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大 誤 算

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大 誤 算 ◆dXhnNxERuo


「全員、配置完了いたしました!間もなく我々は本土へ帰還します!」
『ああ、ごくろうさん。』

蝶野杜夫が2-Dのクラスメイトと板倉を送り出してから約二時間が経過した頃。
昏睡状態の生徒のランダムな配置を完了した教育委員会の構成員約50名は港に泊まっている貨物船内に集合していた。
彼らは即座に離脱し、島に残留する委員会の関係者は「プログラム」の担当教官である蝶野と、本拠地の防衛の為に
桐原重工から雇った神楽だけとなる。

汽笛が鳴り、船が出港した。遠ざかる頃には再び全員の首輪に電気ショックが流れ、目覚めた生徒がゲームを始めることだろう。
先程まで構成員が集合していた、真中に軍事ヘリが留めてあるデッキには一人の男を除きほとんど人が残っていない。

『お疲れ様です~、坂本会長♪』
「……あぁ、まったくだよ、ウィッチランチャー。これでようやく肩の荷が下りる。」

その一人の初老の男こそ――「プログラム」の開始を見届ける為わざわざ本土から出向いてきた教育委員会の事実上のトップ、
坂本金次郎(さかもと-きんじろう)であった。そして彼に話しかける機械音声は無人の戦闘ヘリが発している。
その戦闘ヘリにインストールされているのは韋駄天と対極をなす人工知能だけが存在し、決まった外装を持たない
AI型のレプリカント、ウィッチランチャーである。

「しかし、君たち桐原重工が協力してくれたおかげでスムーズに事を進めることが出来たよ。感謝せねばならないな。」
『いえいえ~、私達レプリカントの仇敵である桐原千里を合法的に抹殺する機会を与えてくださったのですから礼を言いたいのは
 こちらの方です。レプリカント系商品の研究費、開発費の全面カット及び試作品の廃棄。正に死刑宣告のごとき処遇でしたからね~。』
「……経営難を覆した手腕は見事だが、その裏では確実に不幸になるものが存在する、ということか。皮肉な話だな。」
『そうなんですよね~……あ、メッセージが届いてますよ。担当教官さんからです。』

小さい子供のような機械音声が、年配の男性の声に切り替わる。

『こんばんは会長、いい船旅楽しんでますかぁ?』
「ん?蝶野か?今更なんの用だ?」
『いやぁ…今校舎に私しかいませんからちょっと寂しくてですねぇ…。』
「子供か貴様は。やれやれ、今回は若狭のようなヘマはしないでくれよ。」
『若狭吉雄担当教官ですか…プログラムを始めたらいきなりクラスメイトの女子約三名に乗っ取られたという伝説の!』
「…我々の汚点だ。何故かその時の生徒は全員消息不明になってるがね。…連中が勝手に殺し合ったとでもいうのか?」
『生徒の自主性もたまには尊重させないといけないのかもしれませんね。ははは、大丈夫ですよぉ!だって今回は――』

ばばばばばっ

「…………な…………?」

突然、戦闘ヘリの腹部に装備された機関砲が火を噴き、坂本に弾丸を浴びせた。

「…………蝶野…………!?」
『―――ははははっ、ヘマは致しませんよ、だって今回は僕が自主的に彼らに協力しているのですからぁ!
 まぁ、そういうわけなんで、ぶっちゃけ会場と必要な備品用意していただいた時点でもう貴方達用済みなんですよねぇ。』
「…………貴様ぁ…………!」

坂本は広がる血の池の中へ倒れ伏す。ごろんと、何かがこちらへ転がってきた。
それは、顔はよく覚えていなかったが、用務員のだれかの体のない頭部だ。
少し離れた場所に包丁のような形の巨大な剣を持った血まみれの少女が立っている。
船内から次々と絶望にまみれた断末魔のごとき悲鳴が木霊する。

サーチライトが灯り、場違いなほどの笑みを浮かべた中世のファンタジーに出てきそうなピンクの髪の妖精の姿が、
坂本の眼前に映像が映し出された。

「……ウィッチ……ランチャー……。」
『ごめんなさいね、私達五人は最初から教団の仲間だったのですよー。冷静に計算すると彼らの方が条件良かったですし。』
「……やれやれ……わたしは……君のことは信じていたのだがね…………。」

寂しそうな顔を浮かべた坂本は、そのまま目を閉じ、息絶えた。

『さようなら、坂本会長。』

いつも通りの笑みを浮かべたまま、ホログラムの妖精は別れを告げた。

◆ ◆ ◆

「全員、始末したぞ。」
『ああ、ごくろうさん。』

刃庭魯依(ばてい‐ろい)は携帯で蝶野に報告を完了した。
デッキに居るのは彼を含めて5人。最も、正確に人間と呼べるのは
包丁呼ぶにはあまりに巨大で禍々し過ぎる巨大なギロチンを抱えた小さな少女、間霧鼎(まきり‐かなえ)ただ一人である。

「ふん、手ごたえのない連中だったわい。」

しわがれた声を発するのは狼の獣人だった。だが厳密には違う。
彼、大神尊戎(おおかみ‐そんじゅう)は月が出ている夜にだけ獣人に変わる呪いが掛けられているのだ。

「せっかくこの状態で戦えるというのに殆ど鼎と私の二人で掃除できてしまったぞ」
「うん、ちょっともったいないね。……ねぇ、わたしたちもゲームにさんかしちゃおっか?おじいちゃん。」
「ぐはははっ、それはいいな!」

魯依は片手でを振って二人を制する。

「ネイサンか骨洞さんから連絡が入るまでもうちょっと待て。」
「……魯依……。」

鼎と同じくらいの背丈の少女、帝泉瑞乃(みかどいずみ‐みずの)が魯依に話しかけてきた。

「なんだ?瑞乃?」
「私は殆ど何もやってない。」
「あぁ、瑞乃はそれでいいだろ。汚れ役は鉄砲玉二人にでもやらせておけば?」

瑞乃は手を刃物に変形させ、中にかざす。

「…なんか仲間外れにされてるみたいで寂しいな…。」
「じゃあみずのもいっしょにいこうよ、ね?」
「おい、鼎。」
「あはは、うん、じょうだんだよっ。」

刃庭魯依と帝泉瑞乃はレプリカントである。ウィッチランチャーとともに桐原重工から脱退した、
いわゆる造反者とも呼べる存在だった。ともかく、5人は尋常ならざる戦闘力を有するテロリストの尖兵なのだ。

『うーん。わるいけどジョーカーは神楽君一人で十分かな。あー、あともう一人いるんだけど…そいつは別にどうでもいいや。
 まぁ、間接的に彼の願いはかなえてあげたんだし本望でしょ、喜んで死んでくれるさ。』
「教育委員会はこれで終わりか?ずいぶんあっけないな。」
『どうだろうねぇ、しばらく混乱するだろうけどまた似たような組織が立ち上がるんじゃないかな?
 国が関わってる組織はそう脆くはないよ。』
「けっ、ふざけた連中だな。……なぁ、あんたはなんで裏切ったんだ?」
『うーん。君たちと同じかな?ネイサン達の組織と手を組んだ方がゲームを好き放題弄れそうだしね。
 護衛役の神楽君をゲームに放り込むこともできたし。』
「……あんたもイカレてるな。」
『はははっ、よく言われるよ!じゃあ、また用があったら連絡するよ!それでは!』

電話が切れた。

「……神楽か。」
「信用できるの、あいつ?」
「さぁ、あんま喋ったことねぇしな。」
『ねぇ、やっぱり私達も行こうよ。桐原千里は直接倒した方が確実だよ?』
「……ウィッチランチャー。」
「ん?そういえば桐原重工の今の社長が参加しているんだったな?おまえら何か恨みでもあるのか?」

刃庭魯依は携帯をおろしてうなだれた。

「当たり前だろ、奴は全てのレプリカントの敵だ。とにかく、俺たちが公式の存在に戻るにはヤツを始末するしかない。」

戦闘ヘリの、プロペラが回りだした。突風が吹き荒れる。

『やっぱり行こう、ね?』

【??? 貨物船/一日目・深夜】

【間霧鼎 主催】
【大神尊戎 主催】
【ウィッチランチャー 主催】
【帝泉瑞乃 主催】
【刃庭魯依 主催】

◆ ◆ ◆

「ヒャッホー!!」

神楽雅光を乗せた韋駄天は深い夜の森の中をホバーで移動する。
数多の戦場を駆け巡り、対人戦において無敵を誇る鉄の巨人。
ゲームの開始が待ち遠しくて仕方がなかった。

「……むっ。」

急遽、尿意を感じ取った神楽は韋駄天を緊急停止させる。
けたたましいエンジン音が消え、辺りは無音状態となった。
神楽はコックピットハッチを開き、用を足す為に降りることにした。
ゲームが始まるまでまだ時間がある。今のうちに済ませておかないと迂闊に降りれなくなるのだ。

鼻歌をうたいながら事を済ませると、突然携帯が振動した。蝶野からだ。

「よぉ、なんだ先生?」
『あぁ、一応指示内容を確認しておこうと思ってね。』

神楽の口元が歪んだ。

「おうおう分かってるよ。麓山留夏は最後まで残しておくように、だろ。」
『あぁ、それが優先事項だ。あまりネイサン達に悟られないようにな。』
「なるべく努力はするさ。もらった金の分は働きますよ。ま、こっちも桐原社長を殺せれば後はどうでもいいしな。」
『ネイサン組の連中と言い、桐原重工関係者はずいぶん彼女を恨んでるねぇ、何があったんだい?」
「……あの女、韋駄天の経費を全面カットしやがった。殺さないと維持できなくなって今年中に廃棄処分だぜ?ふざけてやがる。」
『ふうん。君も大変だねぇ。じゃあ、よろしく。』
「おう!まかせとけっ

ごしゃっ

 …………って………?」

カランと、携帯が神楽の手からこぼれおちた。そのまま後ろに倒れこむ。
『おいどうしたー?神楽ー?』
「………なん……だと……?」

頭部に衝撃を受け倒れ伏した神楽を両工スパナを持った砂野夕璃菜(さの・ゆりな)が見下ろしていた。

『神楽ー返事っ――――。

夕璃菜は携帯電話を踏み潰す。ニヤリと笑っていた。

「……お前……なんで起きて……?」    
「あぁ、せっかく気持ちよく寝てたのになんかすごい勢いで吹っ飛ばされちゃってさぁ。ねぇ、誰と電話してたの?」
「……そんな馬鹿な……。」
「まぁ、別にどうでもいいかな。」

神楽は、数メートル離れた場所に止めてある相棒に手を伸ばす。

(韋駄天に……韋駄天に乗りさえすれば……俺は……!)

ぐちゃっ

夕璃菜は踵を下段に落とし、神楽の睾丸を踏み潰した。

「ぎゃああああああああああああああ!!!!」
「あはははは!ラッキーだなー!いきなりこいつを殺せるなんて!」

両行スパナを上段に構え、頭部に向けて何度も振り下ろした。
血や歯や脳漿が振り下ろすたびに飛び散り、とうとう痙攣していた神楽の体が動かなくなった。
死んだことを確認した夕璃菜は歪んだ両行スパナを投げ捨てた。

「よっしゃ!幸先いいぞ!この調子で碧衣ちゃんを殺しそうな奴らは残さず駆逐しなくっちゃ!頑張れ私!」

ちなみに、従姉妹である彼女の奉仕対象、砂野碧衣も数分後に同じ理由で人を殺すことになる。
シンクロニシティ。たとえ離れ離れになっても姉妹で考えることも取る行動もまったく同じだった。
神楽の死体を放置し、森の中に佇む巨人を見上げる。

「それにしても、これ、強そうだねぇ。」

◆ ◆ ◆

「おいおい、いきなり切ることはないだろう、神楽ぁ?」

蝶野杜夫は誰も居ない教室で一人教壇にもたれかかっていた。
教室だけでなく、もはや分校には彼一人を除いて誰も居ない。
ネイサン・ホーマーと骨洞芙蘭は板倉竜斗を送り出した後用事があると言ってどこかへ出かけてしまった。
勝手に島をほっつき歩いて大丈夫かと思ったがまぁ連中は人間を超えているし別に心配いらないだろう。

神楽も相手にしてくれず、正直ちょっと寂しい。

「……麓山ぁ、頑張れよぉ。簡単に死んでくれたら困るからなぁ。」

麓山留夏。自分が教育委員会を捨ててネイサン組と手を組んだ最大の要因。
彼女を終盤まで生かす為だけに護衛役の神楽をジョーカーとしてゲームに送り込んだようなものなのだ。

彼女が座っていた机まで移動し、頬を擦りつける。
SとMの関係性はもはや逆転したのだ。これからは自分が彼女を調教する番である。
彼女のディバックに忍び込ませたDVDを見たときの反応が本当に楽しみだ。

そう、これは愛。紛れもなく純粋な―――。

「…………なんだ?」

なにかが飛んでくる音が聞こえる。それは徐々にこちらへ近づいてきているようだ。
我に返り、窓の外を見ると―――。



「うぉ!まぶし―――!」



窓ガラスが衝撃波で割れ、爆炎が教室を包み込んだ。

『あんたが参加したら真っ先に死ぬんじゃない、このゲーム?』

閃光の中、意識を失う直前。ゲーム開始時に教室で麓山留夏が言っていたあの言葉が脳裏に浮かんだ。


◆ ◆ ◆


「あちゃ~。また間違えちゃった。」

韋駄天の操縦席にシートベルトを締めて乗り込んだ砂野夕璃菜は、
なんだかよく分からないボタンや操縦桿を適当に弄って遊んでいた。
どうやら今のは背中のミサイルポッドの自動発射のボタンを押したようだ。
今のに巻き込まれて誰か死んだかもしれないが……まあこうやって馴れていくしかないのだから仕方がない。
碧衣ちゃんじゃないことを神様に祈ってみる。

気を取り直して操縦桿とペダルを両手でしっかり握りしめる。
このチャンスを逃す手はない。一刻も早く碧衣ちゃんを保護して危険な連中を殲滅するのだ。

「うっ!」


首に鋭い痛みが走る。これは教室で気絶した時の電気ショック?
いや、恐らく今回は覚醒のための電流だろう。今のが全員の首輪に起こっていたとすると、
みんな目を覚ましてしまったということだ。

韋駄天のホバーのモーターが回転し始める。急がなくては。

「待っててね、私が護ってあげるから!」

◆ ◆ ◆


足を引き摺りながら、血まみれの蝶野は管理室にたどり着いた。
暗い部屋の真ん中のモニターには島の地図とクラスメイト全員の居場所が映し出されている。
居場所は首輪に反応しているのであるが、そこに神楽の名前は無い。彼は首輪をつけていないのだ。

「場所は……分からないか……くそ、どういうことだ?まさか……私を裏切ったのか?」

何が起こっていたのか知る由もない彼は疑心暗鬼に包まれざるをえなかった。


……麓山ぁ!」

このままでは不味い。先程の教室の爆発に巻き込まれて主導爆破スイッチが瓦礫に挟まれて壊れてしまっのだ。
いざとなったら彼女に近づくヤツの首輪を手当たりしだい爆破も出来たのだがそれも不可能になってしまった。
放送を自動モードに切り替える。これで、自分は何もしなくても時間になったら定期連絡は行われるだろう。

(DVDを見るため……あの場所へ向かうはずだ……今なら間に合う!)

彼は向かう。安全な城をから飛び出して。目的を果たす為に。


…………これが、開始直前に起こった不幸な事故の全容である。

このことを今はまだ誰も知らない。歪みはいずれ大きな波紋となり会場を地獄へ導くのだろうか?
もはや全貌を把握し高みの見物が出来る立場に居る者はこの島には存在しない。
これはバトルロワイアル。無慈悲で無意味な殺し合いゲーム。

2-Dのクラスメイトとテロリスト達。果たして本当に巻き込まれたのはどちらなのか?



【男子五番:神楽雅光 死亡】

【残り34人】


【B-3/森林】
【女子十番:砂野夕璃菜】
[状態]:健康、高騰感
[装備]:グランドレプリカント"凡庸人型戦車"『韋駄天』GR-02
    ライトマシンガンアーム(200/200)
    レフトマシンガンアーム(200/200)
    対空地ミサイルランチャー(5/6)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
 基本思考:砂野碧衣の安全の為に彼女以外は誰であろうと見つけ次第全員殺害する
 0:人が居そうな場所へ向かう
 1:碧衣ちゃんは全力で保護!
[備考欄]
※マニュアルを読んでないので操作に慣れてません
※ヘッドセットをつけてないので韋駄天の音声出力用スピーカーは機能しません
※コックピットが完全に封鎖してあるのでハッチを開けないと外から中の人が分かりません
※両工スパナが神楽雅光の死体の傍に転がっています
※校舎に大穴が空きましたが開始時点ではジョーカー、黒幕含め誰もこのことに気づいていません

【D-4/分校】
【主催:蝶野杜夫】
[状態]:右足骨折、全身に火傷、全身打撲、膵臓出血、内蔵出血、焦り
[装備]:なし
[道具]:不明支給品×5
[思考・状況]
 基本思考:麓山留夏をゲーム終了まで保護する
 0:映画館へ向かう
[備考欄]
※首輪の手動爆破装置が壊れました
※本拠地には現在誰も居ません

※テロリスト(大神尊戎、間霧鼎、帝泉瑞乃、刃庭魯依、ウィッチランチャー)は
 黎明頃島へ到着するかもしれません
※ネイサン・ホーマーと骨洞芙蘭は島のどこかにいます
※放送は自動で行われます



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008:そして殺人者は野に放たれる 蝶野杜夫
GAME START 大神尊戎
GAME START 間霧鼎
GAME START ウィッチランチャー
GAME START 刃庭魯依
GAME START 帝泉瑞乃
GAME START 砂野夕璃菜 020:機獣咆哮
000:試合再開 神楽雅光 死亡

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