[[ディアボロ]]の憤慨③
地面に倒れた二人は逃げ、俺が首を掴んだ男は咳き込みうずくまっている
そして後ろに男が一人いた。そいつは俺の首にナイフを突き立てている
頚動脈を切ったのだろうか血は噴水のように溢れ木の葉を染めた。
俺は呻き声もあげる間もなく死んだ。
……とまあ、素人がそんな手際よくいくわけもなく血もそこまで流れなかった。
膝を地面につかないようにバランスを整え体を捻ると、今度は足に痛みがはしった
不意をつかれ、バランスを崩し地面に倒れた。
足を見るとナイフが突き刺さっており熱く熱をおびた感覚に襲われた
それだけならまだ良かった。この男人を刺したのは初めてなのか
パニックに陥り近くにあったゴミ箱で俺をめった打ちにしている。
くそっ!キングクリムゾンを‥‥出現しない?
なぜだ?まさか能力も止められたのか?そんな馬鹿な!
動かない足を引きずり周りにはゴミが散れ、頭に攻撃を受ける
「うわぁぁあっぐぅぁ!」
男は悲鳴にも似た叫び声をあげる。また死ぬのか?
いや、死んでも生き返るし、今度は孤独ではない好き放題になる。
死んだらすべてが完治する。そうなったらこいつの頭蓋骨を潰してやる!
だが‥‥痛い。何回殴る気だこの男
ボギャァ
鈍い音がした。男はいつの間にか頭ではなく足を殴っていたのだ。
ナイフはトンカチで打たれた釘のように俺の足に入り、片方の足は折れていた。
それでもなお男は殴り付けるので折れた骨は皮膚をやぶり肉をやぶり、飛び出した
しかも、運の悪いことにナイフは骨のない肉の部分だけを貫通したせいで地面に刺さり
俺は磔にされたかのように身動き取れないようになってしまった。
痛い……。俺はまだ死なないのか?
こんなに血も出ているのに?男を見ると涙で顔はぐちゃぐちゃ。嗚咽を漏らしながら必死で俺を殴っている。
泣くぐらいなら殴るな!痛いんだよ!!
影ができた。見上げるとさっきまで苦しんでいた男がナイフを手にしている。
冷たい感触が耳にあたる。音もなく血が吹き出した
「っぐぅぁ!」
痛い痛い痛い痛い痛い!殴るな!切るな!まだ俺は死なないのか?早く早く死なせてくれ!
‥‥死んでも助かるのか?生き返ってもまた続くんじゃないのか?
そうだ。いくらあの小娘が望んだからと言って俺は死んで生き返る。
まだジョルノのスタンドからは逃れられない!!なら?俺はどうなる?
決まってる状況は前と何も変わってないんだ!だからいつもどおりの苦痛の日々が始まる。
ゆっくりとゴミ箱とナイフが振り落とされる。
「嘘だろ?」
嘘のように残酷なのが現実だ
時が止まった。いや、そう思っただけだ実際は凄い早さだったのだろう。
男二人は地面で倒れ気絶していた
「まったく!大丈夫?」
そこには髪をなびかせ、優雅に立っているハルヒが居た。
それは女とは思えない気品と強さに満ち溢れていた姿だ
「びっくりしたわよ。でも怪我がなくて良かったわ間一髪ね!」
何を言ってるんだと思ったが、見ると傷はすべて完治していた。
いつの間にか死んで生き返ったようだ。
「まったく、うちの団員を傷つけないでよね!」
「団……員?」
「そうよ。あんたはSOS団の特別新人団員なんだからね!しかも外人だからビックよね!」
ハルヒは嬉々として語っている。
確かに日本人からみたら俺は外人だが、立派なイタリア人だ
お前も俺からみたら外人なんだぞ!まぁ、そんな国際的な事はおいとこう
嘘のように残酷な現実からは回避できたが
嘘のように馬鹿な人間に捕まってしまったみたいだ
「ちょっと待て!勝手に決めるな!」
「私が決めたんだからありがたく思いなさい!」
「いいのか?素性が分からない部外者だぞ?
そんな奴を自分の組織にいれといて良いのか?そんな考えじゃ裏切られるぞ!」
「大丈夫よ。だって私は信用したもの裏切られるわけないわ!」
「どっからくるんだその自信は?それによく信用できるな」
「団長が団員を信用しないでどうするのよ」
それは自分に娘がいたと分かった時よりも激しい衝撃、頭の奥がジィンと痛む。
ボスが部下を信用していなかったら、裏切られるのは当たり前‥‥。
そんな当たり前のことを出来ない奴はごまんと居るんだよ
こいつは知らないからだ。俺がいた場所がどんなに薄汚れている世界か
そんな場所にしか住めない俺を知らないから言えるんだ。
そこまで考えると脳が思考を拒否した
俺はしかたなく渋々頷いた……その時のハルヒが浮かべた満足そうな笑みが忘れられない。
to be continued...
最終更新:2008年01月05日 11:43