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狂乱祭 - (2009/06/03 (水) 01:07:21) のソース

*狂乱祭 ◆zmHe3wMKNg 
あれからどれくらい時間が過ぎたのか。 
静寂に包まれた体育倉庫でチェーンに縛られた四人が暴れるのも 
罵り合うのも疲れすっかり大人しくなってしまっていた。 

「……なぁ……。」 

長い沈黙の後、壱里塚徳人が口を開いた。 

「じっとしてたらもうじきローストポークだぜ俺達? 
 ここは一時休戦てことでとっとと鎖をなんとかしようぜ。」 
「さっきからやってるけどびくともしないじゃない。」 
「それに、解いたら真っ先に壱里塚君を殺しそうですものね、貝町さん。」 
「久世!」 
「……姉ちゃん……嘘だろ……。」 
「おい神崎!しっかりしろ!お前が動かねえとどうにもならんだろ!」 
「はぁ……サーシャさん、本当に死んでしまったのかしら。」 
「畜生!なんて勿体無いことしやがるあのロボット野郎!サーシャは俺の獲物だったのに!」 
「……やっぱ最悪だわ、アンタ。」 
「でも、これで良かったのかもしれないわね。彼女は死ぬことでしか救われない人だったのですから。」 
「あぁ?何言ってやがる?」 
「今頃天国でラト君と仲直りしている筈だわ。よかったわね、サーシャさん。どうぞお幸せに。」 
「……久世、アンタも……。」 
「……天国、か……。」 

先程から死んだように虚ろな神崎健二が、自嘲気味に笑った。 

「……天国へ行けば、姉ちゃんにまた会えるのかな……?」 
「はぁ!?ふざけんな神崎!」 
「ええそうよ!あなたも死ぬべきだわ!神崎健二!」 
「久世ぇ!いいかげんにしろテメェ!」 
「……はぁ……。」 

貝町は溜息をつく。結局罵り合いの繰り返しで一向に事態は好転しない。 
イライラする。こいつらを全員この場で殺せたらどれだけ楽なのか。 

「畜生!おい!誰か居ねえのか!助けてくれ!」 

壱里塚が叫んだその時、倉庫の扉が重い音を立てて開いた。 
いよいよ死刑執行の時かと全員が息を飲む。しかし。 

「あら、何をしているの?」 

そこに現れたのは、騒がしい声に導かれてやってきた倉沢ほのかだった。 

「誰?見えないんだけど?」 

貝町が背中を向けて対になって縛られた壱里塚に声を掛けた。 

「倉沢ほのかだ、図書委員の。」 
「えと、あの大人しそうな娘?まだ生きていたんだ。」 

壱里塚は安堵し、最後の希望に縋るように喋りかけた。 

「捕まったんだよ俺達。片桐和夫の野郎に。お願いだ、助けてくれ!」 

倉沢ほのかのことはあまりよく知らない。だがこの女は基地外スペックだらけの 
クラスメイトの中では比較的普通の娘だった筈。精神的に完成されてる暮員未幸 
と違って、今にも殺されそうな人間を見捨てる事など出来ないに違いない。 

「頼む!一生の……?」 

ふと、ほのかが何かを引き摺っているのに気付く。 
なんだあれは? 
そういえば、服のあちこちが血で汚れていて、瞳がドブ沼のように深く黒ずんでいる。 
この女に一体何があったんだ? 

「……ふふふっ。そうなんですかぁ。よかった。後何十人も戦わなきゃいけないのかと 
 うんざりしてたんですけど、手間がちょっと省けそうです。ねぇ、裕也君♪。」 

そう言って、手に持っていた物をひっくり返し、それに喋りかけた。 

「…………………………!」 

引き摺られて襤褸雑巾のようになった海野裕也の死体を見て、 
壱里塚徳人は声にならない声を上げる。 
しばらく茫然とした後、恐ろしく嫌な予感を全身で感じ取った。 
とてつもない絶望が壱里塚を襲う。 

ほのかはディバックからP-90を取り出し、銃口を四人に向けた。 

「…………や…………め…………!」 
「ちょっと!どうなってるの!?見えないんだけど!?ねぇ!?」 
「……倉沢……さん……。」 

横目でその様子を未届けていた神崎が何かを悟ったように微笑んだ。 

「いいんだ、これで。もう疲れたよ。俺を姉ちゃんの所へ連れて行ってくれ。」 
「………神崎ぃ………てめぇ……!」 
「あぁ!神崎さん!あなたもとうとう救われる時が来たのですね! 
 私もお供します!待っていてくださいサーシャさん!」 
「ふざけんな糞がぁ!てめえらみんな死ね!畜生!嫌だ!俺は死にたくねぇ!」 
「なによ!何が起こってるのよ!?」 
「おい!やめろ!やめてくれぇぇぇぇ!倉沢ぁぁぁぁぁ!」 

倉沢ほのかが、ニヤリと笑った。 

「さ・よ・う・な・ら。」 

ぱららという音が倉庫に響き、約30秒間の血と肉片の舞踏会が始まった。 
  








「ふふふっ。あははははっ!楽勝でしたねっ!さぁ、行きましょう、裕也君!」 

白い硝煙に包まれた倉庫で高笑いする狂った少女は動く者の居ないその場を後にする。 
自分達委以外の参加者を皆殺しにするために。愛しい恋人と生還する為に。 

―――――――――――――――――――――――― 


「なにぃぃぃぃ!?誰だぁぁぁぁ!?俺の邪魔をした奴はぁぁぁぁ!?」 

凄まじい音が聞き、片桐和夫が倉庫に駆け付けた時は既に遅く、 
目にしたのは蜂の巣にされている先ほど捕まえた4人の死体。 
正面を向いて居た壱里塚徳人と久世明日美は銃弾を諸に受け原型も留めないほど破壊されている程だ。 

「おのれ!私の人間への第一歩を妨げおって!許すまじ!許すまじ!」 

そういえば忘れていたが他にも参加者は居るのである。 
獲物を横取りされることも十分あり得たのに準備にあまりにも時間を掛け過ぎ、 
どうせ逃げられないと鷹をくくってあまりにも遠くへ行きすぎた。これは反省点だ。 
殺した者はまだ遠くへは行ってない筈。今すぐ報復せねばならぬ。 
そう思ったがふと何かを閃いて死体の方を見る。 

「こういうとき時、死体は火葬するのだよな。うん、それも人間らしくていいのかもしんない。」 

というかせっかく丸焼きの準備をしていたのに使わないのはなんか癪だった。 
調達したガソリンを抱えて、四人の元へ近づく。 
あと三歩、あと二歩、あと一歩。 
さあ、中身をぶちまけよう。 

「アーメン、主よ、この愚かな四人に祝福を。」 

「――――――――――死ね、ポンコツ野郎。」 

片桐が四人の元にたどり着いた瞬間。 
突然、久世明日美の死体の下から伸びた手が、片桐の耳たぶの裏に隠されたスイッチを叩いた。 

「…………な…………?」 

CDの取り出し口のように額が割れ、中身が飛び出る。 
桐山重工製レプリカントに共通する、記憶カードの取り出し口である。 
伸びた手は、その開いた隙間に指を突っ込み。 

その中身をぐちゃぐちゃに掻き回した。 

「…………あ…………あばばばばばばばvばじcxcdyyt!!!」 

「やれやれ、噂にはきいてたけど本当にあったのねスイッチ。脆いものね、レプリカントってのは。」 

死体を持ち上げて現れたのは手の主、全身が血まみれになった貝町ト子。 
倉沢は確認しなかったが実は正面を向いていた二人にしか銃弾はまともに当たらず、 
おまけに弾丸の雨がチェーンを破壊していた。だが片桐に不意打ちを仕掛けるため死んだふりをしていたのだ。 

「やめろやめろめろろろ!!!俺はまままだ誰も!!殺し!てころしてコロシテ!!!殺!!」 

「知るか。」 

貝町に躊躇なくチップを握り潰され、片桐は電池が切れたように行動を停止。その場に倒れ伏した。 

「……ふぅ。」 

貝町はよろよろと立ちあがる。ほとんど当たらなかったとはいえ、掠った弾丸は体中のあちこちの皮膚を破り 
血がにじみ出ている。ちらりと足もとに倒れている壱里塚徳人の死体に冷たい眼を向けた。 

「はっ。ざまあみろ、よくもテトを!」 
「………う………。」 

壱里塚の下敷きになっている神崎健二が目を覚ました。 

「あぁ、アンタもまだ生きてたの?」 
「……姉ちゃん、今そっちに……。」 

げしっと、神崎の頭を蹴とばした。 

「がっ!」 
「残念ながら感動の再会は後回しみたいね。さぁ、行くわよ。」 
「……畜生……なんだよ。まだ生きてるのか、俺。……行くって、どこへ……?」 

「そうね、とりあえず見捨てた暮員未幸を始末しようかしら? 
 それとあなたのお姉ちゃんの仇討ちと、テトの報復もしなきゃ。」 

それに、そろそろ本気でヤバい。一刻も早く薬を見つけないといけない。 

やれやれ、脱出する前にやることが一杯あり過ぎるわね。 




【D-4 学校・体育倉庫/一日目・昼】 

【女子5番:貝町ト子】 
【1:私(ら) 2:お前(ら) 3:○○(名字呼び捨て)】 
[状態]:疲労(大)、血まみれ、全身にかすり傷、禁断症状寸前、未幸に対する強い殺意 
[装備]:支給品一式×4、レミントンM870(6/6)、予備弾(16/18)、FP45“リベレーター”(1/1)、予備弾(23/25) 
[道具]:なし 
[思考・状況] 
基本思考: 秘密を保ったまま脱出する 
0:暮員未幸を殺す 
1:脱出する前に大田太郎丸忠信と吉良邑子を殺す 
2:禁断症状が出ない内に薬物を手に入れておきたい 
3:倉沢ほのかを警戒 
[備考欄] 
※テトとは友人でした 
※太田に対して、複雑な感情があるようです 
※薬物中毒者です。どの程度で禁断症状が出るかは、後の書き手にお任せします 
※支給品「赤い液体の入った注射器」は太田が貝町に使っていた薬品のようです 

【男子九番:神崎健二】 
【1:俺(たち) 2:お前(ら) 3:あの人、奴(ら)、○○(名字呼び捨て)】 
[状態]:疲労(大)、激しい悲しみ、全身にかすり傷、自分を見捨てた未幸に対する強い憎悪 
[装備]:なし 
[道具]:なし 
[思考・状況] 
基本思考:貝町ト子についていく? 
0:本当に死んでいるのなら、神崎志緒里を殺した奴を絶対殺す 
1:暮員未幸を殺す 
2:倉沢ほのかを警戒 

【D-4 学校・正門前/一日目・昼】 

【女子十三番:倉沢ほのか】 
【1:わたし(達) 2:あなた(達) 3:○○さん、○○くん(達)】 
[状態]:疲労(中)、脚にかすり傷、強いショックによる精神崩壊、右頬に痣、海野裕也の死体を引き摺っている 
[装備]:ドス、P-90(200/200)
[道具]:支給品一式×2、P-90の予備弾薬(200発×3本)、ウィンチェスターM1873(3/4)、 12ゲージショットシェル(8/12) 
[思考・状況] 
基本思考:クラスメイトを皆殺しにし、裕也と共に島を脱出する 
0:クラスメイトを皆殺しにする 
1:暮員未幸とサーシャには警戒 
[備考欄] 
※沙羅が主催側の人間ではないかと強い不信感を抱いています 
※日向有人がゲームに乗っているかもしれないと強い不信感を抱いています 
※楠森昭哉は死んだと思っています 
※海野裕也の死体を引き摺っているため、移動速度はかなり遅くなります 


&Color(red){【男子二番:壱里塚 徳人 死亡】} 
&Color(red){【女子十一番:久世明日美 死亡】} 
&Color(red){【男子八番:片桐和夫 死亡】 }  

&Color(red){【残り18人】} 
 



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|[[Scarecrow]]|&Color(red){壱里塚 徳人}|&Color(red){死亡}|
|[[Scarecrow]]|&Color(red){久世明日美}|&Color(red){死亡}|
|[[Scarecrow]]|貝町ト子||
|[[Scarecrow]]|神崎健二||
|[[Scarecrow]]|&Color(red){片桐和夫}|&Color(red){死亡}|
|[[思い通りにいかないのが世の中だなんて割り切りたくないから]]|倉沢ほのか||