自作キャラでバトロワ2ndまとめwiki

機獣咆哮

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機獣咆哮 ◆dXhnNxERuo


「…………あづぃ…………。」

海を漂い始めて早3日。残酷なまでに燦々と輝く太陽の下。
中川いさは木製のボートの上で干からびていた。
幼少の時から古流武術を徹底的に叩き込まれ碌に遊びにも行けなかった十余年。
PCもテレビもない過疎地の島に時々流れてくる雑誌に書かれている
煌びやかな世界を見る度に少女の胸中に溢れる思いは膨らむばかりであった。
―――外の世界を知りたい。
―――この腐った家を飛び出して。
そして先日、遂に家出を決行したのだった。
ただ誤算だったのは食料も水も持って行けなかったことだ。
長旅になると思い一週間掛かりで作っておいた大荷物が両親に見つかってしまったのである。
大いに揉めた両親の不意をついてこの間死に物狂いの修行の果てに
片鱗を手にした秘剣で吹き飛ばし、そのままの勢いで逃亡。
―――お父さん、お母さん、今まで有難うございました。
次に家に戻ったら死は免れないだろう。それくらいの覚悟だった。
さらば故郷よ。いさは新たな人生へ向かって旅立ちます。

「…………で、このざま…………?」

どうやら家に戻らなくても死は免れないようだ。
周りは水に囲まれているというのに脱水症状とはお笑い種である。
一体私の人生とはなんだったのか!?

ブロロロロロロ…………

ああ、とうとう幻聴まで聴こえてきた。
お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。
はあ、、次に生まれてきたらちゃんと学校くらい行きたいな。

「――――おぃ、生きてる?ちょっと、しっかりしなさい!
 生きてるんなら学校くらい行かせてあげるわよ!」

「…………え…………?」

目を開けるとビキニ姿の天使が私の顔を覗き込んでいた。

それが彼女にとっての生き甲斐にして生涯を捧ぐと決めた主人、京終春日との出会いであった。

◇  ◇  ◇


暗闇の中、何かが光った。

「うわぁ!また来た!」

慌てて首をそらして飛翔物を回避、飛んできたほうへ向かって発砲する。
銃口からうっすら煙が立ち込める。手ごたえはない。
飛んできたものを凝視する。それは……。

「……歯ブラシ?」
「ついてるな。俺は剃刀だったのによ。」
「……何がしたいんだろう。」
「油断してるところを狙って本命が来るんだろ。こっちが疲れるのを待ってるんだ。」

B-2とB-3の境辺りの森の中。
銃器を手にした功野錬司穂積宗一は互いの背中を合わせて周囲に気を配っていた。
森に差し掛かった所で何者かに襲撃されたのだ。
数秒感覚で日用品にまぎれて刃物が飛んでくる。

「おい、功野。そっちはどうだ?」
「撃ったけどもう場所変えたかも。」
「くそ、右から上から左から……一体何処に居るんだ!?」
「ていうかそっちもたまには撃ってよ。」
「あー……こっちは予備の弾丸がないからな。」
「そんなこと言ってる場合?」

と、言うより穂積は攻撃することができない。
功野はともかく、穂積の武器は銃にみせかけたモデルガンなのである。
バレたら真っ先に狙われるだろう。

「感覚的にそろそろ何か飛んで着るんじゃないかな。」
「これ避けたら何も考えずとにかく逃げようぜ。」
「そうしたほうが無難かな。」

その時だった。

「どりゃぁぁぁぁぁ!!!!」

何かの叫び声とともに、穂積の目に前に何か大きなものが飛んできたのは。

「うおぉ!!」

穂積が避けようとした瞬間、物体は空中で停止し、何か長いものが穂積の顔面に延びてきて命中。
目の中に星空が広がり功野を巻き込んで地面に倒れる。
物体は回転して見事に着地し、口を開いた。

「行き成り後ろから襲うなんて酷いわね。」

「すまんな、隙だらけだったんで。」

目に視覚が戻った穂積は二人の生徒の姿を確認する。
手にナイフを持ち膝立ちの姿勢で片方を凝視する金髪ツインテールの美少女、サフィロ・シャリーノ
そしてもうの一人の木刀を持ってる背がちっちゃいのは確か――――。

「大丈夫か?功野錬司。」
「お前……中川?中川いさじゃないか!?」
「……おい、俺は無視かよ?」
「え?ああ、いたのか、穂積宗一。」
「お前なぁ……。」

京終春日の付き人で彼女の用心棒的存在、中川いさと目を合わせた功野は驚愕した。

「功野、春日様を見なかったか?」
「いや、まだ見つからないよ。」
「そうか。で、この女はなんだ?敵か?」

いさはサフィロに木刀の切っ先を向けた。
三人の視点が彼女に集中する。

「はぁ、三対一、てとこかしら。銃が欲しかったんだけど、戦わないほうがよさそうね。」

サフィロは立ち上がり、ナイフをホルダーにしまう。

「サフィロ・シャリーノといったな。お前はゲームに乗っているのか?」
「誰もあの人に危害を加えないなら無駄な殺生はしない。あなたもそうでしょう?中川さん。」
「……まぁ、そうだな。」

全員が立ち上がり一定の距離を取っている。
しかしさっきまでと違い緊張感は大分取れている感じがした。
そりゃそうだ、一番欲しいのは殺害数じゃなくて情報。
まだ始まったばかりでそれほど殺気立ってない今の時期が戦わずに話し合いができるチャンスなのだ。

「まだ誰も殺してないなら手を組むのも手を組むのもアリなんじゃない?サフィロさん。」
「油断するなよ功野、お前を襲うような奴だ。いつ寝返って京終様に危害を加えるか分かったものじゃない。」
「で、でも。」
「……私は……。」


ズシンッ



「―――あ?」

突然、地面が小刻みに揺れ始めた。

「……な……なんだ……この振動は……?」
「……これは、まさか!」

何かホバーの駆動音がこちらへ向かってくる音がし、サフィロが目を見開いた。

「――――死にたくないなら早く逃げなさい!!」

そういった彼女は、その場で跳躍し、木々の中へ姿を消した。

「おい、何が起きているんだ?中川さん!?」

中川いさは暗闇を凝視する。

「分からない、だが、何か禍々しい気配が……!」

そして、唐突に、闇が火を噴いた。

その強い光を正面から目撃した穂積宗一は、不動院凛華のことを急に思い出したくなった。
ポニーテールがトレンドマークの、元気な幼馴染。
あの人間観察手帳をまだ彼女は持っているんだろうか?
持っているのならあれを見て時々でいいから俺を思い出してくれたらいいな。
すげぇ普通な俺だが人を見極める能力だけは凄ぇんだぜ。
そういや周斗の奴はいま何やってんだろ。
血が騒ぐぜとかいってクラスメイトに喧嘩吹っかけてなきゃいいが。
ん?何でこんなことを今考えてるんだ?

ああ、そうか、

――――これが、走馬灯ぉぉぉぉ…………――――

瞬間。
暴風雨のような無数の弾丸が、穂積宗一の体を原型も留めないほど粉々に吹き飛ばした。

突然起きた非現実的な事態に膠着する功野錬司と中川いさ。
頭にフラッシュバックするのは教室に集まった時最後に現れたふざけた巨大兵器。

「――――神楽雅光!奴だ!」
「穂積!!!!嘘だろ!!!!?」
「おい、逃げるぞ功野!」

いさが功野の手を引っ張ろうとしたその時、木々を押しのけそれは姿を現した。
機関銃になっている両腕の片方から煙を出している、チープなSF映画に出てきそうな鉄の巨人。
桐原さんは言っていた。中に居るのはクラスメイトの神楽雅光だと。
安佐蔵をあっさり殺したこの男を説得などできる筈がない。
だが、戦っても―――。
いさは木刀を持つ手に力を入れた。

「功野、一緒に逃げたかったがどうやら無理らしい。二手に分かれよう。」
「うん、そうだね。」
「私が、注意を引く。その間に全力で走るんだ。後ろを振り向かずに。」
「……もうちょっと冷静になってよ、中川さん。」
「何?」

功野錬司は、こんな時だと言うのに嫌味なくらいいい顔でこちらを向き、銃口を向けた。

「は?おい、何やってる!?」
「知ってるよ、君は強い。俺よりずっと、あいつの役に立つ。
 ――――――頼む、春日のそばに居て、あいつを護ってやってくれ。」

そして功野は引き金を引いた。

「が!?」

撃たれたショックで腹を抑える。だが痛みがない事にすぐ気付く。
…………違う、これはモデルガン?

顔を上げると両手に銃を持った功野がこちらから離れながら神楽が乗っている巨人へ向けて
銃を発砲していた。
それにつられ、巨大ロボは撃たれたと思っているのかいさを無視して銃口を功野の方へ
集中させ徐々にそちらに誘導されていく。

「こっちに来いよ!勝負だ神楽!」

だんだん離れていく二人を目にし、

「や…………やめろ!!!!功野!!!!!」

いさは叫んだ。


◇  ◇  ◇

功野は走っていた。
後ろに居る巨人がいつ弾丸の雨で穂積のように自分をミンチにしてもおかしくない。

(でも、これでいいんだ。)

中川いさも、自分も。
昔、春日によって命を救われて以来春日を護ることこそ自分の使命だと思い込んでいる人間だ。
彼女は死ぬ気だった。だが、あの娘の本来の力はこんなところで無駄に散らしていいものじゃない。
死ぬのは、自分でいい。
後方からギュルギュルと不快な音がする。
――――ちゃんと、空気を読んで逃げてくれればいいんだが。

ババババババと、小刻みに音が鳴り、
京終春日のちょっと怒り気味の顔を最後に見た功野錬司の意識は肉体とともに四散した。



巨大ロボ、韋駄天がターゲットの破壊に成功したことを確信し、少し息をついた様子を見せたその瞬間。


「――――――――ふっ!」

ロープに逆さ釣りになった何か韋駄天の顔面に向かって襲い掛かってきた。
突然の襲撃に照準を合わせる間もなく接触を許してしまう。

「―――――――やぁ!」

遠心力によって威力を上昇させながら投擲した軍用ダガーナイフが右側のメインカメラを叩き割った。
急な出来事に慌てたのか韋駄天はバランスを崩し、数メートル先へ地面に跡をつけながら派手に転倒する。

そのまま車体を蹴った勢いで回転しながら地面に着地した少女、サフィロ・シャリーノはすぐさま
ミンチと化した功野のそばに転がった二丁の銃と予備弾薬を拾い、韋駄天のほうをちらりと睨み付ける。
与えたのは大したダメージではない、すぐに起き上がってくるだろう。
今からハッチをこじ開けて中にいる神楽に弾丸を叩き込むのは危険すぎた。

「……今の装備じゃ、これが精一杯、か……。」

ホバー音が再び起動しだすと同時に、サフィロは全力で駆け出した。
今ここで死ぬわけにはいかない。黒嵜さんを護らなければ!

◇  ◇  ◇


どれだけ走ったのか。息を切らしながらふらふらと彷徨う少女、中川いさ。
…………何故自分は逃げたのだ?功野錬司を見捨てて。
二人とも助かる方法があった筈だ。何故それを選択しなかった。
そもそも自分は戦ってすらいない。
一体自分は何の為に修行してきたのか。こういう時に戦う為じゃないのか?
ふっと自虐的に笑う。
知っている。自分の流派は人間と戦う為の武術だ。戦車と戦う為のものじゃない。

「ははは……なんて様!」

功野錬司。あの男は春日様のなんだったのか?
いや、なんとなく気付いてはいた。
なんだかんだいってどんな時もあの男はずっと春日様の傍にいた。
いつも彼を振り回している春日様はどんなことをしている時よりも嬉しそうで。

――――春日様はあの男が好きだったんだな。

自然と、目に涙が溜まっていく。
自分は春日様の大切なものを護れなかった。

「……何ということだ……もう、様に合わせる顔がない。」

ぴたりと、足が止まる。
そうだ、逃げてどうする。
今、勝てないなら次会ったときに勝てるようにすればいいのだ。
そして玉砕すればいい。どうせ一人しか生き残れないのだ。
それが春日様と功野錬司に自分ができるできる唯一のことだった。
涙は止まり、目つきが変わる。

普通を手に居れた少女が、普通を捨てた瞬間だった。


――――私は、どんな手を使ってでも神楽雅光を殺す。



◇  ◇  ◇

「私は神楽君じゃないもーん。私は神楽君じゃないもーん。
 あははははは!あー、さっきはびっくりしたー。」

韋駄天のコックピットの中。
視界の回復が終了したのを確認した砂野夕璃菜は大きく背筋を反らした。
とはいえ壊れたカメラは直らず、ちょっと視界が左寄りになったのだがさほど問題はない。
カメラは真ん中と左、あと二つ。

いくら無敵状態とはいえ少し油断しすぎたかもしれない。次から気をつけねば。

さっきの所へ戻れば中川さんが残ってるかもしれないけど、
結構時間たってるし流石にもう居ないかな?

カメラをズームモードにして辺りを見渡す。
遠くに何か光っているのが見えた。
油断大敵とはいえ、やはりできるだけ人の多いところへ行き一気に片付けるのがベスト。

「次はあっちかなー?私は戦うぞ!碧ちゃんの為に!
 ひひひひひひひひひひひひっっっっっっっっ!!!!!!!!」

外装の狂気と内部の狂気。
二つ揃った怪物が、ホバー音を響かせ動き出す。





【男子二番:功野錬司 死亡】
【男子十七番:穂積宗一 死亡】

【残り31人】



【??? /一日目・黎明】

【女子十四番:中川いさ】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:あの人(達)、○○さん・君(苗字)】
 [状態]:健康
 [装備]:阿修羅(木刀)
 [道具]:支給品一式
 [思考・状況]
  基本思考:春日を守る。
  0:春日を保護する。
  1:神楽雅光(韋駄天)を殺す。
  2:もっと強い武器が欲しい。

【??? /一日目・黎明】

【女子十一番:サフィロ・シャリーノ】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:あの人(達)、○○さん・君(苗字)】
 [状態]:健康
 [装備]:H&KG36(30/30)
 [道具]:支給品一式、宿泊客用アメニティ一式
     シーツを切り裂いて作った簡易ロープ(200cm×1本、綿100%)
デザートイーグル(エアガン)(13/15)、H&Kの予備弾(30/30)
 [思考・状況]
  基本思考:任務の遂行(黒嵜暁羽の護衛)
  0:ゲームの脱出、もしくは優勝。
  1:邪魔者は間引く。他人は信用しない。
  2:首輪の解除方法を探す。
  3:神楽雅光(韋駄天)を倒す方法を考える。
  4:盗聴を警戒。

【B-2 草原 /一日目・深夜】

【女子十番:砂野夕璃菜】
[状態]:健康、高騰感
[装備]:グランドレプリカント"凡庸人型戦車"『韋駄天』GR-02
    ライトマシンガンアーム(160/200)
    レフトマシンガンアーム(200/200)
    対空地ミサイルランチャー(5/6)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
 基本思考:砂野碧衣の安全の為に彼女以外は誰であろうと見つけ次第全員殺害する
 0:人が居そうな場所へ向かう(現在F-2~F-3辺りを目指して進行中。)
 1:碧衣ちゃんは全力で保護!
[備考欄]
※マニュアルを読んでないので操作に慣れてません
※ヘッドセットをつけてないので韋駄天の音声出力用スピーカーは機能しません
※コックピットが完全に封鎖してあるのでハッチを開けないと外から中の人が分かりません
※ホバー機動により通常の参加者より多くの距離を移動できます
※右側のカメラが壊れました。視界は確保されてますが右側に死角ができてます。



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GAME START 中川いさ
013:普通が故に… 功野錬司 死亡
013:普通が故に… 穂積宗一 死亡
002:夢の終わり サフィロ・シャリーノ
012:大 誤 算 砂野夕璃菜 023:Slaves and Masters

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