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記憶の監獄 - (2009/02/10 (火) 11:24:21) の最新版との変更点

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*記憶の監獄◆EGv2prCtI.  玉堤英人が去った後も、ケトル(男子十三番)は神社の境内で座り込んでいた。  その横では、親友――のフラウ(女子二十五番)が静かに横たわっている。  フラウは時折、何かを探しているように顔を動かすが未だに目は覚ましていない。  ケトルは、フラウを見守りながら考えていた。  英人がフラウを置いて行った理由。  ――答えは二つある。  まず、フラウを危険な事態に陥れない為。  あの時、ケトルに別れを告げる時の英人の表情を見れば英人が何かを覚悟していたのは分かる。  そして、その言葉の内容も。  もう一つ、それは英人にとって本当にフラウが邪魔になった為。  フラウを気絶させる時に言った「でも、君じゃ、駄目なんだよ」その言葉がケトルに引っ掛かった。  これからしようとすることは一人でないと作業出来ないことだとも思える。  いずれにせよ、もう英人は行ってしまった。  そしてもうその真意を聞くことが出来なくなるかも知れない。  いや、誰かに襲われてもう――  そんな悪い想像をしている場合ではない。  ケトルは頭を振って、それから再びフラウを見た。  相変わらず覚醒する気配は無い。  とにかく、今は自分がフラウを守らなければならないのだ。  じきに、夜が明けるだろう。  目立つのは危険なので(アニメでもよくこんな施設に居るキャラが襲撃される。道を歩いてても襲われるが)その前にはここから離れたかった。  だがその前にフラウが目覚めなければならない。  ケトルの体格と背筋力ではフラウを運ぶことは難しいのだ。  それにまた苗村都月の時の様に襲われたら、その時にフラウを守ることは出来るだろうか?  いや、到底出来ない。  そんな事態になったらフラウとケトルは共に数秒もしない内に葬式待ちリストへの仲間入りを果たすだろう。  フラウ――  ――。  そうやってフラウを見ている内に、ケトルの中に、不意にある疑惑が沸き上がった。  それまであまり深く考えなかったような疑惑が。  フラウは、本当は自分のことをどう思っているのだろうか?  自分は、今までフラウのことを大切な無二の親友だと思っていたし、フラウも自分のことをそうだと思っていた。  しかし、やはり――フラウは、自分のことをどう受け取っていたのだろう?  ずっと、遠い昔からフラウは自分の家に来ていた。  そりゃフラウだって事情あってこそ来ていた訳だし、本人は実際嫌だったのかも知れない。  でも、長い間一緒に居たのは事実だ。  それは今も変わらない(もっとも、その”今”が戻ってくる確率は低い。限りなく低い)。  一緒にご飯を食べたり、一緒に風呂に入ったり、一緒にアニメを見たり――  それとも、フラウはそれを当然のことだとして、自分を何とも思っていなかったのか?  そう思うと、ケトルの胸にじわっと毒が滲むような感覚が襲った。  自分が、一方的にフラウのことを親友だと押し付けていたのだろうか?  先程、ほとんど英人にしか話しかけていなかったのはケトルより玉堤英人が大事なのであり、ケトルなどほとんど居ても居なくても関係無いと思っていたから?  やはり、フラウは自分を?  いや――  ケトルはもう一度顔を振った。  当座そんなことは関係無い。  それよりもこれからどうするかが重要なのだ。  しかし、もう一つ、ケトルの心にはよく分からない、気になるものがあった。  何かの暗示のように、頭にこびりつく声。 「ケトル、あたしの愛しい騎士……?」  無意識の内に、ケトルはあの夢の言葉を呟いた。  あの、悲しげな声。  何処かで聞いた声。  アニメのキャラなどではない、現実に聞いたことのある、それ。  夢の声を思い出すたびに、何故かケトルは罪悪感に似た感情に苛まれた。  何か――自分が取り返しのつかない重大なことをしたような。  しかし自分にはそのことの記憶が存在しない。  夢の中で、声の主は泣いていた。  ケトルにすがるように、泣いていた。  そして、ひたすら自分を愛してくれと懇願していた。  まるきり、今フラウに捨てられかけているケトルのように。  だとしたら、自分がフラウを追っているからあの声の主は悲しんだのだろうか?  ケトル自身がそうであるように?  或いは、その声は現に誰かに――  そこまできて、再びケトルは何故かテト(女子二十五番)のことを気にしだし始めた。  そして、そのことにも疑問を持った。  最初、この場所で目覚めた時もそうだった。  何故自分は真っ先にテトを気にしたのだろうか?  他に教室には二人居なかったのだ。  はっきり言ってテトよりも目立つ二階堂永遠(女子二十一番)や、もう一人――卜部悠(女子二番)よりも早く、しかも二階堂達は今の今まで思い出さず、テトを先に。  それに自分はテトとは直接繋がりは無い。  だいたい、テトはラト(男子二十七番)にべったりだった筈だし、ケトルには興味など無いものだと。  しかし、そのラトも若狭に――  ――何故、殺させた?  教室に居なかった三人はこの殺し合いに絡んでいると考えていいだろう。  と言うか、あからさまだ。何の伏線にもなっていない。  三人を殺したのなら、生徒達を大人しくさせる為に三人の死体を見せ付けるのが効果的なのだ。  そうすればあそこでラトを殺す必要も無かった。否、そもそも、初めからあそこで殺す必要があったのか?  ――そうだ。  元々、テトがそうなるように仕向けた可能性が高い。  日向有人(男子二十五番)がテトに何か、魔法的なものを渡していたように、テトは特別な力を持っていたのだ。  この殺し合いを設定する為には都合がいい。  そして、その前にラトとの間に何かがあったと考える他無いだろう。  殺し合いの引き金となった、何かが。  しかし、それと自分の夢がどう繋がりがあるのだろうか?  どうして、夢のことを考えている内にテトが?  あの夢を見るまでテトのことなど意識して居なかったのに?  そしてあの声がテトのものだと?  それとも――何かが、自分のことをそうさせているのか?  そこまでしか考えられなかった。  これ以上はとてもじゃないが自分では何も思い付かないし、いや、英人やフラウでも到底思い付かない次元の話だと感じ取ったのだ。  もうこのことに触れるのは止めた。  精神が持たない。特に、この状況では。  ケトルは痒みを帯び始めた目の回りを掻いて、フラウに再び顔を向けた。  それからフラウの額に手を当てた。  黄色い毛皮の内側、血が薄く固まった跡があった(多分、転んでぶつけたとかその程度の怪我だろう)。  多分、何か無理をしたのかも知れない。  英人に会いたい一心で。  いつも、笑顔を見せていたフラウ。  先程英人と話していた時も、その表情を出していた。  ――多分、自分はそれが見れれば満足なのだろう。  フラウがどうあろうと、それは変わり無い。  そして今は――自分しか、そんなフラウを守れないのだ。 【F-3 神社/一日目・早朝】 【男子十三番:ケトル】 【1:僕(達) 2:君(達) 3:あの人(達)、○○さん】  [状態]:少し疲労  [装備]:サーベル  [道具]:支給品一式  [思考・状況]   基本思考:どうにかして殺し合いを止めさせる   0:フラウと行動する   1:仲間を探す   2:テトのことを知りたい   3:やる気になっている相手の説得が無理だと思ったら逃げる 【女子二十五番:フラウ】 【1:私(たち) 2:貴方(たち) 3:あの人、あいつ(ら)、○○(名前呼び捨て)】 [状態]:気絶 [装備]:M79グレネードランチャー (1/1) [道具]:支給品一式、チャフグレネード予備擲弾×5 [思考・状況] 基本思考:玉堤英人と間由佳を護る。 0:英人を追いかける? 1:由佳を見つけ次第、安全な場所に保護する。 2:由佳ちゃんが死んだら、私は……? *時系列順で読む Back:[[欺き欺かれて]] Next:[[修羅]] *投下順で読む Back:[[欺き欺かれて]] Next:[[修羅]] |[[パートナー]]|ケトル|| |[[パートナー]]|フラウ||
*記憶の監獄◆EGv2prCtI.  玉堤英人が去った後も、ケトル(男子十三番)は神社の境内で座り込んでいた。  その横では、親友――のフラウ(女子二十五番)が静かに横たわっている。  フラウは時折、何かを探しているように顔を動かすが未だに目は覚ましていない。  ケトルは、フラウを見守りながら考えていた。  英人がフラウを置いて行った理由。  ――答えは二つある。  まず、フラウを危険な事態に陥れない為。  あの時、ケトルに別れを告げる時の英人の表情を見れば英人が何かを覚悟していたのは分かる。  そして、その言葉の内容も。  もう一つ、それは英人にとって本当にフラウが邪魔になった為。  フラウを気絶させる時に言った「でも、君じゃ、駄目なんだよ」その言葉がケトルに引っ掛かった。  これからしようとすることは一人でないと作業出来ないことだとも思える。  いずれにせよ、もう英人は行ってしまった。  そしてもうその真意を聞くことが出来なくなるかも知れない。  いや、誰かに襲われてもう――  そんな悪い想像をしている場合ではない。  ケトルは頭を振って、それから再びフラウを見た。  相変わらず覚醒する気配は無い。  とにかく、今は自分がフラウを守らなければならないのだ。  じきに、夜が明けるだろう。  目立つのは危険なので(アニメでもよくこんな施設に居るキャラが襲撃される。道を歩いてても襲われるが)その前にはここから離れたかった。  だがその前にフラウが目覚めなければならない。  ケトルの体格と背筋力ではフラウを運ぶことは難しいのだ。  それにまた苗村都月の時の様に襲われたら、その時にフラウを守ることは出来るだろうか?  いや、到底出来ない。  そんな事態になったらフラウとケトルは共に数秒もしない内に葬式待ちリストへの仲間入りを果たすだろう。  フラウ――  ――。  そうやってフラウを見ている内に、ケトルの中に、不意にある疑惑が沸き上がった。  それまであまり深く考えなかったような疑惑が。  フラウは、本当は自分のことをどう思っているのだろうか?  自分は、今までフラウのことを大切な無二の親友だと思っていたし、フラウも自分のことをそうだと思っていた。  しかし、やはり――フラウは、自分のことをどう受け取っていたのだろう?  ずっと、遠い昔からフラウは自分の家に来ていた。  そりゃフラウだって事情あってこそ来ていた訳だし、本人は実際嫌だったのかも知れない。  でも、長い間一緒に居たのは事実だ。  それは今も変わらない(もっとも、その”今”が戻ってくる確率は低い。限りなく低い)。  一緒にご飯を食べたり、一緒に風呂に入ったり、一緒にアニメを見たり――  それとも、フラウはそれを当然のことだとして、自分を何とも思っていなかったのか?  そう思うと、ケトルの胸にじわっと毒が滲むような感覚が襲った。  自分が、一方的にフラウのことを親友だと押し付けていたのだろうか?  先程、ほとんど英人にしか話しかけていなかったのはケトルより玉堤英人が大事なのであり、ケトルなどほとんど居ても居なくても関係無いと思っていたから?  やはり、フラウは自分を?  いや――  ケトルはもう一度顔を振った。  当座そんなことは関係無い。  それよりもこれからどうするかが重要なのだ。  しかし、もう一つ、ケトルの心にはよく分からない、気になるものがあった。  何かの暗示のように、頭にこびりつく声。 「ケトル、あたしの愛しい騎士……?」  無意識の内に、ケトルはあの夢の言葉を呟いた。  あの、悲しげな声。  何処かで聞いた声。  アニメのキャラなどではない、現実に聞いたことのある、それ。  夢の声を思い出すたびに、何故かケトルは罪悪感に似た感情に苛まれた。  何か――自分が取り返しのつかない重大なことをしたような。  しかし自分にはそのことの記憶が存在しない。  夢の中で、声の主は泣いていた。  ケトルにすがるように、泣いていた。  そして、ひたすら自分を愛してくれと懇願していた。  まるきり、今フラウに捨てられかけているケトルのように。  だとしたら、自分がフラウを追っているからあの声の主は悲しんだのだろうか?  ケトル自身がそうであるように?  或いは、その声は現に誰かに――  そこまできて、再びケトルは何故かテト(女子二十五番)のことを気にしだし始めた。  そして、そのことにも疑問を持った。  最初、この場所で目覚めた時もそうだった。  何故自分は真っ先にテトを気にしたのだろうか?  他に教室には二人居なかったのだ。  はっきり言ってテトよりも目立つ二階堂永遠(女子二十一番)や、もう一人――卜部悠(女子二番)よりも早く、しかも二階堂達は今の今まで思い出さず、テトを先に。  それに自分はテトとは直接繋がりは無い。  だいたい、テトはラト(男子二十七番)にべったりだった筈だし、ケトルには興味など無いものだと。  しかし、そのラトも若狭に――  ――何故、殺させた?  教室に居なかった三人はこの殺し合いに絡んでいると考えていいだろう。  と言うか、あからさまだ。何の伏線にもなっていない。  三人を殺したのなら、生徒達を大人しくさせる為に三人の死体を見せ付けるのが効果的なのだ。  そうすればあそこでラトを殺す必要も無かった。否、そもそも、初めからあそこで殺す必要があったのか?  ――そうだ。  元々、テトがそうなるように仕向けた可能性が高い。  日向有人(男子二十五番)がテトに何か、魔法的なものを渡していたように、テトは特別な力を持っていたのだ。  この殺し合いを設定する為には都合がいい。  そして、その前にラトとの間に何かがあったと考える他無いだろう。  殺し合いの引き金となった、何かが。  しかし、それと自分の夢がどう繋がりがあるのだろうか?  どうして、夢のことを考えている内にテトが?  あの夢を見るまでテトのことなど意識して居なかったのに?  そしてあの声がテトのものだと?  それとも――何かが、自分のことをそうさせているのか?  そこまでしか考えられなかった。  これ以上はとてもじゃないが自分では何も思い付かないし、いや、英人やフラウでも到底思い付かない次元の話だと感じ取ったのだ。  もうこのことに触れるのは止めた。  精神が持たない。特に、この状況では。  ケトルは痒みを帯び始めた目の回りを掻いて、フラウに再び顔を向けた。  それからフラウの額に手を当てた。  黄色い毛皮の内側、血が薄く固まった跡があった(多分、転んでぶつけたとかその程度の怪我だろう)。  多分、何か無理をしたのかも知れない。  英人に会いたい一心で。  いつも、笑顔を見せていたフラウ。  先程英人と話していた時も、その表情を出していた。  ――多分、自分はそれが見れれば満足なのだろう。  フラウがどうあろうと、それは変わり無い。  そして今は――自分しか、そんなフラウを守れないのだ。 【F-3 神社/一日目・早朝】 【男子十三番:ケトル】 【1:僕(達) 2:君(達) 3:あの人(達)、○○さん】  [状態]:少し疲労  [装備]:サーベル  [道具]:支給品一式  [思考・状況]   基本思考:どうにかして殺し合いを止めさせる   0:フラウと行動する   1:仲間を探す   2:テトのことを知りたい   3:やる気になっている相手の説得が無理だと思ったら逃げる 【女子二十五番:フラウ】 【1:私(たち) 2:貴方(たち) 3:あの人、あいつ(ら)、○○(名前呼び捨て)】 [状態]:気絶 [装備]:M79グレネードランチャー (1/1) [道具]:支給品一式、チャフグレネード予備擲弾×5 [思考・状況] 基本思考:玉堤英人と間由佳を護る。 0:英人を追いかける? 1:由佳を見つけ次第、安全な場所に保護する。 2:由佳ちゃんが死んだら、私は……? *時系列順で読む Back:[[Towering Inferno]] Next:[[すくいきれないもの]] *投下順で読む Back:[[欺き欺かれて]] Next:[[修羅]] |[[パートナー]]|ケトル|[[誓いの剣]]| |[[パートナー]]|フラウ|[[誓いの剣]]|

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