第10話「定期テストがやって来る!」

10月中旬になった。徐倫達が俺達の学校にやってきて1ヶ月近くがたった。
その間に3人ものスタンド使いに襲われるというとんでもない事が続きはしたがな。
だが、ここ1週間は平和だった。そしてSOS団の面々にとっては今週も平和な1週間なのだろう。俺を除いて。
「……………」
「あんたさ………テスト1週間前だからって沈みすぎよ」
うるせーな
「そうよ!キョン!あんたはこのSOS団で一番勉強が出来ないのよ!」
俺はSOS団の部室にいた。
まさにハルヒの言うとおりだ。
ハルヒは腹が立つ事にどんな教科だろうと勉強しているのかいないのかよく分からないのにほぼ満点を取る。
古泉もなんだかんだで特別進学クラスにいるせいか成績はいい。朝比奈さんもそれなりの成績は取っている。
長門?あいつは言うまでもなく、全教科満点だ。
問題は徐倫とアナスイだがまず、英語は100%満点だろう。アメリカ人だからな。
次に他の教科だが徐倫はクラスでの様子を見る限り頭は悪く無さそうだ。仮にも教師が父親だからな。
と、なるとアナスイだが………。
「アナスイ君は結構成績良さそうですよ」
朝比奈さんがそう言った。そう、アナスイと言えばもう一つ気になる事がある。

「おい、アナスイ」
「………なんだ?」
英語のクロスワードパズルから目を上げてアナスイがこっちを向く。
うっ………こいつ、普通にしてると結構いかつい顔をしているから恐い。
「お前さ……その……朝比奈さんに……何……したん……や…したんですか?」
途中で物凄い形相で睨まれ尻すぼみな言葉遣いになった。
そう、何故か最近、朝比奈さんが妙にアナスイの事を気にかけているのだ。
誰にでも優しい方だから、外国人で日本に不馴れなアナスイを気遣っている………と、信じたい。
「………別に何もしてねーよ。俺は徐倫だけを愛しプギャア!」
言い切る前に徐倫の鉄拳が炸裂する。ちょっと位言わせてやれよ………。
と、ハルヒが突然叫んだ。
「そうよ!勝負よ!」

何をだ。
「テストの点数に決ってるでしょ!バカキョン!」
俺が絶対に負けるじゃないか!
「でもタダの勝負じゃつまんないわね………何かないかなぁ………」
俺の意見は無視か
「そうだ!商品を賭けるわよ!隣りの県にでっかい遊園地あるでしょ!
あそこのチケットを賭けて勝負よ!最下位が7人分全員払うの!」
「おい、ハルヒ!ちょっと待てよ!何円かかると思ってんだ!」
「そうね………それじゃ流石にキョンが不憫じゃない?」
徐倫が助け船を出してくれた。………俺が負ける前提だけどな。
「フン!くだらんなあ~~~~~このハルヒの目的は遊園地へ他人のおごりでタダで行く事!
どんな手を使おうが………最終的に………行ければよかろうなのだァァァァッ!
………と、言いたい所だけど………ならチーム戦はどう?それならお金も少なくてすむじゃない!」
何気に酷い事言われた気がしてならねーんだが………
「いいんじゃねーのか?キョン、お前でもこのルールなら大丈夫だろ?」
「僕も徐倫さんの言う通りだと思います」
「あ…私も………」
「徐倫………俺は徐倫の言う事ならどんな事でも賛成するぜ………」
「じゃあ今すぐ死ね」
「……………キョン………丈夫な縄、貸せ………」
「だ、駄目です!アナスイ君!」
「……………同意」
「全員同意したようですね、それではチームに分かれるという事で」

クジ引きの結果は俺とハルヒと古泉のチーム、
徐倫と長門のチーム、朝比奈さんとアナスイのチームに分かれる事になった。
「だけどいちいちチームごとに集まるのもめんどくさいわねぇ………誰かの家で集まって勉強する事にしない?」
「なら、あたしの家はどう?」
徐倫の家か。
「ここからは少し遠いけど広いし部屋も沢山あるわよ」
「なら、今度の土日は徐倫の家で勉強会ね!家の場所教えてくれる?」
「徐倫の家なら俺が知っタコス!」
アナスイ………ストーカーはほどほどにな。

土曜日、徐倫の家は高級住宅街で有名な隣の市にあった。
「結構大きい家ですね………」
確かに大きい。が、両隣りの家も同じ位の大きさだ。だが………
「洋館というのは大変目立ちますね、すぐにわかります」
そう、徐倫の家はいかにもな洋館だった。建築とかに詳しい人なら様式とかを言えるんだろうけどな………。
「これは コロニアル様式の建築ですよ」
人の心を読むような真似すんじゃねぇ、古泉。
「これは失礼しました」
「んじゃ、インターホン押すわよ」
キーンコーン………
2分程でドアが空き、徐倫が現れた。
「あー来たの?さ、上がって。あ、それと洋館だけど靴は脱いであがってもらえる?」

「うわー大きいリビングですね………」
「あ!徐倫!これプラズマテレビ!?こっちはパソコン………ね、これOS何?」
ハルヒは早速遠慮なしにリビングにある物を片っ端から聞き回っている。
「アメリカにいた時と微妙に家具が変わってるな………」
「それは興味深い話ですね、アナスイ」
「……………」
アナスイと古泉と長門は早速ソファに座っていた。ちょっとは遠慮しろ。
「あ…キョン君…わたし達も座りましょうか」
まぁ、朝比奈さんが言うならいいか。
「ね、ね、徐倫!この写真は?」
「それは親父が高校の時にエジプトに行った時の写真だ」
「ふーん………この乾電池みたいな髪型したブ男………まぁいっか。こっちの写真は?」
「それはあたしと親父が杜王町に遊びに行った時よ」
「へぇ………このリーゼントの人が徐倫の親戚の人?」
「そうよ」
「あれ?この人………確かピンクダークの少年の………」
「岸辺露伴よ。あそこの単行本は本人の直筆サイン入りよ」
徐倫の親父は岸辺露伴と知り合いなのか………すげぇな。
「あ…あの…そろそろ勉強し始めた方が……」
「僕も朝比奈さんの意見に賛成です」
「……………同意」
「うーん……じゅ始めましょ。徐倫部屋あんな……」
「徐倫の部屋なら俺がしっホガァ!」
「どうやって調べやがったんだ………」

side of キョン

「なんで同じとこ間違えてんだぁ!バカキョン!
そこは運動方程式に三角関数を組み合わせるって何回言ったらわかんだ!このド低脳がァーーーーー!」
俺たちはリビングで勉強していた。3人と人数が多いから広い所が良いだろうという徐倫の配慮だ。
「いい、キョン。あんたはまず理系よ。文系は結構できるんだから点を伸ばすには理系を鍛えなきゃいけないのよ!」
腕にフーゴ先生と書かれた腕章を付けたハルヒが言う。フーゴって誰だ?
「んな事言ったって苦手な物は苦手なんだよ」
「しかし、得意教科の点を伸ばすよりも苦手教科の点を伸ばす方が簡単なのは事実ですよ。
それに涼宮さんは教えるのは大変上手です」
そう、ハルヒの教え方はそこらの教師より格段に上手いのだ。なのにさっきから全然解けないと言う事は………
「キョン………あんたほんと腐れ脳みそね」
俺はテストに間に合うのだろうか………

side of アナスイ

ピンクだ。ピンクな空気が客間を支配している。何故なんだ………俺はテスト勉強の為に徐倫の家に来たはずだ。なのに………なんで………。
「あの………大丈夫ですか………?アナスイ君………」
ピンクの空気の元凶が話し掛けてくる。
「………大丈夫だ………」
「全然大丈夫じゃないように見えます………」
「……………」
冷静になろう。まず朝比奈がピンクになってる理由からだ。人がピンクになる理由の一つに恋がある。
が、朝比奈はキョンや徐倫から聞いた話ではこの時代では恋はしないと決めているらしい。朝比奈は結構意志が固い奴だ。そう簡単には曲げないだろう。
となると朝比奈はまだ恋はしていない………。
「あ、あのアナスイ君……この対数方程式ですけど………」
それは底を揃えて解くんだ。
「あ、ありがとうございます」
………もしかしたら朝比奈は恋ではなく俺に憧れているのか?
となると朝比奈がピンクなのは憧れの人と二人っきりで勉強できるという事にピンクになっている………。
「アナスイ君………ここの構文は?」
「過去完了だな。あと関係代名詞も混じってる」
「あ!ほんとだ」
………つまり、朝比奈が俺の事を好きになるような態度をとらなければいい訳だ………。
「じゃ、勉強するか………あ、間違えた、消しゴムは………」
俺が消しゴムを取ろうとすると
「「アッ」」
俺と朝比奈の指先が触れ、互いに咄嗟に引っ込めた。
「わ、わりい………」
「こ、こちらこそ………」
「……………」
「……………」
だめだ………ドンドン深みにはまっている気がする………。俺はどうすりゃいいんだ………。

side of 徐倫

あたしと有希はあたしの部屋で勉強していた。
「ねぇ有希、ここだけどさ………」
「そこはシャルルの法則を使う」
「んじゃ、ここだけどさ……」
「そこは背理法を使う」
「うほっ、ほんとだ」
………さっきからずっとこの調子だ。有希に分からないところを聞いても
「……………ない」
の一言で終わる。まぁ、こういうのが勉強会の正しいあり方なんだろうけど………。でも少し位おしゃべりしたいわね………。
「ねぇ………有希」
「……………」
「なんか最近見てるテレビとかある?」
「……………ない」
「……………そう」
しまった、有希のしゃべり方がいつの間にかうつっている。
「……………」
「あのさ……ここは?」
「そこは係り結び」
「おーすっげ」
「……………」
ほんと………どーしよ。

勉強し始めて2時間程するとママがお菓子を持ってきて、一旦二人でお菓子を食べながら休憩になった。
「あのさ………有希は友達っている?」
「あなたの思っている意味では恐らくいない」
「………昔話……聞きたい?」
「……………」
「あたしがアメリカのミドルスクール………あ、中学校のことね、いた時にあなたみたいな子がクラスにいたのよ。
静かでいつも教室の隅で本を読んでいるような子」
「……………」

「目立たない子で……友達とかはあんまりいなかった」
「……………」
「真面目な子だったけど……ある日から学校に来なくなったの。なんでだと思う?」
「情報が極めて少ない、推測は困難」
「別に推測なんかしなくていいわよ、有希が思った事を話せばいいのよ」
「……………」
「ま、いいわ。………その子ね……ヤクやってたのよ」
「……………」
「後で分かったんだけどその子家が荒れててね………親から虐待受けてたみたい」
「……………」
「その子に……相談できる相手がいれば……そうはならなかったかもね………」
「……………」
「………んじゃ!しみったれた話は終わり!勉強しよっか!」
「…………そう」
有希がこの話をどう受け取ったかは分からない。が、多分、何かは伝わった………と思う。

side of キョン

そして、テストがやってきた。きてしまった物はしょうがない。全力でやるしかねぇ!

「悪いわね………」
「悪ぃな………」
「悪いですね………」
「キョンがここまで頭が悪かったとはな………」
「調子が悪かっただけだ………」
「まぁ気にする事は無いと思いますよ。生物の承太郎先生のテストなんか凄く難しかったですからね」
あれは難しいなんてもんじゃねぇぞ。
「とにかく………おごるのはキョンのチームだな」
こうして、俺のなけなしの小遣いはさらに減るのだった………。

To Be Continued・・・

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最終更新:2007年12月06日 14:28