第25話 「クラウドベリージャム 2」
「ほぉ……お前……これが見えるのか?」
声のした方を振り向くと、黒い髪をスポーツ刈りにした体育会系の男子がいた。
「ならよ……俺と戦ってくれるか?」
「ダイバーダウンッ!」
右の突き、が、かわされる。左の鉤爪が迫ってきたのを後転でかわすと左の蹴りを放つ、が、
グレイトフルデッドの左腕でガードされ、右腕で掴まれかけたのを左の手刀で払い、後ろに逃げる。
「なかなかやるじゃねぇか」
お前みたいなのとは年季が違うんだよ。
「………?お前……どういう事だ?」
「俺のスタンドは生まれつきって事だ」
「そうかい……クラエッ!」
右のフックから左のアッパー、かわすが、辛うじてといった所だ。老化が段々進行して動きが鈍くなっている。
「マズいな……このままだと………」
『ウオシャアッ!』
その時、扉をぶち壊してエルメェスが現れた。
「2対1か……ここは退くか………」
「逃がすなッ!エルメェス!」
そう叫び、廊下に飛び出た瞬間、
「あたしの事シカト?気を付けないと後ろとられるわよ」
ま、まずい!
『ザ・キッスッ!』
エルメェスが左フックから右ジャブ、敵がかわして繰り出した左のアッパーを見事なステップでかわす。
『エルメェス!さっきの野郎が戻ってきたぞッ!』
『挟み撃ちか……クソッ!』
前門の虎、後門の狼っていうのはこういう状況を言うんだろうな。そんな事を考えながら朝比奈を囲む形でエルメェスと背中合わせになる。
「……あらら……あんたらもツイてないわね……スタンド使い二人に挟み撃ちにあうなんてそんなできる経験じゃないわよ~~~」
『ウオシャアッ!』
エルメェスが館山にパンチを浴びせるが、壁の中に館山が消える。
『ま、また消えやがったぞッ!』
クソッ……様子を見る限りでは物体を通過する能力にしか見えないが、こいつの能力にはそれ以上の“何か”を感じる。と、体育会系の男が迫ってきた。
「くらいやがれッ!」
左フックから右のアッパー、さらにジャブから手の形を生かして引っ掻いてくる。
それ程素早いスタンドではないが、老化が少しづつだが進んでいるせいで相対的にスピードは上がってきている。
「エルメェス!長期戦になると不利だ!二人がかりでとっとと決めるぞ!」
「そうはさせないわ」
いきなり後ろに現れた館山にエルメェスが関節を決められる。
『て、てめぇッ!何処から!?』
「英語分かんないって言ってんじゃん」
「ダイバー………」
「くらいなッ!」
男が後ろから攻撃してくるのを咄嗟にかわす。エルメェスもスタンドで館山の腕にパンチを繰り出すが、あと少しの所で届かない。
「………くそ………」
「トドメだぜ……くらいなッ!」
そう叫ぶと男が腕を掴んでくる。かわそうとしたが、手を掴まれる。
「勝ったッ!直をくらいやがれッ!」
「そうか……直か……そりゃあいい……これで勝ちだぜ」
「………は?何言ってん……な!?こ、この腕は!?」
『そいつはさっきあたしがシールを貼った館山の腕だ……アナスイッ!シールを剥がせ!』
シールを剥がすと男が館山の元へ飛ばされる。
「グアッ!」
エルメェスのシールの能力で腕に傷を負った館山は、エルメェスへの関節技を解いた。と、同時にグレイトフルデッドの直をくらう。
「そおおおををををヲンなアアアァァ……あたしが……お婆さん……に……………」
『へっ!ざまぁみやがれッ!』
『エルメェス!まだあいつが残ってるぜぇッ!』
「………ま、予定が変わったがよ……お前らを倒して俺は強いって事分からしてやるぜ!」
そう言うと男は次々と攻撃を繰り出す。普通なら2対1で有利なはずだが、さっきまで動きまわっていたせいで老化がかなり進んでいる。
かわすので精一杯で、少しずつ追い詰められている。
「ア、アナスイ君………」
「朝比奈……悪いがちょっとの間奴を引きつけてくれるか?」
「………え?」
「奴を倒す方法があるんだ……だが普通にやったんじゃ目立ちすぎる……2秒でいい、頼めるか?」
こんな事を頼むのはもちろん無謀すぎる。多分引き受けないだろうと思っていた時、
「………やります……やらせてください!わたし、アナスイ君達の役に立ちたいんです!」
「朝比奈………それじゃ頼んだぜ!」
「はい!」
目的の場所である物理準備室にたどり着いたのとほぼ同時に男が俺達に追いついた。
「……まだこっちには気付いていないみたいだな……朝比奈、奴の注意を一瞬このドアから逸してくれ」
「………はい」
朝比奈が飛び出し、男に言う。
「お……鬼さん……手のなるほうへ!」
「……………」
男が固まる。
「……何がしたいんだ?お前?」
「………えと……その………」
「朝比奈!こっちだ!」
準備が終わったのを確認し、朝比奈を呼ぶ。と、朝比奈が走り出す。
「逃がすかッ!」
男が迫るが捕まりかけた瞬間、突然男が転んだ。
「さっき……ペンを転がしておきました……ごめんなさい………」
あの状況にしてはなかなか冴えた判断だ。やってきた朝比奈を部屋の中に引っ張り込み、扉を閉める。が、少しもしないうちに男が扉を開けた。
「小細工を……絶対にぶっ倒しナパギニャアッ!」
と、ヘンテコな叫び声と共に男がドアとドアに挟まれた。
『あたしのキッスで二つにした扉をダイバーダウンで罠にした……触れたらネズミ取りみてーに挟まれるようにな……
って聞いてないか、老化もひいてきたみてーだしな』
「そうね、老化がひいて助かったわ………」
と、後ろから女の声がした。声とは逆の方向に飛びながら振り向くと、倒したはずの館山がいた。
「老化くらったときには焦ったけどぉ、ギリギリ生きてたのよ。あんたらがそいつ倒してくれたおかげで助かったってわけ。続き……始めよっか………」
To Be Continued・・・
最終更新:2008年02月05日 14:52