第54話 「コールド・ジン 1」

時間は数十分程バイツァダストする………

「……なかなか様になってきたじゃねーか、朝比奈」
「は、はいッ!」
元々すじがよかったのか、朝比奈はメキメキとスキースキルを会得していた。普段のドジっぷりが嘘のようだ。
「う~~~ん、これならハルニャン達に暫く待ってもらった方がよかったかもねッ!アナスイ君ッ!」
過ぎた事を言っても仕方がねえよ。それよりそろそろ本格的に滑らねーか?
「はい!わたしもそうしたいです!」
『異論は無い………』
「んじゃ折角だし上級者コースで滑るにょろ!」
が、朝比奈は怖そうな顔をし、
「さ、さすがにいきなりはちょっと………」
「……じゃあ中級者コースにするかいッ!?」
「……それがいいだろうな」
「わーい!」
キョンの妹が無邪気に喜ぶ。……滑れないというのに大変微笑ましい。
『行くぞ……中級者コースはこっちだ』
と、ウェザーが言い、全員続き始めた。
「……ありゃ、もう焼けてきたにょろ」
「雪山だからな、照り返しがきついんだろ」
「……日焼け止めしてきたんだけどねぃ」

中級者コースはわりと滑りやすく、皆のレースは全員が勝ったり負けたりだった。滑れないキョン妹は、鶴屋さんと雪だるま作りに精を出している。
「わ、き、キャッ!」

と、突然バランスを崩した朝比奈が鶴屋さん達をのんびり見ていた俺に突っ込んできた。
「あ……ご、ごめんなさい………」
相変わらずすぐに謝る。……その謝り癖直した方がいいぞ。
「あ、その……ごめんなさい」
「また謝ってるじゃねえか……未来人なのに古き良き日本人にそっくりってなんかおかしくねえか?……ほら、立てよ、手貸してやる」
「え……あ、はい………」
が、朝比奈はモジモジとし、なかなか手を出してこない。
「どうした?」
「え……あ、はいッ!」
しょうがない……こっちから起こしてやろう。手を掴むと、
「わ、き、キャッ!」
「………?どうかしたか?」
「い、いえ……何でもないです」
そのまま引っ張って起こす、すると勢いが強過ぎたのか朝比奈が俺の胸に倒れこんできた。
「ア、アナスイ君………」
………待て待て待て、これってかなりマズくないか?事情を知らない奴が見たら………。
「熱いねぇ!お二人さん!」
「熱い熱いィ!!」
ほら、こうなる。……ちくしょー分かってたけどさ、それと朝比奈……なんでちょっと嬉しそうなんだ?
「え、ふえっ!?あ、す、すみません」
……可愛いのがまた反則だチクショー。俺は徐倫一筋だ。頼むからそう言うのは止めてもらえませんかね!?……とぼやいてみたところで事態が好転するわけでもない。俺は現状を受け入れて冷静な対応をする事にした。

「とりあえず……離れろ」
「あ、はい」
が、朝比奈は腰が抜けたのか離れようとしない。
「………おい、早く離れろよ」
「あ、あの……アナスイ君……それが………」
………?どうかしたのか?
「あ、足……いえ、スキー板が動かないんです」
「なんだと?」
試しにスノボ板を動かそうとする。が、いくら力をこめてもうんともすんともいわない。
「な……一体………」
と、スノボを見るとある事にきがついた。
「凍っているだと!?」
スノボの裏にいつの間にか氷ができ、それが地面の氷と結び付いて離れなくなっている。横の朝比奈のスキー板もそうだ。
「ウェザーッ!敵だッ!スタンド使いがいるぞッ!」
『なんだと!?』
「いつの間にかスキーやスノボが凍っている!鶴屋さんとキョンの妹を避難させろッ!」
『逃げろ鶴屋ッ!キョンの妹も連れていけ!』
「……よく分かんないけど分かったさっ!……さ、行こッ!妹さん向こうでそりしない?」
「するー!」
鶴屋さんもなかなかの大物だ。変に勘ぐらずに素直にそして自然に逃げ出した。後でなんかしてやらねーとな。
「朝比奈……もったいないがスキーを捨てる……ダイバーダウンッ!」
スタンドで無理矢理スキー板とスノーボードから靴を外す。
「ウェザーのところまで行くぞ……敵をぶちのめすのは後回しだ………」
「ア…アナスイ君……手が………」
朝比奈に言われて手を見る。すると、
「凍っているだと………」

馬鹿な!いつ凍らされたんだ!?さっきのスノボといい敵の姿がまるで見えない。周囲を見回すと二人の人影がこちらに近付いてくる。一人は茶色い髪を肩あたりで二つくくりにし、自然に垂らしている女。服は青色の普通のスキーウェアだ。
目立つのは横のウザいくらいロン毛の白髪の男だ。片方の目は赤、もう片方は黒のオッドアイ、白いロングコートに上下白のスーツを着ている。……寒くないのか?
「奴が敵か……クラエッ!ダイバーダウンッ!」
白髪の男が口を開いた。
「私がお前なら……そんな迂闊な行動はしない」
一歩踏み出すと俺は水溜まりに足を踏み入れていた。……水溜まり?ここは雪山だぞ。そう呑気に思った瞬間、
「な!?いきなり水が凍っただと!?」
凍った水に足をとられ動けない。さっきまでの正体はこれか……この二人のうちどちらかの能力だろう。
『アナスイッ!大丈夫か!』
ウェザーが駆け寄ろうとする。が、
「そうはァさせません」
突如黒いコートにブーツ、皮帽子を頭に乗せた男が現れウェザーに向けて銃を構え、撃つ。
『ウェザーリポートッ!』
が、難なくウェザーは叩き落とした。……だがウェザーを足止めする分には十分だ。
「逃げろ朝比奈ッ!」
1対2でタダでさえ不利だ。なのに朝比奈を守りながらなどではまず勝ち目は無い。が、
「だ、駄目です……周りが全部水溜まりで……逃げれません」

二人が迫ってくる。女は懐から何本もナイフを取り出している。男の方は無防備だが、スタンドの腕がちらついて見える。ダイバーダウンを出して身構えるが、前門の虎、後門の狼、とても太刀打ちできそうに無い。
「万事休すか………」
「死ね、ナルシソ・アナスイ」
女がナイフを投げようとする。その瞬間、突如飛んで来た何かに女がぶつかり吹き飛ぶ。
「……て……鉄球?」
女を吹き飛ばしたのは丸い高速回転する鉄球だった。一体誰だ?振り向くとそこには見事なまでにメイド服が似合う年齢不詳の女性がいた。
「も……森さん?」
「鶴屋さんから連絡を受けて駆け付けましたが……まさかこんな事になっているとは……」
森さん……あんた一体………。
「私の家は遠くヴァチカンの名家に繋がっています……この鉄球は先祖代々受け継いできたものです」
「……機関ってのは意外と戦闘能力高いのか?」
「……中にはそういうのもいますが私のような人の方が例外に近いですね……ところで向こうの彼は一人で大丈夫そうですか?私にはスタンドが見えないので状況が分からないんですよ」
ウェザーの方を見ると既に戦いはウェザーのペースになっていた。まあ、ウェザーと戦って勝てるスタンドの方が珍しいが。
「大丈夫だ……ウェザーの強さは指折りだ」
「そうですか……なら私達は目の前の敵を倒す事に集中しましょう」
「行くぜェ!」

To Be Continued・・・

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年11月02日 23:10