brainwash ◆CUPf/QTby2
遠くで誰かの声がした。聞き覚えのある声、クラスメイトの話し声だ。
聞こえてくる声は二種類、一人は男子、もう一人は女子。
一体何を話しているのか、その言葉までは聞き取れない。
それでも、二人の声色は穏やかで、争っているようには思えない。
むしろ、女子の声は、明るく弾んでいるようですらある。
聞こえてくる声は二種類、一人は男子、もう一人は女子。
一体何を話しているのか、その言葉までは聞き取れない。
それでも、二人の声色は穏やかで、争っているようには思えない。
むしろ、女子の声は、明るく弾んでいるようですらある。
――この声は、砂野さん。夕璃奈さんじゃなくて、碧衣さんの方ね。
男子は多分、松平君。少なくともあの二人は、殺し合いには乗っていないんだ。
男子は多分、松平君。少なくともあの二人は、殺し合いには乗っていないんだ。
水原維澄(みずはら・いずみ/女子十七番)は安堵を覚え、足を一歩、踏み出した。
夜の森林を彷徨う彼女、天を覆うように広がる枝葉が星明りすら遮るが、
彼女のその手にランタンはない。光と炎に吸い寄せられる羽虫の存在が嫌だから。
法と秩序と正義を軽んじる愚かな虫けらが嫌だから。だから闇に紛れて進む。
正しいのは、殺し合いに乗らない自分の方。それを知らしめるために、今は耐えなければ。
すぐに報われるはずだから。そう反芻しながら自らを鼓舞し、乾いた小枝を踏みしめる。
夜の森林を彷徨う彼女、天を覆うように広がる枝葉が星明りすら遮るが、
彼女のその手にランタンはない。光と炎に吸い寄せられる羽虫の存在が嫌だから。
法と秩序と正義を軽んじる愚かな虫けらが嫌だから。だから闇に紛れて進む。
正しいのは、殺し合いに乗らない自分の方。それを知らしめるために、今は耐えなければ。
すぐに報われるはずだから。そう反芻しながら自らを鼓舞し、乾いた小枝を踏みしめる。
しかし、維澄はすぐに足を止めた。松平の声色が変わったのだ。
不測の事態が生じたのか。だが、砂野碧衣の声は相変わらず楽しげに弾んだまま。
そこに一切の緊張はなく、第三の人物が現れた様子も感じ取れない。
気にしすぎだと考えて、維澄は再び歩き出す。
自身の心に生じた怯えを踏み潰すように歩を進める。
不測の事態が生じたのか。だが、砂野碧衣の声は相変わらず楽しげに弾んだまま。
そこに一切の緊張はなく、第三の人物が現れた様子も感じ取れない。
気にしすぎだと考えて、維澄は再び歩き出す。
自身の心に生じた怯えを踏み潰すように歩を進める。
そこに辿り着いたとき、声は既に止んでいた。
木々の合間から差し込む月光を受け、地を這うような銀のオブジェが鈍く暗く輝いている。
非現実的な光景だった。幻想的であるとすら思えた。
しかし、銀のオブジェの造型が、維澄に現実を思い出させる。
それは松平左京の甲冑、大地に横たわる彼の姿を月が照らしていたのだった。
木々の合間から差し込む月光を受け、地を這うような銀のオブジェが鈍く暗く輝いている。
非現実的な光景だった。幻想的であるとすら思えた。
しかし、銀のオブジェの造型が、維澄に現実を思い出させる。
それは松平左京の甲冑、大地に横たわる彼の姿を月が照らしていたのだった。
彼と話していたはずの碧衣の姿は何処にもない。声はおろか、足音すらも聞こえない。
甲冑は血に染まっている。まるでバケツに入った赤いペンキをぶちまけられたかのように。
名前を呼んでも返事はない、横たわる甲冑は微動だにしない。
しばしの逡巡。周囲の物音に耳をそばだて、松平の頭上に回り込むよう
ゆっくりと距離を縮めてゆく。維澄は慎重に身を屈め、冷たい兜に手をかけた。
甲冑は血に染まっている。まるでバケツに入った赤いペンキをぶちまけられたかのように。
名前を呼んでも返事はない、横たわる甲冑は微動だにしない。
しばしの逡巡。周囲の物音に耳をそばだて、松平の頭上に回り込むよう
ゆっくりと距離を縮めてゆく。維澄は慎重に身を屈め、冷たい兜に手をかけた。
――これは……、どういうこと?
彼女の知っている松平左京は、スキンヘッドの男だった。
しかし甲冑の中で永眠に就いた男の髪は人並みに長く、その顔は無精髭で覆われている。
維澄には、この男が自分の知る松平左京だと確信出来ない。
記憶力には自信がある。一度でも目にした相手の顔は決して忘れないと自負しているし、
それは自信過剰などではなく、周囲も認める彼女の特技、特殊能力の一種だった。
彼女は骨格で人を識別する。その鑑識眼は髪型や化粧の変化で欺けるようなものではなく、
髭の有無はもとより多少の体重の増減すら問題にならないはずだった。
にも拘わらず、甲冑の中から現れた男が松平左京なのか否かすらも判らない。
しかし甲冑の中で永眠に就いた男の髪は人並みに長く、その顔は無精髭で覆われている。
維澄には、この男が自分の知る松平左京だと確信出来ない。
記憶力には自信がある。一度でも目にした相手の顔は決して忘れないと自負しているし、
それは自信過剰などではなく、周囲も認める彼女の特技、特殊能力の一種だった。
彼女は骨格で人を識別する。その鑑識眼は髪型や化粧の変化で欺けるようなものではなく、
髭の有無はもとより多少の体重の増減すら問題にならないはずだった。
にも拘わらず、甲冑の中から現れた男が松平左京なのか否かすらも判らない。
夜の闇が、視覚を狂わせているのだろうか。
異常な状況が、判断力を鈍らせているのだろうか。
それとも本当に、甲冑の中身が入れ替わっていたのだろうか。
彼によく似た何者かが、松平左京として生活していたのだろうか。
或いは松平本人が、整形手術を受けたのだろうか。
異常な状況が、判断力を鈍らせているのだろうか。
それとも本当に、甲冑の中身が入れ替わっていたのだろうか。
彼によく似た何者かが、松平左京として生活していたのだろうか。
或いは松平本人が、整形手術を受けたのだろうか。
分からない、判らない、解らない。どれもこれも確証に欠ける。
思索に溺れる維澄の背後で、踏みしめられた枯れ枝が乾いた音を立てて折れた。
思索に溺れる維澄の背後で、踏みしめられた枯れ枝が乾いた音を立てて折れた。
「あ、水原……、殺し合いに乗ったんだ……」
自身の生死すら他人事だと言わんばかりの腑抜けた声が、宙を漂うように力なく舞う。
いつの間に現れたのだろう。痩せぎすの身体にウルフヘア、中性的な風貌の少女、
生徒会長の高森乙子(こうもり・おとこ/女子八番)が醒めた目でこちらを眺めていた。
いつの間に現れたのだろう。痩せぎすの身体にウルフヘア、中性的な風貌の少女、
生徒会長の高森乙子(こうもり・おとこ/女子八番)が醒めた目でこちらを眺めていた。
「そんな風に思われるなんて、心外です!」
維澄はすっくと立ち上がり、乙子を真正面からねめつけた。しかし乙子は動じない。
感情とは無縁の目、下等生物の生態を観察するような目で維澄の抗議を受け止める。
感情とは無縁の目、下等生物の生態を観察するような目で維澄の抗議を受け止める。
「私は法と正義と秩序に反するような真似はしません。殺し合いなんて論外です。
この人は、私がここに来たときには既に息絶えたあとでした」
「……それを証明することは出来るかね?」
この人は、私がここに来たときには既に息絶えたあとでした」
「……それを証明することは出来るかね?」
そう尋ねる乙子の声は先程とは別人のように低く、力強い。
ああ、この声だ。維澄の中で何かが溶け、気恥ずかしさが取って代わる。
この声で話し掛けられると、乙子に対する淡い好意を自覚せずにはいられなくなる。
彼女に従い、その意に添うことこそが自分の存在意義なのだと錯覚せずにはいられなくなる。
私、あんなに意地を張って。高森さん、怒ったかも。私のこと、嫌いになったかも。
感情的になってしまった己の存在が何処までも卑小に思えてならず、
しかしそんな“正しくない自分”を受け入れるなどどうしても出来ず、
せめてこの心の揺らぎだけは悟られまいと、維澄は毅然と乙子に答える。
ああ、この声だ。維澄の中で何かが溶け、気恥ずかしさが取って代わる。
この声で話し掛けられると、乙子に対する淡い好意を自覚せずにはいられなくなる。
彼女に従い、その意に添うことこそが自分の存在意義なのだと錯覚せずにはいられなくなる。
私、あんなに意地を張って。高森さん、怒ったかも。私のこと、嫌いになったかも。
感情的になってしまった己の存在が何処までも卑小に思えてならず、
しかしそんな“正しくない自分”を受け入れるなどどうしても出来ず、
せめてこの心の揺らぎだけは悟られまいと、維澄は毅然と乙子に答える。
「この人の死因は、刃物による失血死です。私は刃物なんて持っていません」
「……では、何を持っている?」
「地図、コンパス、筆記用具、食料と水、時計、ランタン、そしてノートパソコンです」
「……なるほど。確かに君の仕業ではないのだろうね」
「当然です。私が殺人なんかに手を染めるわけがないでしょう?」
「……では、何を持っている?」
「地図、コンパス、筆記用具、食料と水、時計、ランタン、そしてノートパソコンです」
「……なるほど。確かに君の仕業ではないのだろうね」
「当然です。私が殺人なんかに手を染めるわけがないでしょう?」
言いながら、維澄はうっすらと笑みを浮かべた。
自分の生き方の正しさを乙子が理解してくれた、それだけで自然と笑顔になれた。
しかし維澄の期待に反して乙子の眼差しは醒めたまま。
呆れたように、飽きたように、維澄から視線を外しながら、乙子は冷ややかに呟いた。
自分の生き方の正しさを乙子が理解してくれた、それだけで自然と笑顔になれた。
しかし維澄の期待に反して乙子の眼差しは醒めたまま。
呆れたように、飽きたように、維澄から視線を外しながら、乙子は冷ややかに呟いた。
「……君には失望したよ」
「え……?」
「私の声が聞こえなかったのかね? 失望した、と言ったのだよ」
「そんな、どうして……、高森さん、一体何を……」
「え……?」
「私の声が聞こえなかったのかね? 失望した、と言ったのだよ」
「そんな、どうして……、高森さん、一体何を……」
胸が痛い。自分は乙子を失望させた、ただそれだけのことなのに、
救いようのない大罪を犯したような錯覚に陥り消えたくなる。
乙子は再び維澄を見た。永遠にも思える長い間、しかし実際はほんの数秒、
うろたえる維澄の姿を眺め、そしてゆっくりと口を開いた。
救いようのない大罪を犯したような錯覚に陥り消えたくなる。
乙子は再び維澄を見た。永遠にも思える長い間、しかし実際はほんの数秒、
うろたえる維澄の姿を眺め、そしてゆっくりと口を開いた。
「君は、法や正義や秩序といったものを何よりも重んじているものと思っていた。
にも拘わらず、それらを侵害する者が現れても、他の誰かが解決してくれることを
手をこまねいて待っているだけ。それらを取り戻すために戦おうとしない。何故だ?」
「私は……、殺人者に成り下がるつもりはありません。人を殺すのは、いけないことです」
「だが、法や正義や秩序を取り戻し、或いはそれらを維持するためには、
殺さねばならないときもある。……違うかね?」
にも拘わらず、それらを侵害する者が現れても、他の誰かが解決してくれることを
手をこまねいて待っているだけ。それらを取り戻すために戦おうとしない。何故だ?」
「私は……、殺人者に成り下がるつもりはありません。人を殺すのは、いけないことです」
「だが、法や正義や秩序を取り戻し、或いはそれらを維持するためには、
殺さねばならないときもある。……違うかね?」
乙子の言葉が維澄の心に浸透する。乾いた大地に水が吸い込まれていくように。
維澄は思う。乙子の言葉は正しい。しかし、“正しい人間”には相応しくない。
“正しい人間”になりたいなら、言ってはならない類いのこと。思ってはならない類いのこと。
だからこそ、“正しい人間”になれないくせに正しさを求める自分はこの言葉を欲していたのだろう。
維澄は思う。乙子の言葉は正しい。しかし、“正しい人間”には相応しくない。
“正しい人間”になりたいなら、言ってはならない類いのこと。思ってはならない類いのこと。
だからこそ、“正しい人間”になれないくせに正しさを求める自分はこの言葉を欲していたのだろう。
「私に……、クラスの仲間を殺せと言うのですか?」
「既に法は蹂躙された。今更、迷う必要はあるまい」
「暴力的な解決策は嫌いです。野蛮人じゃあるまいし。ここは法治国家なのですよ?
それに、私は……人の持つ理性と良心を……、信じて、いるのです……」
「私に嘘をつくな、維澄」
「既に法は蹂躙された。今更、迷う必要はあるまい」
「暴力的な解決策は嫌いです。野蛮人じゃあるまいし。ここは法治国家なのですよ?
それに、私は……人の持つ理性と良心を……、信じて、いるのです……」
「私に嘘をつくな、維澄」
声は静かだが、背筋が凍りつくような凄みがあった。
たった一声、ただ名前を呼ばれただけで、魂の底まで見透かされているかのような
無力感に圧倒される。再び口を開いたとき、乙子の声色は優しかった。
いかなる拒絶も抵抗も、疑問すらも抱くことを許されないほど、その口調は優しかった。
たった一声、ただ名前を呼ばれただけで、魂の底まで見透かされているかのような
無力感に圧倒される。再び口を開いたとき、乙子の声色は優しかった。
いかなる拒絶も抵抗も、疑問すらも抱くことを許されないほど、その口調は優しかった。
「君は、人間の善性など信じていない。君には、信じることなど出来ないはずだよ。
風紀委員としての君の姿、ルールの遵守を徹底する姿勢こそが何よりの証拠だ。
信じられないからこそ、法による束縛を望む。信じられないからこそ、正義を欲する。
君の装う正しさなど、いびつな人間性の裏返しに過ぎない。……違うかね?」
風紀委員としての君の姿、ルールの遵守を徹底する姿勢こそが何よりの証拠だ。
信じられないからこそ、法による束縛を望む。信じられないからこそ、正義を欲する。
君の装う正しさなど、いびつな人間性の裏返しに過ぎない。……違うかね?」
維澄の心に生じたのは、痛みではなく安堵だった。
この人は。そう、私の好きなこの人は。私の欠陥をここまで深く理解した上で、
それでも語りかけてくれるんだ。そして多分、私が人を殺しても、それでも――
乙子の問いに答える代わりに、維澄は最後の言い訳をした。
この最後の砦すらも乙子がまた、完膚なきまでに破壊してくれることを期待して。
この人は。そう、私の好きなこの人は。私の欠陥をここまで深く理解した上で、
それでも語りかけてくれるんだ。そして多分、私が人を殺しても、それでも――
乙子の問いに答える代わりに、維澄は最後の言い訳をした。
この最後の砦すらも乙子がまた、完膚なきまでに破壊してくれることを期待して。
「でも……、私には武器がありません」
乙子はうっすらと酷薄な笑みを浮かべた。
維澄の本心を、その願望を、良識の下に潜む残虐性を見透かすように。
そしてその無機的な視線を足元に転がる銀色の骸に向ける。
維澄の本心を、その願望を、良識の下に潜む残虐性を見透かすように。
そしてその無機的な視線を足元に転がる銀色の骸に向ける。
「彼からガントレット(篭手)を貰い受ければいい。隠し剣が仕込まれている」
「私にそんな……、死肉漁りのような真似をしろと言うのですか!?」
「私は武器のありかを教えたまで。殺人者を野放しにすることが正義だと言うのならば、
それもよかろう。……あとは君が決めることだ」
「私にそんな……、死肉漁りのような真似をしろと言うのですか!?」
「私は武器のありかを教えたまで。殺人者を野放しにすることが正義だと言うのならば、
それもよかろう。……あとは君が決めることだ」
□ ■ □
水原維澄は従順だった。
ガントレットの隠し剣で元の持ち主の首を切断し、その首輪を回収した。
命じたのは、私――吸血鬼ネイサン・ホーマーから分離した精神寄生体フラグメント.N――。
表向きは、練習。篭手と一体になった剣の扱い方を把握するため、という名目で。
しかし実際の目的は、己の築き上げた倫理観を彼女自身の手で破壊させるため。
私に逆らう口実を奪い、私を拒む意志を奪い、寄生されるに相応しい人形に仕立て上げるため。
ガントレットの隠し剣で元の持ち主の首を切断し、その首輪を回収した。
命じたのは、私――吸血鬼ネイサン・ホーマーから分離した精神寄生体フラグメント.N――。
表向きは、練習。篭手と一体になった剣の扱い方を把握するため、という名目で。
しかし実際の目的は、己の築き上げた倫理観を彼女自身の手で破壊させるため。
私に逆らう口実を奪い、私を拒む意志を奪い、寄生されるに相応しい人形に仕立て上げるため。
水原維澄は我の強い人間だが、その一方で御しやすくもあった。
彼女と接するときは、宿主である高森乙子の人格や口調をトレースする必要がない。
彼女に対しては、私本来の人格、素のままの口調で接した方が、好ましい反応を得られるのだ。
その態度はまるで、私に支配されることを望んでいるようですらあった。
彼女と接するときは、宿主である高森乙子の人格や口調をトレースする必要がない。
彼女に対しては、私本来の人格、素のままの口調で接した方が、好ましい反応を得られるのだ。
その態度はまるで、私に支配されることを望んでいるようですらあった。
回収した首輪にこびりついた血を自らのハンカチで拭き取っていた維澄は、
出し抜けにそれらを地に落とすと、茂みに駆け込み嘔吐した。
私は無言で首輪を拾う。切断を命じたとき、首輪の回収については触れなかった。
主催陣による盗聴を警戒し、自らの首をゼスチャーで示したのみ。
しかし彼女は私の意図を正確に、的確に汲み取った。
勘が良いのか、或いは免罪符を欲する思いがそれほどまでに切実だったのか。
出し抜けにそれらを地に落とすと、茂みに駆け込み嘔吐した。
私は無言で首輪を拾う。切断を命じたとき、首輪の回収については触れなかった。
主催陣による盗聴を警戒し、自らの首をゼスチャーで示したのみ。
しかし彼女は私の意図を正確に、的確に汲み取った。
勘が良いのか、或いは免罪符を欲する思いがそれほどまでに切実だったのか。
落ち着きを取り戻し、口をすすぎ終えた維澄に私は背後から声をかけた。
振り向いた維澄は物言いたげに、しかし無言で怯えていたが、
その瞳を覗き込むと、彼女の全身から緊張が消えた。
再びの魅了。彼女を支配すべきは虚像としての恐怖ではなく、この私。
振り向いた維澄は物言いたげに、しかし無言で怯えていたが、
その瞳を覗き込むと、彼女の全身から緊張が消えた。
再びの魅了。彼女を支配すべきは虚像としての恐怖ではなく、この私。
「維澄、よくやった」
言いながら、そっと抱き寄せる。
癖のない艶やかな黒髪を指ですくように頭を撫でると、彼女は声を殺してすすり泣いた。
罪悪感に苛まれているのだろう。それでいい、とほくそ笑む。
罪悪感は、私に逆らう口実を奪う。私を拒む意志を奪う。肉人形には不可欠だ。
しかし、足りない。この程度では話にならない。
水原維澄は我の強い人間だ。すなわち、私のもっとも嫌いな人種。
癖のない艶やかな黒髪を指ですくように頭を撫でると、彼女は声を殺してすすり泣いた。
罪悪感に苛まれているのだろう。それでいい、とほくそ笑む。
罪悪感は、私に逆らう口実を奪う。私を拒む意志を奪う。肉人形には不可欠だ。
しかし、足りない。この程度では話にならない。
水原維澄は我の強い人間だ。すなわち、私のもっとも嫌いな人種。
徹底的に壊さなければ、使い物にはならないだろう。
【E-7 森林/一日目・深夜】
【女子八番:高森乙子】
【乙子→1:わたし(たち) 2:苗字呼び捨て 3:苗字呼び捨て】
【N→1:私(我々) 2:君(諸君) 3:彼・彼女(ら)、○○(名前呼び捨てor君付け)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品(不明)
[思考・状況]
基本思考:寄生可能な肉体の確保(N)
0:首輪の分析・解除。
1:水原維澄を寄生可能な状態にする。
2:主催陣による盗聴を警戒。
【乙子→1:わたし(たち) 2:苗字呼び捨て 3:苗字呼び捨て】
【N→1:私(我々) 2:君(諸君) 3:彼・彼女(ら)、○○(名前呼び捨てor君付け)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品(不明)
[思考・状況]
基本思考:寄生可能な肉体の確保(N)
0:首輪の分析・解除。
1:水原維澄を寄生可能な状態にする。
2:主催陣による盗聴を警戒。
【女子十七番:水原維澄】
【1:私(たち) 2:あなた(たち) 3:あの人(たち)、○○(苗字にさん付け)】
[状態]:精神的疲労(軽度)、魅了(フラグメント.Nの支配下)
[装備]:ガントレット(仕込み剣付きの篭手)
[道具]:支給品一式(水を少量消費)、ノートパソコン、松平左京の首輪
[思考・状況]
基本思考:ゲームの破壊・脱出。
0:高森乙子(フラグメント.N)の護衛。
1:ゲームに乗った者、乗りかねない者、主催者の抹殺。
2:砂野碧衣を警戒、見つけ次第殺害。
3:松平左京として死亡した人物に違和感。
[備考欄]
※松平左京の死亡場所がE-7に確定しました。
※甲冑の中に入っていた人物の正体は後続の方にお任せします。
【1:私(たち) 2:あなた(たち) 3:あの人(たち)、○○(苗字にさん付け)】
[状態]:精神的疲労(軽度)、魅了(フラグメント.Nの支配下)
[装備]:ガントレット(仕込み剣付きの篭手)
[道具]:支給品一式(水を少量消費)、ノートパソコン、松平左京の首輪
[思考・状況]
基本思考:ゲームの破壊・脱出。
0:高森乙子(フラグメント.N)の護衛。
1:ゲームに乗った者、乗りかねない者、主催者の抹殺。
2:砂野碧衣を警戒、見つけ次第殺害。
3:松平左京として死亡した人物に違和感。
[備考欄]
※松平左京の死亡場所がE-7に確定しました。
※甲冑の中に入っていた人物の正体は後続の方にお任せします。
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| GAME START | 高森乙子 | |
| 000:試合再開 | 水原維澄 | |
| GAME START | フラグメント.N |