れによって占拠されていた。  その戦車の上には歩兵がしがみつくようにして乗っており、戦車関連用語ではこれを『跨乗(こじょう)』と言う。そして、その跨乗している歩兵を『跨乗歩兵』と呼ぶ。  まぁ、それは兎も角として、現在このバルデバルド平原にはインビンシブル大帝國の機甲軍団が集結して、その圧倒的なまでの暴力的な力を発揮されるのを今か今かと待ち侘びていた。殺戮の風が思う存分に吹き荒れるのを。  そして、その平原にある一つの天幕にはこの軍団の頭脳が集められていた。  天幕の中は簡易的なテーブルと椅子が幾つかあり、テ...
  • 新たなる帝國27
    第二十七幕 外交  帝國暦二一年一一月一八日  インビンシブル大帝國 南部国境地域  南方臨時司令部 大会議室  臨時の交渉の場にしては広々として立派と言うに相応しい作りとなっている大会議室。  今現在この場にはダルフォード大帝国の外交使節団を迎え入れており、それに対する形でインビンシブル大帝國の外交官たちが相手をしている。  しかし、肝心の交渉が遅々として進まず、三時間もグダグダと話し合っているために両者共に相当な疲労を蓄積させていた。 「……我がダルフォード大帝国の力はご存知でしょう? その傘下に入るのを何故そこまで拒絶するのですか?」  疲れているはずなのに平然とした表情で言うダルフォード側の代表。  彼ら使節団は貴族には珍しい理性的なメンバーを集めてきたようで中々に忍耐がある。大抵は苛々が蓄積して爆発する。  しかし、この場で何かし...
  • 新たなる帝國35
    第三十五幕 支配者達の憂鬱  インビンシブル大帝國 帝都ノーブルラント  デオスグランテ城 皇帝執務室前 「どうしたものか……」  皇帝である九条の執務室の前で扉をノックする寸前で迷いに迷っている大林。  本来ならば、このような場所には出頭命令でもなければ来ないのだが、今日はとある用でわざわざやってきたのだ。  まぁ、今日の用件は先日、氷室から強引に押し付けられたものであり、その用件を九条に伝え、反対された場合には更に説得までも行って来い、という無茶なもので……正直、帰りたい。  ――そんな事が無理なのは百も承知だが。 「……いい加減、腹をくくるか」  ようやく意を決し、大林は若干震えながらも扉を二度ほど軽く叩く。  すると、すぐに中から「入れ」と、入室を促す声が聞こえてくる。  緊張で身体が固まりそうになる自分に心の中で喝を入れな...
  • 新たなる帝國26
    第二十六幕 帝國の国力の一端  インビンシブル大帝國は急いでいた。  南方制圧作戦により、ベルンネスト王国、ライオネス王国、ストゥーバン王国を始めとした南方一○ヶ国から手に入れた広大な大地を有効に活用するために一刻も早い開発を行わねばならないからだ。  短期的であったが、今回の派手な戦いのおかげでレイジェンス大陸に存在する国々の目がこちらに向いた。  この大陸の国家は何処も封建国家のくせにかなりの軍事力を有している。  この大陸の文明はどう見ても中世レベル。自分達の世界の欧州における中世であるのならば、一○万という数で最大規模の戦力である。  しかし、この異世界のレイジェンス大陸ではそれを容易に超える。  真っ先に滅ぼしたザーブゼネ王国が良い例だ。何せ単独で一○○万を超える兵力を有していたからだ。  これを実現できた理由は人口、すなわちマンパワー以外の何物でもない。ど...
  • 新たなる帝國40
    第四十幕 北の巨龍  レイジェンス大陸の二大勢力が熾烈な戦いを繰り広げている一方、大陸北方に一大勢力を築き上げたインビンシブル大帝國は両勢力が争っている現在を好機として一大侵攻作戦を展開させていた。  帝國の西方に存在する四つの国々を自らの領土とするための作戦。これによって、大陸北方は完全に帝國の支配下に置かれることになる。  帝國は、十分な時間を使い、そのための軍備を整え、物資も充実させた。最早、彼らを止める事はできないし、また彼ら自身も止まる事はできない。  ことごとく世界を血と鉄で征服するために、ただ歯車は回るのみ。  それこそが、彼ら自身がこの異世界で生きる理由であるのだから。  ………………  …………  …… 「砲撃を願います。座標はF-026-156」  後方へ支援砲撃を要請すると、すぐさまに指定した場所へ砲弾が...
  • 新たなる帝國32
    第三十二幕 戦乱末期 「う、うわあああああッ!!」 「おりゃああッ!!」 「だあああああッ!!」  農民たちが鎧を着込み、更にその手に剣を持って斬りかかる。中には槍を振り回して襲い掛かるものもいた。  しかし、御世辞にも良いとは言えない太刀筋に槍使いである。だが、物量で討伐に来た貴族を少々押している。 「ぐっ、このォ!」  その討伐に来た貴族の一人であるゲルフィングは苛立っていた。  たかだか奴隷の反乱と舐めていたら相手はそれなりの武装をしており、必ず多人数で襲い掛かってくるのだ。  一人一人の技量なら自分が圧倒しているのに何たる様か!  心の中でそう叫ぶ。  魔法を使って一気にやるかとも考えたが、すぐにその考えを却下した。  反乱民、すなわち敵があまりに多く、自分の魔力が枯渇する危険が高いと踏んだためだ。  魔力が...
  • 新たなる帝國28
    第二十八幕 演習  インビンシブル大帝國  ラーテノアス州 ミシア陸軍飛行場  現在、このラーテノアス州ミシア陸軍飛行場ではかなりピリピリした雰囲気に満ち溢れていた。  今日この日は帝國空軍の一大演習ということもあるのも大きな一つの理由だが、それ以上にこの飛行場に来ている人物こそが巨大な理由であった。  人民の皇帝、神の使者、世界の救世主、などと謳われる九条星夜その人が特別に用意された観覧用の席に着いているのだ。  これでピリピリしないはずがない。失敗などすれば眼も当てられないからだ。元々、空軍はついこの間まで――というには結構期間が空いているが――予備軍という存在で正規の軍ではなかったのだ。成果を出さなければまた予備軍に戻されてしまうか、最悪解体されて陸海軍に取り込まれてしまう可能性だってある。だから、殆どの――異世界人で空軍に入っている者たち――空軍の関係...
  • 新たなる帝國3
    第三幕 会議 飛鳥島 地下5000m地点  第四会議室  部屋中が鉄と機械で覆われたかのような生命を全く感じさせない一室。  そこに、地位の高そうな人物たちが、それぞれ椅子に座り、その殆どが唖然とした様子で固まってしまっていた。  シーンと、静まったその雰囲気をかき消すように九条は喋り始める。 「さて、諸君。聞いての通り、緊急事態だ。現状において、最良と思える案を出してもらいたい」  自分たちが今いるのは異世界である、という氷室の長々とした説明が先程された。  当然、証拠となる資料も分厚い書類の束にして全員に配布し、それらが無造作にモニターにも使える机の上に置かれていたり、今だに納得のいかないものが熱心に熟読している様子が見受けられた。  九条が発言してから、一、二分が過ぎた。  程々に高価だと思わせる木製の椅子に腰掛けていた将軍たちの瞳に...
  • 新たなる帝國24
    第二十四幕 絶対無敵の帝國軍  ベルンネスト王国  王都ロバールブルグ 「ええいッ! 一体どうなっておるのだ?!」  ドンッ、と玉座に座っている白髪の老人が苛立ちを抑えきれぬと言わんばかりに手摺を叩く。  この老人こそがベルンネスト王国の現在の国王、君主だ。そして、現状では彼が苛立つのも無理は無かった。  既に敵国、インビンシブル大帝國の軍勢が国内の奥深くまで入り込み、盛大に暴れているのだ。  地方の領主たちがそれぞれ自慢の手勢で対抗するもあまりにも兵力が少なく、しかもバラバラに戦うものだから戦力の逐次投入になっている有様だった。 「は、はっ、もうしばらくお待ちを……直に連絡があるはずでございます故……」 「もうよい! そんなものどうせ何の役にも立たぬであろうがッ!」  ギリギリと歯軋りをさせ、憤怒の表情でその怒りをぶちまけ続ける。 ...
  • 新たなる帝國8
    第八幕 戦争計画  飛鳥島 地下5000m地点  第四会議室  部屋の中は衣擦れの音すら聞こえてこない沈黙で一杯だった。  幾人もの将軍が綺麗に軍服を身に纏い、厳峻とした空気の中で全員が決然たる態度で椅子に座っていた。  そうした言葉を出しにくい雰囲気で一人の男がこの場を代表して言った。 「閣下、今回の命令に関して我々は何の反対もありません。我々一同、閣下の判断に全て従います」  力強い口調でそう言った後、軽く頭を下げる。  彼の名前は『伊達義久』、階級は海軍中将で海軍第二機動艦隊の司令長官である。  鷹のような目が特徴的な人物で、その侍を思わせる風貌は非常に頼もしい印象を与える。 「うむ、諸君らの期待を裏切らぬよう善処しよう」  九条は堂々とした態度で応じる。  そこには確固たる自信がしっかりと見え、居並ぶ将軍たちを安心させた。...
  • 新たなる帝國30
    第三十幕 鮮血のクリスマスイヴ  帝國暦二一年一二月二四日  インビンシブル大帝國  帝都ノーブルラント郊外 第三処刑場 「狙えー……筒ッ! 撃てぇ!!」  バン、バンと乾いた音が響き、目標となった柱に縛り付けられた人々が次々と項垂れる様にして前のめりに崩れていく。  その身体は穴が数多く開き、そこから血をダラダラと流し、地面に血の池を作っている。 「担当のものはあれの処分の後、次のものを配置せよッ!」  一時間ほど前からこのような光景がずっと続いていた。  帝國には全部で九八もの処刑場がある。そのうちの一つがこの場所で、今日この日はここ以外の九七箇所の処刑場でも同じように銃殺やギロチンによる斬首が行われている。  殺されているのは勿論、数ヶ月前に併合した地域の貴族や富豪の特権階級者である。しかし、これが中々に数が多い。  実のとこ...
  • 新たなる帝國36
    第三十六幕 流転  ガヤガヤと五月蝿いざわめきが波のように私に近づいてはぶつかる。  街頭にあるそこそこ大きめのビルにあるスクリーンではニュース番組が流されている。  しかし、その五月蝿いざわめきも、ニュース番組の内容も自分の耳には入ってこなかった。  ――……いや、入ってくる余裕が私には無かったのだ。 「うわぁ……」  思わず間抜けな声を出してしまう。  だが、それも仕方の無い事だろう。田舎から出てきたばかりの私は……『エルルート=デュレンダス』は帝都の凄まじさに、ただ圧倒されるしかなかったのだから。  天高く聳え立つ大きな建物の群れ、見た事のない程の膨大な数の人間、そして何より活力に溢れたこの空気!  自分の故郷では決して感じる事は出来ないだろうと断言できるくらいだ。まるで世界が違って見える。  故郷にはこんなに人はいないし、大きな建物...
  • 新たなる帝國7
    第七幕 不穏  飛鳥島 第二十五特別防御区画  要塞司令官執務室 「ふむ……」  九条は紫芝から送られてきた辞書並みの報告書を見て既に一時間は考え込んでいた。  時が経つのは早いもので、異世界人と接触してから、もう一ヶ月という時間が過ぎていた。  今のところ彼らとは比較的友好な関係を築いており、日常的に交流を深めていると紫芝はよく言ってきている。どうにも懐柔策を講じているようだ。  だが、正直そんな事よりも彼らからこの世界について様々な情報の入手に成功したことは極めて大きな成果だった。しかし、同時にそれが悩みの種でもある。  腕を伸ばして机の上においてある分厚い報告書を再び手に取る。  そして、まず表紙を見る。タイトルに『異世界情勢』と短く書いてある。余計な言葉がなく非常にシンプルだ。  さて、それでは改めてこれを読み直してみる事にしよう……――...
  • 新たなる帝國41
    第四十一幕 ダルフォードの嘲笑  ダルフォードは哂っていた。  眼下に見える戦場のありようを見て哂っていた。 「見たか見たか見たか! あのクズどもに眼にもの見せてやったぞ! ヒヒャアハッハハハハッ!」  テーブルをバンバン叩いて、自分の感じている楽しさをアピールするダルフォード。  しかし、彼の周りに控えている側近たちはそんな様子を気にする余裕はなく、ただ唖然とした様子で塞中関を眺めていた。  難攻不落、堅牢なる事この上なし。そんなイメージがあった塞中関は今、その中央部分を見事なまでに吹き飛ばされていた。  これがダルフォード大帝国の漆黒宰相ロンガードが用意した『切り札』の結果である。巨大な銀の巨兵を動かすために内蔵されている特大の魔導機関を意図的に暴走させて爆発させるという大胆不敵な所業。  目標に移動して一旦停止、そして暴走開始、といった手順の命...
  • 新たなる帝國9
    第九幕 準備  辺りは全くの無音に静まり返り、深い闇に包まれた真夜中。  特に森の中は月明かりさえも遮ってしまう暗黒とも言うべき状態であった。  そんな森の中を動く影があった。一つや二つではなく、幾つも幾つも。  森の中に偶々あった開けた月明かりの届く広場にその影たちは出てきた。 「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ……」 「ち、畜生! なんなんだありゃ! あんなのがいるなんて聞いてねぇぞッ!」 「こ、こりゃ割り増しで報酬もらわねぇといけねぇな、はは……」 「も、もう俺たち以外の奴はいねぇのか? 他の連中は?!」 「殺られちまったんだろうよ! あの化け物共によ!」  森から出てきたのは五人の男。  激しく息切れをしていたり、無駄に喚いて体力を消耗させていた。  共通点はどの男も革でできた鎧を身に付け、腰に剣や斧で武装していた事だろ...
  • 新たなる帝國34
    第三十四幕 謀略の影  インビンシブル大帝國 帝都ノーブルラント  デオスグランテ城 皇帝執務室 「三五○万人規模にまで陸軍の動員を進めて欲しいだと?」 「はい。それだけの数が必要と判断されましたので」  報告書に書かれている詳細を確かめながら些か驚く九条。  それを目の前にいる榊原は堂々とした態度で受け止めて答える。  九条は眉間に皺を寄せて問いかける。 「だが、国内産業がその分停滞するのではないか? ……それに経済的、社会的な問題が発生するのならば承諾しかねる」 「御心配には及びません。南方の人間を引き抜いて当てれば支障は出ないでしょう。我々が心血を注いで育成したエリート達を潰すような事には決してなりません」 「ほぅ? ……だが、南方の連中は幼少時から軍事教練を受けていたわけではないのだぞ?」  インビンシブル...
  • 新たなる帝國37
    三十七幕 ステッキーワールド  大デルフリード帝国  帝都ランズベルク ホーエンハイム城 「ダルフォードが大規模な出兵をしたと?」 「はっ!」  日の当たるバルコニーで寛いでいた時にいきなりこの報告だ。機嫌も悪くなるというものだろう。  一緒にいたリュッデルも顔にこそ出してはいないが、なんとなく嫌な気配が伝わってくる。  ダリスは眉間に皺を寄せて溜息をつくと、すぐさま告げる。 「帝都にいる家臣たちを速やかに召集してくれ。集まり次第、対策会議を開く。その準備も任せた」 「はっ、承知致しました!」  バタバタと慌てて伝令は去っていった。  それをダリスは静かに見送り、呟く。 「また……血が流れるな」  憂鬱な気分になる。  近頃は大規模な戦なんて全く起きなかった。束の間の平和を謳歌していたのだ。  そもそも自分...
  • 新たなる帝國2
    第二幕 氷室 「……なんだと?」 『ですから、我々は異世界に飛ばされてしまったと言ってるんです。いやー、科学者として、このような体験をするとは非常に幸運で貴重ですよ』  暢気な口調で言う氷室に呆れ果ててしまい、何も言えなくなる。  こいつは性格がかなり破綻しているが、嘘を言うような男ではない。  信じたくは無いが、今聞かされた現実離れしたことは真実だろう。 (だが……)  となると事態は確実に深刻なはず。なのに、何故ここまで楽天的でいられるのか不思議でならない。  いや、待て。こいつは、殆どただ知識欲の赴くままに生きているだけだ。今回のことも興味深い出来事が起こったために、その事への探究心で頭が一杯なのだ。  故に暗くなったり、悲観的になるような暇など皆無なのだ。そうに決まっている。 『で、閣下はどうするんです? こっちは適当にもう動...
  • 新たなる帝國38
    三十八幕 決戦  時は流れに流れて帝國暦二二年八月二二日。  ダルフォード大帝国とインビンシブル大帝國の不可侵条約締結よりちょうど七ヶ月後のこの日、大デルフリード帝国とダルフォード大帝国の中部国境周辺に両陣営の軍勢が集結していた。  過去にザーブゼネ王国というインビンシブル大帝國に取って代わられた国があったが、その国は一○○万を超える軍勢を有していた。  しかし、それは民衆である奴隷に対する露骨なまでの搾取と国家の指導的立場に立つ人間たちに蔓延した軍国主義のためだった。  それ故に九条たちがやってきて王国を打倒し、インビンシブル大帝國を建国した時に熱狂的、あるいは狂信的な支持を民衆から得られたのだ。  そのザーブゼネ王国と違い、大デルフリード帝国とダルフォード大帝国は数○万単位の軍勢しか保有していない。  それは民衆に対する搾取が少なくともザーブゼネ王国より...
  • 新たなる帝國18
    第十八幕 建国  旧ザーブゼネ王国  元王都セルビオール 「親愛なる人民諸君、今日は良い天気だ。まず、その良い天気にふさわしい勝利の報告をしようと思う」  再び、前と同様に九条が広場の小高い塔の頂上で演説を始める。今回の演説は前回設置したスピーカーやマイクなどはそのままなのですぐに始められた。  広場も黒い波が押し寄せているかのように蠢く大群衆が歓声を上げている。  九条はそれを満足そうに見ながら、軽く咳払いをマイクに響かせて続ける。 「我が解放軍は悪辣なる貴族共の残党軍に対し、正義の鉄槌を加え、これに大打撃を与える事に成功したッ!!」  若干、芝居口調だがこれを聞いている民衆たちは叫んだり、自分の隣のものと抱き合ったりして大いに喜びを表現している。  たったこれだけの事で……単純だな、九条は内心そう思いつつ、更に彼らを熱狂的にさせるために言...
  • 新たなる帝國25
    第二十五幕 早期終結  辺りに立ち込める黒煙と硝煙の香り。  それがこの場を生者と死者のみの存在しか許さない戦場であるという事を否応無しに実感させる。  榴弾の雨により焼け野原のようになっている大地を全力で疾走する戦車群にそれに追随する兵員輸送車両。  例によって、戦車には跨乗歩兵がべったりと張り付いている。  空を見上げれば、獰猛な鋼鉄の悪魔たちがその爪と牙をいつでも敵に喰い込ませられる様に悠々と翼を広げて飛んでいる。  それらをじっと見詰めるのは物言わぬ屍となった地べたに這い蹲る敵だけだった。  最早、ベルンネストは落ちた。  ベルンネスト王国 王都ロバールブルグ近郊  第一機甲軍団 第一機甲師団  一式指揮車両内部 「全ては終わり、後に残るは虚しさだけ、か」 「それがこの世界の軍事制度の脆さを如実に表しているのです...
  • 新たなる帝國0
    序幕 神の火  20XX年、第三次世界大戦は日本の勝利に終わった。  戦勝国であるアメリカ及び同盟諸国は、食糧事情解決のため膨大な占領軍をヨーロッパ・アジア各国に駐留させた。  そのため各国の食糧事情はさらに悪化、反米感情は爆発寸前だった。  日常化した異常気象、食料配給の遅延、頻発するデモ、暴動、世界情勢は再び深刻化していた。  第三次世界大戦から数年後、世界各地の農作物が壊滅した。理由は、環境破壊による気候変動と、突然噴火した火山の灰による日照不足である。  寒冷化による長期の食糧不足で世界人口は激減、全世界的に人々の南下が始まった。  世界の覇者となったはずのアメリカでも南下は止まらず、北部の人々の大量流入により南部諸州の不満が爆発。首都ワシントンが核のテロで消失、アメリカは無政府状態に陥った。  連邦政府喪失、アメリカは北部連邦、南部連合、...
  • 新たなる帝國23
    第二十三幕 侵攻開始 『ザー…ザザッ……に移動中の敵を確認。重装騎兵、軽装騎兵など多数。歩兵は若干名を確認。第三戦車中隊は至急急行の後、これを殲滅されたし』 『了解。第三中隊全軍突撃!』  無線からの報告を受けると、キュラキュラと履帯の音を鳴らしながら、指示された現場に急行する。  既に辺りでは砲撃音が五月蝿く鳴り響いてもいるため、履帯の音や戦車のエンジン音はあまり気にならない。ただ、森の中を進むのは戦車では辛いところだ。まぁ、そんなに深くはないのでなんとかなるが。  周囲を警戒しつつ、そのまま先を進んでいくと報告どおりに敵を発見する。  ――その瞬間ニヤリと笑う。  敵もこちらに気が付いたらしく、慌てた様子で馬の向きを変えようとしたり、歩兵は剣を構えたりする。だが、もう遅い。  哀れな彼等に容赦なく機銃を掃射し、その身体をズタズタに引き裂く。...
  • 新たなる帝國1
    第一幕 混乱  20XX年3月11日、飛鳥島は米軍の新型純粋水爆により『消滅』。  同日、日本国は北部連邦こと新生アメリカ合衆国に対し、降伏。全軍に停戦命令が発せられた。  20XX年3月14日、対米降伏文書調印。  日本国内閣総理大臣、北条康弘がデヴィス将軍の司令部で日本の降伏文書に調印した。  辛うじて国家としての独立は守られたものの、多額の賠償金、沖縄・対馬の租借、厳しい軍備制限等が科せられた。  20XX年6月22日、東京軍事裁判。  日本の首都東京で主要戦争犯罪人とされる四十五名が裁かれた。  一部のものはスケープゴートに使われたとの事であるが詳細は不明である。  この他にも日本に対する様々な『戦後処理』が幅広く行われた。  こうして日本は二十一世紀の半ばで再び戦後の道を歩むことになったのである。 『第一幕 ...
  • 新たなる帝國5
    第五幕 邂逅  長い列を組んで多くの人々が北へ北へと向かっていた。少なく見積もっても、千人か二千人は確実にいるようだ。  しかし、その多くは老人や女子供ばかりで、屈強な男性は全くいなかった。  彼らは重そうな台車を必死の思いで引きながら、川を越え、谷を越え、戦渦の免れる事のできる土地を目指して、ただひたすら北に向かっていった。  もう何日も何ヶ月も歩き続けて……。  そして、ある夜。  野営にちょうどいい場所を見つけた一行はそれぞれテントを張った。体力の消耗が激しいものは、そのまま毛布を適当にかぶって、テントの中で眠り始めたか、地面の上で横になった。  地面の上で横になったものは、テントの数が足りないか、何かあってもすぐに逃げれるように心掛けている人間だ。  そして、体力にまだ余裕があるものは、火を焚いて獣に襲われないように準備をし、消えないようにじっと見張りを...
  • 新たなる帝國4
    第四幕 忙しき日々  海岸一帯に五月蝿く重機の音が鳴り響く。  そこかしこに建物が建てられ、都市と言えるような光景がそこにはあった。  建設作業に従事している人の住む場所としてプレハブ住宅が並び、食堂、簡易病院、大浴場などの施設まで既に作られていた。一時期、それらを使うのに必要な電力を確保するための発電所の建設が問題になったが、核融合炉を搭載した大型巡洋艦を代用品にするという荒技でクリアした。  そして、ついこの間完成した港には、飛鳥島からの輸送船が何隻も到着していて、積まれた大量の荷を降ろしており、さながら、貿易にやって来た船という印象を受ける。  しかし、そういった施設以外にも厳重なバリケードやトーチカが設けられ、塹壕、迫撃砲陣地などで補強されていた。  何があるか分からない、準備して置いて損はない。そういった考えから作られた軍事施設だった。  そして、...
  • 新たなる帝國6
    第六幕 会話  ピリピリとした嫌な空気が応接室に満ちる。  テーブルを挟んだソファーに紫芝と異世界人の代表である三人の女性が向かい合って座っている。  そして、双方の背後には武装した兵士たちが静かに待機していた。  無論の事ながら、彼女たちは緊張した面持ちであった。同時に警戒感と敵意も抱いているらしく、特に金髪の少女は目の前に座っている紫芝を睨んでもいた。  紫芝の方は完全にその顔から感情を消し去ったような表情をし、いつかの会議と同じような様子で彼女たちを見ていた。 「さて、随分と乱暴に連れて来てしまいましたが、それは純粋にこちらの手違いです。謝罪します」  唐突に頭を下げて謝る紫芝。  この態度が大層意外だったらしく、彼女たち三人は思わず目を点にさせてしまう。  しばらく、間があったが意を決したように三人のうちの一人、シーラが話しかける。 「あ...
  • 新たなる帝國16
    第十六幕 榊原の提案  飛鳥島 第七空軍司令部  司令官執務室 「元帥閣下……幾らなんでも無理です」 『無理でもやってもらう。どうにかして敵を壊滅、少なくとも甚大な損害を与えるのだ』 「しかし、相手が百万と言うのは多過ぎです。対米戦が始まる前の時ならまだしも現在の我が空軍では、それほどの相手を壊滅状態に持っていくのは至難なのです。ご再考を御願いします」 『ならん。この際、ミサイルでも何でも使って構わん。いっそ、毒ガスの使用も許可する。だから、敵を空軍のみでどうにかしろ』 「作戦会議の時は合流阻止のみが空軍の任務だったはずです」 『状況が変わったのだ。陸軍は治安維持等、様々な事に使いたい。それに未だにこの国の完全制圧には至っていないしな。故に陸軍の力をそちらに注ぐ必要があるのだ。そのためにも空軍のみで……いや、海軍の連中にも手伝わせる...
  • 新たなる帝國10
    第十幕 状況開始  その日はよく晴れた快晴と言える天気だった。  穏やかに流れる風が眠気を誘い、つい居眠りをしてしまいそうになる。  あちらこちらで商店が並び、ガヤガヤとそれなりの活気に包まれて貴族相手にものを売っていた。  しかし、物を売る商人たちは何処か諦めのような表情をうっすらと浮かべていた。  よく見れば、貴族たちに見下されて罵詈雑言を受け続けているのが分かる。  暴行こそされてはいないものの、それは商人たちが自分たち貴族に金を回してくれる大富豪の奴隷だからだ。  人の物に手を出して壊すわけにもいかない。たったそれだけの理由で控えているだけだった。  奴隷は彼らの所有物としてしか扱われず、奴隷の稼いだものの全てが奴隷の所有者のものとなる。  それが当たり前の国家。普通の国。  逆らっても貴族の兵士や魔法で粉砕されるだけ、ただ死にたく無いという一...
  • 新たなる帝國12
    第十二幕 崩壊  戦場に紫芝の機甲部隊の突入。これによって更なる阿鼻叫喚の地獄絵図がこの世に現れた。  その地獄絵図を生み出すための材料となる敵の兵士たちは全て悲惨な末路をたどっていた。  戦車の主砲から放たれる砲弾によって原形を留めぬほどに吹き飛ばされたり、戦車に搭載された機関銃で文字通り蜂の巣にされたり、さらにはその戦車自体の巨体で押し潰されて体中の骨を粉砕され、肉や内臓をぶちまけて辺りを血溜りにし、大地の貴重な養分にされていった。  だが、攻撃は戦車によるものだけにはとどまらない。  戦車の後方に控える装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車から次々と『装甲強化服』を纏った歩兵が降車する。  装甲強化服とは特殊合金と人工筋肉を組み合わせた日本の技術の集大成とも言えるバトルスーツだ。  外観は頭の天辺から足のつま先までを黒一色で統一された鎧に見える。顔全体を覆うヘルメ...
  • 新たなる帝國33
    第三十三幕 禁断の同盟  大デルフリード帝国は本来ならば正当なるレイジェンス大陸の覇者たる国家である。  しかし、帝位継承の折に当時の宰相ガルフ=ヴァン=ダルフォードが突如謀反、そこから全ての歯車が狂っていった。  傘下にあった諸侯は次々と独立し、大陸に覇を唱えんとして戦乱の世がやってきたのだ。  当時まだ十四の少年でしかなかった崩御した皇帝の嫡男であるダリス=ジュス=デルフリードはそれを止める事などできず、諸侯の台頭を許す事となった。  それからというもの初代皇帝の出生地であり、歴代皇帝の直轄地である大陸南部に一旦退くと同時にその地域で最も大きい港湾都市であるランズベルクに遷都し、ただ只管に耐え忍ぶだけだった。力が十二分に蓄えられるのを、自分に好機が巡ってくるのをじっと待ったのだ。  それによって大陸中央部の領土を失い、ガルフに殆どの古参の臣下が寝返ったものの幸いにも致...
  • 新たなる帝國勢力図
    第二十八幕時点 レイジェンス大陸勢力図 赤色:インビンシブル大帝國 肌色:バクスラント王国 茶色:テドロキア王国 紺色:ダルフォード大帝国 青色:大デルフリード帝国 黒色:バールドバル海洋王国 灰色:ルドバキア王国 緑色:ガルメニア王国 濃灰:異種族連合共同体 白色:弱小勢力群 表紙
  • 新たなる帝國11
    第十一幕 前哨戦  鉄の鎧を着込み、剣を腰に差して盾を装備した一般的な中世歩兵がぞろぞろと列を組んで道を進む。勿論、槍や弓矢で武装したものもいる。  馬に乗っている者もいるがそれは圧倒的に少数で、それらは指揮官クラスの人間だと予想できる。言うまでもないが、明らかにこれは軍隊だ。  軍を動かす名目は北方で発生した民衆の反乱を鎮圧すること。  だが、実際には反乱を鎮圧すると同時に略奪と虐殺を徹底して行い、もう二度と起こらぬ様に他の民衆に対しての見せしめにするというものだ。  恐怖政治の典型と言えるやり方だろう。 「クソッ、何故こんな辺境にまで高貴なる私が足を運ばねばならんのだ!」  派手な金ピカの鎧を身に付け、偉そうに馬に乗っている男が不満をあらわにして言う。  歳は三十代後半と言ったところだろう。立派なヒゲで顎が覆われているのが特徴的だ。  この男が...
  • 新たなる帝國39
    第三十九幕 猛攻  機甲兵、いわゆる『ゴーレム』と呼ばれる存在。  基本的に全身を甲冑で身を包んだ姿をしており、顔の部分は大抵人間の髑髏のようになっている。  その顔を見れば、不気味さとともに一瞬でそれが機甲兵であると分かるのだ。  機甲兵は通常、レイジェンス大陸に点在する『古代遺跡』の中で発見される。  中には地中に埋もれている遺跡から『発掘』という形で見つかる場合も多い。尤も、その場合は当然稼動状態にないものしか出てこないが。  そもそも彼らの役目は遺跡の番人、門番であり、遺跡への侵入者の排除を第一とする存在だ。  その番人たる彼らだが、実は種類も豊富で基本系の兵士型を始めとして、下半身が馬で上半身が人の騎兵型、犬や鳥などの動物の姿を模した獣型、蜂や蟷螂といった昆虫の姿を模した昆虫型、などがある。  中には、基本系である兵士型をベースに巨大にした巨人型というものも...
  • 新たなる帝國13
    第十三幕 奇襲  飛鳥島 第二十五特別防御区画  要塞司令官執務室 「そうか……予定通り勝ったか」  ギシリ、と自分の体重を預けている椅子が軋みを上げる。  机を挟んで目の前にいる榊原が手に持った書類を眺めながら続けた。 「はい、それも完全なる圧勝の模様です。作戦は順調に次の段階へと移行されました」  九条は満足そうに頷く。だが、決してその顔は晴れやかなものではなかった。ギラギラとした目と不気味に歪んだ唇が目立つ、酷く恐ろしい顔をしていたのだ。  普通はその表情から来る恐怖と見えないプレッシャーのようなもののせいで後退りくらいしそうなものだが、榊原は特に気にする事無く平然としたままでその場に佇んでいた。 「流石は紫芝、という事なのかな」 「彼は多少人格に問題はありますが許容範囲です。能力的には優秀な部類に入ります」  九...
  • 新たなる帝國14
    第十四幕 陥落  なんだ。一体何が起こっているというのだ。  いつもと変わりなく過ごしていたはずだったのに、何故こんなにも耳障りな悲鳴と断末魔が聞こえてくるのだ。  不愉快だ。この背中に感じる冷たさも、勝手に震える指も、カチカチと何処からか聞こえてくる音も――全てが不愉快だ。  国王は気付かなかった。  背中に感じる寒気は第六感の警告だと、勝手に震える指は恐怖の表れだと、カチカチと鳴る音は自分の歯の音だと……  そんな時、国王の座る玉座の目の前に跪く者がいた。  反乱鎮圧の軍を起こす際に唯一国王に反対した老臣であった。 「陛下、これ以上血を流す事は無駄の一言。彼らに降伏するよう、御願い申し上げます」  悲痛な表情をして頭を深々と下げる。  ザーブゼネ王国の終焉の時が来たのだ。これ以上運命に逆らう事はできようもない。ならば……ならば少しでも多...
  • 新たなる帝國15
    第十五幕 大演説  王都の広場に集まった民衆が不安を隠さずにざわついている。当然だろう。いきなり現れた謎の集団があれほど自分たちが脅威に思っていた貴族たちを瞬く間に次々と殺害してしまったのだから。  奴隷として苦汁を舐めさせられる日々を送っていた民衆たちにとって、その光景はまさに圧巻の一言だった事だろう。 「かなり大勢集まっているな……実に結構な事だ」 「はい、流石は首都という事なのでしょう」  九条と榊原がこっそりと広場に集まった民衆を見て感想を言う。  見渡す限り一面に黒いものが蠢いているように見える。普通の人間なら圧倒されて声も出ないだろう。  民衆を集めた広場は実際には国王が出兵する兵士に訓示を出すための場所らしい。国王の姿を集めた兵士によく見せるために広場には小高い塔のようなものがあり、そこで大声で訓示を出していたようだ。  一度に何...
  • 新たなる帝國17
    第十七幕 掃討状況  真っ暗闇の中、城壁から一定の距離をとりつつ、取り囲むようにして兵を配置して攻囲戦の真っ最中のある国の軍勢。  この軍勢こそ既に事実上滅びたザーブゼネ王国百万の残党の一部。その数およそ八万五千。  しかし、その大軍も本国から送られてくるはずの物資が一月前に急に途絶え、手元にあった物資も殆どを貪り尽くしてしまい、兵の士気も低下の一途を辿っていた。 「一体どういうことだ! 食料も何も全く届かんではないかッ!」  荒々しく鼻息を立てながら天幕の中で喚き散らす髭面の男。  歳は外見だけで判断するなら、もう四十過ぎだろうか。若々しい英気は最早そこには感じられないが、代わりに熟練した勇猛な指揮官というイメージを見るものに与える。 「落ち着いてくだされ、サイゼル公爵閣下」 「そうです。焦っても仕方ありますまい。そのうち届くようになりますで...
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    タイトル 著者名 更新日時 新たなる帝國 頭痛 2012年12月21日 (金) 21時37分03秒 新たなる帝國外伝 独立観測航空隊 サヴァ 2007年11月05日 (月) 18時47分01秒 独立観測航空隊外伝 スカイシューター 流刑者 2009年09月03日 (木) 02時22分17秒 新たなる帝國外伝 飛鳥島守備軍を救出せよ 流刑者 2012年12月21日 (金) 21時37分03秒 鉄血竜戦記 流刑者 2007年10月31日 (水) 03時21分21秒 鉄血外伝・Imagine Sense サヴァ 2012年12月21日 (金) 21時37分03秒 バルカン・スタビライズ サヴァ 2007年10月31日 (水) 04時41分44秒 東京動乱 青海 2007年10月31日 (水) 04時42分02秒 北海道の一番長い夏 青海 2007年10月31日 (水) 04時42分17秒 鋼鉄の...
  • 過去ログ
    ...22 小説一覧→新たなる帝國→(´・ω・`)  で、小説部屋にいけますよ。 - 黒頭痛 2009-01-22 21 25 10 頭痛さん 小説部屋が「小説一覧」のインデックス内にありませんぜよ - サヴァ 2009-01-20 21 44 50 鋼鉄6話公開。ついでに3話とかタイトルつけっぱなしだったのに今頃気がついたというw - masakun 2009-01-17 22 03 30 気晴らし五話上げたのを機に全話公開。 - 黒頭痛 2009-01-16 22 25 05 流刑者さん指揮下、Imagine Senseヲ修正セリ - サヴァ 2009-01-06 21 45 43 ↓を試しました。私のPCでは、チャットもBBSのアドも正常なようです - サヴァ 2009-01-05 05 34 13 http //yui.at/ch/chat1.cgi?j...
  • 独立観測航空隊4-2
    外伝Ⅳ 幻影の艦隊 後編  九条皇帝が、この観艦式に出席されるそうだ。  空母『エウロパ』は、今は賓客を迎える準備に忙殺されていた。乗員達でなく我々が、だ。数十分前のヴォルフ提督の発表は記者達を慌てさせた。まったく、冗談が悪過ぎる。  皆が右往左往している。カメラを入念にチェックするカメラマン。運良く質問権を手にいれたライタ―が何度も練習をしている。本社に連絡を取ろうと通信室の前には、長い列が出来ていた。  私も先輩記者の手伝いをしながら、その様子をどこか観察するような気持ちで見ていた。まるで熱に浮かれたような彼らを見ていると、私は冷めたような気分と孤独感を感じてしまう。  孤独は、自分を振り返った時、真っ先に思い浮かべてしまう言葉だ。帝國という存在に疑念を持つ私は、いつも周りを気にするあまり自分を押し殺してしまっている気がして、なんだが情けない気分になる。  私も帝國を...
  • 独立観測航空隊3-2
    外伝Ⅲ 加速する羽根 後編  南部戦区。  この忌々しい丘も今日で見納めだと、第553戦車連隊の戦車兵はほくそえんだ。  彼の属する帝國陸軍第13軍団第112装甲師団は、ここ2週間補給線を整えるためこの丘を越える事が出来なかったのだ。それが帝國軍兵士達のフラストレーションを酷く溜めていた。それには理由がある。丘の向こうには、敵軍の防衛線があった。それは実質的な最終防衛ラインと言ってもよい。ここを越えればこの戦争は終わる、帝國の勝利という最高のカタチで。  あと一歩で・・・、という焦燥があった。  しかし、二週間待った代わりに、今回の戦闘では空軍にも増援が送られ、強力な地上支援が受けられる。さらに上空からの広域の地上敵を監視する大型偵察機も実戦で始めて使われるらしい。  ハッチから身を乗り出し、後方を見遣る。陸続と続く戦車の群れ、100両以上の戦車とその倍に匹敵するその他...
  • 独立観測航空隊外伝0
    前編  有川祐二とデネブ・ローブの乗るTa152E改は、大陸での偵察任務を終えて飛鳥島への帰途に就いていた。機体の調子は快調そのものであった。  飛行場への着陸コースに入るべく雲の下へ降下した時、彼らの視界に1機の飛行機が飛び込んできた。  空軍のB-25ミッチェル双発爆撃機だった。魔導師か空の魔獣による攻撃を受けたらしく、機体に空いた穴からは火炎と黒煙が噴き出していた。コクピットや銃座には、深手を負ったり死んだりした搭乗員の姿が確認できた。飛んでいるのが不思議なほどのダメージであった。  Ta152に気付いた血まみれのパイロットが、通信機のインカムに向かって何かをわめき散らしていた。助けを求めているのか罵っているのかは判らなかったが、その声を有川らに届けるはずのアンテナは根元からもぎ取られていた。パラシュートで脱出しようにも、ハッチや天蓋のフレームが歪んでいて不可能のようで...
  • 独立観測航空隊4-1
    外伝Ⅳ 幻影の艦隊 前編  どこをわたしは彷徨っていたのか。  望みはどこに失せ、どれほど躓き、思想に迷いを生じ、生涯に罪を犯したことか。  ―――なんということだろう、わたし自身の記憶がそれを忘れていたのだ。  風のように、誇りが私を運んだ。  魂を焦がす炎は、わたしを蝕むことなく、むしろ力と勢いを与えてくれた。  世界の闘いを、晴れ渡った高みから谷間にただよう霧を眺めるように、わたしは眺めていた。  わたしは寡黙な、誇り高い、人生の客人だった。  『エクス・ポント』(イヴォ・アンドリッチ)  彼らが現れて、もう二十数年ほど経っているだろう。  彼らは、突如として大陸の東の果てに現れ、瞬く間に旧国を打ち崩し、自らの国を建国した。  『インビンシブル』  それが彼らの帝國の名前だ。  その国が生まれた当時、私はまだ小さな子...
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