[[ディアボロ]]の動揺⑤
それは肌寒い夜だった。現在俺は妹にパシらされアイスを買いに行ってる。
俺が食べているのを見て欲しくなったらしい
俺もこんな寒い日になんでアイスなんか食べるんだよ。
寒いわりには11月だというのに紅葉も少ししか染められていない、これも地球温暖化が原因か?
でも寒いってどういう事だ?俺はテレビに踊らされているのか?
まぁ考えてもしょうがない
ぞわり、と毛虫が背中を這うような悪寒を感じた。
何だ?何か嫌な感じがするぞ
「こんばんわ」
聞いた事がある声。キレイな声なんだが、俺はこの声が……気味が悪い
違うと心に念じながら振り向いた。
紺色の腰まである長い髪で、北校の制服を着た女が立っていた
――朝倉だ
「何でお前がここにっ!」
「あ、待って誤解よ!
私は確かに朝倉だけど貴方が知っている朝倉じゃないわ。
機関が姿形同じようなのを作ったの、つまり私は改良版ね」
朝倉は前見たのと同じような笑顔で笑った
「それより、ここのプロテクトを外したわ
長門さんと……ディアブロさんだっけ?が待ってるわよ」
「長門とディアボロが?」
ええ、と頷かれ俺は突き飛ばされた。
「私でもプロテクトを解除できたんだから、長門さんはきっと止めてもらいたかったのね」
地面に激突する前に朝倉は嘲笑うようにそう言い、俺はその空間に入り込んでしまった。
前見たことがある赤と青が混じった歪んだ空間に、ぐるんと視界が周り痛みが頭に走る。
「いてぇじゃねぇか!」
朝倉に文句を言おうと起き上がると、長門とディアボロが居た。
手にぬめりのある感触がする……違うよなまさかそんな事って、俺の手は赤く染まった
「うわぁあぁあああっつ!!」
情けない声をあげて後退りする。
でも、そうなったら誰でも叫ぶだろ?あんただってきっとそうさ、
荒くなった息を整えようと必死になり俺は長門を見た。
長門の手には異様な形をした刃物が握られている。
今まで見たことも聞いたこともないので名前が分からない、刃先には血がついていた。
「ごふっ」
ディアボロさんの口から血が溢れた。おいおい血を吐くなんてヤバいんじゃないのか?
「長門どうしてこんな事」
「……彼はイタリアのギャングのボス。
麻薬の売買、裏切り者には死を与えた。自分の正体を探るだけでさえ殺した。
あまりの非道に部下達もついていけず反旗を翻し、彼は破れた。その時にスタンド能力をくらった」
「生死を……繰り返す?」
「そう。私達も殺されるかもしれない、そうならないうちに彼を殺す」
殺すなんて聞きなれた言葉なのに今初めて聞いたみたいに凄みがある。
それだけ長門は本気なのだろう。
「彼は母親を生きながら地下に埋め、村を焼き自分の娘を殺そうとした。貴方だって殺される」
そんなディアボロさんが人殺しでしかもギャングのボス……嘘だろ?じゃあ犯罪者?!
ハルヒだって人殺しは喜ばない、それに長門の言うとおり
俺達も殺されるかもしれない、ならここで殺した方が得策か?
「……」
長門は俺の心を読んだかのように、刃物を構えた。
「やめろ長門!」
叫ぶと長門は手を止めた。
くそっ、俺はなんて最低な奴だ人を殺して解決するのがいいわけない!
「ディアボロさんは、確かにお前の言った通りなら前科者だ!
しかも、かなり重い、遺族だって死刑じゃないと納得しないだろう」
俺が説得していても長門は刃物を収めようとはしなかった。
つまり失敗したら殺すつもりなんだ!!説得して止めさねぇと!
「俺達だって殺されるか分からない!
でも、こいつは孤独の最中で痛みのある死を繰り返したじゃないか!
それは平凡な俺にはとてもじゃないが想像できない、こいつは十分に罪を償ったよ」
長門は真っ直ぐ俺を見ている。視線をそらさないように、ジッと。
ディアボロさんはまだ死んでいない。傷が修復していないし、まだ動いている。
けれど目には生気がない早くしないとヤバいぞ。
「それに、いくらディアボロさんが生き返るからといって長門に人殺しなんかしてもらいたくない!」
金属音が響き渡った。長門が刃物を落としたのだ。
刃物は朝倉が消えた時と同じように粒子となり跡形もなく消えた。
空間も壊れさっきまで俺が居た風景へと戻った。成功したのか?
俺は力が抜けてその場にへたりこんだ。
「おめでとう」
ふりむくと朝倉改良版が立っていた。腰がぬけ立てない俺を横切り、長門は嬉しそうに笑ったあと、申し訳なさそうにディアボロを見ると帰っていった。
「これは、私からのお祝いよ」
朝倉は笑いディアボロの傷にふれた。すると血は収まり傷は修復された……こいつもできるのか。
「結局長門さんは一回も殺さなかったわ。
ちなみに私達の組織とは関係ないの長門さんの独断ね。よっぽど貴方を守りたかったのね」
改良版朝倉は、くるりと周り髪をなびかせスカートがふわりと浮かぶ。
「それじゃあね」
朝倉は手をふり、そのまま長門と同じ方向に帰っていった。
ディアボロさんはいまだに虚ろな目をしている。俺は深いため息を吐いた。
to be continued...
最終更新:2009年03月20日 13:40